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連載 - 拝戸直しの人殺し-03

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【拝戸直の人殺し 第三話「拝戸直と口裂け女」】


拝戸直は朝早く起きると深煎りのコーヒー豆をたっぷり使ってコーヒーを淹れた。
水はただの水道水だが番屋町は山に囲まれた土地柄のため、とにかく水がおいしい。
只の水道水が他県でボトル詰めされて販売されているほどである。
だからそんな彼の淹れるコーヒーは大して飲み物の味にこだわらない人間であっても感動するようなおいしさなのであった。

「今日も良い朝だ。」

誰に聞かせるでもなくそうつぶやくと拝戸はカーテンを開ける。
春の朝日が部屋の中を暖かく照らし始めた。
それがまぶしくて拝戸は思わず片手で目を覆った。

チーン!

テレビで朝のニュース番組を確認すると男の子が両親に虐待されて殺されたというよくある悲しいニュースが流れていた。
それを見て拝戸はヤレヤレと首を振ると、トースターから出てきたトーストにジャムを塗り始めた。
時刻は朝の6時30分。
彼にとっては理想的ないつもの朝だ。




「口裂け女さん、もう朝の6時30分だ。起きてくれ。」
「へ?まだ7時前じゃないですか……むにゃむにゃ。」
「まったくもってだらしないなあ、早起きできるかということはその一日を占う要素なんだ。
 早く起きた朝は余裕を持って一日を迎えられるだろう?
 そうしたらそれだけすばらしい一日を送れる可能性が増えるじゃないか。
 さ、起きてくれ。今日は君についてもっと知ろうと思っているんだ。」
「うにゃー!」

ベッドでごろごろしていた口裂け女(メイド)はあっさり布団を引きはがされた。
寒そうに丸まっている。

「朝は低血圧なのー!」
「良いだろう、ならば軽く散歩でもしないか?
 体に良いぞ?ほら、おいしいコーヒーも淹れてあるしそれを飲んでからとか。」
「うー……。」
「嫌か?」
「嫌。」
「わがままなお姫様だ。メイド服だけど。
 あ、そうだ。服でも買いに行かないか?
 さすがにメイド服だけじゃあ困るだろう。」

拝戸は口裂け女がわずかに頷いたのを確認すると自分だけで朝のランニングと洒落込むことにしたのである。




彼はジャージに着替えてランニングシューズを履くとマンションの周りをゆっくり走り始めた。
走り始めてから十秒後、彼は明確すぎるくらい明確な変化に気がついた。
なぜかやたら速く走れるのだ。
今の彼はゆっくり走っているのだが、それでも今までの自分の全力疾走くらいに速く走れる。

「そういえば口裂け女は100mを3秒で走れるんだったっけか。
 なるほどねえ、良い能力だ。」

彼は口裂け女について巷で語られていることを思い出す。
たとえばいつも刃物を持ち歩いているとか。
たとえばポマードに弱いとか。
しばらく走ると拝戸はマンションの自分の部屋に戻った。

「あ、おかえりなさい。」
「ていうかお前馴染んでいるなあ……。
 自分を殺した殺人鬼の部屋でのんびり朝食喰うなんてどんな神経だよ。」
「どこであってもおなかは普通に減るもん。」
「なるほど、文学的だ。」

ああ、なんてことだろう。
君はどうあっても普通を貫くんだ。
と、他人には理解できないような理由で拝戸は深く感心した。




拝戸の用意した朝ご飯を食べてから二人はとりとめもない会話を始め、それが途切れると近くのデパートに服を買いに行くことにした。
拝戸はなんだかんだ言って普通の服も用意していたので服を買いに行く服がない、なんて無様な事態にはならなかった。
下着まで丁寧に用意していた拝戸に若干というかすごく引いていた口裂け女だったが、
とりあえずメイド服で外に出るわけにもいかないので素直にそれに着替えて部屋を出た。
デパートまではとりあえず拝戸の車に乗っていくことになった。
拝戸の乗るムーブは番屋町の市街地に向けて狭い道をすいすい進んでいく。

「大学生のくせに自分の車持ってるなんてずるいです!」
「医学部に合格した自慢の息子だ。それくらいあったって良いだろう?」
「でもでも私は親に買ってもらえなかったですよ車。」
「ああー、そういや君はもう大学卒業しているのか。」
「私の方がお姉さんですね。もうちょっと敬うべきです。」
「十分敬意を払っていると思うけどね。」
「ところでお医者さんなんですか。」
「ああ、これでも精神科医志望だ。切った張ったの外科なんて野蛮きわまりないぜ。」
「精神科だってよくわからない人たちしか患者に来ないようなイメージが……
 っていうかあなたがかかるべきですよ精神科には。」
「知らないのかい?いや、普通知らないか。フロイトも自らの治療のために精神医学を研究したそうだ。
 彼の書いた当時の友人への手紙には明らかに精神病的な傾向が見受けられる。」
「ふーん……。」


どうやら彼の話はあまり興味を持っていただけなかったようだ。
拝戸は残念そうにため息を吐く。





「そういえば口裂け女って常に口が裂けている訳じゃないんだね。」

拝戸は彼女の口を指さす。
口裂け女はそのことに気づいていなかったようで自らの頬に触れて驚いていた。

「あれ?本当だ!」

軽く喜ぶような仕草。
やはり口が裂けっぱなしなのは嫌なのだろう。
しかし口が裂けていた方が拝戸は好みだった為、彼は少々がっかりしている。

「それ見てて気になったんだけどさ。
 君は口裂け女としてどこまでのことができるんだい?
 とりあえず俺の足が速くなったりとか契約とやらの効果は出始めているみたいだけど……。」

よりすばらしい能力を手に入れれば
よりすばらしい芸術に近づく
拝戸直はどんな能力でも自らの殺人行為に華を添えると期待していた。

「鋏とか……、出せますね。」
「鋏?なるほど、それ以外には有るか?」
「あとはまだ私自身もあなたの契約者としてのレベルも未熟なので……、
 特に何もできません。あ、ちょっと力が強くなってるかも。」
「なるほど、身体能力の強化と武器を自由に出現させる力ね。
 それは割と便利だな。
 お、デパートついたぜ。今日は好きな服買ってやるから存分に見て回ってくれ。」

その言葉を聞くと口裂け女は少女のようにはしゃぐ。
どうやら出費がかさみそうだな、と拝戸はすこしばかり困った表情をしていた。
【拝戸直の人殺し 第三話「拝戸直と口裂け女」fin】



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