「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ヤンデレ弟の日常-19

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 ホワイトデーを過ぎた頃から、学校町では都市伝説絡みの犯罪が増加し始めた
 「悪魔の囁き」と「コーク・ロア支配型」の被害者達が、一斉に増加し始めた為である
 まぁ、それらの犯罪に引きずられて、通常犯罪も増加しているのかもしれないが

 とりあえず、都市伝説事件が増加してきた、となると
 当然、「組織」所属の人間は忙しくなる訳で

「面倒だなぁ」
「…お気持ちはわかりますが、きちんとお仕事なさってくださいね?」

 青年の言葉に、黒服が困ったようにそう言って来た
 「コーラを飲むと骨が溶ける」と契約しているこの青年、実力は確かなのだが、どうにも性格に問題がある
 その戦闘力を欲しがった強硬派や過激派すら「近づきたくない」と口にするような存在なのである
 …まぁ、あの某色々と問題な、現在アメリカに左せ……出張中の禿程ではないが

 とまれ、「組織」の仕事なのである
 悪魔の囁きにとり憑かれたと思わしき契約者が暴れているというので、この二人が派遣されてきたのだ
 相手が潜んでいるらしい廃屋を前に、二人はその廃屋を見上げた

「それで、溶かしちゃえばいいの?」
「…取り押さえて、悪魔の囁きを駆除します。被害者は保護する、と言う形で」
「えー、溶かしちゃえば楽なのに」

 心の底から面倒臭そうに青年がそう言うと、黒服が困ったような表情を浮かべてきた
 青年から見れば、この黒服は甘い
 どこまでもお人好しで善良な、優しい黒服
 よく、「組織」なんかに所属していて生き延びられているものである
 …まぁ、穏健派がうまく動いて、今日まで生き延びているのかもしれないが

「駄目ですよ。相手は、あくまでも被害者なのです。問答無用で殺してしまうわけにはいかないでしょう」
「はぁい。じゃあ、脚でも溶かして動き封じればいいの?」
「……できれば、溶かさないであげてください」

 黒服の苦言を聞きつつ、青年は廃屋に足を踏み入れようとして
 …気配を感じて、脚を止めた
 廃屋の中の気配に対して、ではない
 こちらに近づいてくる、別の気配に対して、だ

「だぁれ?そこにいるのは」

 夜の暗闇の中、近づいてくる気配に、青年は話し掛ける
 …手に持っているコーラのペットボトルの蓋は、既に開いていた
 いつでも、攻撃できる
 黒服も、その気配に気づいたのだろう
 そちらに視線をやった

 そこにいたのは、少年だった
 恐らく、高校生くらいだろうか?
 身長は、160㎝前後
 180㎝を超える長身の青年と黒服と比べると、随分と小柄に見える

「あ、えっと……」

 青年と黒服の姿に、少年は途惑っているようだった
 えと、と困ったように口を開いてくる

「あの、黒服さんがいる、という事は…「組織」の人、ですか?」
「…?黒服、この子も「組織」に所属してる契約者なの?」

 少年の言葉に、青年は首を傾げた
 青年は、少年をじっと見つめ…思い当たる顔だったのか、口を開く

「橘野 悠司さん、ですね。あなたの仰るとおり、我々も「組織」に所属している者ですよ」

 やや警戒している様子の少年…橘野 悠司を安心させるように、優しく微笑んで、黒服はそう告げる
 黒服の言葉に…と言うよりは、黒服のその対応に途惑ったように、悠司は二人を見上げてくる

「えっと…お二人も、悪魔の囁きの被害者の、討伐に?」
「我々は、討伐と言うより、身柄の保護を目的として、派遣されてきています……あなたは、討伐指令をお受けになったのですか?」
「は、はい」

 悠司の言葉に、黒服はやや、悲しそうな表情を浮かべた
 …こんな少年が、相手を殺すような指令を受けている事に、罪悪感を感じているのだろう
 相変わらず、この黒服は未成年に甘い

「って言うかさ、どうして同じ「組織」からの指令なのに、目的がバラバラな訳?」
「……命令系統が違うせいでしょう。橘野さんを担当なさっている黒服と私では、担当部署も違いますし」
「ふーん…相変わらず連携取れてないんだね。とりあえず、他の担当者が来たんなら、そっちに任せて帰っていい??」
「…駄目ですよ。未成年に、任せて帰るだなんて」

 やや頭痛を感じたような表情で、そう言って
 黒服は、悠司に優しい表情を向ける

「よろしければ、ご一緒に任務をこなしますか?」
「え?」
「相手の契約都市伝説などに関しては、よくわかっていません。未知の相手を相手にするのでしたら、数は多い方が良いでしょう……できれば、あなたのような方に、「組織」の仕事はさせたくないのですが…」

 黒服の言葉に…悠司は、悩んだようだったが
 やがて、顔をあげてくる

「はい、それじゃあ、お願いします」

 悠司のその言葉に、黒服は酷く申し訳無さそうに、微笑んで
 青年は、面倒くさい、と言う感情を隠しもしない様子で、ため息をついたのだった



 廃屋に、入り込む
 その瞬間、鼻をついた匂いに、青年は眉をひそめた

「…ここって、暫く誰も住んでいないんだよね?」
「そのはずですが…」
「でも、この匂いって」

 黒服と悠司も、その匂いがする違和感に気づいたのだろう
 それが何の匂いなのか、口に出すよりも、前に


 それは、ごぼごぼと音を立てて、三人に向かって、襲い掛かってきた


「おっと」

 ごぽ、と
 青年が持っていたコーラのペットボトルから、コーラが溢れ出した
 それは、三人に襲い掛かってきた液体とぶつかり合い、互いに相殺しあって辺りに飛び散る

 青年が契約している「骨を溶かすコーラ」は、契約によってその力を「コーラの原液」並にあげている
 ありとあらゆるものを溶かす事が可能になったコーラだが、それでも、液体相手にその力は無効だ
 だが、相手の力を打ち消すくらいはできる
 辺りに飛び散る、茶色の液体
 一方は、青年が操るコーラ
 もう一方は…

「…醤油?」

 悠司が、ぽつりと口にした通り…飛び散ったもう一つの液体は、醤油
 廃屋に充満していた匂いの正体だ

 ごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼ

 四方八方から醤油が三人に襲い掛かってくる
 それらは、皆全て、三人の口元を狙ってきていて

「っ!」

 黒服が、懐から小さな石を取り出した
 パワーストーンと呼ばれるそれが、即席の結界を作り出し、迫り来る醤油を押しとめる

「ねぇ、醤油を操る都市伝説なんてあるの?」
「…恐らく、「醤油を1l飲むと死ぬ」、の契約者かと」

 そんなものまで、都市伝説化していると言うのか
 相変わらず、この街は色々とメチャクチャだ
 いや、とっくにわかりきっていた事だが、いざこうやって対面すると、余計にそう感じてしまう

「つまり、この迫ってくる醤油を口にしたら…?」
「…1l口にしてしまえば、命はないでしょうね」

 悠司を庇うような位置に立ちながら、結界を作り出している黒服
 青年も、コーラで醤油を迎撃するのだが

「もう、鬱陶しいなぁ。どこから攻撃してきてるんだろ」

 相手の姿が、見えない
 この廃屋のどこかに潜んでいる事は間違いないのだが…姿が見えなければ、確保もできないではないか
 相手からも、こちらの姿ははっきり見えてはいないはずだ
 恐らく、廃屋に入ったその瞬間だけは見られているだろうが…それでも、今のこのこちらの状況は、あまり見えていないと思う
 迫ってくる醤油は、恐らくオートでこちらの口を狙い続けているのだろう
 …鬱陶しい
 そして、面倒くさい

「ねー、黒服。この廃屋の柱溶かして崩しちゃって、瓦礫の中から相手探しちゃ駄目?」
「駄目ですよ。当たり所が悪かったら、相手が死亡してしまうでしょう」

 まったく、このお人好しめ
 そのせいで、こちらの仕事が面倒になるではないか

「あの」
「はい?」
「相手を取り押さえれば、このこう着状態、何とかなりますよね?」

 悠司の言葉に、はい、と頷く黒服
 問題は、その相手の居場所がわからない事だが

「それなら……」

 黒服と、青年を見上げてくる悠司の………表情が、変わった

「"俺"に、任せろ」



 ごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼ
 女が抱える醤油の一升瓶から、醤油が溢れ続けている
 溢れても溢れても、瓶の中の醤油はなくならない
 女は、酷く楽しそうに笑っていた

「まだかしら。まだ死んでないかしら?…早く死んじゃえ。みぃんな死んじゃえ」
『ソウサァ!!ミィンナミィンナ死ンデシマエ!!!オ前ガ殺シチマエェヨォオオオ!!!』

 内側から聞こえる声に従って、女は能力を発揮し続ける
 この廃屋に入ってきた三人を、みんな殺してしまおうと

 …しかし、彼女は元々、たまたま都市伝説と契約してしまっただけの、一般人で
 戦闘になんか、慣れていなくて
 だから、気づかなかった

「………!?」

 その、相手が
 自分の背後に、やってくるまで

「っらぁ!!」

 ごがっ!!、と
 背後に現れた少年に、容赦なく蹴り飛ばされて
 女の体は、ボールのように跳ねて転がった
 受身もまともに取れず、床に叩き伏せられて……女はほんの一瞬で、意識を失った



「おいおい、なんだ、この程度かよ」

 つまらなそうに呟く悠司…否、タイガ
 彼と契約している都市伝説だ
 悠司が契約している都市伝説の能力を使うさい、表に表れる人格の一つである
 悠司は、犬神憑きであるタイガの力を使って、その犬並の嗅覚で、相手の居場所を突き止めたのだ
 ……まぁ、相手が思った以上に戦闘慣れしておらず、悠司の想定以上に、相手にダメージを与えてしまった事はさておき

「お怪我はありませんか?」

 醤油の攻撃が止まったことで、黒服と青年も、すぐにそこに駆けつけた
 黒服の言葉に、「タイガ」が、はっ、と笑って答える

「こんな雑魚相手に、傷を負う訳ねぇだろ」
「…お怪我はなさっていないのですね、良かった」

 そんな悠司の様子に、ほっと笑みを浮かべる黒服
 悠司が負傷しなかった事に、心からほっとしている
 そんな黒服の様子に、悠司「達」は酷く途惑った
 今まで、彼が関わってきた黒服と、この黒服はあまりにも違いすぎた

「ねー、こいつどうするの?」

 けし、と気絶している女性を軽くつま先でける青年
 相手が女性であろうと、容赦はない

「少々、お待ちください。今、彼女にとり憑いています悪魔の囁きを、体内から排出させますから」
「それを溶かせばいいのかな?」
「…そうですね。溶かしてしまってください」

 そう言って、黒服は持っていたスーツケースをあけて、中から小さな小瓶を取り出した
 中には、何らかの薬品が入っていて…恐らく、それが悪魔の囁きを体外へと排出させる薬なのだろう

「もう、こっちの仕事はないか?」
「はい。ゆっくりおやすみになっていてください」

 黒服の言葉に、タイガはわかった、と頷いて
 …人格が悠司に戻る

「…っつつ」

 襲い掛かってくる筋肉痛に、顔をしかめる悠司
 黒服が心配そうな表情を向けてきたのに気づいて、慌てて

「だ、大丈夫、なんでもないです」

 と、首を左右に振って見せてきた
 それでも、黒服は心配そうだったが…女性に付いた悪魔の囁きを駆除するのが先、と判断したのだろう
 事実、相手に目を覚まされて、再び能力を使われては厄介だ
 黒服は、小瓶の中の薬品を、気絶している女性の口元に注ぎ込んだ

 ……一分も、しないうちに

『ガァアアアアアアアアアアアア!!??』

 雄叫びと共に、女性の体内から、漆黒の山羊が飛び出してきた
 「組織」で確認されている、悪魔の囁きの姿の一つだ
 宿主の体内から強制的に排出されて、それは苦しげにうめき、暴れる

「煩いなぁ」

 そんな悪魔の囁きを、冷たく見下ろして
 青年は、コーラを操りだした
 操られたコーラは、まっすぐに悪魔の囁きに向かっていって

『ヒギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』

 じゅううううううううううぅぅぅぅぅ………っ、と
 音を立てて、その体を溶かしていく 
 じわじわ、じわじわと
 まるで、痛ぶるように、青年はコーラを悪魔の囁きに纏わりつかせて
 …しかし、元々が弱い存在だからか
 悪魔の囁きは、アッと言う間に溶けきって、消えてしまって

「…あれ、もう死んじゃったんだ?」

 つまんない、と
 青年は、少し不貞腐れたように、そう呟いたのだった



「それでは、私は橘野さんをご自宅までお送りしてきますので。あなたも、お帰りください」
「あ、あの、僕なら大丈夫ですから………っつつ」

 辛そうに体を抑えている悠司
 どうやら、能力の発動の代償に、筋肉痛を負ってしまっているようだ
 そんな悠司に、黒服は酷く心配そうな表情を向けている

「大丈夫ですか?…申し訳ありません。あなたに、このようなリスクを負わせてしまって」
「い、いえ、僕も「組織」の人間ですから。これくらいは覚悟してますし」

 大丈夫です、とそう言ってくる悠司だが
 その表情は、かなり辛そうだ
 今にも動けなくなりそうなその様子に、青年は告げる

「その黒服の言葉に従った方がいいんじゃないかな?そいつ、変な所で頑固だし…君、今にも動けなくなりそうだよ?」

 青年の言葉に、悠司はうぅ、と困った表情を浮かべた
 実際、相当辛いのだろう
 やがて、己を心配そうに見上げてくる黒服を、悠司は申し訳無さそうに見あげて

「…すみません、お願いします」

 と、小さく、頭を下げた

「いえ、お気になさらず……では、私たちはこれで」
「うん、またね…………あ、そうだ。橘野君だっけ。君、中央高校の生徒?」
「…?いえ、僕は工業高校に通ってますけど…」
「あ、そう。じゃあいいや」

 兄が勤めている高校の生徒だったならば、兄に迷惑かけたら溶かすよ、くらいは言っておくべきなのだが
 そうじゃないなら、いいや

 首を傾げている悠司と、青年が問い掛けた言葉の意味を察したのだろう、頭痛を感じている様子の黒服を取り残して
 青年は、さっさと、兄が待つ家へと帰路に着いたのだった


fin



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