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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-54h

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 繁華街を、二人の男が歩いている
 どちらも、黒いスーツを身に纏い、サングラスをかけている
 オールバックの髪形の方が少し背が高く、重たそうなスーツケースを持ち歩いていて
 もう一方、短髪の男は、そんな物は持っておらず、身軽な様子だ

 オールバックの男は、周囲からこう呼ばれる
 D、と
 短髪の男は、周囲からこう呼ばれる
 H、と

「そう、ですか…影守さんが」
「あぁ。まぁ、命に別状はないらしいがな」

 Dは、Hから「かごめかごめ」の契約者が、朝比奈 秀雄と交戦し、負傷したのだと言う話を聞いていた
 命に別状はないという事にはほっとしたが、やはり心配だ
 後で、見舞いにでも行こうとDは考える

「炎……ですか」
「多分、朝比奈 秀雄の三つ目の都市伝説の能力だろうな。悪魔の囁きにもクールトーにも、炎を吐くなんて能力はないはずだろ?」
「ですね。クールトーに、ブラックドッグの伝承が混ざってしまっているなら、別ですが…」
「どっちも犬関連ではあるけど、混同するにゃあ無理があるからな。それは考えない方がいいだろ」

 Hの言葉に、そうですね、と頷くD
 …朝比奈の、第三の都市伝説の正体
 それを、早く掴まなければ
 被害者が増える前に、何とかしたい
 それが、Dの考えだ

「…お前さん、無理するなよ?正直、あのおっさん戦闘能力高すぎだろ。戦闘向きの都市伝説とでも契約していない限り…いや、それでも、勝ち目は薄いぜ」

 考え込んで入る様子のDに、そう告げたH
 Hの言葉に、そうかもしれせんが、とDは答える

「それでも、何も手を打たないわけには、いきませんから」
「お前さんの場合、契約者が狙われてるから余計、だろ?」

 はい、と正直に頷いてきたD
 …正直な男だ、とHはそう考える
 ある意味で、こちらが信用されている証拠でもある
 ……自分は、この善良な慈悲深い男に信用される資格などないような、大嘘つきの大悪人であると言うのに
 Dに気づかれないよう、自嘲気味にHは笑った

 せいぜい死なないように頑張れ、と
 そう声をかけようとした、その時

「…おや、橘野さん」
「あ、黒服さん」

 おや
 どうやら、Dの知り合いのようだ
 高校生らしい少年と顔を合わせて、Dが小さく、頭を下げている
 Dは、「組織」内において、扱いにくさが禿についでトップクラスと言われている某契約者を担当しているから、他の契約者は担当していない
 恐らく、「組織」外での知り合いか、もしくは「組織」内の者だとして、合同任務か何かで知り合った相手だろう、と認識する

「知り合いか?」

 そう判断しつつも、Hは一応Dに尋ねた
 はい、とDは頷いてくる

「橘野さんも、「組織」の契約者です……私としましては、まだ学生の身分である彼には、あまり「組織」の仕事を任せるべきではないと思うのですが…」

 こいつらしい意見だ
 Hはそう感じた
 …Dは、決して、橘野というこの少年が学生だから実力に不安がある、という意味でそう言ったのではない
 時として…いや、かなりの高確率で、汚れ仕事となる「組織」の仕事
 それを、未成年にさせたくないのだろう
 本当に、どこまでも優しい男だ
 「組織」の黒服らしくない

 橘野、という名前らしい少年は、Hに視線を向けて、首を傾げてきた

「えぇと、そちらは…」
「彼は、私と同じ「組織」の黒服です」

 ……同じ、か
 二人に気づかれぬよう、Hはこっそりと、自嘲した笑みを浮かべた
 同じ?
 違う
 自分とDでは、あまりにも違いすぎる
 自分は化け物に成り果てたが…Dは都市伝説に飲み込まれてもまだ、人間らしい存在だ
 自分とは、あまりにも違いすぎる

「そう言うこった。よろしくな、坊や?」

 そんな考えはおくびにも出さず、こう言って笑うH
 はぁ、と橘野がやや、途惑ったような表情を浮かべてきた
 …この、反応
 恐らく、この少年を担当している黒服は、純粋な「組織」の黒服である可能性が高い
 感情の薄い、元人間ではない、黒服である可能性が

「………と、すみません。私はこれで…」
「ん、あぁ。相変わらず忙しい男だな。ちったぁ休めよ?」

 誰かと会う約束でもしていたのだろうか
 時間を確認して、慌ててこの場を立ち去ろうとするD
 …その、直前
 橘野に、どこか心配しているような視線を向けていた

「先日の任務の際、お体を痛めていらっしゃったようでしたが…もう、大丈夫なのですか?」
「え、あ……い、いえ、あれはただの筋肉痛ですから。大丈夫ですよ」

 わたわたと、慌ててそう返している橘野
 良かった、とDはほっとした笑顔を浮かべていて

 …その、笑顔に
 複雑そうな表情を浮かべている、橘野
 その様子を見て…ふと
 Hの中に、悪戯心が芽生えた

 立ち去るDを見送って
 くっく、と笑いながら、Hは橘野に視線をやった

「…変わった奴だろ?」
「え?」
「あいつ。黒服らしくねぇだろ?」

 Hの、その言葉に
 橘野は、複雑そうな表情を浮かべて…答えてくる

「…優しい人、だと思います」
「だろ?まぁ、あいつは元人間だからな。人間時代から、あんな感じだったらしいぜ?」

「…元、人間…」

 考え込んでいる様子の橘野
 …やはり、元人間の黒服との接触経験があまりないか
 ニヤリ、Hはますます悪戯心を働かせた

「俺も、元人間だけどよ。その俺から見ても、あいつは優しいし人間らしいと思うぜ」
「あなたも、以前は人間だったのですか?」
「あぁ」

 …そう
 かつては、人間だった
 今は、都市伝説に飲み込まれて化け物と化してしまったけれど
 ……自分は、人間だったのだ

「えぇと…あなたの、ナンバーは…」
「H-No.360だ。Hナンバーはほとんどいねぇからな。Hとでも呼んでくれや」

 もしくは、と
 Hはにやり…ひどく意地悪く、笑った

「広瀬 宏也。こっちの名前で呼んでくれてもいいぜ?」
「……え?」

 きょとんとした橘野
 あぁ、楽しい
 くっくっく、とHは笑い続ける

「広瀬 宏也。人間としての俺の名前さ」
「人間として、の…?」
「あぁ。身分証明とかする時、Hとか、ナンバーで名乗る訳にもいかねぇだろ?だから、ちゃんと人間としての名前も用意されてんだよ」

 ほら、と身分証を見せてやる
 Hがもつそれには、確かに「広瀬 宏也」と書かれていた

「ま、俺の場合、偽名だがね。人間の頃の名前は忘れちまったから」
「そう、ですか…」
「Dの場合、大門 大樹って名前を名乗ってるが、あっちは人間だった頃の名前らしいな」

 …もっとも
 それが人間の頃の名前だった、と思い出したのは、彼が契約者を得てからの事
 彼は、無意識に人間だった頃の名前を覚えていて、それを人間としての名前に選んでしまったのだ
 名前を思い出した今となっては、それを偽名ではなく本名として、きちんと認識しているらしい

 ……DとHの、人間としての名前を知って
 橘野が、途惑ったような様子を、見せたのが
 Hは、楽しくて楽しくて、仕方ない

 この少年の担当契約者は、感情のない、面白味の一切存在しない「組織」の黒服なのだろう
 あの連中は、人間としての名前も持っていない奴も多い
 …だから
 そんな黒服とばかり、接し続けてきた少年が
 自分達のような、元人間の黒服と接触したら
 そうして、そんな自分達の、人間らしい部分を見たら
 …自分の担当黒服を、どう見るようになるか?
 彼は、その様子を見るのが酷く楽しくて仕方なかった
 意地が悪い、とそう言う自覚はある
 しかし、やめられないのだから、仕方ない

「お前さんを担当してる黒服が、どんな奴かは知らねぇが」

 嘘だ
 いや、半分嘘ではないか
 所詮、予想にすぎないから
 だが、わかる
 自分達の名前を聞いて、途惑ったような様子を見せた橘野

 さぁ、こいつはこれから
 自分の担当者を、どう見るだろうか?

「あいつは、お人好しで善良だからな。自分を担当してる奴に相談できない事でも、悩み事があったら相談するにいい相手だと思うぜ?」
「そうなんですか?」
「あぁ。ただし、あいつは「組織」内過労死候補ナンバー1と呼び名が高いからな。相談タイミングを考えないと、過労でぶっ倒れる可能性も高いが」
「…それって、相談するの申し訳ないと言うか躊躇いますよ!?」
「大丈夫だ。少なくとも、あいつは気にしない。親身になって相談してくれるだろ」

 耳に心地よい突っ込みの言葉を聞きながら
 Hは、これからのこの橘野という少年の変化の可能性を、どこか意地悪に、楽しみに思うのだった



to be … ?



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