恐怖のサンタ 悪魔の囁き&コークロア編 15
――――四月。
各地で新生活の始まる今月の初旬は、どこも忙しいものらしい。
この学校町もその例外ではなく、うちのアパートの空き室にも、何人か新しく入居者が越してきていた。
こんな都市伝説がうようよしている町によく越してくるものだ。
越してきている当人の事情は千差万別なのだろうが、少なくとも俺ならこの町を選ぼうとは思わない。
……都市伝説退治なんて奇怪な職を生業にしている俺が思うべきことではないのかもしれないけれど。
とにかく、今は何かとこの町に不慣れな人間が多くなる。
それはつまり、この町の地理に詳しくない人間が増える事を意味するわけで。
各地で新生活の始まる今月の初旬は、どこも忙しいものらしい。
この学校町もその例外ではなく、うちのアパートの空き室にも、何人か新しく入居者が越してきていた。
こんな都市伝説がうようよしている町によく越してくるものだ。
越してきている当人の事情は千差万別なのだろうが、少なくとも俺ならこの町を選ぼうとは思わない。
……都市伝説退治なんて奇怪な職を生業にしている俺が思うべきことではないのかもしれないけれど。
とにかく、今は何かとこの町に不慣れな人間が多くなる。
それはつまり、この町の地理に詳しくない人間が増える事を意味するわけで。
「………………」
「――――えぐ、うぐっ」
「――――えぐ、うぐっ」
今俺の目の前で泣いている迷子らしき少女もまた、そんな被害者なのかもしれなかった。
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「ええと、その、なんだ。……どうした?」
「えぐっ、うっ……」
「えぐっ、うっ……」
内心びびりまくりながら少女に尋ねてみるも、返答は泣きじゃくる声のみ。
幸い平日の、それもまだ昼にもなっていないような時間だからか、周囲に人影はない。
もし仮に第三者がこの光景を見た場合、俺がこの少女を泣かせているように見える事請け負いである。
幸い平日の、それもまだ昼にもなっていないような時間だからか、周囲に人影はない。
もし仮に第三者がこの光景を見た場合、俺がこの少女を泣かせているように見える事請け負いである。
「泣いてても分からないだろ。えっとほら、どこから来たとか、どこでお母さんとはぐれたとか」
「うぐっ……えうっ……」
「うぐっ……えうっ……」
……迷子の子猫を前にした犬のお巡りさんはこんな気持ちだったのだろうか。
外見から推察するに五歳くらいの年齢であろう少女は、先程から一言もまともな言葉を発していない。
やり辛い所の話ではない。正直な話、俺の方も泣きそうである。
外見から推察するに五歳くらいの年齢であろう少女は、先程から一言もまともな言葉を発していない。
やり辛い所の話ではない。正直な話、俺の方も泣きそうである。
「(イイジャネェカ。見捨テチマエヨ)」
駄目押しとばかりに、脳に俺以外の声が直接響いてくる。
普通の感性を持つ人間なら跳び上がりそうなそれは、別にテレパシストが俺に語りかけているわけでも、漫画なんかで見られる俺の分身である悪魔が語りかけているわけでもない。
普通の感性を持つ人間なら跳び上がりそうなそれは、別にテレパシストが俺に語りかけているわけでも、漫画なんかで見られる俺の分身である悪魔が語りかけているわけでもない。
「(誰カガソノ内何トカスンダロォ? テメェガ立チ去ッテモ誰モ文句ナンカ言ワネェッテ)」
そう俺を怠惰な方向へと引きずり込もうとしてくるのは、デビ田。
今学校町を騒がせている「悪魔の囁き」という都市伝説の一個体である。
俺を堕落させ、支配するはずが失敗。現在は「悪魔の囁き」の大元から役立たずの烙印を押され、いつ消されるかとびくびくしながら俺の中で生活をしている。
今学校町を騒がせている「悪魔の囁き」という都市伝説の一個体である。
俺を堕落させ、支配するはずが失敗。現在は「悪魔の囁き」の大元から役立たずの烙印を押され、いつ消されるかとびくびくしながら俺の中で生活をしている。
「(泣いてる迷子を見捨てるわけにもいかないだろ、常識的に考えて)」
「(ハッ! ンナ『常識』ノセイデテメェノ家ハ都市伝説ダラケジャネェカ、イイ加減学ビヤガレ、へたれガ)」
「(はいはい。どうせ俺はお人よしですよー)」
「(ハッ! ンナ『常識』ノセイデテメェノ家ハ都市伝説ダラケジャネェカ、イイ加減学ビヤガレ、へたれガ)」
「(はいはい。どうせ俺はお人よしですよー)」
どうしたものかと考えながら、適当にデビ田をあしらう。
デビ田が俺の中に巣食ってから数週間。
不本意ではあるのだが、この毒舌にも大分慣れてしまった。
デビ田が俺の中に巣食ってから数週間。
不本意ではあるのだが、この毒舌にも大分慣れてしまった。
「……けど、どうすっかなぁ」
「えう、うぐっ……」
「えう、うぐっ……」
見捨てはしない。そう考えた後ではあるのだが、解決策が一個も思い浮かばない。
手がない訳ではない。
一応、俺は都市伝説の契約者である。
その気になればこの少女の記憶を読み取って、それを元に親御さんを探す事も出来る。
それをためらってしまうのは、やはりまだ俺の中に「倫理観」が残っているせいか。
いや、捨てるつもりは全くないのだから、それで全然構わないのだけれど。
手がない訳ではない。
一応、俺は都市伝説の契約者である。
その気になればこの少女の記憶を読み取って、それを元に親御さんを探す事も出来る。
それをためらってしまうのは、やはりまだ俺の中に「倫理観」が残っているせいか。
いや、捨てるつもりは全くないのだから、それで全然構わないのだけれど。
「……うぐっ、ぐすっ……」
「あー、えっと、んー……」
「あー、えっと、んー……」
泣きじゃくる少女と困惑する俺。
そんな光景はしばらくの間続いた。
そんな光景はしばらくの間続いた。
【終】