【拝戸直の人殺し 第二話「口裂け女の事情」】
口裂け女、ここでは仮に山田恵子としようか。
山田恵子は普通の女の子だった。
普通の家庭に生まれ、
普通の家庭で普通に育ち、
普通の小学校に入り、
普通の中学校に入り、
普通の高校に入った辺りで普通に初恋と失恋を体験。
普通の友達に囲まれた普通で素敵な青春を送った。
地元にある普通の大学に普通に受験勉強して普通に合格。
男っ気が無かったが普通のキャンパスライフを満喫して、
普通に大学を卒業、普通に地元の企業に就職。
普通の新人歓迎会に出て、普通に歓迎されて、普通に一次会から帰ったその道すがら、
やっと彼女は気付いたのだ。
山田恵子は普通の女の子だった。
普通の家庭に生まれ、
普通の家庭で普通に育ち、
普通の小学校に入り、
普通の中学校に入り、
普通の高校に入った辺りで普通に初恋と失恋を体験。
普通の友達に囲まれた普通で素敵な青春を送った。
地元にある普通の大学に普通に受験勉強して普通に合格。
男っ気が無かったが普通のキャンパスライフを満喫して、
普通に大学を卒業、普通に地元の企業に就職。
普通の新人歓迎会に出て、普通に歓迎されて、普通に一次会から帰ったその道すがら、
やっと彼女は気付いたのだ。
「私の人生って普通に始まって普通に終わるんだな。」
彼女の普通の頭は普通にその結論を導き出した。
私はきっと特別であることなんて無いのだ。
どこにでも居るような人間のどこにでもある普通の一生を送り続けるのだ。
それに嫌悪感を抱いているわけでもないし彼女は別にそれでも良いと思っていた。
私はきっと特別であることなんて無いのだ。
どこにでも居るような人間のどこにでもある普通の一生を送り続けるのだ。
それに嫌悪感を抱いているわけでもないし彼女は別にそれでも良いと思っていた。
だが、そんな彼女が恐れている物が一つだけ有った。
それは死ぬことだ。
彼女は死の先に何が有るかも解らなかったし想像することもできなかった。
だから死が怖くてしょうがなかった。
彼女の祖父や祖母が死んだときも普通に悲しくて泣いていたが、
同時に普通じゃない死を恐れていたのだ。
それは死ぬことだ。
彼女は死の先に何が有るかも解らなかったし想像することもできなかった。
だから死が怖くてしょうがなかった。
彼女の祖父や祖母が死んだときも普通に悲しくて泣いていたが、
同時に普通じゃない死を恐れていたのだ。
そんな死が、彼女が“普通”という限りなく浅はかな悟りを得た丁度その日その時に迫っていた。
まず最初に後ろからナイフを突きつけられた。
わずかに皮膚が裂けた痛みが彼女を脅えさせる。
彼女にナイフを突きつけた殺人鬼は優しい声で素直に言うことに従えと言った。
そうすれば殺さないとも言った。
わずかに皮膚が裂けた痛みが彼女を脅えさせる。
彼女にナイフを突きつけた殺人鬼は優しい声で素直に言うことに従えと言った。
そうすれば殺さないとも言った。
勿論それは拝戸直の嘘だ。
一月に一回、行方不明を装って人を殺しまくってきた殺人鬼の嘘を信じる方が愚かというものだ。
しかし普通の彼女は異常な状況下だったために普通にその言葉を信じてしまった。
一月に一回、行方不明を装って人を殺しまくってきた殺人鬼の嘘を信じる方が愚かというものだ。
しかし普通の彼女は異常な状況下だったために普通にその言葉を信じてしまった。
結果
彼女は口裂け女として生まれ変わる憂き目を見たのである。
そして死を恐れて殺人鬼と都市伝説として契約をしてしまった。
ついに彼女は普通を捨てて、悪夢の連続殺人鬼拝戸直の掛け替え無い“作品”として生まれ変わったのである。
題名は【口裂け女】だ。
そして死を恐れて殺人鬼と都市伝説として契約をしてしまった。
ついに彼女は普通を捨てて、悪夢の連続殺人鬼拝戸直の掛け替え無い“作品”として生まれ変わったのである。
題名は【口裂け女】だ。
「さてと、口裂け女。
君の身の上話をおおざっぱにまとめたんだが何か質問は有るかな?」
「えっと、特にありません。」
「そうか、それならオーケーだ。
ところでその衣服に付いた血液で床を汚されると迷惑なので身体を洗ってきて欲しい。
着替えは一応着られそうな物をこちらで用意しておくよ。」
「へ!?あ、はぁ……。」
君の身の上話をおおざっぱにまとめたんだが何か質問は有るかな?」
「えっと、特にありません。」
「そうか、それならオーケーだ。
ところでその衣服に付いた血液で床を汚されると迷惑なので身体を洗ってきて欲しい。
着替えは一応着られそうな物をこちらで用意しておくよ。」
「へ!?あ、はぁ……。」
改めてコンニチワ。
俺の名前は拝戸直(ハイドタダシ)。
一般的な医大生である。
芸術的な殺人鬼である。
俺の名前は拝戸直(ハイドタダシ)。
一般的な医大生である。
芸術的な殺人鬼である。
偶然好みのタイプの女性を見つけたので陵辱・殺害してみた所、
いきなり口裂け女として生き返られてしまいましたとさ。
いきなり口裂け女として生き返られてしまいましたとさ。
ところで俺は人間が好きだ、って話はしたよね?
もう一度理由を説明すると俺は人間の持つどうしようもない醜さと代え難い美しさの同居に心惹かれるんだ。
そう言う意味では口裂け女というのは美人の女性が実は化物(フリークス)っていうマジ勃起物の状況なんだよね。
醜さと美しさの同居、とてつもなく文学的だとは思わないかい?
さらに彼女の場合は無残な死と懸命な生もまたその身体に内包している。
生き返った死人な訳だからね。
期せずして俺は俺の求めていた惨殺死体における文学性の一つの到達点を見つけてしまったわけだ。
死んでて生きてる美しくて醜く人間でなおかつ化け物。
さらに彼女自身が普通に生きてきた人生も自分の手によって今正に異常に引き込まれている。
正常と異常の境をふらふらと渡り歩くその姿もまた……文学だ。
もう一度理由を説明すると俺は人間の持つどうしようもない醜さと代え難い美しさの同居に心惹かれるんだ。
そう言う意味では口裂け女というのは美人の女性が実は化物(フリークス)っていうマジ勃起物の状況なんだよね。
醜さと美しさの同居、とてつもなく文学的だとは思わないかい?
さらに彼女の場合は無残な死と懸命な生もまたその身体に内包している。
生き返った死人な訳だからね。
期せずして俺は俺の求めていた惨殺死体における文学性の一つの到達点を見つけてしまったわけだ。
死んでて生きてる美しくて醜く人間でなおかつ化け物。
さらに彼女自身が普通に生きてきた人生も自分の手によって今正に異常に引き込まれている。
正常と異常の境をふらふらと渡り歩くその姿もまた……文学だ。
「あのー、この服は一体何なんですか?」
シャワーを浴びると口裂け女は俺の用意したメイド服に着替えていた。
「決まっているだろうメイド服だ。」
「それは一応解るのですがなんで下着から何から何まであるんですか?」
「言っても良いがお前は絶対厭がるだろうなあ。
――――――死体を着せ替え人形にして遊んだ時の物なんて言ったら発狂するよね。
ちゃんと洗濯したけど……」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「夜なんだから近所の人に迷惑だろ?余り騒ぐな。」
「嫌だ!気持ち悪い!脱ぐ!今すぐこんなの脱いでやる!」
「まぁ待てよ、今此処で脱いだらマッパだぜ。
一人暮らしの男の部屋で女性が裸だなんて艶めかしすぎて直さん欲情しちゃうなあ。
メイド服を脱ぐ夜ってか?さいっこうだねえ!でも脱いじゃうとそれはそれで萎えるしさあ。
半脱ぎ位にしてくれると文学的でより最高だね。」
シャワーを浴びると口裂け女は俺の用意したメイド服に着替えていた。
「決まっているだろうメイド服だ。」
「それは一応解るのですがなんで下着から何から何まであるんですか?」
「言っても良いがお前は絶対厭がるだろうなあ。
――――――死体を着せ替え人形にして遊んだ時の物なんて言ったら発狂するよね。
ちゃんと洗濯したけど……」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「夜なんだから近所の人に迷惑だろ?余り騒ぐな。」
「嫌だ!気持ち悪い!脱ぐ!今すぐこんなの脱いでやる!」
「まぁ待てよ、今此処で脱いだらマッパだぜ。
一人暮らしの男の部屋で女性が裸だなんて艶めかしすぎて直さん欲情しちゃうなあ。
メイド服を脱ぐ夜ってか?さいっこうだねえ!でも脱いじゃうとそれはそれで萎えるしさあ。
半脱ぎ位にしてくれると文学的でより最高だね。」
バックステップまで壁際までのけぞられてしまった。
所謂ドン引きと言う奴か。
まったく、今更お互い隠す所も無いというのに妙な奴だ。
所謂ドン引きと言う奴か。
まったく、今更お互い隠す所も無いというのに妙な奴だ。
「ななななな、貴方は何を言ってるんですか!
ていうかなんですか文学的って!
私を殺した時からずっとそればっかり言っているじゃないですか!」
「文学的ってのは俺が素晴らしいと思う物につけている形容動詞だ。
単に褒めたって芸術的じゃないだろう?
少しでもハイセンスな言葉を模索したいじゃないか。」
「訳がわからない…………。」
ていうかなんですか文学的って!
私を殺した時からずっとそればっかり言っているじゃないですか!」
「文学的ってのは俺が素晴らしいと思う物につけている形容動詞だ。
単に褒めたって芸術的じゃないだろう?
少しでもハイセンスな言葉を模索したいじゃないか。」
「訳がわからない…………。」
彼女は俺の最優秀作品なのに俺の美的センスが解らないらしい。
これは徹底的に教育せざるを得ないようだ。
これは徹底的に教育せざるを得ないようだ。
「まぁ椅子にでもかけ給えよ。君の為に紅茶を淹れよう。
安いダージリンだがミルクティーにして角砂糖も落とそう。
金の代わりに心を掛けた一杯だ。
断る理由は君にあるまい?」
「あ、ありがとうございます。」
安いダージリンだがミルクティーにして角砂糖も落とそう。
金の代わりに心を掛けた一杯だ。
断る理由は君にあるまい?」
「あ、ありがとうございます。」
やはり普通だ。
普通にお茶を勧めると普通に受け取って普通にお礼を言った。
しかしこの状況でその普通を発揮できる事実こそが異常。
流石俺の愛する最優秀作品である。
普通にお茶を勧めると普通に受け取って普通にお礼を言った。
しかしこの状況でその普通を発揮できる事実こそが異常。
流石俺の愛する最優秀作品である。
「シャワーを浴びてきても身体は冷えるはずだからな。
いやぁ、メイドにご奉仕だなんてすごく倒錯していて気分が良いなあ。」
「そうなんですか……?」
「そうだね。」
いやぁ、メイドにご奉仕だなんてすごく倒錯していて気分が良いなあ。」
「そうなんですか……?」
「そうだね。」
首をかしげる口裂け女。
良いぞ、中々可愛らしい。
良いぞ、中々可愛らしい。
「ところでこれからの話なんだけどさ。」
と、言うと口裂け女はびくっと体を震わせた。
「わ、私は人を殺すような真似はしませんよ!?」
「いやいや、口裂け女が人を殺さないでどうするよ?
自分の存在保てないんじゃないの?」
「うぅ~……。」
「いやいや、口裂け女が人を殺さないでどうするよ?
自分の存在保てないんじゃないの?」
「うぅ~……。」
ここで俺が口裂け女との契約時に手に入れた都市伝説の知識を披露しよう。
都市伝説というのは知名度が有ればあるほどその存在を確かにする。
存在が確かであればあるほど強力な力を発揮できるそうだ。
知名度を上げたり存在を確かにするのに一番良い方法はその都市伝説の再現を行うことだ。
口裂け女ならば私キレイ?って言っていいえと言った相手でもぶっ殺してればそれで済む。
だが、空前絶後の天才殺人鬼である俺としてはチープな殺し方は嫌いだ。
そこで、彼女にこんな提案をしてみた。
都市伝説というのは知名度が有ればあるほどその存在を確かにする。
存在が確かであればあるほど強力な力を発揮できるそうだ。
知名度を上げたり存在を確かにするのに一番良い方法はその都市伝説の再現を行うことだ。
口裂け女ならば私キレイ?って言っていいえと言った相手でもぶっ殺してればそれで済む。
だが、空前絶後の天才殺人鬼である俺としてはチープな殺し方は嫌いだ。
そこで、彼女にこんな提案をしてみた。
「じゃああなたは『あたしキレイ?』って聞くだけで良いよ。」
「へ?」
「人の一人や二人俺が殺そうじゃないか。
良いか、まずお前は俺の作品だ。
はい、と答えてくれた人は俺の芸術を理解している。
だから俺の芸術に協力をして貰おう。
いいえ、と答えてくれた人は俺の芸術を理解していない。
だから俺の芸術を体感して貰おう。
これで良いだろう?君は都市伝説として普通に生きていける、俺は芸術活動によりいっそう打ち込める。
最高じゃないか。」
「へ?」
「人の一人や二人俺が殺そうじゃないか。
良いか、まずお前は俺の作品だ。
はい、と答えてくれた人は俺の芸術を理解している。
だから俺の芸術に協力をして貰おう。
いいえ、と答えてくれた人は俺の芸術を理解していない。
だから俺の芸術を体感して貰おう。
これで良いだろう?君は都市伝説として普通に生きていける、俺は芸術活動によりいっそう打ち込める。
最高じゃないか。」
口裂け女はしばらく理解に苦しむ表情をしていたが……
諦めたように、頷いてくれた。
諦めたように、頷いてくれた。
「よし、それじゃあ今日すべき話はこれで終わりだ。
あとはベッドでゆっくり寝るなりなんなりしてくれ。」
「え、でもベッドは一つしか……。」
「構わない、君が使ってくれ。俺はハンモックで寝る。」
「有るの!?」
「有るよ。」
あとはベッドでゆっくり寝るなりなんなりしてくれ。」
「え、でもベッドは一つしか……。」
「構わない、君が使ってくれ。俺はハンモックで寝る。」
「有るの!?」
「有るよ。」
俺はハンモックを素早く用意すると口裂け女にベッドを勧めた。
「ちなみにどうしても一緒に寝たいならば直さんが添い寝してやっても良いぞ。
子守歌のサービス付きだ。」
「遠慮しておきます。
……念のため言っておきますけど貴方とは仕方なく契約しただけですから。
私個人は貴方のことが嫌いです!」
「俺としては君とベッドで一緒に寝る関係になれたらロマンティックなんだけどねえ?」
「会うなり私を殺すような人間と仲良くする気なんて無いですからね!」
「普通だなぁ……。」
子守歌のサービス付きだ。」
「遠慮しておきます。
……念のため言っておきますけど貴方とは仕方なく契約しただけですから。
私個人は貴方のことが嫌いです!」
「俺としては君とベッドで一緒に寝る関係になれたらロマンティックなんだけどねえ?」
「会うなり私を殺すような人間と仲良くする気なんて無いですからね!」
「普通だなぁ……。」
まっ、それが良いのだが。
今日は色々起こりすぎた。
明日はゆっくり大学さぼって彼女と交流してみよう。
今日は色々起こりすぎた。
明日はゆっくり大学さぼって彼女と交流してみよう。
そう思って俺は床についたのである。
【拝戸直の人殺し 第二話「口裂け女の事情」fin】
【拝戸直の人殺し 第二話「口裂け女の事情」fin】