----悪魔の囁きが消失してから、数日後
病室の前まで来て…翼は、一度立ち止まった
すぅ…と、軽く深呼吸する
こんこん、と、軽く病室の扉をノックした
すぅ…と、軽く深呼吸する
こんこん、と、軽く病室の扉をノックした
「………誰だ?」
今まで聞いてきた声と、まったく変わらない、冷たさを含んだ声
その声に、反射的に萎縮しかけ、だが、首を左右に振って、顔をあげる
その声に、反射的に萎縮しかけ、だが、首を左右に振って、顔をあげる
「親父、入るぞ?」
「……………」
「……………」
返事はない
だが、気にせず、翼は扉を開けた
だが、気にせず、翼は扉を開けた
…窓を開けていたらしい
そよそよと、5月に入ったばかりの、まだ少し冷たさを含んだ風が頬を撫でる
病室のベッドの上で、朝比奈 秀雄は、静かに窓の外を眺めていた
灰色になった髪が、かすかに風に揺れている
そよそよと、5月に入ったばかりの、まだ少し冷たさを含んだ風が頬を撫でる
病室のベッドの上で、朝比奈 秀雄は、静かに窓の外を眺めていた
灰色になった髪が、かすかに風に揺れている
「…親父」
「………来たのか、翼」
「………来たのか、翼」
ゆっくりと、朝比奈が振り返る
振り返った、その顔の……否、その目を見て、翼は小さく息を飲んだ
朝比奈の、典型的な日本人の黒い瞳の色が……金色に、変貌していたのだ
それは、朝比奈がもう二度と、平凡な、普通の人間の生活には戻れぬと言う、その証のようで
翼の様子に気付いた朝比奈が、小さく呟く
振り返った、その顔の……否、その目を見て、翼は小さく息を飲んだ
朝比奈の、典型的な日本人の黒い瞳の色が……金色に、変貌していたのだ
それは、朝比奈がもう二度と、平凡な、普通の人間の生活には戻れぬと言う、その証のようで
翼の様子に気付いた朝比奈が、小さく呟く
「…この目が、あの化け物共との契約の代償の一つ、だそうだ。「黄金伝説」のドラゴン共の多数と契約してこの程度ですんだのなら、まだ軽いと言われた」
「……そう、か。でも、親父。あんた、それだけじゃなく…」
「……そう、か。でも、親父。あんた、それだけじゃなく…」
……それ以上は言うな、とでも言うように、朝比奈が制す
自分の体の事は、自分が一番よくわかっているのだろう
多少、忌々しげな様子を見せながら、答えてくる
自分の体の事は、自分が一番よくわかっているのだろう
多少、忌々しげな様子を見せながら、答えてくる
「………あの化け物の言葉に乗ったのだ。自業自得だろう…この身が朽ち果てなかっただけ、マシだ」
淡々と、そう告げてくる朝比奈
己の身に起きている変化を事実として受け止め、これからの事も覚悟している様子だった
己の身に起きている変化を事実として受け止め、これからの事も覚悟している様子だった
「…それで、翼」
ゆっくりと
金色の双眸が、翼を真っ直ぐに、射抜いてくる
金色の双眸が、翼を真っ直ぐに、射抜いてくる
「お前は、私を殺しに来たのか?」
そう、問い掛けてきた朝比奈の表情は
翼の答えがどんなものであろうとも、受け入れる覚悟が出来ている表情だった
翼の答えがどんなものであろうとも、受け入れる覚悟が出来ている表情だった
…病院の、待合室にて
「「薔薇十字団」の保護下に?」
「えぇ、あの時、あの場には、先に「薔薇十字団」が駆けつけましたから」
「えぇ、あの時、あの場には、先に「薔薇十字団」が駆けつけましたから」
あの日、朝比奈 秀雄との戦いが終わり、悪魔の囁きが消滅した直後
真っ先に、あの場に駆けつけてきた組織は「薔薇十字団」だった
恐らく、戦いが終われば、すぐにでも向かえるように準備していたのかもしれない
「組織」先んじてあの場に現れ、素早く、朝比奈 秀雄を確保してきたのだ
ここの病院も、「薔薇十字団」の影響下にある病院だ
よくよく気配を調べれば、スタッフの中に「薔薇十字団」のゴーレムが混じっているのがわかる
真っ先に、あの場に駆けつけてきた組織は「薔薇十字団」だった
恐らく、戦いが終われば、すぐにでも向かえるように準備していたのかもしれない
「組織」先んじてあの場に現れ、素早く、朝比奈 秀雄を確保してきたのだ
ここの病院も、「薔薇十字団」の影響下にある病院だ
よくよく気配を調べれば、スタッフの中に「薔薇十字団」のゴーレムが混じっているのがわかる
「「薔薇十字団」としましては、罪を断じて命を奪うのではなく、その償いをさせたいのでしょうね」
「……甘い考え方ね」
「……甘い考え方ね」
黒服が口にするその内容に、やや呆れた様子を見せる望
ちゅー、と他人事のようにジュースを飲んでいた詩織が、のんきに続ける
ちゅー、と他人事のようにジュースを飲んでいた詩織が、のんきに続ける
「ま、殺しちゃったらそこまでだけど、生かしておけば何かしらの役に立つかもしれなし、そう言う事なんでしょ?」
「……そうなのでしょうね、恐らくは」
「……そうなのでしょうね、恐らくは」
小さく苦笑する黒服
彼としては、死を持ってしか償えぬ罪など、この世にはなく
死を持って制裁を加えるのは……他に、本当に、ただの一つも方法がなかった時だけだ、と考えている
だが、もし、翼が、朝比奈を止める為の手段として殺害を選ぶのであったならば、自分が、翼の代わりに朝比奈の命を奪うという選択肢を持っていたのも、事実だ
…翼の心は、肉親殺しには、耐えられないだろうから
幸いにして、結果的に、翼はその手段を選ばないでくれたが
彼としては、死を持ってしか償えぬ罪など、この世にはなく
死を持って制裁を加えるのは……他に、本当に、ただの一つも方法がなかった時だけだ、と考えている
だが、もし、翼が、朝比奈を止める為の手段として殺害を選ぶのであったならば、自分が、翼の代わりに朝比奈の命を奪うという選択肢を持っていたのも、事実だ
…翼の心は、肉親殺しには、耐えられないだろうから
幸いにして、結果的に、翼はその手段を選ばないでくれたが
「……黒服」
「どうしました?」
「…翼は、結局………あれだけのことを、されても、朝比奈 秀雄が他の連中にしたことは、ともかくとして…………自分にした事だけでも、許すのかしらね」
「どうしました?」
「…翼は、結局………あれだけのことを、されても、朝比奈 秀雄が他の連中にしたことは、ともかくとして…………自分にした事だけでも、許すのかしらね」
望の、そんな言葉に
黒服は、どこか複雑そうな表情を浮かべて見せた
黒服は、どこか複雑そうな表情を浮かべて見せた
「…そんなに、俺に殺されたいのかよ」
一歩
翼は、朝比奈に近づく
翼は、朝比奈に近づく
「お前には、その資格がある」
淡々と、そう告げる朝比奈
逃げる様子は見せない
今、翼がこの場において、朝比奈を殺害しようとする動きを見せたと、しても
朝比奈は、逃げようとしないだろう
逃げる様子は見せない
今、翼がこの場において、朝比奈を殺害しようとする動きを見せたと、しても
朝比奈は、逃げようとしないだろう
一歩、一歩
ゆっくりと、翼は朝比奈に近づいて
手を伸ばせば、首にその手が届く
その範囲まで、近づいて
す…と、翼の手が、伸ばされた
それを見て、朝比奈は静かに目を閉じ…
ゆっくりと、翼は朝比奈に近づいて
手を伸ばせば、首にその手が届く
その範囲まで、近づいて
す…と、翼の手が、伸ばされた
それを見て、朝比奈は静かに目を閉じ…
……ぺし
脳天に、軽く、チョップが落とされる
脳天に、軽く、チョップが落とされる
「……何をする」
「何をする、じゃねぇよ、馬鹿親父が」
「………お前に馬鹿、と呼ばれるのは、マドカにそう呼ばれる事の次には、異議を申し立てたいものだ」
「うっせぇ!………とにかく、俺は、あんたを殺す気はねぇよ」
「何をする、じゃねぇよ、馬鹿親父が」
「………お前に馬鹿、と呼ばれるのは、マドカにそう呼ばれる事の次には、異議を申し立てたいものだ」
「うっせぇ!………とにかく、俺は、あんたを殺す気はねぇよ」
はぁ、と呆れたように、翼はため息をつく
そんな翼を、朝比奈は酷く不思議そうに見つめていた
そんな翼を、朝比奈は酷く不思議そうに見つめていた
「…言っただろう、お前には、私を殺す資格がある、と。お前とて、私を恨んでいるはずだ」
「………そりゃあ、恨みはたっぷりとあったけど。殺したいと思うほどじゃねぇよ」
「………そりゃあ、恨みはたっぷりとあったけど。殺したいと思うほどじゃねぇよ」
それに、と
小さく、肩をすくめて、続ける
小さく、肩をすくめて、続ける
「…あの時、思いっきりぶん殴ったら……もう、どうでも良くなった。許すのか、って聞かれたら、それは、自分でもよくわかんねぇけど……ただ、あんたを殺す気はねぇ」
「……………そうか」
「……………そうか」
翼の答えに、今度は朝比奈がため息をついた
「マドカと、同じ事を言うのだな。やはり、あれが産んだ子供か。似ているらしい」
「心の底から嬉しくねぇぞ、その言葉は」
「そうか」
「心の底から嬉しくねぇぞ、その言葉は」
「そうか」
淡々と答え……そして、どこか自嘲気味に笑う朝比奈
翼に視線を向け直したときのその表情は、酷く真剣で
翼に視線を向け直したときのその表情は、酷く真剣で
「……私に、こんな言葉をお前にかける資格がないことなど、わかっている…………だが、言わせて欲しい…………すまなかった」
謝罪の言葉
それが、翼の心を揺さぶる
それが、翼の心を揺さぶる
「お前は、私を父として見なくとも、良い………父と呼ばれる資格など、私は持っていない」
「…………」
「…だが、それでも………私は、お前を息子だと、認識したい。お前は、マドカが命を賭して産み落とした……私と、彼女との、たった一人の、子供なのだから」
「…………」
「…だが、それでも………私は、お前を息子だと、認識したい。お前は、マドカが命を賭して産み落とした……私と、彼女との、たった一人の、子供なのだから」
………朝比奈の言葉に
翼は、どう答えたら良いのか、迷ったような表情を、浮かべて
翼は、どう答えたら良いのか、迷ったような表情を、浮かべて
「……父、さ」
翼が
そう、口に出しかけたのと
そう、口に出しかけたのと
それは、ほぼ、同時だった
「あぁ、いたいた」
「…?あなたは、山田さん…どうかなさいましたか?」
「…?あなたは、山田さん…どうかなさいましたか?」
ぱたぱたと、黒服の姿を見かけて駆け寄ってきた青年、山田
やや慌てた様子で、辺りを見回している
やや慌てた様子で、辺りを見回している
「あー、その…ここ、朝比奈 秀雄が入院してる病院だよな?」
「そうだけど、どうかしたの?」
「そうだけど、どうかしたの?」
望に問われ
山田は、心底嫌そうな表情で答える
山田は、心底嫌そうな表情で答える
「…マゾが、な」
「うん、わかった」
「………とりあえず、私たちは、彼女の姿は見かけていませんが…」
「うん、わかった」
「………とりあえず、私たちは、彼女の姿は見かけていませんが…」
……あぁ
大体、予測できた
黒服と望、ついでに詩織は、病室で起こっているであろう惨劇を軽く予想しつつ…黒服は同時に頭痛も感じつつ、立ち上がった
翼がいるはずの、朝比奈の病室に向かう
大体、予測できた
黒服と望、ついでに詩織は、病室で起こっているであろう惨劇を軽く予想しつつ…黒服は同時に頭痛も感じつつ、立ち上がった
翼がいるはずの、朝比奈の病室に向かう
「…そう言えば、朝比奈 秀雄の容態、ってどんな感じなんだ?」
「……それが、ですね」
「……それが、ですね」
何気なく尋ねてきた、山田の言葉に
黒服は、やや難しそうな表情を浮かべ、答え始めた
黒服は、やや難しそうな表情を浮かべ、答え始めた
「改めましてこんにちは、お義父様!!このエムナ=ド=サンタ=クロース、この翼様と結婚を前提にお付き合いさせて頂いて」
じゅうっ!!!
突如、現れたマゾが、寝言をほざいていた、その最中に
マゾの体が、思いっきり、炎に包み込まれた
…翼の「厨2病」との多重契約の炎が発動したのだ
いきなり燃え始めたマゾを見て……朝比奈は翼に告げる
突如、現れたマゾが、寝言をほざいていた、その最中に
マゾの体が、思いっきり、炎に包み込まれた
…翼の「厨2病」との多重契約の炎が発動したのだ
いきなり燃え始めたマゾを見て……朝比奈は翼に告げる
「…翼、女は選べ。この化け物だけはやめておけ。それと、その炎は多様は命に関ると聞いている。多様するな」
「こいつの寝言を真に受けんなっ!!妄想全開の妄言でしかねぇっつの!!……炎に関しては、俺だってよくわかってるよ」
「こいつの寝言を真に受けんなっ!!妄想全開の妄言でしかねぇっつの!!……炎に関しては、俺だってよくわかってるよ」
今は、うっかりカっとなって使ったが
普段は、さほど多様してはいない
この炎を使うとなると、それこそ、この父のような厄介な相手や強い相手だけだ
普段は、さほど多様してはいない
この炎を使うとなると、それこそ、この父のような厄介な相手や強い相手だけだ
翼の言葉に、そうか、と頷く朝比奈
とりあえず、マゾと翼が付き合っていないという事実を知ってほっとしたようである
とりあえず、マゾと翼が付き合っていないという事実を知ってほっとしたようである
……がし
炭になったはずのマゾが、即時再生
翼の足を、掴んだ
炭になったはずのマゾが、即時再生
翼の足を、掴んだ
「っふ、ふふふふふふ………翼様の燃えるような愛、しかと、受け取りました!!」
「愛じゃねぇええええ!!??こんなドメスティックバイオレンスな愛があってたまるか!?っつか、離れろど変態っ!!」
「あぁっ!?ツンデレさんな言葉の刃が心地いいっ!?」
「愛じゃねぇええええ!!??こんなドメスティックバイオレンスな愛があってたまるか!?っつか、離れろど変態っ!!」
「あぁっ!?ツンデレさんな言葉の刃が心地いいっ!?」
げしげしげしげしげし!!
わりと容赦なく、マゾを蹴っている翼
が、マゾはむしろ喜ぶだけである
わりと容赦なく、マゾを蹴っている翼
が、マゾはむしろ喜ぶだけである
「翼、ここは病院だ。騒ぐな」
「っつてもよ。親父…」
「……とりあえず、これは邪魔だな」
「っつてもよ。親父…」
「……とりあえず、これは邪魔だな」
むんず、と
朝比奈が、マゾの首根っこを、掴んだ
片手で軽々と、その体を持ち上げる
その様子は、とても、病室で安静にしているはずの男には見えない
朝比奈が、マゾの首根っこを、掴んだ
片手で軽々と、その体を持ち上げる
その様子は、とても、病室で安静にしているはずの男には見えない
「あら?お義父様?」
「……貴様に、義父などと呼ばれたくない」
「……貴様に、義父などと呼ばれたくない」
冷たく、言い放ち
朝比奈は、少し空けていた窓を全開にすると………ぺいっ、と、その窓から、あっさりとマゾを放り投げた
そして、軽く息を吸い込み……
朝比奈は、少し空けていた窓を全開にすると………ぺいっ、と、その窓から、あっさりとマゾを放り投げた
そして、軽く息を吸い込み……
窓の外へ放り投げたマゾに、向かって
黒に近い紫色のブレスを、勢いよく、吹き付けた
黒に近い紫色のブレスを、勢いよく、吹き付けた
「……遅かったか」
毒のブレスに蝕まれ、落下していったマゾの様子を見て…盛大に、ため息をついた山田
病室にいた翼と朝比奈に、頭を下げる
病室にいた翼と朝比奈に、頭を下げる
「…すみません、家の馬鹿が迷惑かけて」
「埋めとけ、あれは。コンクリ詰めにでもして海にでも沈めて置けよ」
「………多分、そうしても、帰って来る」
「埋めとけ、あれは。コンクリ詰めにでもして海にでも沈めて置けよ」
「………多分、そうしても、帰って来る」
山田の言葉に、ほぼ同時に舌打ちした翼と朝比奈
…翼は喜ばないかもしれないが、やはり、親子なのである
妙な所で息があう
…翼は喜ばないかもしれないが、やはり、親子なのである
妙な所で息があう
「毒のブレスも、まだ使えるのね」
「まぁ、炎のブレスと毒のブレスが、西洋竜の特徴のひとつですからね」
「まぁ、炎のブレスと毒のブレスが、西洋竜の特徴のひとつですからね」
望の言葉に、苦笑しながら答える黒服
…朝比奈から、解き放たれた「黄金伝説」のドラゴン達
だが、一匹だけが…朝比奈の中に、残っていた
あまり大きくない、人間より少し大きい程度の、小柄な竜が
恐らく、小柄な姿であるが故、巨大化した姿の時、その存在が表に出ていなかったのだろう
そのせいで、「ロンギヌスの槍」の影響を受けず、よって、「刃物は縁を切る」によって、朝比奈との契約を切られる事もなく、朝比奈の中に残ったのだ
だが、一匹だけが…朝比奈の中に、残っていた
あまり大きくない、人間より少し大きい程度の、小柄な竜が
恐らく、小柄な姿であるが故、巨大化した姿の時、その存在が表に出ていなかったのだろう
そのせいで、「ロンギヌスの槍」の影響を受けず、よって、「刃物は縁を切る」によって、朝比奈との契約を切られる事もなく、朝比奈の中に残ったのだ
…結果と、しては
そのドラゴンが、朝比奈の命を護ったと言ってもいい
多数のドラゴンとの無茶な契約、悪魔の囁きの影響による、年齢を考えぬ無茶な身体能力強化
そのせいで、朝比奈の体はボロボロだった
通常ならば、寝たきりの状態や、植物人間状態になってもおかしくはない
しかし、朝比奈の中に、その一匹のドラゴンが残っていた事で…朝比奈 秀雄は、奇跡的に、一生寝たきり、と言う症状を免れた
とは言え、一匹のドラゴンとの契約が残っていたからこその、その状態
もし、そのドラゴンとの契約を切れば……今度こそ、命を落とすかもしれない
ドラゴンによって辛うじて保たれている体の状態が、契約解除によって、一気に崩れかねないからだ
そのドラゴンが、朝比奈の命を護ったと言ってもいい
多数のドラゴンとの無茶な契約、悪魔の囁きの影響による、年齢を考えぬ無茶な身体能力強化
そのせいで、朝比奈の体はボロボロだった
通常ならば、寝たきりの状態や、植物人間状態になってもおかしくはない
しかし、朝比奈の中に、その一匹のドラゴンが残っていた事で…朝比奈 秀雄は、奇跡的に、一生寝たきり、と言う症状を免れた
とは言え、一匹のドラゴンとの契約が残っていたからこその、その状態
もし、そのドラゴンとの契約を切れば……今度こそ、命を落とすかもしれない
ドラゴンによって辛うじて保たれている体の状態が、契約解除によって、一気に崩れかねないからだ
…つまり
朝比奈は、ドラゴンと言う都市伝説なしには、生きられない体となったのだ
いまだ、朝比奈は都市伝説を「化け物」と呼び、心の底から受け入れた訳ではない
…そんな朝比奈が、都市伝説なしでは、生きられない状態となっている
都市伝説のお陰で、命を保っている
……本人にとっては、さぞや、屈辱的なことだろう
もっとも、先ほどのように、便利に使ってもいるようだが
朝比奈は、ドラゴンと言う都市伝説なしには、生きられない体となったのだ
いまだ、朝比奈は都市伝説を「化け物」と呼び、心の底から受け入れた訳ではない
…そんな朝比奈が、都市伝説なしでは、生きられない状態となっている
都市伝説のお陰で、命を保っている
……本人にとっては、さぞや、屈辱的なことだろう
もっとも、先ほどのように、便利に使ってもいるようだが
「…じゃあ、俺、痙攣してると思うマゾ連れて帰るわ、迷惑かけた」
疲れきった様子で、病室を後にした山田
その後ろ姿を見送って、黒服も望とそっと手を繋ぎ、翼に告げる
その後ろ姿を見送って、黒服も望とそっと手を繋ぎ、翼に告げる
「では、翼。私達はまた、待合室で待ってますから…」
「あぁ、いや、いいよ。話は終わったし」
「あぁ、いや、いいよ。話は終わったし」
そう言って、からからと窓を閉めてから、黒服に駆け寄る翼
…病室を出る、直後
朝比奈に、振り返って
…病室を出る、直後
朝比奈に、振り返って
「……ちゃんと、迷惑かけた人達に、償えよ?」
「…………わかっている。それが、私がこれから生き続ける、理由の一つなのだから」
「…………わかっている。それが、私がこれから生き続ける、理由の一つなのだから」
朝比奈の言葉に、翼は満足したように、笑って
「…それじゃあ、また今度な、糞親父」
そう、告げて、黒服達と共に病室を後にした
閉められた扉を見つめ……朝比奈は、小さく呟く
閉められた扉を見つめ……朝比奈は、小さく呟く
「……あのような呼び方でも、父親と認識されているだけマシ、か」
自嘲するように、朝比奈は笑って
これからの己の人生に、静かに想いを馳せた
これからの己の人生に、静かに想いを馳せた
「…そう言えばさ、翼」
「何だよ、詩織」
「何だよ、詩織」
病室を後にしながら
黒服の後をついていく翼に、詩織が尋ねる
黒服の後をついていく翼に、詩織が尋ねる
「翼、悪魔の囁きに、願いを叶える手段があるなら~って囁かれてたよね?……やっぱ、そう言うのに叶えて欲しい願いとかって、あるの?」
「……まぁ、俺も人間だし、願いはあるっちゃあるけどよ」
「何、どんなの?」
「………どんなのだっていいだろ」
「……まぁ、俺も人間だし、願いはあるっちゃあるけどよ」
「何、どんなの?」
「………どんなのだっていいだろ」
けーち、と言う詩織に、ほっとけ、と軽く頭を撫でる翼
どうしたの?と望に言われ、何でもない、と答える
どうしたの?と望に言われ、何でもない、と答える
………「小瓶の魔人」に願うとしたら
それは、「望や大樹達、今の家族が、これからの人生を、命の危険に巻き込まれることなく平穏無事に過ごせる事」だ、と言う事を
口に出したならば、果たして彼女達は、どんな反応を返してくるのか
翼には、予想できないのだった
それは、「望や大樹達、今の家族が、これからの人生を、命の危険に巻き込まれることなく平穏無事に過ごせる事」だ、と言う事を
口に出したならば、果たして彼女達は、どんな反応を返してくるのか
翼には、予想できないのだった
to be … ?