「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-54x

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だれでも歓迎! 編集
 ………諦めるな?
 最後まで諦めるな?

 …………何故、そんな事を言うんだ?

 最初から、諦めてしまった方がずっと楽だ
 それに気づいてしまえば……もう、諦める事しか、できない




                                    R.G







 さて
 明日がカイザーを倒し、若干能力を暴走させてはしまったが、駆けつけた恋路と黒服Hによって、竜宮も無事、回収された
 恋路は倒れている明日を起こそうとし、Hはとりあえず、竜宮をどこか安全な場所に送ろうとして…

「……」
「Hさん?」

 どこかに、携帯で連絡を取ろうとしていたHの手が……止まった
 どうしたのか、と一瞬首を傾げた恋路だったが、彼女もまた、気づく

 近づいてくる気配
 敵意こそ感じないが、恋路は明日を庇うような位置に立って、警戒する

 暗闇の中……高校生くらいの少年と、小学校低学年くらいの少女が、近づいてきているのが、見えた

「…あれ?」

 ……少年の方は、恋路が以前、ちらりと見た事あるような少年だった
 確か、あれは正月……そうだ、明日のクラスメイトだかで、餅が余ってるからって、分けてくれた…

「…ん?獄門寺のとこの坊やか?」
「………そろそろ、坊や、なんて呼ばれる歳じゃあないんだが…」

 Hに獄門寺と呼ばれた少年が、ぼそり、呟いてきた
 みー?と、獄門寺の傍らにいる、おかっぱ頭に白いブラウス、真っ赤な吊りスカートと言ういでたちの少女が首を傾げている

 そうだ、獄門寺だ
 恋路は、今更ながらに彼の名前を思い出す

 と、そうしていると、Hに軽く肩を抑えられていた竜宮が、はっと顔を上げ、獄門寺に視線をやると

「------っ若ぁ!」
「っと…」

 Hの手を振り払い、獄門寺に向かって駆け出した
 足をもつれさせながら獄門寺に駆け寄り、その体に抱きついて……今までせき止めていた恐怖が一気に噴出したかのように、泣き出す
 獄門寺は、小さくため息をつきながら、慰めるようにその頭を撫でてやっている
 獄門寺の傍らの少女も、なでなでと、竜宮の頭を撫でている

「何だ、獄門寺のとこの身内だったのか」
「………うちの組のもんの身内だよ」

 Hの言葉に、獄門寺はどこか、億劫そうにそう答えて
 ちらり、恋路の傍らで倒れている明日に視線を向け…やや、心配そうな様子を見せてくる
 とは言っても、目元を隠すような前髪のせいで、その表情はよく見えないが

「何があったか…………かは、後で海造に聞くからいいか………………明日は、大丈夫なのか?」
「みー、一杯怪我してるの…」

 獄門寺の傍らの少女も、心配そうにそう言ってくる
 …相手は、明日のクラスメイトだし、敵意も感じない
 恋路は小さく苦笑すると、明日の傍らに腰を下ろし、再び、彼を起こそうとする

「大丈夫だよ。まぁ、治療の為の道具とかは、ここのHさんが出してくれるだろうし」
「……まぁ、今回は治療薬は弟分から分捕っ……分けてもらったからあるけどよ。普段はその類持ち出せる身じゃないんだからな、俺は」

 Hは肩をすくめると、小さな小瓶を恋路に手渡した
 中には……色が何か凄い事になっている軟膏が入っている
 色は凄いが、まぁ、この状況で、おかしな物は渡してこないだろう
 そう考え、恋路はその軟膏で明日の治療を始める

「…大丈夫、ならいいんだが…」

 はぁ、と
 また、獄門寺はため息をついた
 随分とため息をつく人だ、と恋路はそんな印象を覚える
 正月の時、ちらりと顔を合わせた時は、そんな印象を感じなかったが…

 わんわんと泣き続けている竜宮
 獄門寺はそんな竜宮の背中を撫でながら、Hにややきつめの視線を向ける

「…あんたは、マッドガッサーの騒動の時に、少し顔を合わせたな。ここに来る途中、狂犬病にかかってるような犬とか、麻薬中毒の症状を起こしている連中を見たが、それもそっち絡みか?」
「いやぁ、「組織」はその騒動をどうにかする方向で動いてるんでね。原因はこっちじゃねぇよ」

 軽い調子で、獄門寺の問いに答えているH
 そうか、と獄門寺は、またため息をついて

「………内の身内と、俺のクラスメイトを……………おかしな事に、巻き込まないでほしいんだが」

 ---直後
 息苦しいような雰囲気が、周囲を包み込んだ

 それは、殺気とは違う
 敵意とも、違う

 …あえて言い表すならば、威圧感、とでも言うような

「…おぉ、怖い怖い」




 くっく、とHがからかうように笑う
 息苦しい感覚は、次の瞬間には、もう、消えうせていた

「……それじゃあ、厄介ごとにあまり関わりたくないんで、俺達はこれで…………花子さん、海造、行くぞ」
「はーい」
「…………うん」

 えぐえぐと泣きながら、竜宮は獄門寺の手を掴む
 みー、と花子さんが、竜宮のその反対の手を掴み…三人は、歩き出した
 その様子は、どこか、仲のいい兄弟のようにも見えて
 それを見送り、やれやれ、と今度はHがため息をついた

「全く。こっちはこっちで忙しいってのに。相変わらず手間のかかる奴だ」
「すみません、Hさん」
「まぁ、いいんだがよ。こっちも担当契約者に何かあったら困るんでね」

 そう言って、改めて携帯を弄りだすH
 やたらと長い番号を後、恋路には理解できない暗号のような言葉で、何やら話し出している
 …話がついたのか、通話を切ると
 ゆっくりと、明日に視線を向けて……口を開く

「…何かあったら、困るから、こそ…お前さん達にゃあ、ハーメルンの笛吹きにゃあ関わってほしくないんだがね」
「所長は、悪い人じゃ……………………いや、悪人だけど。でも、悪い人じゃないですよ?」

 相変わらず上田を嫌っている様子のHに、恋路は苦笑してそう告げる
 しかし……Hはどこか冷たい様子で、続ける

「…お前さん達が、そう考えている事実が……俺には、お前たちがハーメルンの野郎に暗示をかけられているようにしか、思えねぇんだよ」
「……暗示、ですか?」
「そうさ………あいつは、喋るだけで相手に暗示をかける事ができるような、そんな規格外だからな。お前らには、あの野郎と会話すらしてほしくないってのが、俺と「組織」の考えだよ」

 …会話すら、と言うのは、言いすぎではないだろうか?
 恋路はそう考えたが、Hはどこまでも真剣で……そして、酷く冷たい表情を浮かべている

「………お前達が、ハーメルンの笛吹きに関わり続けたら…いつか、あいつを討伐するって事になった時……お前達まで、討伐対象になりかねないしな」
「やっぱり、「組織」としては所長を警戒します」
「当たり前だろ。どれだけ、あいつが子供も大人も殺してきたと思ってる?不良の悪餓鬼共だけじゃなく、罪のない連中まで殺してるんだぜ?それを償ったり謝罪したりって事もしていないし……反省すら、していないんだからな」

 たっぷりの、たっぷりの、嫌悪が篭った声
 ここにいない相手への殺意と嫌悪が、はっきりと伝わってくる

「……ま、その内、俺からも明日に伝えるつもりだけどよ。恋路ちゃんからも、できれば話してくれると嬉しいんだがねぇ?」
「…考えておきます」
「そうかい」

 くっく、と
 いつもの、どこか、人をからかっているような表情に戻ったH
 …その足元に、光り輝く魔法陣のようなものが現れる
 今回、明日の元に向かおうとした恋路の前に現れた時、彼の足元に発生していた物と同じものだ
 多分、「組織」の誰かの能力で転移しているんだろう、と恋路は考える

「…本当に、Hさんは所長が嫌いなんですね」
「………………あぁ」

 姿が消える、その瞬間
 Hは、どこまでも冷たい、まるで、突き放したような表情を浮かべて

「…大嫌いだよ。あの化け物が」

 と、そう言いきって
 光に包み込まれて、消えた


to be … ?



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