「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 拝戸直しの人殺し-05

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【拝戸直の人殺し 第五話「口裂け女は夜長に怯える」】

夜も更けた田舎道。
一人寂しげに歩く女性。
彼女に名前はたぶんない。
彼女に名前はたぶんいらない。
今の彼女を見れば誰だって解るからだ。
間違いなく彼女が口裂け女だと解るからだ。

口は耳まで裂け、衣服は赤く染まり、大きな鋏を背負っている。
彼女に見つけられてしまえばもうお終いだ。
彼女は首をちょん切る為の鋏を持っている。
彼女に見つけられてしまえばもうお終いだ。
彼女の大きな鋏で口を切り裂かれる。
彼女に見つけられてしまえばもうお終いだ。
お終いだ。

「あの、すいません。」

今宵も彼女は哀れな犠牲者に問いかける。

「私、綺麗ですか?」

問いかけられた男性の意識は、彼が質問に答えた後に薄くなっていった。
彼が覚えていたのは首に走るチクっとした痛みだけだった。







「さて、今日の活動は終了だ。
 後はこれを家に持って帰ってゆっくり解体するだけだよ。」
「拝戸君、もうやめましょうよ~!」
「なんだかんだ言って君も付いてきているじゃないか。」

注射器をくるくると手で回して革の袋にしまう男性と青が基調のラフな服装の女性の二人組。
男性の名前は拝戸直、女性の名前はみぃちゃん。
二人の関係は友達である。
さらに言えば拝戸直の片思いである。
拝戸直は殺人鬼、みぃちゃんは口裂け女、異常で普通な二人組。

「嫌だ嫌だというなら何故付いてくるんだ?
 それは口裂け女としての君が当たり前の行為として殺人を許容しているからに他ならないよ。
 これが君の心から愛する普通だよ。」
「うぅー、それはそうですけど……!
 都市伝説と契約者って一緒にいる物じゃないんですか?」
「まあそれが普通か、一緒に居たいなんてうれしいこと言ってくれるじゃないか。」
「自分の身が危ないと思っているだけで、貴方と一緒に居たいという訳じゃありません!」
「またまたー。可愛いこと言うね。」

拝戸が口裂け女のみぃちゃんに出会ってからすでに一週間になる。
みぃちゃんと会った時に拝戸がとどめを刺さなかった少女が「組織」に告げたらしく、
彼のところには何度か「組織」の黒服が来ていた。
しかしどれだけ口裂け女が大したことない普通の都市伝説でも、【殺し合い】をしている以上、本物の殺人鬼に勝てるわけもない。
番屋町に居る「組織」の面々は彼が目立つ犯罪を犯していないことなどを理由に
彼をしばらく放っておくことにしたらしい。




拝戸は哀れな被害者の男をロープでぐるぐる巻きにしてゴルフバッグに入れるとムーブの後部座席に積み込む。
これならば麻酔が切れて暴れ出しても逃げることはできない。
拝戸はこの哀れな男性被害者を活け作りにしようかソーセージにしようか悩んでいた。
彼の今回のテーマは【食】だそうで人の死体から感じるおぞましさに
鑑賞者の内側からわき起こる食欲は勝つのか負けるのかを試してみたいらしい。
誰に食べさせるかはまったく考えていない。
しばらく彼は悩みに悩んだ。
結局はお隣さんにお裾分けしやすいのでとりあえずソーセージにしようという結論に達したようだ。
ここら辺は割と適当である。

「さて、みぃちゃん、帰ろうか。」
「え、あ……はい。」

拝戸はまるで騎士がお姫様に対してするかのように車の助手席にエスコート使用とする。
みぃちゃんもなんだかんだ言って普通の女の子なので、
映画に出てくる俳優のような整った顔立ちの拝戸にこういうことをされると少しだけドキッとしてしまう。
しかし彼女の中の理性が拝戸を危険な人物だと判断してそんな気持ちを戒める。
彼女は拝戸のエスコートを無視して車に乗り込んだ。

「……別に車くらい一人で乗れますよ!」
「そういう問題じゃないんだけどなあ?」

拝戸は苦笑すると運転席に乗り込む。
どうやら彼の恋心は中々伝わらないらしい。無視されていると言うべきか。
いいや、やっぱり単に嫌われているだけである。




拝戸が犯行現場から離れようとアクセルを踏もうとした時だった。
ベチャ
ベチャベチャベチャ
肉塊を引きずるような音が耳に入る。
彼が言うところの天才的な勘がそれを危険だと彼自身に知らせた。

「都市伝説か。みぃちゃん、少し待っていてくれ。」
拝戸は車のドアを開いて外に出る。
「え、でも都市伝説なら私が相手を……。」
「いいや、良い。女性を戦わせるのは男としての私の流儀に反する。」
「またそんな訳のわからないこと言って!
 なんだかんだで私が貴方を守らなくちゃいけないんですよ!」
「じゃあ聞くがみぃちゃんよ、女に戦わせる男が格好良いと思うか?
 私は思わないね、ひどく情けない。
 所詮はてけてけだろう?生きている以上、殺すことは可能だ。
 可能ならば容易だ。」

まだ何か言おうとしているみぃちゃんを車の中に外からロックして閉じ込めると、
拝戸は懐から巨大な鋏――彼の新しい武器――を抜きはなってあたりを警戒し始めた。
遠くから、両腕だけで自らの体を引きずる都市伝説の姿が迫るのを彼は確認した。



最初の一撃はひどく単調だった。
てけてけという都市伝説の腕力を使って殴りかかる。
とても速い、でもそれだけの攻撃。
普通の人間ならばそれは当たれば間違いなく致命傷だ。
拝戸は様々な人間を殺してきた経験からそれが当たった際に自らの体がどうはじけ飛ぶか簡単に思い浮かべることができた。
だがそれだけの力を持つ攻撃の軌道は最初に言った通り単調になりがちなのだ。
殺気の方向、殺意の多寡、それらを敏感に感じ取り彼は攻撃を踊るように避ける。

てけてけは自らの攻撃が当たらなかったことに驚きながらも拝戸の方をすばやく振り返る。

「都市伝説か、都市伝説を解体して喜ぶ変態性癖は持ち合わせていない。
 さっさと帰れ、俺はこれから人間を解体して喜ばねばならない。」

拝戸はとりあえず説得をこころみる。
だがこのてけてけに会話は通じないらしい。
拝戸はため息を吐くと鋏を構え直した。

てけてけは近くの木の上に飛び乗り真上から拝戸を攻撃しようとした。
拝戸はそれに気づくと自らも口裂け女の脚力で木を駆け上って真下から鋏で彼女の左目を軽くひっかく。
これは殺すためにではない。
彼女の視界を確実に奪うための攻撃だ。
その後すぐに鼻先をてけてけの腕がかすめた。
拝戸があと一歩でも踏み込んでいたら、
先ほどの攻撃を目を軽くひっかく程度にとどめていなければ、
彼は確実に大けがしていたのだろう。
しかし拝戸はてけてけの【殺せる間合い】を冷静に見極め終わっていた。




「まずは片目か、つぎは耳をそぎ落とそう。
 目と同じ方向だ。
 ついでに鼓膜をつぶせれば理想だよなあ。
 その次は左腕。
 私は君の右半身だけを無傷のままに左半身のみを徹底的に破壊して君を殺してみせる。
 題名【1/2】なんて芸術作品はすばらしいね。文学的だ。」

彼の言葉を理解できているのかいないのか解らないがてけてけは怪物のような叫び声をあげて拝戸を威嚇する。
拝戸はそれを見ると互いの対話が本当に無理であることを改めて理解し、ため息を吐く。

「君は私の芸術など絶対に理解してくれないのだろうね。
 芸術を理解する理性もない獣を相手にするというのはどうにも自慰のようで気が進まないな。
 まあみぃちゃんに見せている分、羞恥プレイということにしておこうか?
 うん、それならば幾分か楽しくなってきた。」

そういいながらてけてけに向けてツカツカと歩み寄る拝戸。
足取りはゆったりとしてなおかつ美麗。
まるでモデルのように歩く。
巨大な鋏を肩にかけながらであることさえ除けばだが。

てけてけは彼がある程度まで近づくと一気に飛びかかる。
しかし、そこでまた彼はてけてけの前からふっと消えてしまった。
てけてけは怪訝そうに拝戸の方向を右目で眺めた。



「なんだ、不思議そうにしているじゃないか。今のは一瞬だけ君の死角に回り込んだだけだ。
 それよりも君は自分の左手の心配をしたまえ。」

拝戸が鋏の先端に引っかけている物をてけてけはジッと見つめる。
暗くてよく見えないがそれは手首のような形をしていた。
ゴトン
次の瞬間、てけてけはバランスを失って倒れる。

「まあ心配と言っても、もう遅いかな?」

鋏の先端で切断したついでに引っかけておいた手首を拝戸はポイっと捨てる。

「次は肘の関節までをいただこうか。
 その次は肩、その次は残っているかは知らないが腎臓の片方。
 肋骨も一本一本順番に外していくから楽しみにしていてくれ。
 主要な血管はすべて汚らしく切断して血が流れづらくしてやろう。
 君の体の左側がむごたらしく有ればあるほど、君の右半身の美しさは輝く。
 君は気づいていないのだろうが、君もなかなか良い体をしているしね。
 ところでてけてけは下半身が無いから上半身との対比で無と有を表現していると私は思うんだよ。
 だから私は君の体の上半身で荒廃と永遠を表現することで二重の対比を表現したいんだよね。
 なかなか芸術的だろう?
 文学的と言うよりは評論的な主題だがまぁそういうのも悪くはない。
 違うか?」

いかにも楽しそうに問いかける拝戸。
てけてけはここに来てようやく相手が危険人物だと理解したらしい。
まだ逃げる体力が有ることを確認すると拝戸に背中を向けて一目散に逃げ出した。




だが、どうあがいても口裂け女の足から逃げられるわけがないのだ。
拝戸はてけてけの心臓に向けて後ろから鋏を投げつける。
それは狙い通りの場所に見事命中して、てけてけを地面に釘付けにした。

「ふむ、こうなってしまうと都市伝説も何もないな。
 ただの哀れな小娘(ギセイシャ)だよ。」
「―――――タス―――ケテ?」

か細い声でてけてけがつぶやく。
命乞いとは可愛いらしい。
彼は地面に鋏をより深く突き刺すとてけてけの悲鳴に耳を傾ける。
てけてけのあごを手のひらで持ち上げて壊れてしまったてけてけの左目を見つめる。
見事に空洞だ。

「死ぬに及んで理性が復活したか?化け物が命乞いとは笑わせるが……
 良いだろう、こんな可愛らしい生物、殺すに忍びない。
 お前は見逃してやる。」

てけてけの顔が希望に満ちる。
いい顔だ、そう思って拝戸はやさしくほほえむ。
彼は鋏に手を伸ばし、彼女を解放すると見せかけて、いきなり彼女の左目を指でえぐり出した。
てけてけはもう悲鳴すらあげられない。



さらに彼は左目が有った場所の空洞から指をぐいぐいと押し込み、脳をかき回す。
これでもはやてけてけは死んだだろう。
拝戸は口裂け女の能力で小さな鋏を取り出して頭蓋骨を内側から破壊する。
その勢いで脳漿が花火のごとく弾け飛び、宵の月の光を反射して輝いた。
そして彼は鋏で死体の口の左側だけを切断する。

「題名【1/2*2】、ここに完成だ。」

半分ずつが二つ。
そんなこの作品にはこれがふさわしい。

拝戸はてけてけが消滅し始めたのを確認すると車に戻った。
自らに返り血が一滴も付いてないことを確認すると、
先ほどからエチケット袋が手放せなくなっているみぃちゃんの背中をなでさすり始めた。
拒絶するように突き飛ばされてしまったが、
彼はまるで子供をあやす親のようにみぃちゃんの背中をまたなで始める。
みぃちゃんがある程度落ち着いたのを見計らって拝戸は車を発進させた。
拝戸直、彼は恋する殺人鬼。
【拝戸直の人殺し 第五話「口裂け女は夜長に怯える」fin】






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