【拝戸直の人殺し 第六話「拝戸直は人恋し」前半】
生まれた時から人間は平等じゃない。
たとえば才能、たとえば環境。
努力じゃきっと埋められない差。
俺と同じ通りを歩いているあの赤いコートの男はまったく赤の他人だ。
俺と同じ通りを歩いているあの黒い服の男はまったくの他人だ。
彼らはきっと俺みたいに人殺しはできない。
でも彼らには彼らにしか出来ないことがきっと有る。
人ってなんて不思議なんだろう。
人ってなんて愉快なんだろう。
――――――――まぁ、死ねばみぃんな一緒だけどね。
俺の才能は全てをイコールにする才能。
死を振りまく才能。
神様が許してくれた創作行為。
俺はそれを存分に楽しみたいのだ。
たとえば才能、たとえば環境。
努力じゃきっと埋められない差。
俺と同じ通りを歩いているあの赤いコートの男はまったく赤の他人だ。
俺と同じ通りを歩いているあの黒い服の男はまったくの他人だ。
彼らはきっと俺みたいに人殺しはできない。
でも彼らには彼らにしか出来ないことがきっと有る。
人ってなんて不思議なんだろう。
人ってなんて愉快なんだろう。
――――――――まぁ、死ねばみぃんな一緒だけどね。
俺の才能は全てをイコールにする才能。
死を振りまく才能。
神様が許してくれた創作行為。
俺はそれを存分に楽しみたいのだ。
「題名【月と罪と土の下】。」
“私”の目の前には首吊り死体が有った。
この狂おしい月の明かりの下、私の目の前にいる人間は死を選んだのだ。
今回の作品には手がかかった。
まず誰もいない山の奥に人間を二人拉致監禁。
一人の首を落として地面に埋め、もう一人の首に縄をかけ、腕を縛り一日放置。
その間、相手と会話を交わすことは絶対にしない。
ただゆっくりゆっくり死にたい気分にさせるのだ。
このすばらしく悲惨で悲惨な惨状は爽やかな夜の風を血の香りで染めた。
胸一杯にそれを吸い込むと流石の私でも吐き気がする。
我が愛しのみぃちゃんはというとすでに卒倒しており、私の背中ですやすや眠っている。
口裂け女というにはあまりに愛らしい寝顔だった。
口が裂けたり裂けなかったりを繰り返すその姿さえ私の胸をときめかせる。
なんということだろう。
やはり私は彼女に勝る作品を作れないのだろうか?
いいや、そんなことはない。
彼女とともに創作活動を続ければいつかきっともっとすばらしい作品が出来るはずだ。
そうなったらその時こそ、私は胸を張って彼女に愛を告げよう。
たとえ作品として劣っていても、私の彼女への愛情は変わらないのだ!
この狂おしい月の明かりの下、私の目の前にいる人間は死を選んだのだ。
今回の作品には手がかかった。
まず誰もいない山の奥に人間を二人拉致監禁。
一人の首を落として地面に埋め、もう一人の首に縄をかけ、腕を縛り一日放置。
その間、相手と会話を交わすことは絶対にしない。
ただゆっくりゆっくり死にたい気分にさせるのだ。
このすばらしく悲惨で悲惨な惨状は爽やかな夜の風を血の香りで染めた。
胸一杯にそれを吸い込むと流石の私でも吐き気がする。
我が愛しのみぃちゃんはというとすでに卒倒しており、私の背中ですやすや眠っている。
口裂け女というにはあまりに愛らしい寝顔だった。
口が裂けたり裂けなかったりを繰り返すその姿さえ私の胸をときめかせる。
なんということだろう。
やはり私は彼女に勝る作品を作れないのだろうか?
いいや、そんなことはない。
彼女とともに創作活動を続ければいつかきっともっとすばらしい作品が出来るはずだ。
そうなったらその時こそ、私は胸を張って彼女に愛を告げよう。
たとえ作品として劣っていても、私の彼女への愛情は変わらないのだ!
誰もが気づいているとは思うが私こと拝戸直は世界一幸福な恋する殺人鬼なのだ。
「―――――――――さて、帰るか。」
“俺”は作った作品をデジカメで撮影してから破壊すると、気絶したみぃちゃんを背負って山を下りることにした。
幸い夜とはいえ月も明るく、山道は大変歩きやすそうだったのである。
俺は月明かりがふんわり落ちてくる夜は、作品のことばかり考えている。
考えても考えてもつきることはないことは知っているが、月の美しい夜というのは死体が映えるのだ。
赤い月をにらむ生首。
朧月夜の水死体。
薄月の下の白骨。
青月に笑う轢死体。
残月が照らすバラバラ死体。
君はこの情景を想像できるだろうか?
どれもこれも死体が情趣にあふれた芸術作品に変わる瞬間だ。
ネクロでファンタシーな素敵ビューポイントだ。
君も一度殺せば絶対に解る。
あれは綺麗だ。
まさしくあれこそ文学と言うべき物だ。
幸い夜とはいえ月も明るく、山道は大変歩きやすそうだったのである。
俺は月明かりがふんわり落ちてくる夜は、作品のことばかり考えている。
考えても考えてもつきることはないことは知っているが、月の美しい夜というのは死体が映えるのだ。
赤い月をにらむ生首。
朧月夜の水死体。
薄月の下の白骨。
青月に笑う轢死体。
残月が照らすバラバラ死体。
君はこの情景を想像できるだろうか?
どれもこれも死体が情趣にあふれた芸術作品に変わる瞬間だ。
ネクロでファンタシーな素敵ビューポイントだ。
君も一度殺せば絶対に解る。
あれは綺麗だ。
まさしくあれこそ文学と言うべき物だ。
「なーんて、話をすると泣かれるからやらないけどね。」
背中で寝ている愛すべき同居人を起こさないように俺は夜の山道を歩き続けた。
すると、もうすぐ山道も終わりというところに男が一人立っている。
気配から察するになかなか良い素材になりそうだ。
俺はその男を少し解して持って帰ることにした。
すると、もうすぐ山道も終わりというところに男が一人立っている。
気配から察するになかなか良い素材になりそうだ。
俺はその男を少し解して持って帰ることにした。
ところで、自慢ではないが俺は人間を殺すのが得意だ。
初めて人を殺した時以来、出会った人間にもっとも似つかわしい死に様がなんとなく解るのだ。
それが実現されるように動けばおおむね相手は死体になっている。
抵抗する相手であってもそれは同じ、というかそんな相手を嬲るのも殺人鬼のたしなみである。
というわけで俺はみぃちゃんを背負ったまま男に接近した。
初めて人を殺した時以来、出会った人間にもっとも似つかわしい死に様がなんとなく解るのだ。
それが実現されるように動けばおおむね相手は死体になっている。
抵抗する相手であってもそれは同じ、というかそんな相手を嬲るのも殺人鬼のたしなみである。
というわけで俺はみぃちゃんを背負ったまま男に接近した。
「あのー、すいませんが……。」
男は“私”に声をかける。
遠くてよくわからなかったが外国人らしい。
こんな夜遅くに山道を歩いているとは怪しい外国人だ。
私は口裂け女との契約で得た脚力を生かして男の心臓に一気に跳び蹴りを決めた。
ライフルのように鋭く狙い澄まされたつま先が男の胸を貫通する。
男は音もなく倒れた。
即死である。
遠くてよくわからなかったが外国人らしい。
こんな夜遅くに山道を歩いているとは怪しい外国人だ。
私は口裂け女との契約で得た脚力を生かして男の心臓に一気に跳び蹴りを決めた。
ライフルのように鋭く狙い澄まされたつま先が男の胸を貫通する。
男は音もなく倒れた。
即死である。
「すいませんが、あなたがハイドさんですか?」
即死である。
そう私が判断したのに死体は起き上がって私に質問を繰り返す。
男は私の返答を待ちながら胸の傷に何かの薬を塗っている。
まったく、やれやれだ。
どうやら彼もまたまともな人間ではないらしい。
そう私が判断したのに死体は起き上がって私に質問を繰り返す。
男は私の返答を待ちながら胸の傷に何かの薬を塗っている。
まったく、やれやれだ。
どうやら彼もまたまともな人間ではないらしい。
「その通り、俺が拝戸直だ。番屋町のハイセンスでハイエンドな殺人鬼。
絶賛売り出し中だからどうぞよろしくお願いします。」
絶賛売り出し中だからどうぞよろしくお願いします。」
こういう場合、嘘を吐くのは良くない。
こちらから正々堂々名乗り出てやろう。
案外、俺のファンという可能性がある。
こちらから正々堂々名乗り出てやろう。
案外、俺のファンという可能性がある。
「なるほど、ところでそちらの女性は?」
「ああ、俺の作品【口裂け女】。みぃちゃんって呼んでくれ。」
「みぃちゃん、なるほどねえ……。
正直に答えていただいてありがとうございました。
正直な答えには率直な質問で応えたいと思います。」
「質問?なんだいそりゃ。」
「ああ、俺の作品【口裂け女】。みぃちゃんって呼んでくれ。」
「みぃちゃん、なるほどねえ……。
正直に答えていただいてありがとうございました。
正直な答えには率直な質問で応えたいと思います。」
「質問?なんだいそりゃ。」
俺男は敵という雰囲気ではない。
俺の圧倒的人間観察眼がそれを告げてくれる。
俺に胸を貫かれていた時、確かにあの男は喜んでいた。
あれは想像以上の物を見つけられて喜ぶ人間がする顔だ。
間違いない。
俺の圧倒的人間観察眼がそれを告げてくれる。
俺に胸を貫かれていた時、確かにあの男は喜んでいた。
あれは想像以上の物を見つけられて喜ぶ人間がする顔だ。
間違いない。
「えぇっとですね、私の友人の従妹が貴方に一度酷い目に遭わされたと聞いています。
その友人が大変ご立腹でして、すこし貴方には活動を制限していてほしいんですよ。
何も殺すなって訳じゃないんですが……。
人間相手の殺し、とくに高校生を対象にした物はやめてもらいたいんです。
もちろん、こちらも見返りは用意します。
貴方の殺人ライフをより健やかにするための支援などの準備は整っています。
私も貴方が殺人を自ら芸術と呼びライフワークにしているのは知っています。
ですからできればダヴィンチやミケランジェロにスポンサーが居たように、私は貴方の支援者になりたいのです。
そしてできれば友人として私の個人的な趣味の手伝いもしてほしい。
了承していただけますかね?」
「つまりあの男装少女に関わるなってか。まあ、別に彼女への興味はもう無いしそれは良いが……。」
その友人が大変ご立腹でして、すこし貴方には活動を制限していてほしいんですよ。
何も殺すなって訳じゃないんですが……。
人間相手の殺し、とくに高校生を対象にした物はやめてもらいたいんです。
もちろん、こちらも見返りは用意します。
貴方の殺人ライフをより健やかにするための支援などの準備は整っています。
私も貴方が殺人を自ら芸術と呼びライフワークにしているのは知っています。
ですからできればダヴィンチやミケランジェロにスポンサーが居たように、私は貴方の支援者になりたいのです。
そしてできれば友人として私の個人的な趣味の手伝いもしてほしい。
了承していただけますかね?」
「つまりあの男装少女に関わるなってか。まあ、別に彼女への興味はもう無いしそれは良いが……。」
それにしても、だ。いきなり人殺しを助けてやろうなんて怪しすぎる。
それを行ったところでいったいこいつに何のメリットがあるのだろうか?
とはいえ俺をだまし討ちにかけるならもうとっくにかけているはずだし……。
それを行ったところでいったいこいつに何のメリットがあるのだろうか?
とはいえ俺をだまし討ちにかけるならもうとっくにかけているはずだし……。
―――――――うん、小賢しいことはやめだ。
「決めてくれましたか?」
「良いぜ。ただし条件がある。ハーメルンの笛吹きってあんた知っているか?」
「へ?そりゃまあ知っていますけど。」
「俺ってばあの人のファンでね、あの人との面会をセッティングできるんならその話に乗るぜ。
返事は今すぐ頼む、もう疲れてへとへとだから速く家に帰りたい。」
「良いぜ。ただし条件がある。ハーメルンの笛吹きってあんた知っているか?」
「へ?そりゃまあ知っていますけど。」
「俺ってばあの人のファンでね、あの人との面会をセッティングできるんならその話に乗るぜ。
返事は今すぐ頼む、もう疲れてへとへとだから速く家に帰りたい。」
相手にしないで適当にふっかけてお帰りいただこう。
これだけ無理難題を言えばこいつだって対応出来ないはずだ。
これだけ無理難題を言えばこいつだって対応出来ないはずだ。
「良いですよ。」
「へ?」
「ハーメルンの笛吹き、彼もまた私の友人です。
貴方にお願いしたようなことと同じお願いをして協力してもらっていました。」
「いやいやいや、嘘だろう。」
「へ?」
「ハーメルンの笛吹き、彼もまた私の友人です。
貴方にお願いしたようなことと同じお願いをして協力してもらっていました。」
「いやいやいや、嘘だろう。」
こんな都合のいい話が有って良いわけがない。
だが目の前の男の筋肉、呼吸音、その他様々なところから判断する限り、少なくとも彼は嘘を吐いているわけではなさそうだ。
これでも俺は人一倍人殺しをしてきた殺人鬼だ。
人間の肉体に現れる微妙な変化から感情を読み取ることなんて簡単である。
だからこそ解せない。
俺の目の前にいる男は誰なのだ?
だが目の前の男の筋肉、呼吸音、その他様々なところから判断する限り、少なくとも彼は嘘を吐いているわけではなさそうだ。
これでも俺は人一倍人殺しをしてきた殺人鬼だ。
人間の肉体に現れる微妙な変化から感情を読み取ることなんて簡単である。
だからこそ解せない。
俺の目の前にいる男は誰なのだ?
「まっさか、貴方に対して嘘を吐くわけにはいきませんよ。
これから友人になってもらう人間ですもの。」
「……まあ嘘じゃないのは解るが、俺みたいな殺人鬼ばかり友人にしてどうしようと言うんだ?」
「殺人鬼だけじゃあないですよ、政治家、社長、変わり種ではプロスポーツ選手。
私は一種独特な才能と精神の持ち主ばかりを捜しては友人になっているんです。
言い忘れていましたが私も都市伝説の一種でして、名前をサンジェルマン伯爵と申します。
以後、よしなに。」
「はぁ、よろしく。」
これから友人になってもらう人間ですもの。」
「……まあ嘘じゃないのは解るが、俺みたいな殺人鬼ばかり友人にしてどうしようと言うんだ?」
「殺人鬼だけじゃあないですよ、政治家、社長、変わり種ではプロスポーツ選手。
私は一種独特な才能と精神の持ち主ばかりを捜しては友人になっているんです。
言い忘れていましたが私も都市伝説の一種でして、名前をサンジェルマン伯爵と申します。
以後、よしなに。」
「はぁ、よろしく。」
伝説上の貴人を名乗る男が俺の目の前にいる。
しかも彼は俺が殺しても死なない。
俺は段々その男に興味を持ち始めていた。
とりあえず俺はこの男の目的から調べてみることにした。
しかも彼は俺が殺しても死なない。
俺は段々その男に興味を持ち始めていた。
とりあえず俺はこの男の目的から調べてみることにした。
「ところであんたはそういうアブノーマルな奴らを集めて何をする気なんだ?」
「世界征服しようかと思っています。」
「ほへぇ……、あんた暇人だね。」
「ええ。」
「あと、あんたの言う才能と精神って何?」
「世の中に天才って居るじゃないですか、アインシュタインとか。
まさにあれです。
私は世に出ない天才から世に出る天才、さらには世を捨てた天才まで手広く集めています。」
「じゃあ俺は何?人殺しの天才?」
「ええ、そんなところです。貴方以上に人を殺すことを楽しむ人間は私の知り合いには居ません。
いや、もちろん生きている人間に限ればですけどね。」
「うれしいこと言ってくれるじゃないか。」
「世界征服しようかと思っています。」
「ほへぇ……、あんた暇人だね。」
「ええ。」
「あと、あんたの言う才能と精神って何?」
「世の中に天才って居るじゃないですか、アインシュタインとか。
まさにあれです。
私は世に出ない天才から世に出る天才、さらには世を捨てた天才まで手広く集めています。」
「じゃあ俺は何?人殺しの天才?」
「ええ、そんなところです。貴方以上に人を殺すことを楽しむ人間は私の知り合いには居ません。
いや、もちろん生きている人間に限ればですけどね。」
「うれしいこと言ってくれるじゃないか。」
俺の芸術が多少なりとも解る人種らしい。
そのうち俺の秘宝館に案内してやろう。
あそこには目玉で作った数珠とか、人の皮膚を使ったジグソーパズルが有る。
きっと見せてやれば彼は喜ぶに違いない。
そのうち俺の秘宝館に案内してやろう。
あそこには目玉で作った数珠とか、人の皮膚を使ったジグソーパズルが有る。
きっと見せてやれば彼は喜ぶに違いない。
「じゃあ、あんたに一つだけ良いことを教えてやるよ。」
「何ですか?」
「俺はまだ一度も人を殺したことがない。」
「…………どういうことでしょう?」
「何ですか?」
「俺はまだ一度も人を殺したことがない。」
「…………どういうことでしょう?」
サンジェルマンとやらはなかなか話のわかる奴らしい。
もしかしたら俺の話を理解してくれるかもしれない。
俺は誰にも話したことのない話を始めた。
もしかしたら俺の話を理解してくれるかもしれない。
俺は誰にも話したことのない話を始めた。
「そもそも、俺の定義する殺人とは芸術であり、文学だ。
それは解っていただけたか?」
「まあ言葉の上では理解しています。」
「よし、それだけ解っているなら充分だ。
芸術というのは発表されて人々の目に触れなければ意味がない。
例えモナリザといえど発表されなければ子供の落書きと変わらない、と俺は思う。
俺は人の命を奪うとそれで芸術らしき物は作るがそれを発表したことは無い。
大抵、自分でその出来を楽しんだ後に破壊してしまう。
陶芸家も不出来な作品は壊すだろう?
だから俺は芸術作品を作っていない以上、人殺しは出来ていないんだよ。
あれは只の殺戮で、虐殺だ。文学からは未だほど遠い。」
それは解っていただけたか?」
「まあ言葉の上では理解しています。」
「よし、それだけ解っているなら充分だ。
芸術というのは発表されて人々の目に触れなければ意味がない。
例えモナリザといえど発表されなければ子供の落書きと変わらない、と俺は思う。
俺は人の命を奪うとそれで芸術らしき物は作るがそれを発表したことは無い。
大抵、自分でその出来を楽しんだ後に破壊してしまう。
陶芸家も不出来な作品は壊すだろう?
だから俺は芸術作品を作っていない以上、人殺しは出来ていないんだよ。
あれは只の殺戮で、虐殺だ。文学からは未だほど遠い。」
さて、解ってもらえただろうか?
まあ解ってもらえなくても話を聞いてくれただけで感謝するとしよう。
まあ解ってもらえなくても話を聞いてくれただけで感謝するとしよう。
「…………さっぱり解らない。」
ですよねー。
「解らないですが、殺人=芸術、芸術の定義は誰かに評価されること。
よって芸術の定義を満たさない殺人は殺人ではない。
すなわち自分は人を殺していない。
ってことで良いですかね?」
「解ってるんじゃないか。そんな感じだよ。」
「理解できていたなら幸いです。」
よって芸術の定義を満たさない殺人は殺人ではない。
すなわち自分は人を殺していない。
ってことで良いですかね?」
「解ってるんじゃないか。そんな感じだよ。」
「理解できていたなら幸いです。」
サンジェルマンはニコリと微笑んだ。
無邪気な微笑だった。
無邪気な微笑だった。
「成る程、やはり貴方は変わっている。」
「そうなのか。」
「ええ、貴方とは良い友人になれそうだ。」
「そうかそうか、じゃあ次の質問良いかな?
あ、あと車乗りながらで良いかな次の質問。」
「構いませんよ。」
「そうなのか。」
「ええ、貴方とは良い友人になれそうだ。」
「そうかそうか、じゃあ次の質問良いかな?
あ、あと車乗りながらで良いかな次の質問。」
「構いませんよ。」
とりあえず俺はサンジェルマンとみぃちゃんを車に乗せると会話を再開した。
「ところで俺が殺人の天才なのは良いんだが……、
そうなると俺はハーメルンの笛吹きとキャラがかぶらないか?」
「いいえ、彼は人殺しの天才ではありません。
さしずめ会話の天才、でしょうかね。」
「会話の天才?」
「彼は七カ国語をネイティブレベルで操れるんですよ。
英語、ロシア語、中国語、スペイン語、フランス語、ギリシャ語。それに日本語。
私もそこまでしか聞いたことがないけどもしかしたらほかの言語も操れるのかも。」
「それじゃあ只のスーパー通訳じゃないか。
俺のあこがれた殺人鬼はそんなつまらない男なのか?」
「ふむ、ところでハイドさん。あなたは天才の定義ってなんだと思います?」
「天才の定義?考えたこともないよ。」
そうなると俺はハーメルンの笛吹きとキャラがかぶらないか?」
「いいえ、彼は人殺しの天才ではありません。
さしずめ会話の天才、でしょうかね。」
「会話の天才?」
「彼は七カ国語をネイティブレベルで操れるんですよ。
英語、ロシア語、中国語、スペイン語、フランス語、ギリシャ語。それに日本語。
私もそこまでしか聞いたことがないけどもしかしたらほかの言語も操れるのかも。」
「それじゃあ只のスーパー通訳じゃないか。
俺のあこがれた殺人鬼はそんなつまらない男なのか?」
「ふむ、ところでハイドさん。あなたは天才の定義ってなんだと思います?」
「天才の定義?考えたこともないよ。」
サンジェルマンはそれを聞くとにやにやと笑った。
どうやら持論を語りたくてしょうがないらしい。
どうやら持論を語りたくてしょうがないらしい。
「良いですか、天才というのは普通の人間が一生かけても到達しない域に生まれながらに到達している人間です。
人並みの努力で神の力の一部を手にすることの出来る人間の総称です。
私はこれまで長い時間を生きてきました。
その間いろいろ勉強したので世界のあらゆる言語を話すことが可能です。
しかし、ハーメルンの笛吹きは私が生きてきた時間の数百、数千分の一で同じことができます。
私が以前、ギリシャ語を教えた時など三日で基礎文法を全て体得し、
その上で慣用表現は一週間で全て覚えました。
あれは正しく誰かと話すために生まれてきたのでしょう。
まあそれだけならもの凄い一般人ですが、
彼の語る言葉は何故か人に強力な暗示作用を示す。
只の人間であるはずの彼が、まるで魔法使いのように人を言葉で操れるのです。
彼は只の人間で有るはずなのに、口先だけで都市伝説を倒したりもできるんですよ?
これをスペシャルといわずになんと言うんでしょう?」
「ふぅん…………。なんだ、ハーメルンの笛吹きって殺人鬼じゃないみたいじゃないか。」
人並みの努力で神の力の一部を手にすることの出来る人間の総称です。
私はこれまで長い時間を生きてきました。
その間いろいろ勉強したので世界のあらゆる言語を話すことが可能です。
しかし、ハーメルンの笛吹きは私が生きてきた時間の数百、数千分の一で同じことができます。
私が以前、ギリシャ語を教えた時など三日で基礎文法を全て体得し、
その上で慣用表現は一週間で全て覚えました。
あれは正しく誰かと話すために生まれてきたのでしょう。
まあそれだけならもの凄い一般人ですが、
彼の語る言葉は何故か人に強力な暗示作用を示す。
只の人間であるはずの彼が、まるで魔法使いのように人を言葉で操れるのです。
彼は只の人間で有るはずなのに、口先だけで都市伝説を倒したりもできるんですよ?
これをスペシャルといわずになんと言うんでしょう?」
「ふぅん…………。なんだ、ハーメルンの笛吹きって殺人鬼じゃないみたいじゃないか。」
だとしたらとてもつまらない。
いかに彼が天才だろうとそれでは意味がないのだ。
次のサンジェルマンの言葉は俺を完全に落胆させた。
いかに彼が天才だろうとそれでは意味がないのだ。
次のサンジェルマンの言葉は俺を完全に落胆させた。
「ええ、そうですね。彼は殺人鬼じゃない。只の天才だ。」
「なんだ……。がっかりだよ。」
「んー、よく寝た……。ってあれ?私いつの間に車の中に!?」
「なんだ……。がっかりだよ。」
「んー、よく寝た……。ってあれ?私いつの間に車の中に!?」
突然目覚めたみぃちゃんが無性にうるさかった。
空気読め。
空気読め。
みぃちゃんに適当に今までの経緯を説明する。
みぃちゃんはあまり納得が出来ていないようで首をかしげていた。
サンジェルマンはこれだから一般人は……みたいな顔していたがどう考えても異常なのはこの状況である。
訳がわからなくて当たり前だ。
ついでに言うならみぃちゃんは口裂け女である。
そんなことを考えながら俺の住むマンションに帰り着くと俺はサンジェルマンを秘宝館に案内することにした。
秘宝館はマンションの外に有るのだ。
みぃちゃんはあまり納得が出来ていないようで首をかしげていた。
サンジェルマンはこれだから一般人は……みたいな顔していたがどう考えても異常なのはこの状況である。
訳がわからなくて当たり前だ。
ついでに言うならみぃちゃんは口裂け女である。
そんなことを考えながら俺の住むマンションに帰り着くと俺はサンジェルマンを秘宝館に案内することにした。
秘宝館はマンションの外に有るのだ。
「ああ、その前にですが……。」
マンションの外に出ると急にサンジェルマンが話を始めた。
いったい何だというのだろう。
いったい何だというのだろう。
「あなた、今でもハーメルンの笛吹きに会いたいですか?」
「え?そりゃあ、殺人鬼でも無いのにあれだけの殺戮芸術を行った人間に興味はあるが……。
興味がないと言えばそれは嘘だが……。
さっきまでの情熱は無いな。
同じ殺戮を芸術として志す同志じゃないわけだし。
まあー、つまらないかな、思っていたよりも。」
「え?そりゃあ、殺人鬼でも無いのにあれだけの殺戮芸術を行った人間に興味はあるが……。
興味がないと言えばそれは嘘だが……。
さっきまでの情熱は無いな。
同じ殺戮を芸術として志す同志じゃないわけだし。
まあー、つまらないかな、思っていたよりも。」
「そうかそうか、成る程ね。」
頬にピリピリとした感覚が走る。
「俺をつまらないと。うん、根性はすばらしい。」
その時俺が感じたのは紛れもない恐怖、俺は迷うことなく真後ろに飛び退いた。
【前半終了、以後後半】
「お初にお目にかかる、ハーメルンの笛吹きこと笛吹丁だ。
もちろん偽名だが、気にせずに仲良くしてくれ。」
もちろん偽名だが、気にせずに仲良くしてくれ。」
俺の正面には顔の左半分が焼けただれた男が居た。
何時からそこにいた?
サンジェルマンは慌てて笛吹と名乗ったその男を止めにかかる。
何時からそこにいた?
サンジェルマンは慌てて笛吹と名乗ったその男を止めにかかる。
「笛吹さん、貴方はまだ動いてはいけないのですがね?」
「良いだろう?ここ数日でこれだけ治したんだ、許可しろ。」
「貴方を説得するのは骨が折れそうだし……。
殺さないでくださいよ、彼は都市伝説同士の戦いには不慣れなんですから。」
「あんたが笛吹きか?」
「ああ、そしてサンジェルマンにお前を止めるように頼んだ人間さ。」
「従妹の敵討ちか?殺しちゃいないんだが……。」
「馬鹿言うな、敵討ちなんかで動けるほど立派な人間やってるつもりはねえよ。
ただ単に、お前に対して少し興味がわいただけだ。」
男はコートの袖からたなびく包帯を腕に巻き直すと短刀を俺に向けて構える。
「確かに俺は殺人鬼じゃない。
俺の殺人は手段であって必要にかられたものであって趣味じゃない。
偽物だ。
偽物だが……、それでもつまらないと言われるような物じゃない。
腹立ち紛れも兼ねて、お前の芸術とやらで魅せてくれよ。」
「良いだろう?ここ数日でこれだけ治したんだ、許可しろ。」
「貴方を説得するのは骨が折れそうだし……。
殺さないでくださいよ、彼は都市伝説同士の戦いには不慣れなんですから。」
「あんたが笛吹きか?」
「ああ、そしてサンジェルマンにお前を止めるように頼んだ人間さ。」
「従妹の敵討ちか?殺しちゃいないんだが……。」
「馬鹿言うな、敵討ちなんかで動けるほど立派な人間やってるつもりはねえよ。
ただ単に、お前に対して少し興味がわいただけだ。」
男はコートの袖からたなびく包帯を腕に巻き直すと短刀を俺に向けて構える。
「確かに俺は殺人鬼じゃない。
俺の殺人は手段であって必要にかられたものであって趣味じゃない。
偽物だ。
偽物だが……、それでもつまらないと言われるような物じゃない。
腹立ち紛れも兼ねて、お前の芸術とやらで魅せてくれよ。」
いつの間にか頬に付いていた傷からの出血が止まらない。
何が殺人鬼じゃない、だ。
今俺に向けている眼はどうみても人殺しの眼じゃないか。
どうやら、かなり楽しめそうだ。
何が殺人鬼じゃない、だ。
今俺に向けている眼はどうみても人殺しの眼じゃないか。
どうやら、かなり楽しめそうだ。
「じゃあ胸を貸していただきます、先輩。」
「来いよ、俺は昔から面倒見の良い先輩で通っているんだ。
なんならみぃちゃんとやらも呼んで良いぞ?」
「ふふ、女性は惨殺するもので戦わせるものじゃないです。」
「流儀に反する、か?」
「解っているんじゃないですか。」
「俺もアニメのバトルヒロインは嫌いだよ。そしてヒロインに戦わせる男はもっと嫌いだ。
お前とは話が合いそうだ。軽く遊んでやるから後で酒でも酌み交わそうや。」
「良いですね、あなたとは中々すばらしい殺し合い(ブンガク)ができそうだ。」
「来いよ、俺は昔から面倒見の良い先輩で通っているんだ。
なんならみぃちゃんとやらも呼んで良いぞ?」
「ふふ、女性は惨殺するもので戦わせるものじゃないです。」
「流儀に反する、か?」
「解っているんじゃないですか。」
「俺もアニメのバトルヒロインは嫌いだよ。そしてヒロインに戦わせる男はもっと嫌いだ。
お前とは話が合いそうだ。軽く遊んでやるから後で酒でも酌み交わそうや。」
「良いですね、あなたとは中々すばらしい殺し合い(ブンガク)ができそうだ。」
懐から真っ赤な鋏を取り出す。
今まで何人も屠ってきた得物だ。
まあ本気でやっても中々死なないだろうと信じて、俺はそれで笛吹という男に斬りかかった。
【拝戸直の人殺し 第六話「拝戸直は人恋し」前半fin】
今まで何人も屠ってきた得物だ。
まあ本気でやっても中々死なないだろうと信じて、俺はそれで笛吹という男に斬りかかった。
【拝戸直の人殺し 第六話「拝戸直は人恋し」前半fin】
【拝戸直の人殺し 第六話「拝戸直は人恋し」後半】
キィン!
ガキィィイン!
ガキィィイン!
笛吹の腕が二回、わずかに動いた。
その後からほんの少し遅れて金属音が響き渡る。
俺の手元から、まるで手品のように真っ赤な鋏が消えて無くなった。
その後からほんの少し遅れて金属音が響き渡る。
俺の手元から、まるで手品のように真っ赤な鋏が消えて無くなった。
笛吹は何事も無かったかのように右手を腰に当ててまるでギリシャ彫刻のように目の前で佇んでいる。
辺りをキョロキョロと見回すと俺の鋏はマンション前の道路に深々と突き刺さっていた。
辺りをキョロキョロと見回すと俺の鋏はマンション前の道路に深々と突き刺さっていた。
「取りに行っていいぞ。」
そういって大きく一つあくびをする笛吹。
馬鹿みたいに隙だらけだ。
あんな人間を殺すなんてたいして難しいことではない。
俺は素直に鋏を取りに行くと、鋏の中止めを外して片方を笛吹に向けて投げつけた。
馬鹿みたいに隙だらけだ。
あんな人間を殺すなんてたいして難しいことではない。
俺は素直に鋏を取りに行くと、鋏の中止めを外して片方を笛吹に向けて投げつけた。
甲高い金属音。
また、俺の足下に鋏が突き立つ。
笛吹丁。
21歳、男性。
運動神経はかぎりなく無いに近い。
過去に何か武道をかじった程度の体裁き。
体格は標準よりすこし背が高い程度。
鋭い顔つきではあるが俗に言う美形とは少々違う。
アメリカに行けばやせ形と言われる、という表現がまさにぴったりだ。
髪型はオールバック。
香水をわずかにつけているらしい。
ハーメルンの笛吹きの契約者。
21歳、男性。
運動神経はかぎりなく無いに近い。
過去に何か武道をかじった程度の体裁き。
体格は標準よりすこし背が高い程度。
鋭い顔つきではあるが俗に言う美形とは少々違う。
アメリカに行けばやせ形と言われる、という表現がまさにぴったりだ。
髪型はオールバック。
香水をわずかにつけているらしい。
ハーメルンの笛吹きの契約者。
これが俺の持っている笛吹丁に関する情報だ。
これだけ見れば彼を殺すのはとてもたやすいように思われる。
しかし現実は違う。
何故、彼を殺せない?
あの焼けただれた顔を切り裂き、筋肉をあらわにして、
それから筋繊維の一本一本を寸断することなんて大した労苦ではないはずなのに。
これだけ見れば彼を殺すのはとてもたやすいように思われる。
しかし現実は違う。
何故、彼を殺せない?
あの焼けただれた顔を切り裂き、筋肉をあらわにして、
それから筋繊維の一本一本を寸断することなんて大した労苦ではないはずなのに。
顔?
焼けただれた顔?
焼けただれた顔?
何かがおかしい。
火傷の面積が少なくなっていないか?
火傷の面積が少なくなっていないか?
「どうした、ボサッとするなよ。怖いのか?
本式の殺人鬼様が、しがない私立探偵を恐れるのか?
何を恐れる?
ここに立っているのは人間一人。
まず間違いなく貴様の得物だ!
さぁ!さぁ!さあ!
ここに居るのはお前の被害者になるかもしれない男だ!
昔は悪人だったが今はスッパリ足を洗い世の為人の為に働いている善良な男だ!
お前はそれを殺れないというのか!?
言わないよなあ、言えない。
そんなの殺人鬼ではない。
むしろそんな人間を殺してこその殺人鬼だ、違うか?
言ってみろ、今此処でこの時俺が許可しよう。
言え!今すぐに言え殺人鬼!
そしてそれを以て、この夜更けに俺は貴様に宣告しよう!
古めかしい推理小説のごとく宣告し断定しよう。
貴様が犯人だ!
そして俺が探偵だ!
ストーリーはたったいまクライマックスを迎えたんだ!」
本式の殺人鬼様が、しがない私立探偵を恐れるのか?
何を恐れる?
ここに立っているのは人間一人。
まず間違いなく貴様の得物だ!
さぁ!さぁ!さあ!
ここに居るのはお前の被害者になるかもしれない男だ!
昔は悪人だったが今はスッパリ足を洗い世の為人の為に働いている善良な男だ!
お前はそれを殺れないというのか!?
言わないよなあ、言えない。
そんなの殺人鬼ではない。
むしろそんな人間を殺してこその殺人鬼だ、違うか?
言ってみろ、今此処でこの時俺が許可しよう。
言え!今すぐに言え殺人鬼!
そしてそれを以て、この夜更けに俺は貴様に宣告しよう!
古めかしい推理小説のごとく宣告し断定しよう。
貴様が犯人だ!
そして俺が探偵だ!
ストーリーはたったいまクライマックスを迎えたんだ!」
安い、いいや高い挑発だ。
確かに魅力的な口説き文句ではあるが、
まるで自分が歌劇の主演を張っているかのような陶酔感を覚えるが、
あれに乗ってはならない。
あれは恐らく、俺の殺戮と同じようなものだ。
一度あれに魅入られればきっと俺の芸術より悲惨なことになる。
面白い、あれが笛吹丁か。
確かに魅力的な口説き文句ではあるが、
まるで自分が歌劇の主演を張っているかのような陶酔感を覚えるが、
あれに乗ってはならない。
あれは恐らく、俺の殺戮と同じようなものだ。
一度あれに魅入られればきっと俺の芸術より悲惨なことになる。
面白い、あれが笛吹丁か。
言葉を交わす必要はない。
彼が言葉で会話で自らの世界を形成するならばそれには踏み入れない。
あの世界は俺の織りなす殺戮で迎え撃たなくてはならない。
口を開けば確実にあいつに飲まれる。
彼が言葉で会話で自らの世界を形成するならばそれには踏み入れない。
あの世界は俺の織りなす殺戮で迎え撃たなくてはならない。
口を開けば確実にあいつに飲まれる。
まずは正面から口裂け女の脚力で近くに迫る。
ギリギリまで迫って迫って……一気に真上に飛び上がろう。
思い切り踏みきって力は十分にたまった。
あとは真上から彼を解体するだけだ。
ギリギリまで迫って迫って……一気に真上に飛び上がろう。
思い切り踏みきって力は十分にたまった。
あとは真上から彼を解体するだけだ。
その時、ゾワッと背中に気持ちの悪い気配を感じた。
彼に近づくのをやめて真横に回り込む。
彼に近づくのをやめて真横に回り込む。
「…………逃げたな?」
「殺しにかけては只の人……か。」
「殺しにかけては只の人……か。」
俺がさっきまで居た場所のコンクリートには深い亀裂が走っていた。
まただ。
また、彼が何をしたか確認できなかった。
もっと近づいて、あの正体不明の攻撃について調べなくてはいけない。
殺気が襲ってくるタイミングでならギリギリ反応して逃げられる。
まただ。
また、彼が何をしたか確認できなかった。
もっと近づいて、あの正体不明の攻撃について調べなくてはいけない。
殺気が襲ってくるタイミングでならギリギリ反応して逃げられる。
「今の攻撃の正体が気になってしょうがないって感じだな。
教えてやろうか?
教えて欲しいとお前が言えば教えてやらないこともない。」
教えてやろうか?
教えて欲しいとお前が言えば教えてやらないこともない。」
駄目だ、あの言葉を聞いてはならない。
会話が始まってしまえばきっとあいつの独壇場だ。
それだけは許してはいけない。
会話が始まってしまえばきっとあいつの独壇場だ。
それだけは許してはいけない。
あいつは人殺しだけならば肉体的にも技術的にも完全に俺に劣っている。
俺に劣ることが出来ている時点でそこそこ立派なのだが今はまあ別の話だ。
そんなあいつが。
そんな笛吹という男が。
何かは解らないがたった1モーションだけ俺に遙かに勝っている。
それを可能にするのはきっと気が遠くなるような修練だけだ。
才能なんて物ではあの動きはできない。
同じ行為のルーチン、そして最適化。
それの究極、最終地点、人間には不可能な時間の積み重ね。
俺に劣ることが出来ている時点でそこそこ立派なのだが今はまあ別の話だ。
そんなあいつが。
そんな笛吹という男が。
何かは解らないがたった1モーションだけ俺に遙かに勝っている。
それを可能にするのはきっと気が遠くなるような修練だけだ。
才能なんて物ではあの動きはできない。
同じ行為のルーチン、そして最適化。
それの究極、最終地点、人間には不可能な時間の積み重ね。
じゃあここで考えよう。
それを可能にする物ってなんだ?
それを可能にする物ってなんだ?
そうだ、都市伝説だ。
鋏を二本に分解して投げつける。
タイミングは微妙にずらす。
そしてその鋏の後ろから俺は一気に走り寄る。
タイミングは微妙にずらす。
そしてその鋏の後ろから俺は一気に走り寄る。
魅せてみろ見せてみろハーメルンの笛吹き、悪魔を騙る偽殺人鬼。
貴様がその背中に背負う物は蝙蝠の翼か天使の羽か?
貴様がその腕でふるうのは悪魔の笛か龍の爪か!
貴様がその背中に背負う物は蝙蝠の翼か天使の羽か?
貴様がその腕でふるうのは悪魔の笛か龍の爪か!
第一撃
駄目だ、また見えない。
鋏の片割れが弾け飛んだ。
鋏の片割れが弾け飛んだ。
第二幕
笛吹が何か持っている。
今度は鋏が二つに切り裂かれた。
今度は鋏が二つに切り裂かれた。
大惨劇
まっすぐ俺を狙う白刃。
このままなら死ぬ、だが鋏は一本だけじゃない。
このままなら死ぬ、だが鋏は一本だけじゃない。
“私”はもう一本の鋏を懐から取り出して…………
「――――――――――二人とも、そこまでです。」
サンジェルマンの澄んだ声が辺りに響く。
どうやらゲームセットらしい。
俺は笛吹の“心臓に突きつけていた”鋏を引いて、そこら辺に投げ捨てる。
笛吹も俺の“眼球に突きつけていた”刀を引いて、鞘に収めた。
どうやらゲームセットらしい。
俺は笛吹の“心臓に突きつけていた”鋏を引いて、そこら辺に投げ捨てる。
笛吹も俺の“眼球に突きつけていた”刀を引いて、鞘に収めた。
「…………あそこで防御しないのかい。」
笛吹は呆れたように恐れるように呟いた。
“私”は最後の最後で笛吹を確実に殺すことを選んだ。
殺されるまえに殺せば俺の勝ちだからである。
“私”は最後の最後で笛吹を確実に殺すことを選んだ。
殺されるまえに殺せば俺の勝ちだからである。
「忘れていました。先輩の言葉を聞いてたらテンションあがってたのかも。」
「笛吹さん、もう満足でしょう。
貴方の方が強いかもしれませんが、それだけです。
彼は貴方を殺し得ます。」
「ああ、……そうだな。面白い物見せてもらった。」
貴方の方が強いかもしれませんが、それだけです。
彼は貴方を殺し得ます。」
「ああ、……そうだな。面白い物見せてもらった。」
それだけ言うと、笛吹丁は夜の町の中に消えていった。
その背中は心なしか満足気であった。
その背中は心なしか満足気であった。
「ところで、よく土壇場で守りを捨てられましたね。
てっきりもう一本出した鋏で身を守ると思っていましたけど。」
「だって、そうしたら鋏ごと切られるじゃないか。
なんだあの無茶苦茶ずるい都市伝説。
結局正体も今一よくわからなかったぜ。」
「私の手伝いをしてくれるなら貴方にピッタリの物を用意しても良いですよ?
あれは笛吹さんに一番相性が良い都市伝説ですから駄目ですけど。」
てっきりもう一本出した鋏で身を守ると思っていましたけど。」
「だって、そうしたら鋏ごと切られるじゃないか。
なんだあの無茶苦茶ずるい都市伝説。
結局正体も今一よくわからなかったぜ。」
「私の手伝いをしてくれるなら貴方にピッタリの物を用意しても良いですよ?
あれは笛吹さんに一番相性が良い都市伝説ですから駄目ですけど。」
成る程。
こうやって自分の手元に強力な都市伝説契約者を増やしているのか。
確かに彼がいくら都市伝説を所持していたところで、
それを使いこなす契約者が居なくてはそれは只の死蔵品だ。
ばらまいておいてそのなかで誰か助けてくれれば良いやって所か。
ずいぶん適当な物だ。
こうやって自分の手元に強力な都市伝説契約者を増やしているのか。
確かに彼がいくら都市伝説を所持していたところで、
それを使いこなす契約者が居なくてはそれは只の死蔵品だ。
ばらまいておいてそのなかで誰か助けてくれれば良いやって所か。
ずいぶん適当な物だ。
「ふん、解った。
でもそれよりみぃちゃんが可愛がれそうなペットを一匹用意してくれ。
あいつは意外と動物好きなんだが都市伝説になってからという物、嫌われっぱなしらしいんだ。」
「は、はぁ……。まあ探しておきましょうか。」
でもそれよりみぃちゃんが可愛がれそうなペットを一匹用意してくれ。
あいつは意外と動物好きなんだが都市伝説になってからという物、嫌われっぱなしらしいんだ。」
「は、はぁ……。まあ探しておきましょうか。」
それにしてもこの男には笛吹のような知り合いが何人もいるのか。
ならば、少し彼の目的に付き合うのも悪くないような気はしてきた。
俺はあくびをすると、とりあえず自分の部屋に帰ることを決めたのである。
【拝戸直の人殺し 第六話「拝戸直は人恋し」後半fin】
ならば、少し彼の目的に付き合うのも悪くないような気はしてきた。
俺はあくびをすると、とりあえず自分の部屋に帰ることを決めたのである。
【拝戸直の人殺し 第六話「拝戸直は人恋し」後半fin】