「侵入者が入口で暴れている!」「これ以上施設内に入らせるな!」
黒服たちが慌ただしく廊下をかけていく。
黒服たちが慌ただしく廊下をかけていく。
その上、天井。
「…急いでるときほど近くの者が見えないものだよなぁ」
赤と青に黒い網目が特徴的な全身タイツの男がへばりついている。
「流石蜘蛛。潜入捜査もお手の物だぜ…と言いたいところだが、生憎まだ天井を移動はできないんだ」
誰に言うでもなくそう言って、床に足をつけて廊下を歩いていく。
「しかし…」
誰に言うでもなくそう言って、床に足をつけて廊下を歩いていく。
「しかし…」
雪歩ちゃんは一体どこに…
さっきから歩いているこの廊下、ところどころにドアがある。
不用意に開けて敵に気づかれてもまずい。
かと言ってこのまま廊下を歩いているだけでは雪歩を見つけることはできないだろう。
不用意に開けて敵に気づかれてもまずい。
かと言ってこのまま廊下を歩いているだけでは雪歩を見つけることはできないだろう。
とにかく、今は進むしかない、か。
………
「……?」
見覚えのない、金属質な壁。
…ここは…?
確か、お店で寝ていたはず…
「ようやくお目覚めか、No.28」
確か、お店で寝ていたはず…
「ようやくお目覚めか、No.28」
どこからともなく声が聞こえる。
聞いたことはないはずなのに、何故だか聞いたことがあるような感覚。
聞いたことはないはずなのに、何故だか聞いたことがあるような感覚。
「あなたは…」「説明してる時間はない。早いうちにお前の能力を覚醒させる」
不意に、壁から筒のようなものが出てきて、それからガスのようなものが噴出される。
やがて、そのガスが部屋全体を包み込み―――――
不意に、壁から筒のようなものが出てきて、それからガスのようなものが噴出される。
やがて、そのガスが部屋全体を包み込み―――――
「……かは…っ」
突如、雪歩は吐血した。
何が起こっているか分からない…
のどが痛い。体の節々が痛い。
体の中を壊されるような嫌な感覚。
頭が痛い。目が痛い。
頭の先からつま先まで、何かに侵されるような感覚。
―――― 一度、味わったような感覚――――
「…ゆ、…ゃ…、ゆう、と…しゃん…」
助けて――――――
「――――!?雪歩ちゃん!?」
不意に、雪歩ちゃんの助けを求める声が聞こえた。気がした。
不意に、雪歩ちゃんの助けを求める声が聞こえた。気がした。
「早く、早く…助けにいかないと」「連れて行ってやろうか?」
また、不意に、何かの声が頭の中を駆け抜けた。
また、不意に、何かの声が頭の中を駆け抜けた。
「だ、誰だ!?」あたりを見回しても、声の主は見当たらない。
「ここだよここ、あんたの下」「え?」
Gだ。いつも見慣れている、Gだ。
「お前が、語りかけてるのか?」「あぁ、アメリカンな蜘蛛男さんよ」
今までいろんな昆虫さんと話してきたが、自分から語りかけてくる昆虫は初めてだ。
そんなことを考えている俺をよそに、Gは話を続ける。
今までいろんな昆虫さんと話してきたが、自分から語りかけてくる昆虫は初めてだ。
そんなことを考えている俺をよそに、Gは話を続ける。
「あんた、見る限り人探ししてるんだろ?しかも、今日連れ込まれた。
俺はずっとこの建物の中にいたからな、人が連れ込まれた場所も知ってる」
「…本当か?」「もちろん。おれ、虫、嘘つかない」
俺はずっとこの建物の中にいたからな、人が連れ込まれた場所も知ってる」
「…本当か?」「もちろん。おれ、虫、嘘つかない」
…どうする…?もしかしたら敵の罠かもしれない…
いや。
どちらにしても、今はこのG以外に雪歩ちゃんの元へと行きつく手段はない。
だったらたとえこれが罠だとしても、ついていくしかない。
だったらたとえこれが罠だとしても、ついていくしかない。
「…よし。案内してくれ」「あいよ、任せときな」
………
「この先が、あんたの言う雪歩って子の連れ込まれた部屋だ」
ドアの上には、大きな文字で「所長室」と書かれている。
ドアの上には、大きな文字で「所長室」と書かれている。
「おう、ありがとな」「気にすんな。あんたからは俺と同じ昆虫の匂いがする」
「はは、そいつぁどうも」
「はは、そいつぁどうも」
…この中に、雪歩ちゃんが…
俺が、助けださなば。
俺が、助けださなば。
俺が、守らなば。
俺が、そばにいてやらなば。
「…よし」
一歩踏み出すと、自動でドアが開く。
一歩踏み出すと、自動でドアが開く。
どんな状況だろうと、俺は負けない…
その覚悟を胸に、友人は部屋の中へと入って行く…
その覚悟を胸に、友人は部屋の中へと入って行く…
自動ドアが閉まった、その直後。
「…これで、いい」
そこには、さっき友人を導いたGと、黒服。
そこには、さっき友人を導いたGと、黒服。
「正義の味方は、自分で動くだけじゃなく別の正義を助けるものさ」
そう言って、懐からどら焼きを取り出し、食べる。
そう言って、懐からどら焼きを取り出し、食べる。
「助けてやってくれ。お前のお姫様と――――俺のお姫様を、よ」
ドアに入ると、一本の廊下が、ひたすらに続いていた。
その先には、開けた部屋があるのが僅かに見える。
「…進むしかない、よな」
その先には、開けた部屋があるのが僅かに見える。
「…進むしかない、よな」
部屋に出ると、そこは温室のような環境だった。
地面は芝生に覆われ、様々な木や花が一面に生えている。
地面は芝生に覆われ、様々な木や花が一面に生えている。
その奥に、自然とは縁遠い、入口と同様の金属質のドア。
「ようこそ侵入者君。俺の部屋へと続く三つの箱の一つ、『植物温室』へ」
突然、どこからともなく声が聞こえてくる。
「生憎ながら、この部屋は強制的に変身能力を解除するガスを漂わせていてね。お前のその変身は勝手に解ける」
「生憎ながら、この部屋は強制的に変身能力を解除するガスを漂わせていてね。お前のその変身は勝手に解ける」
そう言われて体を見ると、指先からスーツがゆっくりと消え始めていた。
「成程な、侵入者に対する対策は万全、ってわけか」
「成程な、侵入者に対する対策は万全、ってわけか」
「お前の目的は分かっている。お前が雪歩と呼んでいるNo.28だろう?」
「ッ…お前が主犯か!」「もちろん。俺はここの最高責任者であり、28直接の上司だ。連れ戻して何が悪い」
「何が悪い、だと?無理やり連れ去りやがって」「だって人間説得するのめんどいじゃんか?」
「何が悪い、だと?無理やり連れ去りやがって」「だって人間説得するのめんどいじゃんか?」
思わず聞き返したくなる、そんな台詞。だが聞き返す前に向こうのほうが話し始める。
「人間、いや生き物なんてみんな自分勝手なエゴイストじゃんか。それを俺の好きなように変えるのは骨が折れるもん。
社会でもみんな自分の利益しか考えてないもん。俺はそんな社会、『組織』が嫌いなんだよ。だから、俺は『組織』をぶっ壊す。そして俺の好きなように組み直す。
そのために俺は実験体に秘められた都市伝説の力を覚醒させ、反逆の戦士に仕立て上げるんだ!」
社会でもみんな自分の利益しか考えてないもん。俺はそんな社会、『組織』が嫌いなんだよ。だから、俺は『組織』をぶっ壊す。そして俺の好きなように組み直す。
そのために俺は実験体に秘められた都市伝説の力を覚醒させ、反逆の戦士に仕立て上げるんだ!」
「…っざけんな!」友人がどこかにいるとも分からない声の主に対して叫ぶ。
「てめぇだって立派なエゴイストだろうが!てめぇの勝手な理想のために、雪歩ちゃんを巻き込むのかよ!
てめぇだって自分の利益しか考えねぇで、される側の気持ちを全然理解しようとしてねぇだろうが!」
「理解?そんなものするだけ無駄じゃんか。俺は特別な人間なんだ。『組織』の改革を許されたただ一人のな!
そのためにお前はここで死んでもらう。『組織』の未来のためにな!」
てめぇだって自分の利益しか考えねぇで、される側の気持ちを全然理解しようとしてねぇだろうが!」
「理解?そんなものするだけ無駄じゃんか。俺は特別な人間なんだ。『組織』の改革を許されたただ一人のな!
そのためにお前はここで死んでもらう。『組織』の未来のためにな!」
「何を…っうお!」バヒュン!
とっさに体をかがめた友人の上を、種のようなものが掠めた。
飛んできた方向を見ると、白いユリが何本かこちらを向いて煙を吐いていた。
「…てっぽうユリ、ってか」
飛んできた方向を見ると、白いユリが何本かこちらを向いて煙を吐いていた。
「…てっぽうユリ、ってか」
あたりを見渡すと、ユリだけでなく、ヒマワリ、タンポポなどさまざまな植物が周囲を取り囲んでいた。
それらすべてがこちらに向き、狙いを定めるかのようなそぶりを見せる。
それらすべてがこちらに向き、狙いを定めるかのようなそぶりを見せる。
「っ、とうとうコイツを使う時か…っ!」
そう呟いて、友人はGを呼び出し、唐突にそれを踏みつける。
そう呟いて、友人はGを呼び出し、唐突にそれを踏みつける。
ドドドドドドドドドド…!!
ユリが、ヒマワリが、種を友人に向けて乱射する。
タンポポの綿毛が、優斗のいる場所へとふわふわと舞い、爆発する。
タンポポの綿毛が、優斗のいる場所へとふわふわと舞い、爆発する。
(やったか!?)(もちろん、今までこの包囲網を抜けた奴はいない)
喋れない植物たちが、植物独自の意思疎通法で友人の撃退を確認する。
喋れない植物たちが、植物独自の意思疎通法で友人の撃退を確認する。
が。
煙が晴れた時、そこには友人の倒れた姿さえなかった。
「綿毛が爆発って…どんな品種改良施したんだアレ」
その時友人はすでに、部屋の出口へと到達していた。
先ほどまで集中砲火の中心にいたはずなのに、その体には傷一つ付いていない。
その時友人はすでに、部屋の出口へと到達していた。
先ほどまで集中砲火の中心にいたはずなのに、その体には傷一つ付いていない。
「待ってろ雪歩ちゃん…必ず俺が助けてやるからな…!」ウィーン
(チリになって消えたか?)(かもな、我らが砲撃を突破できるはずがない)
(*1))
元いた部屋では、植物たちが友人の通過を知らぬまま、笑い合っていた。
元いた部屋では、植物たちが友人の通過を知らぬまま、笑い合っていた。
……続く。