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連載 - 拝戸直しの人殺し-07

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匿名ユーザー

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【拝戸直の人殺し 第七話「アワセ鏡」】

「知っているか拝戸?この世の中には常識の外の存在が居るんだぜ。」
「だからなんだって言うんですか?」
「この大学の四階と五階の間の中四階。
 そこに置いてある合わせ鏡って片方が割れているだろ?」
「ああー、そういえばそうですね。」
「あれは“会わせ”鏡と言ってな、真夜中にあの鏡の前に立つと会えるらしいぜ。」
「何にです?」
「そりゃあお前……。」

大学で俺を指導している教授。
彼は怪談が好きだった。

「――――――“常識の外の存在”だよ。
 今度、見に行ってみてくれないか?」

俺にささやく彼の目は笑っていなかった。




「……という訳なんだよ、みぃちゃん。
 厄介なこと頼まれちゃったなあ。」
「へぇー、そうなんですかー。」
「なんだなんだ?興味なさそうじゃないか。」
「だってそんな変なことに興味沸かないよ、普通。」

教授とお化け談義をしてから数時間後、俺は家に帰ってきていた。
最近、みぃちゃんは近所で拾ったとかいう亀の世話に夢中である。
動物好きだと言っていたがそれはどうやら本当らしい。

「それよりもその亀の世話が大事らしい。
 俺はコーヒー飲む時に妙なにおいがして嫌なんだケドネ。」
「むぅ、可愛いのにぃ……。」

亀はこちらを見て口を大きく開く。
亀のくせに喧嘩でも売っているのだろうか?
まったくもって腹の立つ奴だ。

「良いよ、じゃあ俺一人で行く。」
「はいはい、どーぞそうしてください。私は亀吉と遊んでいるモン。」

いつの間にか名前までつけていたのか。
女性の趣味というのはわからないものである。
俺はため息を吐くと自分の部屋に戻り大学の授業の復習を始めることにした。




勉強のさなか、ふとあの亀の顔が思い浮かぶ。
家に帰ってくるといつの間にかみぃちゃんが水槽の中で世話していたのだ。
確かに考えてみれば亀なら嫌われるも何もない。
彼女も中々良いペットを見つけた物だ、と最初は感心した。
しかしいつの間にか亀との日常を語るブログを作ったり、
そのブログが妙に人気が出てきてしまったり、
そのブログでいつの間にか俺のことまでネタにされたりしたのは少々ストレスだったりして、
俺は亀に対して少々嫌悪感を持ち始めていた。

まあ亀一匹にピリピリするのもかっこうわるいか。

と、独り言を言って自分を慰めてみたり。
しかしまずは明日の実験の準備である。
これをきっちりやらないと単位が取れないのだ。
留年などしてしまえば父に何を言われるかわかったものではない。
親が怖いなんて笑われてしまいそうではあるが
殺人鬼でも人の子、ということでどうか一つお願いしたい。




さて翌日。
夜遅くまで実験を続けていた俺は当然帰りが遅くなってしまった。
不運にも、俺たちの実験を指導していた教授に捕獲される。

「拝戸ぉ、実験の後片付け手伝ってくれよ。単位あげるからさぁ~。」
「またっすか教授?」
「だってお前時々授業さぼるじゃねえか、それとおあいこっつーことで。」
「うぅ……。」
「まあサボっている間に何やってるかは俺知らないけどさぁ、
 あんまり妙な物ひっつけてくるなよ?
 “臭い”んだよねぇ。」
「臭いってなんですか臭いって。」
「いやぁ、君から“屍臭”するんだよねぇ~、なんでかな?」
「はっ、そんな馬鹿な。」

笑みを顔に貼り付けて誤魔化す。
まあそんなごまかしが通じる相手なのかは別だが。

「ところで実験の後片付けが終わったらちょうど良い時刻だ。
 俺の代わりに見に行ってくれよ。会わせ鏡。」

それが狙いか。

「なぁに“君”なら、死にはしないだろうさ。」

まるで死神のように彼は笑った。







俺は実験室を出て夜の大学の廊下を歩き始めた。
教授の言う会わせ鏡とやらを見に行くことになってしまったのである。
教授について少し話しておく必要があるかもしれない。
彼はとある有名な寺の跡取りで、平日は医大で教授をやっているが休日は自分の家でお経を読んでいる。
外科医としての腕前は相当だそうでわざわざ県外からやってくる患者も居るとか。

だがそんな教授にも変わったところがある。
“見える”そうなのである。

俺が彼と初めて会った時に彼が教えてくれたのだ。
その上で、彼は俺に大量の霊がついていると言った。

見えているならそれがなんで俺、拝戸直についているか解るだろうに。


トン


「あ、すいません。」

通りすがりの人が俺にぶつかった。不覚にもまったく気づかなかった。
真夜中とはいえ大学の医学部である。
まあ人が通っていてもおかしくはない。

「いえいえ。」

振り返って俺とぶつかった人の後ろ姿を見る。
その姿を見た俺は驚きを隠せなかった。







俺はキョロキョロと辺りを見回す。
腕の時計を見ると午前0時。
こんな時間まで大学に居るなんて俺はなんて不幸な大学生なのだろう。
だが今の問題はそれじゃあない。

さっきぶつかった人の後ろ姿。

それは間違いなく俺だった。


「――――――“常識の外の存在”だよ。」

教授の言葉が頭の中で反響する。

あれが、“それ”なのか?



「会わせ鏡が会わせてくれるのは悪魔なんかじゃない。
 鏡が映すのは“あくま”で“人間”。
 それでも理を外れた人間は悪魔と呼ばれるのだから……
 君が会ったのはもしかしたら悪魔なのかもしれない。
 君が、悪魔なのかな?」

後ろから教授の声が響く。
彼は俺の肩に手を置いた。





「教授、一体此処はどこなんだ?あんたは一体何処に俺を連れてきた?」
「――――――――鏡の中の世界かなぁ?」

惚けた顔で笑う教授。
何かがおかしい。
何かがおかしい何かがおかしい。
オカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ

時計を見る。
文字盤が逆さまだ。
シャツが右前になっている。
これじゃあまるで死人じゃないか。
俺は一体何者なんだ?
信じられない信じたくない。
これじゃあまるで俺は………………


―――――――――――――――鏡像みたいじゃないか。



俺は脇目もふらずかけだした。

「おいおい、逃げるなよ」

後ろから笑い声が残響反響し続ける。







もうどれほど走ったのだろう?
流石に落ち着いてきたので辺りを見回す。
壁に掛けられた時計は至ってまともだ。
おかしくなっているのは俺なのか?
それともこの世界なのか?
窓ガラスを覗き込むと、俺の顔が映っている。

そうだ、窓ガラスを開けよう。

開けて外に出れば何とかなるはずだ。
真夜中にもう一度あの鏡を覗けば元の世界に戻れるはずだ。
戻ったらまずはあのふざけた教授をぶっ殺して……
いや、その前に俺を殺さなくちゃ、俺は二人も要らない。

「あぁ~、やっぱり其処にいたか。」

俺が立っている。

真後ろ?隣?

俺の近くに俺が居る。

声はするのに窓ガラスには映っていない。

そうだ、あの俺は偽物だったんだ。

だから鏡には映らない、そうだ間違いない、そうに決まっている。






ガチャッ!ガチャガチャッ!

窓ガラスは開かない。
留め具は開けているというのに。


「ほほぅ、ここから出られないのは本当らしいな。」


俺の声だけが響いてくる。
どこだ?
何処に居る?

「私の居場所がわからないのか?そりゃあそうだ、今の私は窓ガラスには映らない。
 じゃあ後は簡単だ。
 殺人(ゲイジュツ)の時間を始めよう。
 お前みたいな贋作は徹底的に作り直さなくちゃならない。」


首筋に刃物が当てられる。
どうやら鋏らしい。
こんな巨大な鋏、どうやって出したのだ?

チョキン

恐ろしく軽い音が鳴ったかと思うと俺の首は宙に舞って、自らの胴体を眺めていた。






「教授、終わりましたよ。まだ息はありますけど……そこは趣味の範囲というか。」
「ご苦労拝戸君!君がそいつと遊んでくれた間に鏡のお祓いは終わったよ。」
「それで、単位は本当にくれるんでしょうね?」


どれほど時間がたったのだろう、教授が向こうから歩いてきた。
すると再び辺りに声が響き、俺とそっくりな誰かが天井から降りてくる。
さっきまで天井に張り付いていたのか?
教授が俺を見て哀れむように呟く。


「ねえ君、君の持っている記憶は本当に君の記憶なのかな?」

え?

「もっと正確に言おうか、君は拝戸君じゃあないんだ。
 君は拝戸君の記憶を持った会わせ鏡の住人なんだよ。」

じゃあ俺は一体何者なんだ?

「君が何者かは私も知らない。
 あの鏡に捕まった地縛霊なのかもしれないし、
 拝戸君の言うような都市伝説なのかもしれない。
 でも君はもう何者であっても良いんだ。
 それが輪廻を巡るということだよ。」

俺は、自らの身体がすぅっと薄くなっていくことに気づいてしまった。
そうか、なんでこんな簡単なことに俺は気づかなかったのだろうか?




「消えましたね。」
「消えたな。」
「教授、あいつは一体なんだったんですか?」
「うん?知らない。とりあえず普通の人々が巻き込まれたら危ないだろう?」
「いやそうですけど、危ないなら教え子巻き込まないでください……。」

“私”こと拝戸直はやれやれとため息を吐く。
俺そっくりの誰かさんの死体は光の粒になって消えていってしまった。

「とりあえずあのお化けみたいな奴はね。
 化けた人間に成り代わろうとして本体を殺すのさ。
 会わせ鏡に映ったった人間の記憶をコピーしてからね。
 殺された人間の霊はそのまま鏡に閉じ込められる。
 そしてあのお化けは会わせ鏡の犠牲者に成り代わって生き続けるんだ。」
「成る程ねえ。」

怖い怖い。ここまで詳しいとまるで教授が何か関わっているみたいじゃないか。

「それじゃあ俺は帰りますよ?」
「ああ、暗い夜道には気をつけなよ?この番屋町には“常識の外の生き物”が多い。」

あの霊については聞いても良いかもしれないが
あの霊についてこんなに詳しいのかは聞かない方が良いのだろう。
俺の屍臭とやらについても俺が天井を平気で歩けることについても彼は聞いてこないのだから。

聞いてしまえばきっとお互いに相手を殺さなくちゃいけないのだろう。

【拝戸直の人殺し 第七話「アワセ鏡」fin】


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