将門の言葉に、ため息をついていた盟主
が、ふと……思い出したように、口を開く
が、ふと……思い出したように、口を開く
「…それにしても。日景家、ですか」
「盟主よ、知っておるのか?」
「盟主よ、知っておるのか?」
えぇ、と頷く盟主
学校町で古くから続く旧家の事だ
知らないはずがない
学校町で古くから続く旧家の事だ
知らないはずがない
「はるか昔は「日蔭」と言う姓でしたね。元々、別の旧家の影となり、そちらを支えていた家系でした」
「だが、今は、そちらが権力を得ているのであろう?我は、あの黒服から聞いた知識でしか知らぬが」
「はい…ある時、日蔭家の当時の当主が、とある都市伝説と契約しました。異国の都市伝説である小瓶の中の魔人は、契約者の願いを叶え、日陰者の立場から脱出させたのです」
「だが、今は、そちらが権力を得ているのであろう?我は、あの黒服から聞いた知識でしか知らぬが」
「はい…ある時、日蔭家の当時の当主が、とある都市伝説と契約しました。異国の都市伝説である小瓶の中の魔人は、契約者の願いを叶え、日陰者の立場から脱出させたのです」
古い古い、昔の話だ
まだ、都市伝説…当時は、そう言う呼ばれ方ではなかったが…と人間が、近しい位置にいた頃の出来事
人間という光と、都市伝説と言う闇の境目が、曖昧だったころの事だ
だからこそ、都市伝説の力で、日蔭家は今のような立場を得た
まだ、都市伝説…当時は、そう言う呼ばれ方ではなかったが…と人間が、近しい位置にいた頃の出来事
人間という光と、都市伝説と言う闇の境目が、曖昧だったころの事だ
だからこそ、都市伝説の力で、日蔭家は今のような立場を得た
「日陰者の立場から脱出した際に、姓を「日景」に変えたようですね」
「なるほど…ある意味で、都市伝説に縁のある家なのか」
「はい。歴代当主の中でも、何名か都市伝説契約者が存在したようです…最も、今の当主や当主代行は、都市伝説の存在こそ知っていますが、契約はしていないようです」
「なるほど…ある意味で、都市伝説に縁のある家なのか」
「はい。歴代当主の中でも、何名か都市伝説契約者が存在したようです…最も、今の当主や当主代行は、都市伝説の存在こそ知っていますが、契約はしていないようです」
その方が良いのでしょうが、とため息をつく盟主
都市伝説との契約
…それが、必ずしも良い方向に動くとは限らない
ならばいっそ、契約などしない方が幸せな事も多いのだ
……特に、この学校町においては
都市伝説との契約
…それが、必ずしも良い方向に動くとは限らない
ならばいっそ、契約などしない方が幸せな事も多いのだ
……特に、この学校町においては
「…しかし、盟主よ。突然、どうしたのだ?そのような話をして」
「かつての日景家の当主が契約していた、小瓶の中の魔人が問題なんです。契約者が死亡したことにより、当然、契約は解除されていますが…その小瓶自体は。つまり、都市伝説自体は、まだあの家にあると聞いています」
「かつての日景家の当主が契約していた、小瓶の中の魔人が問題なんです。契約者が死亡したことにより、当然、契約は解除されていますが…その小瓶自体は。つまり、都市伝説自体は、まだあの家にあると聞いています」
ほぅ?と声をあげる将門
…かつて、日景家の当主の願いをかなえたと言う、その都市伝説
どんな都市伝説かは知らないが、盟主の言葉を聞いた限りでは、契約者の願いをかなえる能力でも持っていたようだ
もっとも、その能力には、代償が存在する可能性も否定はできないが…
だが、どちらにせよ
…かつて、日景家の当主の願いをかなえたと言う、その都市伝説
どんな都市伝説かは知らないが、盟主の言葉を聞いた限りでは、契約者の願いをかなえる能力でも持っていたようだ
もっとも、その能力には、代償が存在する可能性も否定はできないが…
だが、どちらにせよ
「その都市伝説が、願いを叶える存在であるならば…あの男の狙いに、それが含まれる可能性もある、か」
「そう言う事です。まぁ、朝比奈 秀雄が、日景家のその都市伝説の存在を知っているかどうかは、わかりませんが…」
「そう言う事です。まぁ、朝比奈 秀雄が、日景家のその都市伝説の存在を知っているかどうかは、わかりませんが…」
ふむ……と、思案している様子の将門
日景家の、願いを叶える都市伝説
…あの黒服は、それを把握しているのだろうか?
確認をとる必要が、ありそうだ
日景家の、願いを叶える都市伝説
…あの黒服は、それを把握しているのだろうか?
確認をとる必要が、ありそうだ
「盟主よ、有益な情報、感謝する」
「そうですか。では、とっとと帰りやがりなさい、落ち武者。いつまでもここにいられては迷惑です」
「そうですか。では、とっとと帰りやがりなさい、落ち武者。いつまでもここにいられては迷惑です」
盟主の、その棘を含んだ言葉に
くっく、と将門は、笑う
くっく、と将門は、笑う
「おや、そこまで嫌う事はなかろう?」
「そこにいるだけで空気が悪くなるんですよ。どれだけ怨念を背負っているんですか、あなたは」
「そこにいるだけで空気が悪くなるんですよ。どれだけ怨念を背負っているんですか、あなたは」
祟り神、平将門
その身は、常に無数の怨念を背負っている
人間ならば、耐性がなければ、体調を崩してしまいかねないほどである
盟主の言う空気が悪くなる、と言うのも、あながち間違いではない
…正直、「首塚」の側近組や保護されている者たちが将門に慣れている、あの現状が異常なのだ
その身は、常に無数の怨念を背負っている
人間ならば、耐性がなければ、体調を崩してしまいかねないほどである
盟主の言う空気が悪くなる、と言うのも、あながち間違いではない
…正直、「首塚」の側近組や保護されている者たちが将門に慣れている、あの現状が異常なのだ
「やれ、仕方ないな…では、帰るとするか」
「えぇ、とっとと帰りなさい」
「…近頃、強き者を相手に、問答無用で勝負を挑んでくる者がいるそうだ。お前も気をつけた方が良い」
「あなたに心配されなくとも、気をつけますよ。その話も知っていますから」
「えぇ、とっとと帰りなさい」
「…近頃、強き者を相手に、問答無用で勝負を挑んでくる者がいるそうだ。お前も気をつけた方が良い」
「あなたに心配されなくとも、気をつけますよ。その話も知っていますから」
そうか、と将門は笑う
相変わらず、気の強い女だ
……だからこそ、気にいっているのだが
相変わらず、気の強い女だ
……だからこそ、気にいっているのだが
とまれ、将門は盟主の言葉に従い、立ち去ろうとした
…だが、その時
感じた、覚えのある気配
…だが、その時
感じた、覚えのある気配
「……盟主よ」
「……えぇ」
「……えぇ」
盟主も、この気配の主がわかったのだろう
悪魔の、囁き
ゆらり
墓場に現れた…西洋人の、男性
都市伝説契約者の気配がする
そして……その、内側に
悪魔の囁きが憑いている、気配も
墓場に現れた…西洋人の、男性
都市伝説契約者の気配がする
そして……その、内側に
悪魔の囁きが憑いている、気配も
将門は、刀の柄に手を当てた
悪魔の囁きは、敵だ
己の部下を苦しめている者の、契約都市伝説
刀を抜ける条件は、整っている
盟主もまた、その男を警戒し…いつでも攻撃できるよう、構えていた
悪魔の囁きは、敵だ
己の部下を苦しめている者の、契約都市伝説
刀を抜ける条件は、整っている
盟主もまた、その男を警戒し…いつでも攻撃できるよう、構えていた
…じゃり、と
男が、墓場に入り込んでくる
真っ直ぐに、真っ直ぐに
将門と盟主を…
男が、墓場に入り込んでくる
真っ直ぐに、真っ直ぐに
将門と盟主を…
否
盟主を、目指して
「……レディ!!」
盟主を見つめながら、歩み寄り
そして、男はこう、口にする
そして、男はこう、口にする
「麗しき、汚れなきレディよ!!俺に膝枕をしてくれ!!」
「お断りします」
「お断りします」
きっぱり
目の前までやってきた、その男に
盟主はきっぱり、即答した
その間、約0.1秒
素晴らしき即答である
目の前までやってきた、その男に
盟主はきっぱり、即答した
その間、約0.1秒
素晴らしき即答である
「何故!?」
「と、言うか、物理的に無理です」
「と、言うか、物理的に無理です」
すぅ……と
すぐ傍の墓石を、透過してみせる盟主
彼女の体は霊体だ
ポルターガイスト能力の応用で、実体のある物を動かす事は、できる
……しかし
その体は、実体ある者に触れる事は叶わないし、触れられる事もない
…………あぁ、いや
以前、なぜか触れる事ができた女医が存在した事はさておき、だ
すぐ傍の墓石を、透過してみせる盟主
彼女の体は霊体だ
ポルターガイスト能力の応用で、実体のある物を動かす事は、できる
……しかし
その体は、実体ある者に触れる事は叶わないし、触れられる事もない
…………あぁ、いや
以前、なぜか触れる事ができた女医が存在した事はさておき、だ
墓石を透過してみせた、盟主の様子に
しかし、男は食い下がる!!
しかし、男は食い下がる!!
「いや!!きっとできる!できるはずだ!と、言う訳でお願いしまごはっ!!??」
どごっ!!
突如、現れた、角生えた純白の馬
それが、西洋人男性を、突き飛ばした
…盛大に頭から落下しているように見えたが、はて、生きているだろうか?
突如、現れた、角生えた純白の馬
それが、西洋人男性を、突き飛ばした
…盛大に頭から落下しているように見えたが、はて、生きているだろうか?
ひひん、と
馬は、小さく嘶いて
盟主の目の前で、跪く
馬は、小さく嘶いて
盟主の目の前で、跪く
「がっは………。……っの、エロホース!いきなり突き飛ばすのはやめろって言ってるだろ!!」
すぐに復活して、戻ってきた西洋人男性
…何故、このような変態は、復活が早いのだろうか
…何故、このような変態は、復活が早いのだろうか
ひひひん
「何?自分なら霊体でも触れるから膝枕してもらえる?…くそ、俺との契約で得た力だろ、ソレ!俺に感謝して先に譲れ!」
ひひん
何やら、言い争いを始めた西洋人男性と白馬
さて、一体、どのような能力者かは、わからないが…
将門がすべきことは、決まっていた
さて、一体、どのような能力者かは、わからないが…
将門がすべきことは、決まっていた
「っ!?」
向けられた、刀に、殺意に
西洋人男性と白馬が、盟主から距離をとった
将門が、男と盟主の間に、立つ
西洋人男性と白馬が、盟主から距離をとった
将門が、男と盟主の間に、立つ
「…引くが良い。異国の者よ。我の女を渡しはせぬぞ」
「いつ、誰があなたのものになりましたか」
「いつ、誰があなたのものになりましたか」
にっこりと、将門の背後で盟主が怒っているのだが
声からその怒気を感じつつも、将門は気にしていなかった
そのうち、自分のものにする予定なのである
なんら、問題はあるまい
声からその怒気を感じつつも、将門は気にしていなかった
そのうち、自分のものにする予定なのである
なんら、問題はあるまい
「何だとっ!?…汚れなき処女に相手がいた、だと…!?」
「違います、誤解しないでください」
「違います、誤解しないでください」
西洋人男性の叫びに、盟主がますます、不機嫌になっているのだが
しかし、男はそれに気づいていない
しかし、男はそれに気づいていない
「…と、言うか。このレディが霊体ならば、お前も触れないんじゃ…」
「我は祟り神……霊体をとれぬとでも、思うか?」
「我は祟り神……霊体をとれぬとでも、思うか?」
くっくと笑い、将門は盟主がしたように、その片手を軽く、墓石に透過してみせた
…霊体同士ならば、当然、触れ合える
当然、膝枕以上のことも、行えるわけで
…霊体同士ならば、当然、触れ合える
当然、膝枕以上のことも、行えるわけで
「ぐ……!ユ、ユニコーン!!汚れなき乙女を護る為、こいつを倒すぞ!!そして、膝枕ゲット!!!」
「くっかかかかかか!!我を倒す!?身の程をわきまえるが良い、異国の契約者よ!我を倒すと言うのならば、その命、捨てる覚悟があるのだろうなぁ!?」
「………だから、あなた達」
「くっかかかかかか!!我を倒す!?身の程をわきまえるが良い、異国の契約者よ!我を倒すと言うのならば、その命、捨てる覚悟があるのだろうなぁ!?」
「………だから、あなた達」
ばち
ばち、ばちっ、と
そんな音が、聞こえてきて
ばち、ばちっ、と
そんな音が、聞こえてきて
「----何を、勝手に話を進めているのですか!!」
ばちぃんっ!!!と
リミットブレイクゲージがMAXまで溜まったらしい、盟主が放った、特大のプラズマが……将門と、西洋人男性、そして白馬に、問答無用に襲い掛かった
リミットブレイクゲージがMAXまで溜まったらしい、盟主が放った、特大のプラズマが……将門と、西洋人男性、そして白馬に、問答無用に襲い掛かった
「…盟主よ。折角、悪魔の囁きを切ろうとしたと言うのに、逃げられたではないか」
…プラズマが消えた、その時
西洋人男性と白馬は、姿を消していた
逃げ足はかなり早いようだ
そして、プラズマの直撃を受けたはずの、将門は
西洋人男性と白馬は、姿を消していた
逃げ足はかなり早いようだ
そして、プラズマの直撃を受けたはずの、将門は
「…何故、無傷なのですか、この落ち武者」
「くっかかか!だが、あれは流石に効いたぞぉ?」
「くっかかか!だが、あれは流石に効いたぞぉ?」
楽しげに笑う将門
どうやら、身にまとう怨念で、プラズマを防いだようだ
どうやら、身にまとう怨念で、プラズマを防いだようだ
…っち、もっと手加減なしでやれば良かったか
盟主はこっそりと、そんな事を考える
………いや、そんな事をしたら、墓地が破壊されるから、駄目か
盟主はこっそりと、そんな事を考える
………いや、そんな事をしたら、墓地が破壊されるから、駄目か
「あれも、悪魔の囁きがかなり深く憑いていたな」
「……そうですね。長く憑かれている所を見ると、朝比奈 秀雄の部下なのかもしれません」
「ふむ…その可能性も、あるか」
「……そうですね。長く憑かれている所を見ると、朝比奈 秀雄の部下なのかもしれません」
「ふむ…その可能性も、あるか」
かきん、と
将門は、刀を鞘に収める
将門は、刀を鞘に収める
「次に会った時は、問答無用で切れば良いな」
「放ってはおけませんからね……まったく、厄介なものです」
「放ってはおけませんからね……まったく、厄介なものです」
この時の、盟主のため息の中には
朝比奈の部下の厄介さに加えて…この祟り神を黙らせるには、どうしたらいいだろうか、という
そんな悩みもまた、込められていたのだった
朝比奈の部下の厄介さに加えて…この祟り神を黙らせるには、どうしたらいいだろうか、という
そんな悩みもまた、込められていたのだった
終われ