ポーン、ポーン、ポーン…
12時を告げる音が聴こえる。
音が止み、再び静かになった部屋を、教授は立ち上がりながら見渡す。
12時を告げる音が聴こえる。
音が止み、再び静かになった部屋を、教授は立ち上がりながら見渡す。
教授「さてとぉ、巡回の時間だ」
テケ子「お仕事ですか、私もお供しますっ!」
教「応、じゃあ乗れ」
テ「え…いや、さすがに学校内でおんぶしてもらうのは…」
教「別に肘ついて歩かなきゃならんもんでもないだろ? いいから、俺と居るときは素直に甘えておけ」
テ「…はーい」
テ「…はーい」
ギュウッ
教「ふぅ、背中から伝わってくるこの二つの柔らかい感触はたまらないなまったく」
テ「やっぱり降ります」
教「冗談だ冗談。…半分だけ」
教「ふぅ、背中から伝わってくるこの二つの柔らかい感触はたまらないなまったく」
テ「やっぱり降ります」
教「冗談だ冗談。…半分だけ」
テ「いい加減怒っちゃいますよ? そんなにセクハラを連発されると、カラダが目当てのような気がして哀しいです」
教「おぉ、気を悪くしたなら済まん。ちょっと好きな子をイヂめちゃう心理が働いていてな。……ところでテケ子よ」
テ「はい?」
教「お前、デカい割にノーブラだよな」
テ「……ばかあぁー…」
コツコツコツコツ
教授「……異常なし」
教授「……異常なし」
コツコツコツコツ
教「…ここも異常なし」
教「…ここも異常なし」
テケ子「教授さーん」
教「なんぞや」
テ「教授さんは霊感がお強いみたいですけど、他に幽霊を見たことが有ったりはしないんですか?」
教「無いな。テケ子と逢ってはじめて気付いたわけだし」
テ「ふぅん…」
教「どうしたんだ、急に」
テ「いえ、なんか私以外の幽霊さんがいらっしゃるみたいなので何となく」
教「……なん…だと…?」
テ「はじめて来たんでしょうか、1Fの玄関から入ってから、校舎を端から端に見て回ってるみたいです」
教「──なんで、わかるんだ?」
テ「腐っても学校霊ですから、えっへん」
教「変なところで胸を張るな。って言うか胸がなお密着してきて、正直やや前屈み」
テケ子「むっ? 2Fに上がってきました」
教授「不味いぞこりゃあ」
テ「どうしたんですか?」
教「鳥肌がとまらない」
テ「寒がりなんですねぇ、私が温めてあげます。さすりさすり」
教「違う! 正直別のところをさすって欲しいけど違う! 殺気だよ殺気、明らかな殺意を感じるんだよ!!」
テ「まっさかぁー。私は感じませんよ?」
教「そもそも幽霊って殺気を感じられるのかが疑問だが、今はそんなことも言ってられない」
テ「どうするんですか?」
教「隠れるぞっ!」
テ「うわぁ、死亡フラグ~」
教授「はぁ…はぁ…はぁ…」
テケ子「先ほど私たちが居たのは3Fで、2Fへ降りるのは如何なものかと4Fに来ました」
教「昼間から人気の無い、文系部室棟の一室だ。ここなら、そう簡単に見つかったりはしないはず…」
PiPiPiPiPi…
教「───」
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPi…
テ「……教授? お電話鳴っていますよ?」
教「聞こえない聴こえない」
PiPiPiPiPi…
テ「もぅ、相手を待たせたらダメなんですよ? 出たくないのでしたら、代わりに私が出ますから」
教「あっ…バカまて!!」
ピッ
ザザッ、ザザザッ
『………』
テケ子「もしもーし」
『……こんばんわ、わたし、メリー。いま、『普通棟』の2かいにいるの。…あなたはいま、どこにいるのかしら?』
テ「はい、いまは部室棟の4Fにいますよーっ」
教授「メリーさん相手になに口走ってんだお前わあぁ!!」
『………』
テ「…? もしもーし、メリーさーん?」
『──やりましたわお兄様っ! 相手が出てくれましたのっ!!』
『…なんやて!? そりゃほんまかメリー!』
『はい、はいっ! ほんとうですお兄様! ですからどうぞ褒めてくださいましっ!』
『おうおう、撫でちゃる舐めちゃるチューしちゃるぅ!』
教「……なんだこいつら」
『やっぱり“探し者”にはメリーの能力が一番やのぉ』
『ぁん…いやですわお兄様、こんなところでそんなところ…』
『えぇやんか、最近は“都市伝説探し”でご無沙汰やったんやし、人の居なくのぉた学校っちゅーのも中々乙なもんやで?』
『あぁん、ダメですったらぁ…』
ブツッ
教授「………」
テケ子「………」
教「……なぁ、なんだいまの」
テ「私に訊かれても…」
教「安い関西弁の男の方、なにか気になることをチラホラ言ってたような」
テ「“都市伝説探し”、ですか?」
教「うむ。…けど、今の『メリーさん』がお前と同じ『本物』なんだとしたら、非常に厄介な気がするんだが……」
PiPiPiPiPiPiPiPiPi…
教授「もしもし?」
『ちょっと! いきなり通話をきるなんて非道いんじゃありませんことっ!?』
教「知るか」
『今月分の無料通話分だって残りすくないんですからねっ!?』
教「なお知るか。パケ死でもしてろ」
ブツッ
ブツッ
ツー、ツー、ツー…
テケ子「………」
教「…頭痛ぇ」
テ「ソファーに横になりますか?」
教「膝枕…は無理だな」
テ「はぅ…」
教「だから、乳枕でもしてくれ」
テ「が、がんばりますっ」
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi…
教授「……あぁもう、五月蠅いな」
ピッ
『……わたし、メリー。いま、『部室棟』の1かいにいるの。あなたはいま、どこにいるのかしら?』
教「──はぁ!? さっきの電話から10分も経ってないぞ!? 『普通棟』から『部室棟』に来るには間にある『特別棟』と『運動棟』を通らないといけないんだぞ…!!?」
『──あなたはいま、どこにいるのかしら?』
ブツッ!
教「……!」
テケ子「きょ、教授さん…『メリーさん』っていったい…?」
教「…都市、伝説の一つだよ。あまりに有名過ぎて、あまりに子供を怖がらせ過ぎて、最近はむしろ聴かなくなった話しだな」
教授「簡単な話だ。持ち主から捨てられた人形が、意思をもって元の持ち主のところまで帰ろうとする、なんとも健気な人形の話だよ」
テケ子「ただのお人形が意思をもつだなんて……」
教「日本だと、長い間使われ続けた道具や物とかには魂が宿るって言われてるからな、その派生だろう。ちなみに海外だと宿るのは精霊や妖精の類の場合が多いぞ。」
テ「……教授さん」
教「あん?」
テ「なんでそんなに、詳しいんですか?」
教「そんなの、俺が怖いもの嫌いだからに決まってるだろ」
テ「……私は?」
教「それがなー、下半身なくて内蔵とか見えてるのに、お前は可愛いフォルダに入るんだよなぁー。不思議だ」
教授「ところで、だ」
テケ子「はい?」
教「あの『メリーさん』が本物だった場合、厄介なのは襲われた時だ」
テ「? メリーさんは良い子なんじゃ?」
教「元来はな。けど、人形とは言え意思を持っていたら自分を捨てたヒトを許さないとも思うだろう。わかりやすく言うと、『お前個人はすごく良い子だけど、お前は自分を襲った男性教諭が許せない』だろう?」
テ「あ…あうぅ…」
教「隠さなくていい。俺だって、目の前にお前を襲ったヤロウがいたら殺しちゃうだろうしな」
…ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ…
教「…でまぁ、とにかく『メリーさんの都市伝説』はヒトを襲うこともあるってことさ」
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi…
ピッ
教授「やかましい!!」
『あらごめんなさい。わたしメリー、いまあなたのいる部屋のまえにいるの。あなたはなにをしているのかしら?』
教「乳枕」
『……はい?』
教「だからこぅ、おにゃのこの胸の谷間に顔をうずめてだな」
モニュモニュフニフニ
モニュモニュフニフニ
テケ子「あぁん…! おいたはダメですよぅ…」
教「って言うのをしている。正直かなり和む」
『そ、そう』
教「ま、お前みたいなツルペタには一生(?)できないことだろうけどな」
『───』
教「おっ?」
バアァーン!!
メリーちゃん「だだだだ誰がツルペタですって誰がぁ!! これでもあります、すこしはあります! やんわりと手で包めるほどにはありますわぁ!!」
教授「………」
ジイィィィ…
ジイィィィ…
テケ子「……教授さん?」
タユンタユン
タユンタユン
教「………」
チラッ
チラッ
メリーちゃん「なっ、なんですのっ?」
ストンストーン
ストンストーン
教「……クスッ」
メ「コロスコロスコロスコロスコロスコロス…」
???「こらこら、人間の方は殺ったらあかんで。ワイらの目的は、あくまでも“都市伝説”なんやから」
テ「この声……」
教「『メリーさん』の仲間か」
???「仲間ァ? そんなんや無い無い、ワイとメリーは契約しとるだけや。いわば運命共同体、地獄の底まで一緒やでってな」
メ「まぁお兄様ったら、なぜそんなイジワルなことをおっしゃるのかしら。それじゃあわたし、ただのお人形のようです…」
???「うわわわわっ、泣かんといてなメリーよぉ~」
教授「…で、お前はなんなんだ」
???「なにって……見てわからへんのか?」
安っぽい関西弁の男は、自分の格好を教授に見せつけるようにクルクルと回った。
教「はだけたスーツとワイシャツ、ジャラジャラとした貴金属、小麦色に焼けた肌…。以上のポイントから導き出される、お前の職業は……」
テケ子「お医者さんですねっ!?」
???「なんでやねん」
間。
???→ホスト「とまぁ実のところ、しがないNo.2ホストなんやけどね」
教「ナンバー2か、すごいじゃないか」
メリーちゃん「あら? けどナンバーワンの方は先日わたしが“バイバイ”しましたし、事実てきにいまのナンバーワンはお兄様ということになりますわよ」
テ「“バイバイ”?」
メ「はい。“バイバイ”」
教授「……*したのか」
ホスト「わざとやあらへん」
教「*したんだな?」
ホ「…せや」
教「自分でやったのか、それとも……その子にやらせたのか」
メリーちゃん「ちょっと、お兄様を責めないでくださる? その“ナンバーワンさん”はわたしが、わたしの意思で“バイバイ”させたんですのよ。お兄様を責めるのはおカド違いというものですわっ」
教「そうか、お前か」
瞬間、パンっという音がして、当人を含め周囲の者はそれがメリーちゃんの頬が叩かれた音だと気が付くまで、少々の時間がかかった。
テケ子「──きょ、教授さん!?」
メ「な…なにをするんですの!? この野蛮人っ!!」
ホ「………」
教「もう俺、お前のことなんか怖くないわ。感情にまかせてヒトを*す『都市伝説』なんて、ヒトとなにも変わらないからな」
メリーちゃん「あなた…! わたしをぶじょくするおつもりっ!?」
教授「黙れ砂利餓鬼。もう一発入れるぞ」
ホスト「…やめぃ」
教「あぁ?」
ホ「──止めい言うとるんじゃ、早うその手放したらんかいこのボケがぁ!!」
テケ子&メリーちゃん「!!?」
教「………」
ホ「そいつが…メリーが先輩を*したんわなぁ、ワイのためなんや」
教「ふぅん?」
ホ「もう5年もこの仕事やってて、けどいつまで経ってもNo.2のまんまでな。先輩は目の上のタンコブみたいなもんで、気にすれば気にするほど、ワイは空回りして、スランプになってもうたんや」
メ「お兄様…お兄様はナンバーワンですわ。わたしの中で、お兄様はいつも輝いてますわ。そんなお兄様だからこそ、わたしは……」
ホ「…ありがとなぁ、メリー。こんなヤツを好きになってくれて。」
ナデナデ
ナデナデ
メ「んー……気持ちいいですわぁ…」
テケ子「……教授さん」
教授「…なんだ?」
テ「みてください」
教「見てる見てる」
テ「アレが、愛と言うものですよ」
教「なんだ、撫でてほしいのか。ほれ」
ナデナデサワサワ
ナデナデサワサワ
テ「あんっ…! ……ほらそうやって! 教授さんの場合は“サワサワ”ってよけいなものが多いんですよ!!」
教「これも愛情表現だから」
サワサワモニュモニュフニフニ
サワサワモニュモニュフニフニ
テ「前戯の間違いでは?」