アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-72g

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
「おなかすいたー」
「っちょ、こら、待て。まだそれ火ぃ通ってねぇっつの!」
「だいじょうぶー。ウマー」
「大丈夫じゃない、豚肉は生で食うなっ!?」

 キッチンから、賑やかな声が聞こえてくる
 あぁ、もう、またか
 「死人部隊」と契約している中年は小さくため息をつくと、キッチンに向かい、翼から調理中の豚肉を奪おうとしている「一年生になったら」の契約者を摘み上げた

「調理中に邪魔したら危ないだろうが」
「おなかすいたー」

 怒られても、ただひたすら空腹を訴える子供
 なんと言う暖簾に腕押し
 じたばた、じたばた
 中年に摘み上げられた状態で、子供は翼の調理中の、その料理を狙っていて
 翼は小さく苦笑すると、既に出来ていて、タッパ詰めする為に覚ましている最中だった煮付けを差し出してやる

「ほら、これ食べてろ」
「メシウマー」

 もっもっもっもっもっ
 いい勢いで、煮付けを食べていく子供
 相変わらず、見事な食欲だ

「いつも悪いな」
「いいんだよ。お前に料理教える時間惜しいし」

 それは、つまり教えるのに時間がかかるという事か
 こちらの覚えが悪いとでも言いたいか
 ……いや、何度か簡単な料理を教えられつつも、食事をカップ麺やら冷凍食品やらレトルトやらですませ続けたのは自分だが

 「顎砕き飴」の騒動以降、翼は中年と子供の元に顔を出しては、何日か分の食事を作って、温めれば食べられる状態にして冷蔵庫にいれていっている
 気を許した相手にはどちらかと言うと甘いし、そうでなくとも、子供には甘い翼
 「一年生になったら」の子供が、いつも「おなかすいた」と言い続けている様子などを見て、気にしていたようだ
 …まぁ、それだけではなく、「成長期の子供に食品添加物どれだけとらせてんだ」と言う突っ込みもあっての事のようだが

(……いや、それ以外にも、理由がありそうだが)

 母親の手料理なんて食べた事がない、と以前、翼が漏らしていたのを聞いた事がある
 いつも、カップ麺やら冷凍食品ばかり食べさせられていた、と
 ……自分のような体験を、子供にさせたくないのかもしれない、翼は

「………っと、これで良し」

 …中年がぼんやりと考えているうちに翼は調理を終えたようだった
 なお、子供も、鍋一杯にあったはずの煮付けをぺろりと完食している

「これは、今夜中に温めて食べた方がいい。それ以外の料理はいつも通り冷蔵庫と冷凍庫に入れておいたから、温めたり解凍して食べろよ」

 エプロンを外しながらそう言って来た翼に、わかった、と頷く
 鍋一杯の煮つけを食べきったにも関わらず、「おなかすいたー」と言い続ける子供には、ひとまず買い置きのバナナを一房与えて黙らせる事にする
 ひとまず、食べている間は大人しくなるから

「今日もこれからバイトか?」
「いや、今日は店の方が臨時の休みだからバイトねぇんだ。だから、少し買出しして帰るよ」

 料理を始める前に掃除したリビングを横切り、玄関に向かう翼
 ……ちなみに、リビングは確かにしっかりと掃除したはずなのだが、既に死人達が遊んだり何だりで若干散らかっている
 その事を翼が何も言わないのは、いい加減慣れたという事か。そんな事に慣れなくとも良いと言うのに
 いつか、翼はこの死人達を本気で焼いてもいい権利を手に入れるような予感が、中年はした
 いや、いっそ今でも、軽く焼いてくれても構わないとは思っているが

「お前らは、「悪魔の囁き」とか「コーク・ロア」とは遭遇してないのか?」
「今のところはないな」

 玄関で翼を見送るついでに、軽く情報交換をしておく
 今のところ、遭遇はしていない…もっとも、差金やたらとホームレスの数が減っており、子供の食料が減っていて困ってはいた
 恐らく、ダークネスと言う「ツァボの人食い」の片割れのせいだろう
 あれも、確か人食いの都市伝説だから…あちらに、先に食われてしまっているとしか考えられない
 中年としては、子供がダークネス相手に、(食欲的な意味で)変な対抗心を抱かない事を祈るばかりである

「そうか。でも、気をつけろよ?」
「こちらは問題ない。お前こそ、警戒しておけ」

 中年の言葉に、翼はわかってるよ、とどこか力なく、小さく苦笑して、部屋を出て行った

 今回の騒動の親玉に狙われているらしい翼
 解決を焦ろうとして、無茶をしなければいいのだが
 怒りに任せて戦っていた「顎砕き飴」の騒動で、己の身すら焼く程に力を暴走させた翼を思い出し、中年はそんな事を考え…

「えー、今回の議題は「週一で掃除とか調理をしに来ている翼は通い妻と呼んでいいのかどうか」についてだ」
「審議長!野郎という時点で「妻」はありえないと思います!」
「一部界隈では、そう呼んでも問題なさそうだが」
「そっちの気はねぇwwwwwwwwwwwwww」
「それを言ったら、翼だってその気はないだろう」
「いや、だが、将門様や黒服さんへの対応を見るに………翼は、年上男性に弱い」
「では、俺たちの契約者も守備範囲内か!?」

 …………

 とりあえず、あれだ
 あまりにもアレな内容を、わりと大きな声で話し合っている近所迷惑な己の契約都市伝説と、マンションの女幽霊相手に
 中年は、鉄拳制裁を行う事にしたのだった




 何故、その鍵を捨てずにずっと持っていたのだろうか
 いっそ、捨ててしまえばいいと、頭のどこかでそう考えて
 だが、どうしても捨てる事が出来ず、どうしても手放す事ができなかった

 ……もう
 もう、二度と
 この鍵を使う事はないと思っていた

 錆つきかけたそれを手に、日景 翼は家の前で、ぼんやりとそう考えていた
 「死人部隊」の中年には、買出しして帰るとは言ったが、実際にはそうではなく…別の場所にきていた

 以前に…まだ、「朝比奈」と言う姓を名乗っていた頃に、住んでいた家
 両親だとは思いたくもない両親と共に暮らしていた家だ
 この家を飛び出した時、家の鍵は持ったままだった
 小学生の頃からずっと、家に帰ると誰もいないと言う日が続いたがために、鍵はいつでも持ち歩いていたから…その時も、たまたま、上着のポケットに鍵を入れたままだったのだ
 …小学生の頃、修学旅行で買った、安っぽいキーホルダーについた、その鍵
 それを手に、家の敷地内に入る
 表札は「朝比奈」のままだし、売り物件の張り紙もない
 多分、名義上、まだ父親の持ち物のままなのだろう

 玄関には、鍵がかかっていた
 鍵を使い、中に入る

「……っ」

 けほ、と
 埃っぽさに、小さく咳き込んだ
 長い間、人が足を踏み入れる事がなかったのだろう
 玄関には、埃が溜まっていた
 そこから見える廊下にも、埃の層が出来ていて
 翼は、持ってきていたスリッパを取り出すと、玄関でそれに履き替えて、家の中に入り込んだ
 ゆっくりと、リビングに入り込む

「…あの時のまま、か」

 埃が積もっている事以外、家の中は、翼が飛び出した時と、ほぼ変わっていなかった
 …リビングの荒れ具合まで、そのままだ
 あの日は、両親が離婚やら何やらで酷い喧嘩をしていて、特に母親が父親にぼんぼんと物を投げつけていて、酷い事になっていた
 もっとも、あの父親は、それらを平気でキャッチしたり避けたりしていて、一個も直撃していなかったが
 結果、床には割れた食器などのカケラが散乱していて…それまで、そのままなのだ

「俺が、あの時家を出て……んで、親父は海外出張があるとか言ってたから、多分、次の日にはあの鳥井とか言う女と出て行ったんだろうし……お袋も、あの後すぐ、家を出たのか…?」

 そして
 それ以来…この家には、誰も足を踏み入れなかったのか
 その事実を、翼は今、初めて認識した

 リビングを抜けて、自分の部屋だった場所に向かう
 ここも、昔のままだった
 決して、多くはなかった私物
 それも、中学の頃短い家出をする度に誠の家に私物を置かせてもらっていた為、余計に少なくなっていた
 その頃にはもう使っていなかった教科書やノートなどが、置き去りにされたまま埃を被っている
 完全に、自分が出て行った時、そのままの部屋
 …自分が家を出てから、誰もこの部屋に踏み込まなかったのが、わかる

 そっと部屋を出て、次に向かったのは、母親が使っていた部屋
 薄く扉を開き、中を覗くと…物の見事に、散らかっていた
 記憶の中の母親の部屋よりも、なお、散らかっている
 まるで、泥棒にでも入られたかのようなありさまだ
 クローゼットやタンスが開けっ放しで、服が取り出されたり中途半端に取り出されたまま放置されているようなその状況を見るに…多分、感情任せに家を飛び出す際、適当な服を鞄に詰め込み、そのまま飛び出した、と言ったところか
 あの女らしい、と翼は考える
 昔から、カっとなりやすい性格だった
 自分はその怒りを向けられた事は一度もなかったが、父親や浮気相手相手に、もの凄い剣幕で怒っているのを何度か見たことがある

 埃がなくとも足の踏み場がなかった母親の部屋を出て、次は……父親が使っていた部屋
 今、自分を狙ってきているその男が使っていた部屋に、そっと入り込む
 埃を被っている事以外、ここも、記憶の中に残っているその部屋と、全く同じだった
 無駄な物が何一つない部屋
 ただ、寝るためだけに使われていたような部屋だ
 あの男は家にいる事もほとんどなかった
 常に仕事ばかりで、省みられた記憶はまったく、ない
 家族のために働いていたのではなく、全て、自分のためだけに働き続けていた
 …あの頃は、まだ、都市伝説とは契約していなかったはず
 だが、あの頃から、権力への渇望が強かった事は事実なのだろう
 あの女と結婚する事で手に入れるはずだったそれを逃してしまったあの男は、代わりの権力を欲して働き続けていたのかもしれない

 ……小さく、翼はため息をついた
 あの頃から、何も変わらぬ家
 住人を失って、ただゆっくりと、朽ちていくだけの家
 翼は、長い事、この家に近づく事すら嫌だった
 この家に近づく事自体が、恐ろしくてたまらなかった
 家に近づけば、父親か、母親かのどちらかに見付かってしまうのではないか
 そう考えると、恐ろしくて仕方がなかった
 父親の元にも、母親の元にも、引き取られたくなかった
 ただ、あの両親の下から逃げ出したかった
 愛情を向けられる事なく、物のように扱われるのがひたすら苦痛でたまらなく……もう、二度と、そんな思いをしたくはなくて、逃げ続けた
 アルバイト先に、何度か母親が客として姿を見せてきた事があったが、どちらかと言うと厨房の仕事に回されていた為、顔を合わせずにすんでいた
 いや、その時ですら、なるべく顔を見せないよう逃げ続けていた

 長い、長い間、両親とまともに顔を合わせることはなく
 ……久々に、まともに父親である朝比奈 秀雄と顔を合わせたのが、つい先月
 それも、最悪の形での再会だった

「…………」

 暗く沈みそうになった思考を、引き上げる
 あれが父親であろうが、学校町を混乱に陥れる悪事を働いている事は事実
 「首塚」にとっても、討伐すべき相手なのだ
 だから……自分がすべき事は、いつも通りだ
 ただ、あれを倒す、殺す
 ただ、それだけ
 …ずっと、やってきた事ではないか
 そもそも、あんな男、父親だと思いたくもない
 ずっと、そう考えていたはずだ
 だから…殺してしまっても、構わない

 かまわない、はずだった

 だが……確かに、自分は父親を憎み続けていたが
 しかし、殺したい程までに憎んだ事は…ただの一度も、なかった
 望の事情を知ってからは、あんな両親でもまだマシだったのだと考え始めて…何かキッカケさえ出来れば、和解してもいいのではないか、と
 そう、考えるようになっていたのだ

 ……そんな時に、知ってしまった事実
 それは、確実に翼を打ちのめしていた

 父親とは、永遠にわかりあう事ができない
 あの男は、自分を息子としてみてくる事などなく……結局、都合のいい道具としてしか、見てこないのだ、と
 その事実を、突きつけられたのだから

「……さっさと居場所突き止めないとな……これ以上、他の誰かに迷惑かけるわけにもいかねぇし……」

 自分に言い聞かせるように呟く
 早く、父親を見つけなければ
 そして

「………俺が、殺してやる」

 自分の父親が元凶ならば、自分がこの手で、何とかしなければ
 翼は、自分にそう言い聞かせ続ける
 殺したい程までは憎んでいなかった存在に、無理矢理殺意を抱きながら





to be … ?



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー