………諦めるな?
最後まで諦めるな?
最後まで諦めるな?
…………何故、そんな事を言うんだ?
最初から、諦めてしまった方がずっと楽だ
それに気づいてしまえば……もう、諦める事しか、できない
それに気づいてしまえば……もう、諦める事しか、できない
R.G
さて
明日がカイザーを倒し、若干能力を暴走させてはしまったが、駆けつけた恋路と黒服Hによって、竜宮も無事、回収された
恋路は倒れている明日を起こそうとし、Hはとりあえず、竜宮をどこか安全な場所に送ろうとして…
明日がカイザーを倒し、若干能力を暴走させてはしまったが、駆けつけた恋路と黒服Hによって、竜宮も無事、回収された
恋路は倒れている明日を起こそうとし、Hはとりあえず、竜宮をどこか安全な場所に送ろうとして…
「……」
「Hさん?」
「Hさん?」
どこかに、携帯で連絡を取ろうとしていたHの手が……止まった
どうしたのか、と一瞬首を傾げた恋路だったが、彼女もまた、気づく
どうしたのか、と一瞬首を傾げた恋路だったが、彼女もまた、気づく
近づいてくる気配
敵意こそ感じないが、恋路は明日を庇うような位置に立って、警戒する
敵意こそ感じないが、恋路は明日を庇うような位置に立って、警戒する
暗闇の中……高校生くらいの少年と、小学校低学年くらいの少女が、近づいてきているのが、見えた
「…あれ?」
……少年の方は、恋路が以前、ちらりと見た事あるような少年だった
確か、あれは正月……そうだ、明日のクラスメイトだかで、餅が余ってるからって、分けてくれた…
確か、あれは正月……そうだ、明日のクラスメイトだかで、餅が余ってるからって、分けてくれた…
「…ん?獄門寺のとこの坊やか?」
「………そろそろ、坊や、なんて呼ばれる歳じゃあないんだが…」
「………そろそろ、坊や、なんて呼ばれる歳じゃあないんだが…」
Hに獄門寺と呼ばれた少年が、ぼそり、呟いてきた
みー?と、獄門寺の傍らにいる、おかっぱ頭に白いブラウス、真っ赤な吊りスカートと言ういでたちの少女が首を傾げている
みー?と、獄門寺の傍らにいる、おかっぱ頭に白いブラウス、真っ赤な吊りスカートと言ういでたちの少女が首を傾げている
そうだ、獄門寺だ
恋路は、今更ながらに彼の名前を思い出す
恋路は、今更ながらに彼の名前を思い出す
と、そうしていると、Hに軽く肩を抑えられていた竜宮が、はっと顔を上げ、獄門寺に視線をやると
「------っ若ぁ!」
「っと…」
「っと…」
Hの手を振り払い、獄門寺に向かって駆け出した
足をもつれさせながら獄門寺に駆け寄り、その体に抱きついて……今までせき止めていた恐怖が一気に噴出したかのように、泣き出す
獄門寺は、小さくため息をつきながら、慰めるようにその頭を撫でてやっている
獄門寺の傍らの少女も、なでなでと、竜宮の頭を撫でている
足をもつれさせながら獄門寺に駆け寄り、その体に抱きついて……今までせき止めていた恐怖が一気に噴出したかのように、泣き出す
獄門寺は、小さくため息をつきながら、慰めるようにその頭を撫でてやっている
獄門寺の傍らの少女も、なでなでと、竜宮の頭を撫でている
「何だ、獄門寺のとこの身内だったのか」
「………うちの組のもんの身内だよ」
「………うちの組のもんの身内だよ」
Hの言葉に、獄門寺はどこか、億劫そうにそう答えて
ちらり、恋路の傍らで倒れている明日に視線を向け…やや、心配そうな様子を見せてくる
とは言っても、目元を隠すような前髪のせいで、その表情はよく見えないが
ちらり、恋路の傍らで倒れている明日に視線を向け…やや、心配そうな様子を見せてくる
とは言っても、目元を隠すような前髪のせいで、その表情はよく見えないが
「何があったか…………かは、後で海造に聞くからいいか………………明日は、大丈夫なのか?」
「みー、一杯怪我してるの…」
「みー、一杯怪我してるの…」
獄門寺の傍らの少女も、心配そうにそう言ってくる
…相手は、明日のクラスメイトだし、敵意も感じない
恋路は小さく苦笑すると、明日の傍らに腰を下ろし、再び、彼を起こそうとする
…相手は、明日のクラスメイトだし、敵意も感じない
恋路は小さく苦笑すると、明日の傍らに腰を下ろし、再び、彼を起こそうとする
「大丈夫だよ。まぁ、治療の為の道具とかは、ここのHさんが出してくれるだろうし」
「……まぁ、今回は治療薬は弟分から分捕っ……分けてもらったからあるけどよ。普段はその類持ち出せる身じゃないんだからな、俺は」
「……まぁ、今回は治療薬は弟分から分捕っ……分けてもらったからあるけどよ。普段はその類持ち出せる身じゃないんだからな、俺は」
Hは肩をすくめると、小さな小瓶を恋路に手渡した
中には……色が何か凄い事になっている軟膏が入っている
色は凄いが、まぁ、この状況で、おかしな物は渡してこないだろう
そう考え、恋路はその軟膏で明日の治療を始める
中には……色が何か凄い事になっている軟膏が入っている
色は凄いが、まぁ、この状況で、おかしな物は渡してこないだろう
そう考え、恋路はその軟膏で明日の治療を始める
「…大丈夫、ならいいんだが…」
はぁ、と
また、獄門寺はため息をついた
随分とため息をつく人だ、と恋路はそんな印象を覚える
正月の時、ちらりと顔を合わせた時は、そんな印象を感じなかったが…
また、獄門寺はため息をついた
随分とため息をつく人だ、と恋路はそんな印象を覚える
正月の時、ちらりと顔を合わせた時は、そんな印象を感じなかったが…
わんわんと泣き続けている竜宮
獄門寺はそんな竜宮の背中を撫でながら、Hにややきつめの視線を向ける
獄門寺はそんな竜宮の背中を撫でながら、Hにややきつめの視線を向ける
「…あんたは、マッドガッサーの騒動の時に、少し顔を合わせたな。ここに来る途中、狂犬病にかかってるような犬とか、麻薬中毒の症状を起こしている連中を見たが、それもそっち絡みか?」
「いやぁ、「組織」はその騒動をどうにかする方向で動いてるんでね。原因はこっちじゃねぇよ」
「いやぁ、「組織」はその騒動をどうにかする方向で動いてるんでね。原因はこっちじゃねぇよ」
軽い調子で、獄門寺の問いに答えているH
そうか、と獄門寺は、またため息をついて
そうか、と獄門寺は、またため息をついて
「………内の身内と、俺のクラスメイトを……………おかしな事に、巻き込まないでほしいんだが」
---直後
息苦しいような雰囲気が、周囲を包み込んだ
息苦しいような雰囲気が、周囲を包み込んだ
それは、殺気とは違う
敵意とも、違う
敵意とも、違う
…あえて言い表すならば、威圧感、とでも言うような
「…おぉ、怖い怖い」
くっく、とHがからかうように笑う
息苦しい感覚は、次の瞬間には、もう、消えうせていた
息苦しい感覚は、次の瞬間には、もう、消えうせていた
「……それじゃあ、厄介ごとにあまり関わりたくないんで、俺達はこれで…………花子さん、海造、行くぞ」
「はーい」
「…………うん」
「はーい」
「…………うん」
えぐえぐと泣きながら、竜宮は獄門寺の手を掴む
みー、と花子さんが、竜宮のその反対の手を掴み…三人は、歩き出した
その様子は、どこか、仲のいい兄弟のようにも見えて
それを見送り、やれやれ、と今度はHがため息をついた
みー、と花子さんが、竜宮のその反対の手を掴み…三人は、歩き出した
その様子は、どこか、仲のいい兄弟のようにも見えて
それを見送り、やれやれ、と今度はHがため息をついた
「全く。こっちはこっちで忙しいってのに。相変わらず手間のかかる奴だ」
「すみません、Hさん」
「まぁ、いいんだがよ。こっちも担当契約者に何かあったら困るんでね」
「すみません、Hさん」
「まぁ、いいんだがよ。こっちも担当契約者に何かあったら困るんでね」
そう言って、改めて携帯を弄りだすH
やたらと長い番号を後、恋路には理解できない暗号のような言葉で、何やら話し出している
…話がついたのか、通話を切ると
ゆっくりと、明日に視線を向けて……口を開く
やたらと長い番号を後、恋路には理解できない暗号のような言葉で、何やら話し出している
…話がついたのか、通話を切ると
ゆっくりと、明日に視線を向けて……口を開く
「…何かあったら、困るから、こそ…お前さん達にゃあ、ハーメルンの笛吹きにゃあ関わってほしくないんだがね」
「所長は、悪い人じゃ……………………いや、悪人だけど。でも、悪い人じゃないですよ?」
「所長は、悪い人じゃ……………………いや、悪人だけど。でも、悪い人じゃないですよ?」
相変わらず上田を嫌っている様子のHに、恋路は苦笑してそう告げる
しかし……Hはどこか冷たい様子で、続ける
しかし……Hはどこか冷たい様子で、続ける
「…お前さん達が、そう考えている事実が……俺には、お前たちがハーメルンの野郎に暗示をかけられているようにしか、思えねぇんだよ」
「……暗示、ですか?」
「そうさ………あいつは、喋るだけで相手に暗示をかける事ができるような、そんな規格外だからな。お前らには、あの野郎と会話すらしてほしくないってのが、俺と「組織」の考えだよ」
「……暗示、ですか?」
「そうさ………あいつは、喋るだけで相手に暗示をかける事ができるような、そんな規格外だからな。お前らには、あの野郎と会話すらしてほしくないってのが、俺と「組織」の考えだよ」
…会話すら、と言うのは、言いすぎではないだろうか?
恋路はそう考えたが、Hはどこまでも真剣で……そして、酷く冷たい表情を浮かべている
恋路はそう考えたが、Hはどこまでも真剣で……そして、酷く冷たい表情を浮かべている
「………お前達が、ハーメルンの笛吹きに関わり続けたら…いつか、あいつを討伐するって事になった時……お前達まで、討伐対象になりかねないしな」
「やっぱり、「組織」としては所長を警戒します」
「当たり前だろ。どれだけ、あいつが子供も大人も殺してきたと思ってる?不良の悪餓鬼共だけじゃなく、罪のない連中まで殺してるんだぜ?それを償ったり謝罪したりって事もしていないし……反省すら、していないんだからな」
「やっぱり、「組織」としては所長を警戒します」
「当たり前だろ。どれだけ、あいつが子供も大人も殺してきたと思ってる?不良の悪餓鬼共だけじゃなく、罪のない連中まで殺してるんだぜ?それを償ったり謝罪したりって事もしていないし……反省すら、していないんだからな」
たっぷりの、たっぷりの、嫌悪が篭った声
ここにいない相手への殺意と嫌悪が、はっきりと伝わってくる
ここにいない相手への殺意と嫌悪が、はっきりと伝わってくる
「……ま、その内、俺からも明日に伝えるつもりだけどよ。恋路ちゃんからも、できれば話してくれると嬉しいんだがねぇ?」
「…考えておきます」
「そうかい」
「…考えておきます」
「そうかい」
くっく、と
いつもの、どこか、人をからかっているような表情に戻ったH
…その足元に、光り輝く魔法陣のようなものが現れる
今回、明日の元に向かおうとした恋路の前に現れた時、彼の足元に発生していた物と同じものだ
多分、「組織」の誰かの能力で転移しているんだろう、と恋路は考える
いつもの、どこか、人をからかっているような表情に戻ったH
…その足元に、光り輝く魔法陣のようなものが現れる
今回、明日の元に向かおうとした恋路の前に現れた時、彼の足元に発生していた物と同じものだ
多分、「組織」の誰かの能力で転移しているんだろう、と恋路は考える
「…本当に、Hさんは所長が嫌いなんですね」
「………………あぁ」
「………………あぁ」
姿が消える、その瞬間
Hは、どこまでも冷たい、まるで、突き放したような表情を浮かべて
Hは、どこまでも冷たい、まるで、突き放したような表情を浮かべて
「…大嫌いだよ。あの化け物が」
と、そう言いきって
光に包み込まれて、消えた
光に包み込まれて、消えた
to be … ?