「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪意が嘲う・ゴースト-08

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だれでも歓迎! 編集
 我輩は百獣の王の息子である
 名前は、まだ、ない


 ないはずなのだ
 まだ、我輩には名前がない
 名前など、ないはずなのに


 ----それなのに
 我輩を呼ぶように、聞える名前があるのだ









 ぎしゃー

 てちてち、てちてち、てちてちてち
 小さな子ライオンが、街中を駆ける
 てちてち、てちてち、てちてちてちてちてちてちてち
 気まぐれに駆け回り、塀を昇り屋根を昇り飛び降りて、時には猫道をくぐりぬけ
 ただただ気まぐれに駆け巡る
 だから、この日、そこにやってきたのも、ただの気まぐれでしかないのだろう
 たまたま、そこに辿り着いただけだ

 しかし
 人によっては、それを「運命だったのだ」等と、そう言うのかもしれない


 ……ぎゃしゃー

 ちょこん、とそこに腰をおろし、子ライオンは小さく鳴いた
 …そこは、廃工場の前
 この学校町、このように廃棄された廃工場が意外と多い
 取り壊される事もなく放置されているそれらは、何時の間にか大破したり大破したり大破したり消滅したりしている事がよくある為、取り壊しの費用削減の為放置されている、と言う噂喪あるがそれはあくまで噂である
 そして、この子ライオンが、そんな事情を知っている訳もなく
 何を考えているのか、子ライオンは、その工場をじっと、じっと、見あげて

 ……しゃぎゃ

 すっく、と腰をあげて、てちてちてちてち
 さらに、その工場に入っていこうとするように、歩き出した
 ………が、ひょい、と
 その体が、持ち上げられる

 しゃぎゃ!?

「もう、駄目ですよ。こう言う場所に入っちゃ、危ないですから」

 子ライオンの散歩に付き合っていた少女、未来が、その小さな体を抱き上げる
 この子ライオンの散歩に未来が付き合うようになって、大分経つ
 お陰で、子ライオンの行動パターンがわかってきたのか、こうやって捕まえられるようにまでなっていた

 じたばた、じたばた
 子ライオンは、ぎゃしゃぎゃしゃ声をあげて、じたばた暴れる

「……?この先に、何かあるんですか?」

 ……ぎゃしゃー!!

 じたばたじたばたじたばたばたじた
 未来の腕から、飛び出しそうな勢いで、子ライオンは廃工場に向かおうとする
 その体を何とか抱きしめながら、未来は首をかしげて

「…もう、ちょっとだけですからね?」

 と、そう言って
 子ライオンの気持ちを尊重して…そっと、その廃工場に、脚を踏み入れた




 同時刻 その廃工場内にて

『ヨシ、何モイナイナ。帰ルゾへたれ』
「いや、駄目だろ。まだ来たばっかりだろうが」
『嫌ナ予感ガスルンダヨッ!!ト、言ウカ嫌ナ予感シカシネェンダヨ、今回ノ仕事ハッ!!』

 己の内なる声………否、悪魔の囁きことデビ田とそんなやり取りをしていた青年、山田
 いつもの、都市伝説退治の依頼である
 何でも、この辺りでホームレスが何人も失踪しているとか、血溜まりが見付かったとか見付かっていないとか
 …デビ田の言う通り、嫌な予感満載の仕事ではある
 何せ、山田はつい最近……そう言った現象を起こしそうな、と言うか、むしろ起こしていた存在と遭遇したばかりである
 「ツァボの人食い」その片割れ、ダークネス
 名前の通り人食いであるそのライオン型都市伝説と遭遇し、うっかりと襲われたばかりなのだ
 ホームレスの失踪、残された血溜まり
 ……高確率で、そのライオンのお食事の痕です、本当にありがとうございました
 まぁ、ダークネスではなく、その片割れであるゴーストの仕業と言う可能性も捨てきれなくはないが
 どちらにせよ、嫌な相手だ
 山田の能力を持ってすれば、勝てなくもない相手である
 だが………

「なぁ、そのダークネス、って言うのには、お前の同類がとり憑いているんだよな?」
『アァ。オレサマノ元主様ガ、直々ニ卵ヲ植エ付ケテ孵化サセタカラナァ』

 山田の問いかけに答えるデビ田
 そう、それが問題なのだ
 今、学校町を騒がせている悪魔の囁き
 それをばら撒いている張本人である朝比奈 秀雄の、配下の一匹なのだ、そのダークネスは
 そして、当然のように、ダークネスには悪魔の囁きがとり憑いている

 …デビ田が言うには、悪魔の囁きがとり憑く事によって、その能力が底上げされる事があるらしい
 ならば、自分の場合はどうなのかとも思ったのだが、『テメェハ、オレサマノ囁キニ一切合財乗ッテコナカッタダロウガ。ダカラ、ソノ手ノ影響ハ出ネェヨ』と言われてしまった
 どうやら、悪魔の囁きを己の身の内から出た声と錯覚し、自己催眠状態で能力が引き上げられる事があるらしいのだ
 つまるところ、そのダークネスもパワーアップしている可能性が十二分にある訳で
 できる事ならば、二度と遭遇したくない相手である
 だが、仕事は仕事だ
 山田は、警戒して廃工場の中を進んでいって


 ……ゾク、と
 全身を、悪寒が駆け抜けた


『上ダッ!!』
「う、わっ!?」

 頭上から迫ってきた気配
 山田は、慌ててそれを避けた
 ずぅん!!と言う、地響きのような音と共に…それは、床に着地する

「…っこいつ、この間の…!」
『アァァァ、ヤッパリコイツカヨ!!』

 全長三メートルもの、鬣の短いライオン………ダークネスだ
 見間違えるはずもない
 己の喉元に喰らいついてきた存在を、そうそう間違えるものか
 目の前に現れたその猛獣は、間違いなく、「ツァボの人食い」の片割れ…ダークネス
 それは、山田を獲物を見るような目で睨みつけてきていた
 いや、見るような、と言うか、多分、獲物としてしか見ていないだろう
 鋭い牙が並ぶ口から、ぽたり、涎が零れ落ちている

『ドウ見テモ空腹状態ジャネェカヨッ!!トットト逃ゲルゾオイ!』
「ここで逃げたら、また犠牲者が出るだろう」

 逃げたい
 ぶっちゃけると、全力で逃げ出したい
 目の前で不機嫌そうに尻尾を揺らしているその猛獣の前から、一目散に逃げ出したい気持ちで山田は一杯だ

 だが…逃げる訳には、いかない
 これ以上、犠牲者を増やす訳にも行くまい
 ここで、ダークネスを退治しなければ

『コノばか野郎ガ……。…………ッ来ルゾ!』

 だんっ………と、ダークネスが床を蹴り、山田に飛び掛る
 すんでのところで、山田はそれを避けた
 …早い
 これが、ダークネスの本来の身体能力なのか、それとも強化されたものなのか
 ……はたまた、空腹状態と言う、何がなんでも獲物を逃したくない状態での火事場の馬鹿力故の身体能力なのか、山田には判断できない
 ただ、真正面からやりあうには分が悪い、とそれを感じた
 ダークネスが振り返る前に……山田はダークネスの死角に入り、己の気配を消失させる
 ダークネスは山田を見失い、きょろきょろと辺りを見回しだした

(幻覚が、効けばいいんだが…)

 そうすれば、一気に無力化できる
 そう判断し、山田はダークネスに幻覚を見せようとした

 ……が、それよりも先に
 ひくり、ダークネスの鼻が、動く

『…!へたれ、動ケッ!』
「え?…………おわっ!!??」

 ひゅんっ!と
 ダークネスが再び山田に飛び掛り、その片前足を振るってきた
 ぶちんっ、と山田の片腕が吹き飛ばされる

『痛ェエエエッ!?クッソ、アンノ馬鹿力ガ!?』
「と、言うか、どうしてこっちの居場所が…」
『獲物ノ居場所ヲ察知スル能力ガアガッテヤガルンダロ。鼻ガ効ク限リ、気配消失ハ一瞬シカ通用シネェゾ』

 痛みにうめきつつ、そう言ってくるデビ田
 吹き飛ばした腕に近づき、ダークネスはぺろり、それを平らげた
 …ヘタに食いつかれると、全身があぁやっていただきます、される訳で
 ……どうする?
 食いちぎられた腕を再生させながら、山田はダークネスを前に、判断を迫られた



 ずぅん、と地響きのような音が響き渡る

「な、何ですか?今の音…」

 ぎゃしゃー

 未来の腕の中で、じたばたし続ける子ライオン
 その力が、だんだんと強くなってくる

「…そろそろ、出た方が…」

 ぎしゃー!

「きゃっ!?あ、危ないですよ………………あら?」

 子ライオンが見ている、その先
 …そこにいた人物と、獣を見て
 未来は、悲鳴をあげそうになった

「山田さん………!?」

 そこにいたのは、以前、一瞬だけ姿を見た、全長三メートルのライオンと対峙する、山田の姿だった



 我輩は、百獣の、王の、息子、である
 我輩は
 我輩、は



「え…………きゃあっ!?」

 未来が抱きしめていた子ライオンの、体が…突然、光りだして
 どくんっ、と、子ライオンの中で、何かが脈動したのを…未来は、確かに感じた

 その瞬間、未来は子ライオンの体を抑えきる事ができず
 子ライオンは、その腕から飛び出してしまった



 飛び掛ってくるダークネス
 先ほどよりも、さらにスピードがあがっている
 ……間に合わない!?
 一撃食らう事を覚悟する山田
 喰らいつかれても、そこから反撃できれば…

 だが、しかし
 ダークネスの牙は、山田に届かなかった

「え?」

 何か
 横から飛び出してきた、小さな何かが
 ダークネスの体を、弾き飛ばしたのだ

「……ね、こ?」

 それは
 山田の家に住み着いている、子ライオンだった
 子ライオン…の、はずだ

 しかし、その体は光に包み込まれていて

 ………ぉぉぉん

 その口から漏れ出したのは、いつもの鳴き声ではない
 それよりも、もっと、もっと、低い声

 子ライオンに弾き飛ばされたダークネスが、怒りの声をあげた
 子ライオンは、まるで山田を庇うかのような位置に立ち、ダークネスを睨みつけている

 次の、瞬間
 子ライオンを覆っていた光が、はじけて
 まるで、押さえつけられていたものが解放されていくかのように…子ライオンの体が、膨れ上がった
 幼い、まるで猫にも見えた、その体が……一瞬で、成体のそれに、変化する

「-------っ!!」

 山田の、目の前で
 子ライオンは、成体のライオンに変化した

 全長三メートルの
 鬣の短い、ライオンの、姿に


 -------ぉおおおおおおおん!!


 対峙するダークネスを、激しく威嚇するように
 子ライオンであったそれは、大きく叫び声をあげたのだった







 我輩は、百獣の王である
 名前は……………「幽霊(ゴースト)」
 大いなる自由の大地に生まれし存在 ツァボの人食いが、その片割れである



to be … ?




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