「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 恐怖のサンタ-x21

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uranaishi

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恐怖のサンタ 悪魔の囁き&コークロア編 21


「――――は? 敵の潜伏場所が分かった?」

 山田家に新しいペットが加わってから数日。
 久々の休日ということで畳の上でごろごろとしていた俺に対して、唐突にやってきた占い師がそんなことをのたまった。
 目を丸くして、俺は身体を起こす。
 俺の背中の上でじゃれあっていた猫二匹が不機嫌そうに鳴いたが、大して気にも留めなかった。

「それまた、どうして」

 居住まいを正して問い直すと、占い師はじゃれあっている猫を顎でしゃくった。
 微妙に両方共に通用するような指し方だったので、ちゃんと見分けがついているのかは謎だ。

「そこにいるツァボの人食いの片割れ。ある程度もう片方の気配を掴めるらしいな」
「…………そうなの?」
「……。あんたが飼い主だろうが」
「いや、そんな事言われてもなぁ」

 猫が都市伝説だと知ったのは最近もいいとこだし、第一知った後も未だに信じられないでいる。
 だってあれからずっと猫のまんまだし、食欲が凄まじい以外猫そのものだし。ついでに普通に可愛いし。
 もしかしたらあれは夢か幻で、この二匹目の猫は俺が無意識のうちに拾ってきたんじゃないかとさえ最近は思えてきた。

「――――現実カラ逃ゲテシテンジャネェヨ、へたれ」

 ふいに、頭の上に軽い何かがのしかかってくる。シューとか言う気味の悪い音つきで。

「テメェモだーくねすと戦ッタジャネェカ。テメェノセイデ俺様ハまぢデ死ヌカト思ッタンダゼェ? 夢ニサレテタマルカヨ」
「いやいやでも俺個人の精神的安定を考えるとだな――――」
「都市伝説バッカノ家ノ家主ガ何ホザイテヤガル? イイ加減慣ロ。イツマデモ現実カラ目ヲ逸ラシテンジャネェゾ、へたれガ」
「いやいやいや、慣れたら普通の人間として駄目な気がするだろ、なんか」
「モウ三体モ都市伝説ト契約シテルダロォガ。イツ飲マレテモオカシクネェヨウナ奴ガ『普通』ダァ? 冗談モ休ミ休ミ言イヤガレ」

 ……これは言葉の暴力じゃないんでしょうか、先生。
 占い師はといえば、そんな俺たちをさも面白そうに眺めていた。

「しかし、何度見ても珍しいな。卵が孵化しても支配されない事もあるのか」
「コイツハ例外ダ、例外。俺様達ニ能力ノ『差』ハ存在シテネェンダ。コンナへたれジャネェ限リ大抵ハ孵ッタラソノママ乗ッ取リ一直線ダロォヨ」

 俺様もそっちの方が良かったぜ、とぼやいているデビ田は、その尾をぱたぱたと振っている。
 当人としては不機嫌差を目一杯身体で表しているつもりなのだろうが、子蛇の姿を象ったデビ田ではむしろ微笑ましい光景にしか見えない。

「……ツーカ俺様ノ話ハイイダロォガ。ソレヨリモアノ糞野郎ノ居場所ダ。居場所」
「お前仮にも生みの親に向かって『糞』とかそんな」
「ソノ子供ヲ殺ソウトシテキタノハアイツジャネェカ。イインダヨ、ンナ事気ニシナクテモ」

 ……いいんだろうか。
 そんな俺たちを見て、占い師は苦笑していた。

「……とにかく、だ。ツァボの人食いが双方惹かれあうとなれば、散歩の最中にその片割れの居場所にも近づいた可能性が高い」
「ああ……そういえば、あの時も猫の方がこっちに来てたんだっけ」
「らしいな。そのおかげで、俺たちもアレの特性に気づけたわけだが」
「ンナ事ハドウデモイインダヨ。問題ハアノ野郎ノ居場所ダロォガ」
「ん……でだ、未来に散歩の最中、どこか変な所に行かなかったか尋ねてみた」
「…………それで?」

 居場所が分かったといっている以上、もはや答えは分かりきっている。
 きっとそこで、なにやら怪しげなビルの近くにでも猫が行って――――

「いや、それが怪しい所だらけで絞りきれなかった」
「…………。えぇー」
「文句ならあの片割れに言ってくれ。普段の散歩のルートが廃屋やら工事現場だなんてこっちも予測してなかった」
「あぁー……うん、あれはなぁ」

 かつて一度だけ猫と散歩したときのことを思い出す。
 あの時は屋根の上やら塀の上やら人家の庭やらで肉体的にも精神的にも宜しくない一時間だった。
 よく未来ちゃんはあんな散歩を毎日続けられるものだと思ったものだが……占い師の言うような物騒な場所にいっていないことを考えると、猫には手加減をされていたのかもしれない。

「……あれ? でもさっきは『居場所が分かった』って」
「ああ。分かってる」
「……でも、絞りきれなかったんじゃないのか」
「ああ。絞りきれなかった」
「…………」

 何の謎かけだ。
 思わずしかめ面をする俺を見て、占い師が唇の端を歪めて軽く笑った。
 本人にその意図はないのだろうが、馬鹿にされているようで何となく気分が悪い。

「……まぁ、特にこれと言って珍しいことは何もしてないんだがな」

 それが表に出ていたのか、今度は表情を苦笑いに変えて、占い師が指を一本立てた。
 これから先ほどの言葉の説明をしてくれるらしい。
 一体どんな珍奇な回答が出てくるのか、と天邪鬼な思考で彼の言葉を待ち受けていると

「簡単に言えば、虱潰しだな」
「…………は?」
「オィオィ、今更冗談カァ? フザケテンジャネェヨ」
「ん……意味が分からなかったか? 用は能力に飽かせて候補の建物を片っ端から調べて行ったわけだが」
「意味は分かるんだけどさ……」

 本当に珍しいことは何もしてない、というよりも想像していた中でも一番原始的な方法だった事に一瞬呆けてしまう。

「ってか、そんなんで本当に大丈夫なのか?」
「下手に小細工をするよりは確実だろうさ。日本の警察だって最後に頼るのは自分の足なんだろう?」
「いや、そんな都市伝説まがいの事聞かれてもな……」

 第一、俺には警察に知り合いなんていない。
 そんな曖昧な表情をする俺に、デビ田が痺れを切らしたように頭上で尻尾を振り回した。

「……ソレデ? 何処ニイヤガルンダヨ、アノ糞野郎ハ」
「廃ビルの一室……と言っても、言葉じゃ分からないか」

 そう言って、懐から一枚の用紙を取り出す。
 少し色褪せているそれは、古いながらも学校町の地図らしかった。
 目を凝らしてみると、赤い罰点がそこら中に書き込まれている。
 恐らく、「虱潰し」の際にも使用していたのだろう。

「この地図の丸で囲まれているところが朝比奈の潜伏場所だ。後で確認しておいてくれ」

 くるくると用紙を丸めて、占い師が俺の手に地図を握らせてくる。
 何となく流れのままにそれを手の中に握りこんでから、気づいた。

「え? これ原本だろ? 俺なんかに渡しちゃっていいのか?」
「構わない。俺たちには必要ないからな」

 言われて、なるほどと納得した。
 曲がりなりにも敵の本拠地が記された地図だ。それ一つという事もないのだろう。
 既に誰かが暗記してしまっているか、もしくは複製をちゃんと別の場所に保管しているのか。

「……でも、それなら原本じゃなくて複製を渡せばいいんじゃないのか?」

 それは当然、ちょっと考えれば辿り着く疑問。
 貴重とは言いがたいが、俺のような末端、ある意味使いっ走りのような存在にそんなものを軽々と渡してもいいのだろうか、と。
 しかし占い師は、怪訝そうな顔をして俺を見て

「何を言ってる? 行くのはあんただけなんだ。わざわざ複写する必要はないだろう?」

 そう事も無げに言った。

「…………は?」
「ん? どうした。……ああ、それとも誰か同行者用にコピーが一枚欲しかったか? ただ悪いがそれはあんたがやって欲しいな」
「いや、そうじゃなくて」
「なら、何だ」

 本当に分からないと言う、占い師の顔。
 正直な話、俺にはお前が何を考えてるのかが分からないんだけど。

「お前たちも、行くんじゃないのか?」
「行かないな」

 即答。

「えぇー…………。それはどうなのよ、発見者として」
「悪いな、今はちょっと内部がゴタゴタしててそれ所じゃないんだ」
「内部?」
「ああ」

*********************************************

 ――――その頃、某マンションの一室にて。

「嫌じゃ! わしは行かんぞ、あのいけ好かない糞爺に頭を下げるなんて死んでもやらん!」
「あなたが蒔いた種でしょうが!! 幾らなんでもあちらのご息女に手を出した長老が全ての責任を取るのが道理でしょう!」
「知らん知らん! ちょっとからかっただけじゃろうが。あんななよっちく娘を育てた糞爺の育児怠慢じゃろ」
「よくもまぁ抜けぬけと……何をしたのかは流石に礼儀として聞きませんでしたが、長老の愚行が『ちょっと』で終わったのなら、向こうもあんなに激高していないでしょうに」
「はっ! わしの中の『男』を10%も目覚めさせてないと言うのにあの娘はヒステリーを起こしたんじゃぞ。むしろ消化不良のわしにこそ相手を罵る権利がある!」
「妄言もいい加減にして下さい。こちらは『一族』と全面抗争になるかならないかの瀬戸際にあるんです。長老の土下座一つで全てが解決するなら安いものでしょう」
「男がエロくて何が悪い! 行かんぞ、絶対にわしは行かんぞ!」

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「…………アホだな」
「…………死ンデモ直ンネェンジャネェノ?」
「ああ。愚蒙もここまで来ると一種の神々しささえ感じられるから不思議だな」

 重いため息をつく占い師は、日ごろからあの爺に色々と悩まされているんだろうか。
 ……悩まされてるんだろうな。

「……で、その爺のせいで俺がたった一人で、何が待ち受けているかも分からないような超危険な敵の本拠地へ向かえ、と?」
「俺たちは今『向こう』との協議で忙しい。人員は誰も裂けんな。もちろん、あんたが誰かを連れて行くのは自由だが」

 最早断定。俺が行く事前提で話を進めるこの流れの中に、「拒否権」なんて言葉は一切存在しなかった。ついでに「俺の意見」も。

「なんつーか…………」

 こんな危なそうな仕事に、良子たちを連れて行くわけにも行かない。
 つまりは、行くのは俺一人。
 しかも、事の原因は爺の我侭。

「……やる気でないよなぁ」

 ここ数日の激務を、そしてそれがようやく終焉に向かっている事に淡い希望を見出しつつ。
 そういえばマドカさんが「馬鹿夫の居場所が分かったらここに電話を頼むよ」とか何とか言ってたなぁ、なんて今更ながらに思い出していた。



【終】


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