「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-53b

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 …日景家の門構えは、かなり大きい
 門の向こう側に、古い日本式建築の大きな屋敷が見える
 古くから続く旧家に相応しい貫禄が、そこにはあった
 その前に立ち、黒服は隣に立つ翼のちらり、視線をやった

「どうしましたか?翼」
「…いや、その」

 やや、緊張している様子の翼
 そんな翼に、黒服は小さく苦笑した

「日景家がどのような家だとわかったからと言って、緊張する必要はないでしょう。宗光さん達も、それは望まないでしょうし」
「…あぁ」

 だよな、と
 軽く頭を振って、気持ちを切り替えた様子の翼
 大きな門をくぐりぬけ、中に入っていく
 黒服も、その後をついていって

「………?」

 …かすかに
 翼が契約しているのとは…別の、都市伝説の気配を感じた
 あの、屋敷からだ
 悪意を感じる気配ではないが…

「大樹?どうしたんだ?」
「いえ、なんでもありません」

 気のせい、だといいのだが
 そう考えながら、翼の後をついていく

 …てん
 てん、と
 鞠をついている音が、聞こえてくる
 てん、てん、と
 屋敷の広い前庭で、小さな子供が鞠をついて遊んでいた
 小学校低学年くらいだろうか
 和服の似合う、可愛らしい子供だ
 その子供は、敷地内に入ってきた黒服と翼に気づくと、鞠をつくのを止めて視線を向けてきて
 ………ぱぁ、と
 瞳を、輝かせてきた

「翼にーちゃん!」

 てちてちてち
 鞠を抱えて、子供が走ってくる
 タックルするように駆け寄ってきたその子供を、翼は抱きとめてやっている

「よぉ、武。爺ちゃん、起きてるか?」
「ううん、調子悪いって言って寝てるよ。でも、翼にーちゃんが来たなら、調子悪いの忘れて起きてくるよ!」

 翼の問いかけに、無邪気にそう答える子供
 …翼が「武」と呼んだ辺りを見ると、少年だったようだ
 武は、じ、と黒服を見上げてきて…首を傾げてくる

「だーれ?」
「あ、私は…」
「ほら、前に話しただろ?俺の大事な奴だよ」

 黒服の言葉を遮って、そう答えた翼
 その答えに、武はまた、きょとん、と首をかしげて………
 …うん、と、何やら納得した表情を浮かべてきた

「武、おじさんいるか?」
「おとーさんは、わかがしらって人がお客さんで来てるから、その人の相手してるよ。おじーちゃんに用事あるなら、おばーちゃん呼んでこようか?」
「あぁ、頼んだ」

 わかったー、と、武がてちてち、屋敷に向かって走っていく
 その後ろ姿は、女の子にしか、見えない

「…翼、あの子は」
「ん、おじさんの息子さん。ここで世話になってた時遊んでやってたから、懐かれてて」

 そうですか、と黒服は納得した
 翼はわりと年下相手に面倒見がいいから、懐かれすい面がある
 あの子供にも、そうやって懐かれたのだろう

 玄関に二人で向かうと……からからと、戸が開き、上品な老婦人が、顔を見せた
 老婦人は翼に視線をやり、微笑む

「いらっしゃい、翼さん……そちらの方は」
「……はじめまして。大門 大樹と申します」

 小さく、老婦人に頭を下げる黒服
 あら、と老婦人は微笑んでくる

「もしかして、翼さんがいつも言っている大事な方かしら?…ふふ、あがってくださいな。主人も、すぐに起きてきますから」

 微笑みながら、二人を促してきた老婦人
 屋敷に上がらせてもらいながら…はて、翼は、この家の人間に、自分のことをどう、話していたのだろう、と
 黒服は、若干、不思議に感じたのだった



 奥の座敷に通され、二人で待っていると…小さく、足音が聞こえてきて
 そして、静かに障子が開けられて……その人物が、姿を現す
 どこか風格ある老人…彼が、日景家現当主 日景 宗光だ

「爺ちゃん、久しぶり、おきて大丈夫なのか?」
「あぁ、今日は少し具合が良くてな」
「…今朝は、調子が悪い調子が悪い、って仰っていたじゃありませんか」

 くすり、宗光の後をついてきた老婦人…日景 千鶴が小さく苦笑する
 宗光は、見たところ、特に体の調子が悪そうには見えない
 翼の言う通り、気持ちが弱っているだけで、実際には体の調子は悪くないのだろう
 少なくとも、黒服にはそう見えた

 翼に、祖父としての顔を向けていた宗光
 つ、と黒服に、視線を向けてくる

「…あなたが、いつも翼が話していている…」
「大門 大樹です。翼には、いつも世話になっています」

 そう言って、小さく頭を下げる黒服
 翼が、慌てて口を開く

「っちょ。大樹…世話になってんのは、俺の方だよ」

 翼はこう言ってくるが、家事はほとんど翼や望達に任せきりなのだし
 黒服としては、翼達に世話になっている、という感覚の方が強いのだ
 二人の様子に、宗光はやや、複雑そうな表情を浮かべてきた
 「やはり、あのろくでなしな娘のせいで女嫌いになってしまったのか………いや」などと小さく呟いているのだが、幸いと言うか何というか、その呟きは翼と黒服の耳には、届いていない

「…とりあえず、爺ちゃんが元気そうで、良かったよ」
「いつも、こうなら良いのだけどな。どうにも歳のせいか調子が」
「朝食に二杯もご飯をお変わりする人が何を言いますか。あなたはまだまだ50年は生きられますよ」
「…千鶴や、お客さんの手前、もう少し気遣ってくれても良いのではないか?」

 千鶴の笑顔での言葉に、ややいじけている様子の宗光
 その様子には、威厳ある旧家の当主という風格は、やや薄い
 ………対外的にはともかく、普段はこのような感じなのだろう
 長く続く旧家の当主といえど、一人の人間である事に変わりはないのだ
 祖父母のこんなやり取りに、宗光があらためて、体調に問題を抱えていない事を確認できたのだろう
 翼が、ほっとしたような笑みを浮かべる

 …そして、
 一瞬、表情を暗くして
 しかし、宗光達を心配させない為か、その暗さを振り払い、彼らに尋ねる

「…その、爺ちゃん、婆ちゃん。最近、俺の親父かお袋、爺ちゃんたちを訪ねてこなかったか?」

 翼の、その問いかけに
 宗光も千鶴も、不思議そうな表情を浮かべてきた

「いや、マドカも秀雄君も、ここ数年間、本家にも分家にも来ていないが」
「秀雄さんの姿なんて、マドカを家から追い出したとき以来、見ていないわねぇ」
「そうか……」

 ほっとした表情を浮かべる翼
 マドカはともかく、秀雄が日景家に何かしてはいないか、心配だったのだろう

「秀雄さん達が、どうかしましたか?」
「い、いや、何でもない」

 千鶴に尋ねられ、慌てて首を左右に振る翼
 都市伝説の事を知らないだろう宗光たちを、事態に巻き込みたくないのだろう

 …黒服は、「組織」に、朝比奈 秀雄の狙いが翼である事
 そして、その目的が日景家に関係してあるであろう事は……報告、していない
 それを報告する事によって、「組織」の手が翼や日景家に必要以上に介入する事を、恐れてだ
 今現在、穏健派が「組織」の主導権を握っているとはいえ、強硬派や過激派が動くとも限らない
 ……だが、そのせいで、「組織」の者を、日景家に警護に漬けられないのも、事実
 黒服としては、それが酷く、歯痒い

 …そうして、黒服が悩んでいると
 そっと、部屋の襖が、開いた
 ひょこり、武が部屋を覗いてきている

「翼にーちゃん、おじーちゃんが元気なのわかったでしょ?遊んでよー」
「武、お前はもうちょっと、爺ちゃんを心配してやれよ」

 カケラも宗光を心配していない様子の武に、翼は小さく苦笑した
 そして、ちらり、宗光に窺うような視線をやる

「わしは、久しぶりにお前の顔が見られただけで充分だよ。武と遊んでやってくれるか?」
「わかった……ほら、武、行くぞ?」
「わーい!」

 嬉しそうに、翼に飛び掛った武
 翼は、そんな武の体を軽くキャッチし、部屋から連れ出す

「あ、大樹、その…」
「…あぁ、翼。わしらが、大門さんに話があるでな…少し、この人を借りるぞ?」

 宗光の言葉に、翼が首をかしげる
 翼が心配そうな視線を向けてきたので、黒服は軽く微笑んで見せた

「私も、宗光さん達に少々お話がありますので…問題ありませんよ」
「そうか?…なら、いいんだけどよ」
「翼にーちゃん、早くー!」

 武に急かされ、引っ張られていく翼
 ぱたぱたと、足音が遠ざかっていく

 …しぃん、と
 部屋の中が、静まり返った

「……いい子でしょう、翼は。あんなロクでなしの娘から生まれたとは、思えません」

 初めに口を開いたのは、千鶴
 小さく苦笑し、そう言って来た

「そうですね…あの子は、いい子です」

 千鶴の言葉に、そう答えた黒服
 時折、若干頭が足りない部分はなきにしもあらずだが、翼はいい子だ
 その認識は、初めに翼と出会った時から、何一つ変わっていない

「マドカが、息子を生んだ事は知っていた。だが、会える事はないだろうと思っていたから…正直、ここを尋ねてきた時は、驚いたものだ」

 ふぅ、とため息をつく宗光
 彼らにとっては、会う事はないだろうと思っていた孫が尋ねてきてくれたのは嬉しいが…勘当した娘が、また色々とやらかした事実が、頭に痛いらしかった

「お話を聞いた限りでは、私のことは、翼から窺っていらっしゃったようですが…」
「あぁ。翼は、あなたの事ばかり話すのだよ……マドカと秀雄君の話など、ほとんど話した事がない。大半が、あなたのことか、友人達のことばかりだ」

 再び、ため息をつく宗光
 その表情に、やや影が混じる

「…朝比奈 秀雄。マドカの見合い相手として連れてきた時……マドカと会わせた事を、一瞬、後悔した。それほどまでに、野心の強い男だった。だが、連れて来た手前、マドカが彼を選んだ事を、否定する事はできなかった」
「その結果、二人の間に生まれた翼さんには、随分と辛い思いをさせてしまったようです」

 千鶴も、ため息を吐く
 …娘はともかく、孫の事はずっと心配だったらしい
 あの二人の下、翼がどう育つのか、不安だったのかもしれない
 ……もっとも、翼本人は、「俺の両親なんかよりも、もっと酷い親から生まれちまった奴もいるんだから」と、己の生まれの不幸を、不幸ではないと考えるようになっていた
 …望の親の事を、考慮してなのかもしれない

「…それでも。あの子は、明るく良い子に、育ってくれましたよ」
「あなたのおかげもあるのだろう。翼は、あなたに世話になったと、あなたのお陰であの二人の下で耐えられた、とそう言っていたからな」

 そう言って、宗光はやや羨ましそうに、黒服に視線をやった
 実の祖父母である自分達よりも、この黒服が頼られている事実が、羨ましいようだ

「それで。あなたは、わしらに話があるようだが」
「はい……その、翼の両親。特に、朝比奈 秀雄の事で、少々」

 黒服の言葉に、宗光はふむ?と関心を向けてきた

「秀雄君が、何か?」
「…もし、彼があなた達に面会を申し出てきた、としても…出来る事ならば、断っていただきたいのです」

 単刀直入に、そう告げた黒服
 その黒服を、宗光は真正面から見つめ返す

「それは、何故?」
「…無礼は承知です………ですが、少々…あの子が、日景の姓を名乗っている事で、問題が」

 黒服が、そう告げたことで
 彼が何を言わんとしているのか、わかったのだろう
 宗光が、沈痛な表情を浮かべた

「……秀雄君は……まだ、この家の持つそれに、未練があるのか」
「…………そのようです」

 この事実を伝えるのは、黒服としても、心苦しい
 だが、せめてその点だけは伝えなければ、秀雄との接触を阻止する事ができないと判断したのだ

 朝比奈 秀雄と、日景家の人間との接触は、出来る限る避けるべきだ
 朝比奈 秀雄が、その野望をかなえる上で宗光達の存在はどうしても邪魔になる
 彼が、日景家の人間に害を与えないと、言い切ることなど到底できない
 だからこそ、警戒しておくべきなのだ

「…翼は、この家が、どう言う家なのか」
「伝えました。私から」

 黒服の言葉に、そうか、と頷いた宗光
 黙っていても、いずれ知るだろうと、そう感じていたのだろう

「……翼を、どうしても人の醜さが浮き彫りになる当主争いには、巻き込みたくなかった。だから。家の事を知らなかった翼に、その事は何も話さずにいたのだが…結局、巻き込んでしまうか」
「…あなた」

 宗光に、気遣うような声をかけた千鶴
 大丈夫だ、と宗光は小さく首を振った

「…千鶴や……「アレ」を、持ってきてくれるか?」
「…!………よろしいのですか?」
「翼が信用している相手だ。問題あるまい」

 宗光の言葉に、わかりました、と立ち上がる千鶴 
 静かに、部屋を後にした

「…大門さんや……これから話す事は、少々、現実味の薄い話だ。信じてくれんでも構わない…ただ、そう言う事実が存在している、ただ、それだけの事なのでな」
「…それは、どう言う…?」
「………都市伝説、と言うのを、ご存知かね?」

 宗光が口にした、その言葉に
 黒服は、体を強張らせた

「都市伝説……ですか?」
「あぁ、最近は、そう呼ばれるらしい。昔は怪談とか言ったものだが、最近は色々な呼ばれ方をしているものだ」
「…それが………何か」
「それらは、実在している………それを、わしらは認識しておる。世間で話されているその全てが実在しているかどうかはともかく…そうやって人に語られる不可思議な存在、それが、ある程度実在している事を、知っておる」

 …千鶴が、部屋に戻ってきた
 何か、布で包まれた……小さな物を、持ってきて
 それを、そっと、黒服と宗光の間を隔てるテーブルの上に、置いた

「何故、それを認識しているか?……日景家では、それを所有しているからだ」
「…………!!」

 目の前に置かれた、布で包まれた、それ
 それから感じる、強い、強い都市伝説の気配に、黒服は一瞬、眩暈を覚えた

 この屋敷の門をくぐった時に、感じた都市伝説の気配
 それは…………これだ

「…これが、その都市伝説だと?」

 動揺を押し隠し、そう尋ねる黒服
 あぁ、と宗光は頷いた来た

「そうだ。日景家が栄えるに至った、そのはじまり。日景家の至宝にして、この家の始まりの全て」

 する、と
 宗光が、布を取り払っていく


 現れたのは
 中身の見えない……小さな、小瓶


「願いかなえる小瓶の魔人………イフリート。それが、我が日景家で所有し、封印している都市伝説だ」


 目の前に現れた、神話級一歩手前の強さを感じる、都市伝説
 それを前に…黒服は、意識を引きずられぬようにするので、精一杯だった






to be … ?





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