恐怖のサンタ 悪魔の囁き&コークロア編 22
占い師から、半ばパシリ状態で「敵のアジトまで行って来い」と命じられてからはや半時間。
少々仕度に手間取ったものの、既に俺はアパートの外へと出ていた。
片手には地図。背中にはいざと言うときのための小道具やら何やらが入ったナップザックを背負っている。
流石に救急箱を入れるのこそ躊躇ったが、替えの下着から方位磁石まで万全の品揃えである。使うか分からないけど。
ちなみに、家には良子や他の同居人宛てにちょっと出かける記した書置きを残し、二匹の子ライオンは占い師に預けた。
やり残した事は何もない。後はいざ潜伏場所へと赴かんとするだけ――――
少々仕度に手間取ったものの、既に俺はアパートの外へと出ていた。
片手には地図。背中にはいざと言うときのための小道具やら何やらが入ったナップザックを背負っている。
流石に救急箱を入れるのこそ躊躇ったが、替えの下着から方位磁石まで万全の品揃えである。使うか分からないけど。
ちなみに、家には良子や他の同居人宛てにちょっと出かける記した書置きを残し、二匹の子ライオンは占い師に預けた。
やり残した事は何もない。後はいざ潜伏場所へと赴かんとするだけ――――
「さあ、さっさと行きますよ、契約者」
――――の、はずだった。
俺の隣で目を爛々と輝かせ不気味な事を口走っている少女。通称マゾサンタ。
今回の件で一番事件から離れているべき変態が、そこにいた。
確か今日は一日中愛しの人とどうのこうのあははうふふとか言いながら出て行ったはずなんだけど……。
今回の件で一番事件から離れているべき変態が、そこにいた。
確か今日は一日中愛しの人とどうのこうのあははうふふとか言いながら出て行ったはずなんだけど……。
「お前、何してんの?」
「我思う、故に我あり。ですよ、契約者」
「…………は?」
「我思う、故に我あり。ですよ、契約者」
「…………は?」
……いきなり何を言い出すのか、この特殊性癖の持ち主は。
ついに頭の螺子が完全に外れてしまったらしい、可哀想に。
いや、そもそも初めから螺子がついていたのかさえ危ういが。
ふっふーんとどこか悪戯っぽい目をしたマゾは、怪訝や呆れを通り越して少し同情し始めた俺を見て、無駄にある胸を張った。
ついに頭の螺子が完全に外れてしまったらしい、可哀想に。
いや、そもそも初めから螺子がついていたのかさえ危ういが。
ふっふーんとどこか悪戯っぽい目をしたマゾは、怪訝や呆れを通り越して少し同情し始めた俺を見て、無駄にある胸を張った。
「勉強不足ですねー、契約者。ほらほら、昔の偉い人が言った言葉でしょうが」
「……お前、意味分かって言ってんの?」
「馬鹿にしないで下さい。『私はあの人の事をいつも想っている。だから私はあの人の傍にいるのだ』って素敵な恋の詩に決まってるでしょう」
「………………」
「……お前、意味分かって言ってんの?」
「馬鹿にしないで下さい。『私はあの人の事をいつも想っている。だから私はあの人の傍にいるのだ』って素敵な恋の詩に決まってるでしょう」
「………………」
こいつの脳内でデカルトは詩人か何かになっているのだろうか。
あの有名な台詞をどこまで過大解釈すればそんな妄想に発展するんだろう。つーか哲学はどこ行った。
あの有名な台詞をどこまで過大解釈すればそんな妄想に発展するんだろう。つーか哲学はどこ行った。
「……悪い、頭がパーな俺にはお前の超高次元の理論が全く理解できないから、できれば俺にもわかるように出来るだけ噛み砕いて言ってくれ」
「ふっふっふー、まだまだ恋に疎いですね、契約者も。そんなんじゃ良子さんに逃げられちゃいますよー?」
「ふっふっふー、まだまだ恋に疎いですね、契約者も。そんなんじゃ良子さんに逃げられちゃいますよー?」
……うぜぇ。こいつ果てしなくうぜぇ。
今ならこいつを殴っても誰からも非難されないような気がするのは、言葉そのままただの気のせいなんだろうか。
若干小刻みに震える右手を自制しつつ、俺はマゾに先を言うよう目で促した。
今ならこいつを殴っても誰からも非難されないような気がするのは、言葉そのままただの気のせいなんだろうか。
若干小刻みに震える右手を自制しつつ、俺はマゾに先を言うよう目で促した。
「つまり! 私が翼様と共に「在る」のは当然の理! しかも今回は翼様のご両親が二人とも揃うんですよ! これは是非ご挨拶せねばならないでしょう!!」
「帰れ」
「いやですねー、契約者。愛する者同士の絆は誰にも切れないんですよ。それこそ強力な瞬間接着剤のように」
「愛してるのはお前だけだろうが。つーか例えが接着剤ってどうよ」
「恋は案外身近過ぎて気づかないものなんですよ、契約者。翼様も今に胸の奥が焼け焦がれるような衝動に駆られている事でしょう」
「帰れ」
「いやですねー、契約者。愛する者同士の絆は誰にも切れないんですよ。それこそ強力な瞬間接着剤のように」
「愛してるのはお前だけだろうが。つーか例えが接着剤ってどうよ」
「恋は案外身近過ぎて気づかないものなんですよ、契約者。翼様も今に胸の奥が焼け焦がれるような衝動に駆られている事でしょう」
その感情は怒りと形容すべきものではないのだろうか。
「……と、言うわけでですね。つまりは何があっても私も行きます。翼様がそこに居る限り、私は魂だけになってもそこへ行きますよ」
……こいつなら、それこそ天国か地獄まででも追いかけそうで怖い。
残念な事にここは学校町。自分の魂だけを本当に天国にまで持っていける所か、死者蘇生の都市伝説でさえ存在しそうである。あまり考えたくないけど。
残念な事にここは学校町。自分の魂だけを本当に天国にまで持っていける所か、死者蘇生の都市伝説でさえ存在しそうである。あまり考えたくないけど。
「さあ、行きましょう急ぎましょう会いましょうご挨拶しましょう婚約しましょう結納しましょう結婚しましょう! 善は急げ、思い立ったが吉日とも言いますから!」
苦笑とも呆れともつかない顔の俺を一人残して、マゾは夢見る乙女の目で走り始める。
マゾには俺の能力の大本となった空間移動能力がある。
例え止めても監禁しても、どうせ俺について来るのだろう。
その光景を想像して、思わずため息が出る。
唯でさえやる気の出ないこの仕事に、さらに面倒な事が増えてしまっていた。
マゾには俺の能力の大本となった空間移動能力がある。
例え止めても監禁しても、どうせ俺について来るのだろう。
その光景を想像して、思わずため息が出る。
唯でさえやる気の出ないこの仕事に、さらに面倒な事が増えてしまっていた。
【続】