「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪意が嘲う-10

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だれでも歓迎! 編集
 この願いを叶える為ならば
 全てを犠牲にしても、構わない

 復讐を成し遂げる為に
 今一度、彼女の笑顔を見る為に
 私は、全てを犠牲にしてきたのだから



                      H.A








 ごっ、と、人を殴り飛ばす音が、蹴り飛ばす音が響く
 パワーストーンが砕け散り、キラキラと光を撒き散らして、倒れた人間を、犬達を浄化していく

「---っの、糞親父が!どれだけの奴を巻き込んでやがる!?」
「…兵力は多いにこした事はない」

 翼の叫びに、朝比奈が冷たく言い放つ
 コーク・ロアに操られた被害者達と、クールトーによって操られている犬達を相手に、二人で応戦している翼と黒服を、高所から冷たく見下ろし…朝比奈は、微動だにしようとしない
 その傍らでは、クールトーが伏せた状態で、戦う翼達を見つめてニヤニヤと笑っていた

 黒服が使っているパワーストーンは数に限りある為、コーク・ロアの被害者は翼が気絶させ、犬達の相手は黒服がパワーストーンで数匹一気に無力化させる、と言う戦法をとっているのだが
 …だが、雑居ビル内での戦いが始まって、大分時間が経っている
 翼に、徐々に疲労の色が見え始めていた
 あくまで被害者でしかないコーク・ロアの被害者達相手に能力を使う事を嫌がり、体術だけで制し様としているだ
 ……翼がそんな行動に出るであろう事を、朝比奈は読んでいたのかもしれない
 だからこそ、この雑居ビルに、ここまでのコーク・ロア被害者が集められていたのだろうか

「…朝比奈 秀雄」

 もっとも、相手の数が多いとは言え、そちらも限りがある
 犬達を粗方気絶させたところで、黒服は見下ろしてくる朝比奈を見上げ、告げる

「今回、あなたが起こした騒ぎを制圧する為に、「組織」だけではなく、「怪奇同盟」や「首塚」も動いています……諦めて、投降しなさい」
「………黙れ、「組織」の狗が。私に口出しするな」

 …黒服に、嫌悪をこめた視線を向け、拒絶の言葉を吐く朝比奈
 彼の不機嫌を感じ取ったかのように、クールトーがすっく、と立ち上がり…四階分の高さを一気に飛び降り、黒服の前に降り立った
 牙を剥き出し、黒服に襲い掛かったが、パワーストーンの結界で阻まれる

「大樹っ!」
「私は大丈夫です、あなたは、自分の相手に集中を!」

 叫びながら、黒服は背後から襲われそうになっていた翼に向かって、パワーストーンを放り投げる
 守護の力が発動し、一瞬だけ展開された結界が、翼を護った

「ーーーーっ!」

 その隙に、再び黒服に襲い掛かるクールトー
 黒服は、その攻撃をギリギリのところで避けた
 クールトーが舌打ちした音が、黒服の耳に届く

「……よく粘るな、化け物の癖に」
「大樹を、化け物と呼ぶなっ!!」

 朝比奈の呟きが耳に届いたのだろう、翼が激昂したように叫ぶ
 一瞬、能力が発動して体温があがったのだろう、翼の周囲の景色が、陽炎のように揺れた
 翼の、そんな叫びに…朝比奈は、忌々しげに眉をひそめた

「…化け物を化け物と呼んで、何が悪い。その男は、人間ではないのだぞ」
「大樹は、元々人間だっ!」
「……だが、今は人間ではない」

 冷たく、冷たく、言い放つ朝比奈
 …その声に、都市伝説への嫌悪がはっきりと現れていることに、黒服は気づく
 朝比奈の、都市伝説への、「組織」への嫌悪が、憎悪が
 はっきりと、伝わってくる

 朝比奈が都市伝説を、「組織」を憎んでいる事を、黒服は朝比奈の経歴を調べている最中に、気づいた
 都市伝説を憎みながらも、目的の為に都市伝説の力を欲している
 …それが、今の朝比奈だ
 目的を知った今となっては、同情しない訳でもない
 だが、それでも、朝比奈の翼に対する仕打ちは許せないし……その目的を、達成させる訳にはいかない

 クールトーの猛攻の隙をかいくぐり、朝比奈に向かって光線銃を発砲した
 しかし、その攻撃は、朝比奈の片手で軽く受け止められる
 …その掌に見えた、変化に
 黒服は、朝比奈の三つ目の都市伝説の正体を確信する
 後は……それが、その都市伝説の、「どれ」に当たるか、それだけだ

 思考をめぐらせる黒服の耳に、朝比奈の声が届く

「……どうした?このままでは、貴様らが疲労していくだけだぞ?」

 …朝比奈の言う通りだ
 黒服も翼も、まだ、一階で足止めされている最中
 朝比奈の立つ四階までが、あまりにも遠い
 ……視線が届く距離だ、翼が能力を発動する気になれば攻撃できる距離
 だが、翼の「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力は、朝比奈には通用しない

 どうする?
 翼がいくら殴り飛ばしても、コーク・ロアの被害者達が減る様子がない
 いや、時間がかかればかかるほど、最初のうちに気絶させた被害者の内、パワーストーンで浄化しきれなかった分が起き上がり、再び翼に襲い掛かる
 ……どうする?
 自分の能力、そして、朝比奈に対抗するために持ってきた切り札を効果範囲を考え、黒服はこの場を切り抜けようとして…


「………まったく、情けないねぇ」


 その、思考は
 場に響いた女の声で、中断させられた
 次の瞬間、雑居ビル内を……光が、包み込んで

「…あたしの息子に何しようってんだい、馬鹿亭主が」

 …かつん、と
 ヒールの音が響き渡る
 光が消えた時、コーク・ロアの被害者達は…体の半分以上が、床に埋め込まれた状態となっていて、身動きが取れなくなっていた
 幸いと言うか何というか、首から上が全て埋まっている者はいない
 見れば、クールトーもまた、足が床に埋め込まれ、身動きが取れなくなっていて

「……っ「フィラデルフィア計画」だと!?」

 黒服達を見下ろしていた、朝比奈も、また
 四階のテラスの床に腰から下を埋め込まれ…身動きが、取れなくなっていた

 翼が、きょとんとしているのがわかる
 …黒服も、それは同じだ

「…………え」

 ゆっくりと
 翼と、黒服は…女の声がした方向を、向く

「…朝比奈 マドカ」
「………お袋?」

 かつん、と
 ヒールを鳴らし、雑居ビル内に入ってきた女……朝比奈 マドカ
 一瞬、翼に慈しむような、申し訳無さそうな視線を向けて
 …しかし、すぐに咥えていたタバコをはき捨てると、朝比奈を見上げ、睨む

「来てやったよ、馬鹿亭主」
「…ッマド、カァ……!貴様、都市伝説と契約を………貴様も!私の邪魔をするのか!!」

 朝比奈の叫びが、雑居ビル内に響き渡る
 かつん、かつん、と、マドカはゆっくりと、翼に近づいて……しかし、どこか一定の距離を保ちながら、朝比奈を睨みあげ続けている

「残念だけどね。都市伝説契約者としては、あたしの方が先輩さね。あたしが「フィラデルフィア計画」と契約したのは、あんたと結婚する前なんだからね」

 …フィラデルフィア計画
 それが、朝比奈 マドカが契約した、都市伝説
 彼女能力は、「首塚」に所属しているフィラデルフィア計画の契約者とは違い、実験によって、機械や壁に埋め込まれたような状態で見付かった研究者達の逸話が元となっている
 そのまま、その物質と融合させる事まではないだけ、大人しい能力だろうか
 だが、発動すれば、この通り……戦況を、一変させる

「あたしのたった一人の息子を……あんたの自分勝手な目的には、使わせないよ」

 拳を握り緊めているマドカ
 今にでも、朝比奈の元まで駆け上がり、殴り飛ばさんとせん勢いだ

 ……突然、現れたマドカの様子に
 翼が動揺しているのが、はっきりと、伝わってきた
 …しかも、母親もが、都市伝説能力者である事を知ったのだ
 動揺しないはずがない

「…おふく、ろ」

 …翼が、マドカに何か、声をかけようとして


 それを、遮るように
 …びしっ、と
 何かに、ヒビが入る大きな音が…雑居ビル内に、響き渡る


「…そうか、貴様も、都市伝説契約者か、マドカ…………貴様も、私から彼女を奪った連中と、同じか……!」
「……?」

 …朝比奈の言葉に、マドカが眉をひそめる

 びしっ、びしっ、と
 聞えてくる音の発生源は…朝比奈
 見れば、朝比奈が腰から下を埋め込まれた、四階のテラス……その足場全体に、ヒビが入り始めていた

「…いけません、翼、マドカさん、下がって!!」
「…ぇ」
「……!?」

 びしっ、びしっ、びしっ
 ヒビは、どんどんどんどん大きくなっていって
 朝比奈の、体にも……どんどん、どんどん、変化が現れていっていた

「…貴様も!!化け物の力を使い、私の邪魔をするならば!!!全力で叩き潰すまでだ!!!!」

 朝比奈が、咆える
 その顔が……まるで、蜥蜴のように変化していっている
 その肌の表面を鱗が覆い始め、メキメキと、体が肥大化していく
 爪が鋭く硬質化し、背中から、巨大な、蝙蝠のような翼が生え始める


 最悪の予想が、現実として目の前に現れたのを
 黒服は、はっきりと目撃した



 雑居ビルの天井が吹き飛ぶ
 そこから姿を現したのは……ドラゴン
 巨大な、巨大な…ドラゴンの、頭部
 それは、窮屈そうに雑居ビルから上半身を引きずり出し、巨大な翼を広げた
 そして……天に向かって、咆える
 その声は空気を震わせ、学校町中に響き渡った



 朝比奈 秀雄の、三つ目の契約都市伝説
 それは……ドラゴン
 西洋における悪の代名詞…ドラゴン
 それが、この学校町に、ついに姿を現したのだった




to be … ?





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