恐怖のサンタ 悪魔の囁き&コークロア編 01
「あー、死ぬ……」
早々に仕事を終わらせ、俺は一人アパートへと帰宅していた。
ここ最近、やたらと仕事が舞い込んでくる。
原因はコーク・ロアの支配型だとかいう都市伝説の契約者らしい。
都市伝説退治の仕事なんて一週間に一度あるかないかですら多いというのに、おかげでここ一週間はほぼ毎日仕事に追われていた。
同居人が増えた以上、それは嬉しい事なのかもしれないが、物には限度と言うものがある。
いくら稼ぎが良くなっても、過労で倒れてしまっては意味がないのだ。
ここ最近、やたらと仕事が舞い込んでくる。
原因はコーク・ロアの支配型だとかいう都市伝説の契約者らしい。
都市伝説退治の仕事なんて一週間に一度あるかないかですら多いというのに、おかげでここ一週間はほぼ毎日仕事に追われていた。
同居人が増えた以上、それは嬉しい事なのかもしれないが、物には限度と言うものがある。
いくら稼ぎが良くなっても、過労で倒れてしまっては意味がないのだ。
「うーあー……」
……しかし、俺にとっての問題はそんな事ではない。
過労で倒れたとしても、すぐにまた起き上がれるのが俺の身体である。
もっと重要な問題が、一つ。
過労で倒れたとしても、すぐにまた起き上がれるのが俺の身体である。
もっと重要な問題が、一つ。
「――男としての山田が死にそうです、神様」
ここへ越してきてから約二ヶ月。
恋人と同棲、なんて夢のような日々を過ごしながら、俺の身体の一部は酷い渇望を訴えている。
それがどこなんて詳しく言うと放送禁止用語に引っ掛かってしまうので言えるわけもないのだが、とにかく俺は飢えていた。
人はそれを、欲求不満と言う。
恋人と同棲、なんて夢のような日々を過ごしながら、俺の身体の一部は酷い渇望を訴えている。
それがどこなんて詳しく言うと放送禁止用語に引っ掛かってしまうので言えるわけもないのだが、とにかく俺は飢えていた。
人はそれを、欲求不満と言う。
「こんな狭い家の中じゃ隠れていちゃいちゃなんて出来ないし、ましてやホテルなんて金がかかってなぁ……」
心境的には、子どもが出来た後のお父さんか。
家の中が狭い上、経済的に苦しいからホテルなんてもっての外。
つまりここ二ヶ月の間、俺の欲求は解消されていない。
やりたい盛りの青春時代が過ぎたとは言え、俺はまだ20代も半ばである。
恋人と同棲しながら何もできないというのは、ある意味生殺しに近い。
家の中が狭い上、経済的に苦しいからホテルなんてもっての外。
つまりここ二ヶ月の間、俺の欲求は解消されていない。
やりたい盛りの青春時代が過ぎたとは言え、俺はまだ20代も半ばである。
恋人と同棲しながら何もできないというのは、ある意味生殺しに近い。
「……あー、つかこんな事考えてるとアレが来るんだよなぁ」
こんな事を考えている時に現れる一つの声を思い出して、溜息をつく。
あの声が何なのか、俺にもよく分からない。
多分、欲求不満な脳が生み出した幻聴辺りだろう。
あの声が何なのか、俺にもよく分からない。
多分、欲求不満な脳が生み出した幻聴辺りだろう。
「――――ナラ、ヤッチマエバイイダロウ?」
ほら、来た。
脳に直接響く、暗い声。
ここ最近、声は何度も俺へ語りかけて来きている。
脳に直接響く、暗い声。
ここ最近、声は何度も俺へ語りかけて来きている。
「オシタオシチマエヨ! コイビトダロォ? ヤッチマエバイインダヨ」
「えー」
「えー、ジャネェ! ヤリテェンダロォ? ヤッチマイテェンダロォ?」
「えー」
「えー、ジャネェ! ヤリテェンダロォ? ヤッチマイテェンダロォ?」
こんな風に、毎度懲りずに声は俺を誘惑してくる。
ご苦労な事だ、と俺は自分が生み出した幻聴へと語りかける。
ご苦労な事だ、と俺は自分が生み出した幻聴へと語りかける。
「無理だって。下手にやろうとしても良子が霊体化したら俺なんて触れないし、第一触れたとしてもその途端に俺の身体が八つ裂きにされたりするし」
「ソンナンダカラナンニモデキネェンダヨテメェハ!! ヤリテェンダロ? ダッタラコウドウシヨウゼェ!」
「ソンナンダカラナンニモデキネェンダヨテメェハ!! ヤリテェンダロ? ダッタラコウドウシヨウゼェ!」
正直、しつこい。
俺だってやりたいさ、男の子だもの。
けれど、わざわざそんな一時の欲求に任せて、長期的な傷を残す事もあるまい。
俺だってやりたいさ、男の子だもの。
けれど、わざわざそんな一時の欲求に任せて、長期的な傷を残す事もあるまい。
「行動したって無理な物は無理だっての」
「――ナラ、ムリジャナクシテヤロォカァ?」
「――ナラ、ムリジャナクシテヤロォカァ?」
声は甘い囁きで、俺を誘ってくる。
確かに、甘美ではある。
三大欲求を封じられた俺の身体は、囁きに乗ってしまえと後押しをしてくる。
確かに、甘美ではある。
三大欲求を封じられた俺の身体は、囁きに乗ってしまえと後押しをしてくる。
「チカラガホシインダロォ? ムリジャネェンダヨ。オレガテメェニチカラヲクレテヤッテモイインダゼェ?」
黒い声は、甘く囁き続ける。
俺の中の何かを崩そうと、少しずつ、少しずつ浸食してくる。
俺の中の何かを崩そうと、少しずつ、少しずつ浸食してくる。
「ホラ、チカラガアッタラドウスル? ン? ヤッチマウダロ、ヤッチマイテェンダロォ!!」
何かどす黒い感情が、胸の内から湧き上がってくる。
従ってしまえと、この声に従えばいいと。
そうすれば、お前がやりたい事が出来るんだ、と。
底知れない深い闇が、俺を飲み込もうと大きな口を開けている。
後は、一言だけ言えばいい。
了解の合図を、声に送るだけでいい。
俺は、口を開いて――――
従ってしまえと、この声に従えばいいと。
そうすれば、お前がやりたい事が出来るんだ、と。
底知れない深い闇が、俺を飲み込もうと大きな口を開けている。
後は、一言だけ言えばいい。
了解の合図を、声に送るだけでいい。
俺は、口を開いて――――
「――――無理。怖いもん」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
沈黙が、場を支配した。
「ちょ、お前今『こいつヘタレだ』とか思ったろ! ふざけんな、良子を襲うとか死よりも怖いんだぞ!」
「ジュウブンヘタレジャネェカ。ホラ、ソレニウチカツダケノチカラガホシイダロォ? ナァ? ヒトアワフカセテヤリテェモンナァ?」
「馬鹿、一泡どころか口から泡吹いて倒れるっての、俺が! 無理! 悪魔に魂を売っても絶対に勝てないし無理!」
「イヤ、ダカラソレニミアウダケノチカラヲ――――」
「大体俺の生み出した幻聴のくせに何で良子の怖さが分かってないんだ、このデビル山田は!」
「デビルヤマッ……オイ、ナンダヨ、ソリャ」
「ジュウブンヘタレジャネェカ。ホラ、ソレニウチカツダケノチカラガホシイダロォ? ナァ? ヒトアワフカセテヤリテェモンナァ?」
「馬鹿、一泡どころか口から泡吹いて倒れるっての、俺が! 無理! 悪魔に魂を売っても絶対に勝てないし無理!」
「イヤ、ダカラソレニミアウダケノチカラヲ――――」
「大体俺の生み出した幻聴のくせに何で良子の怖さが分かってないんだ、このデビル山田は!」
「デビルヤマッ……オイ、ナンダヨ、ソリャ」
今までずっと囁いていた声の色合いが変わる。
ただ甘美に俺を誘っていた声が、不可解な物を目の当たりにした疑念を含んでいる。
頭の中に、よくアニメなんかで見る天使と悪魔が喧嘩をしている絵を思い浮かべながら、俺は答えた。
ただ甘美に俺を誘っていた声が、不可解な物を目の当たりにした疑念を含んでいる。
頭の中に、よくアニメなんかで見る天使と悪魔が喧嘩をしている絵を思い浮かべながら、俺は答えた。
「え? 俺の中の悪魔だからデビル山田。良い感じだろ?」
「フザケンナテメェ!! ドコノアニメダ、コノヤロウ!」
「フザケンナテメェ!! ドコノアニメダ、コノヤロウ!」
由来を説明した途端に、キレられた。
「おまっ、デビル山田のくせに本体に何文句言ってんだ。俺が二日かけて仕事の合間に考えたんだぞ? ちょっとは敬意払えこん畜生」
「フツカカケテソレナノカァ? アアン? センスネェヨ、テメェ」
「お前あれだろ、反抗期だろ。聞こえ始めてからまだ二日だけど反抗期だろ」
「チゲェヨ! ゼンッゼンチゲェ!!」
「フツカカケテソレナノカァ? アアン? センスネェヨ、テメェ」
「お前あれだろ、反抗期だろ。聞こえ始めてからまだ二日だけど反抗期だろ」
「チゲェヨ! ゼンッゼンチゲェ!!」
ああ、五月蠅い。
毎回こんなである。
何で俺が良子を襲うなんて事をしなければならいのか。
大体俺が生み出した幻聴にそんな力とかあるわけがない。
どうせ、上手く乗せられた俺が良子を襲おうとして返り討ちにあうのがオチだ。
最近色々と不幸な目に遭いすぎてちょっと人間不信になりかけているような気がしなくもない。相手は声だけど。
毎回こんなである。
何で俺が良子を襲うなんて事をしなければならいのか。
大体俺が生み出した幻聴にそんな力とかあるわけがない。
どうせ、上手く乗せられた俺が良子を襲おうとして返り討ちにあうのがオチだ。
最近色々と不幸な目に遭いすぎてちょっと人間不信になりかけているような気がしなくもない。相手は声だけど。
「じゃあほら、略してデビ田でいいよ、デビ田。いいじゃん、可愛いじゃん」
「フザケンジャネェッ! ダイタイナマエナンテイラネェンダヨ、オレハヨォ!!」
「恥ずかしがるなよ、幻聴のくせに。よし、今日からお前デビ田な。決定」
「フザケンナヨテメェェエエエエエ!!」
「フザケンジャネェッ! ダイタイナマエナンテイラネェンダヨ、オレハヨォ!!」
「恥ずかしがるなよ、幻聴のくせに。よし、今日からお前デビ田な。決定」
「フザケンナヨテメェェエエエエエ!!」
我が幻聴ながら、いじっていて非常に面白い。
何だかんだで、デビ田(決定)と話している内は欲求や疲労を忘れられるのだからありがたい。
良いストレス発散方法を手に入れたものだ。
何だかんだで、デビ田(決定)と話している内は欲求や疲労を忘れられるのだからありがたい。
良いストレス発散方法を手に入れたものだ。
早めに仕事を終えてしまうと、部屋には猫しかいない。
そんな室内で、今日も俺は幻聴と暇を潰している。
そんな室内で、今日も俺は幻聴と暇を潰している。
【終われ】