己は、後悔しているのだろうか
時折、イクトミは考える
あの時、もっと強く警告していれば、あんな事にはならなかったのではないだろうか?
時折、イクトミは考える
あの時、もっと強く警告していれば、あんな事にはならなかったのではないだろうか?
己が予見した、血塗れのあの男の姿を思い出すたびに
そう、考えずにはいられないのだ
そう、考えずにはいられないのだ
「どうしましたか?イクトミ。黙りこんで?」
「ん?…あー、いや、何でもねぇよ」
「ん?…あー、いや、何でもねぇよ」
サンジェルマンに声を駆けられ、イクトミは軽く首を左右に降った
…自分らしくもない
己は陽気で卑猥な蜘蛛の神
ネイティブ・アメリカン スー族が語るトリックスター
深刻な顔等、自分には似合うまい
…自分らしくもない
己は陽気で卑猥な蜘蛛の神
ネイティブ・アメリカン スー族が語るトリックスター
深刻な顔等、自分には似合うまい
「あー、そうだ、サンジェルマン。エーちゃんにも伝えといたけど、お前にも伝えとくな。X-No.0の痕跡をアメリカで発見。まぁ、あいつの事だから、とっくに移動隅だろうがな」
「おや、そうですか…やれやれ、彼も相変わらず厄介だ」
「おや、そうですか…やれやれ、彼も相変わらず厄介だ」
イクトミの言葉に、苦笑するサンジェルマン
上田が、小さく首をかしげる
上田が、小さく首をかしげる
「誰よ?X-No.0って」
「あぁ、アキナリも知っておいた方が良いかもしれませんね。都市伝説と関わる以上、彼と遭遇する危険性は、無きにしも非ずですから」
「あぁ、アキナリも知っておいた方が良いかもしれませんね。都市伝説と関わる以上、彼と遭遇する危険性は、無きにしも非ずですから」
ことん、と
酒の入ったグラスをおいて、サンジェルマンはゆっくりと語る
酒の入ったグラスをおいて、サンジェルマンはゆっくりと語る
「…X-No.0…ザン・ザヴィアー(Xan・Xavier)、「組織」上層部が一人にして、「組織」で始めての裏切り者です」
「裏切り者?」
「「組織」結成に関わっておきながら、「組織」結成と同時に姿を消したのさ」
「裏切り者?」
「「組織」結成に関わっておきながら、「組織」結成と同時に姿を消したのさ」
なーに考えてたんだか、と肩をすくめるイクトミ
あの気まぐれな男の考えは、少なくともイクトミには、ほとんど読むことができなかった
あの気まぐれな男の考えは、少なくともイクトミには、ほとんど読むことができなかった
「「組織」としては、裏切り者であるあいつを討伐しようともしたっぽいんだがな。あいつ、反則的な能力持ってるから、ほぼ100%返り討ちにあってるんだな、これが」
「反則的な能力、ねぇ?」
「…正直、アキナリには、ザンとは遭遇してほしくありませんね。遭遇したとしても、戦うような状況に陥って欲しくありません。彼がどの能力を使ってくるかにもよりますが、あなたでは対抗することが難しいでしょう」
「反則的な能力、ねぇ?」
「…正直、アキナリには、ザンとは遭遇してほしくありませんね。遭遇したとしても、戦うような状況に陥って欲しくありません。彼がどの能力を使ってくるかにもよりますが、あなたでは対抗することが難しいでしょう」
やや、難しい表情を浮かべるサンジェルマン
確かに、そうだろう
イクトミも、同じ事を考える
あの男の能力には、上田の契約都市伝説では…対抗できなくもないが、難しいだろう
確かに、そうだろう
イクトミも、同じ事を考える
あの男の能力には、上田の契約都市伝説では…対抗できなくもないが、難しいだろう
「お前ら二人にそういわせるなんて、よほどすごい都市伝説と契約しているんだな、そいつは?」
「とっくの昔に飲み込まれ済ですけどね。飲み込まれない方が不思議なくらいの都市伝説ですから」
「まぁなー。村一つどころか街一つ一瞬で消せたり、建物とかそのままでも、街一つ分の人間一瞬で消したりできるからなー」
「あ、それと、爆発も起こせますよ。あれは。メタンガスの充満による爆発に似てますね」
「そう言えば、麦角菌を生み出して幻覚見せるとかもやってたな」
「何、そのチート」
「とっくの昔に飲み込まれ済ですけどね。飲み込まれない方が不思議なくらいの都市伝説ですから」
「まぁなー。村一つどころか街一つ一瞬で消せたり、建物とかそのままでも、街一つ分の人間一瞬で消したりできるからなー」
「あ、それと、爆発も起こせますよ。あれは。メタンガスの充満による爆発に似てますね」
「そう言えば、麦角菌を生み出して幻覚見せるとかもやってたな」
「何、そのチート」
上田の突っ込みももっともである
あの男、相当チートな能力の持ち主だ
本体の身体能力が特別高い訳ではないのが救いか
あの男、相当チートな能力の持ち主だ
本体の身体能力が特別高い訳ではないのが救いか
「なぁに、それでも、単体で世界滅ぼすとまではいかないからマシだろ」
「まぁ、D-No.0と一緒に暴れれば、世界を滅ぼせるとは言われましたがね。D-No.0が「いなくなった」今となっては、それも不可能でしょうが」
「まぁ、D-No.0と一緒に暴れれば、世界を滅ぼせるとは言われましたがね。D-No.0が「いなくなった」今となっては、それも不可能でしょうが」
「いなくなった」
その単語に、上田がかすかに反応を示した
その単語に、上田がかすかに反応を示した
「「いなくなった」、か。死んだではなく、か?」
「一応は、「暗殺された」と言うことになってはいますがね」
「一応は、「暗殺された」と言うことになってはいますがね」
…あぁ、そうか
やはり、この男も疑問に思っていたのか、とイクトミは妙な所で感心した
サンジェルマンならば、あの状況に、疑問を抱いてもおかしくない
やはり、この男も疑問に思っていたのか、とイクトミは妙な所で感心した
サンジェルマンならば、あの状況に、疑問を抱いてもおかしくない
「暗殺とは、物騒だな」
「それも、身内から、ですからね。全く、あの当時の「組織」は馬鹿げていましたよ。彼を殺しても、事態は良い方向に進むはずがなかったと言うのに」
「結果、あっちこっちから嫌われる組織になっただろ、「組織」。まぁ、今はその馬鹿やった連中が天罰喰らってて、穏健派が力つけてきたから、少しずつはよくなってきてるけどな」
「それも、身内から、ですからね。全く、あの当時の「組織」は馬鹿げていましたよ。彼を殺しても、事態は良い方向に進むはずがなかったと言うのに」
「結果、あっちこっちから嫌われる組織になっただろ、「組織」。まぁ、今はその馬鹿やった連中が天罰喰らってて、穏健派が力つけてきたから、少しずつはよくなってきてるけどな」
つ、と酒を口に含むイクトミ
…D-No.0が望むような、平和的な形ではないかもしれないが
少しずつ、少しずつ……「組織」は、軌道を修正していっている
どこか傲慢に、都市伝説と契約者を管理してきた「組織」
契約者や都市伝説、「組織」の黒服を、使い捨ててきた「組織」
…それが、少しずつ軌道修正されていっている
少なくとも、イクトミはそれを実感していた
サンジェルマンは、どうなのかはわからないが
…D-No.0が望むような、平和的な形ではないかもしれないが
少しずつ、少しずつ……「組織」は、軌道を修正していっている
どこか傲慢に、都市伝説と契約者を管理してきた「組織」
契約者や都市伝説、「組織」の黒服を、使い捨ててきた「組織」
…それが、少しずつ軌道修正されていっている
少なくとも、イクトミはそれを実感していた
サンジェルマンは、どうなのかはわからないが
「…D-No.0、か。そいつがいなくなったって事で「組織」が悪くなったって言うんなら、そいつはよっぽどいい奴だったんだろうな」
「「そりゃもう」」
「「そりゃもう」」
上田の言葉に、イクトミとサンジェルマンの返答が、被った
それはもう、清々しいほどに
それはもう、清々しいほどに
「あそこまで慈悲深いお人好しは、私もただ一人しか、見た事がありませんね」
178 名前:先日に引き続き笛の人に焼き土下座orz ◆nBXmJajMvU [] 投稿日:2010/06/14(月) 17:51:59.45 ID:VLSnXgww0
「慈悲深くてお人好し?…そう言う奴だったら、今の「組織」にも一人、いるんじゃないのか?過労死候補生とか呼ばれてるって聞いた事があるが」
「あれよりも、もっと凄かったって事さ」
「慈悲深くてお人好し?…そう言う奴だったら、今の「組織」にも一人、いるんじゃないのか?過労死候補生とか呼ばれてるって聞いた事があるが」
「あれよりも、もっと凄かったって事さ」
上田が言っているのは、恐らく、噂のD-No.962の事だろう
確かに、あの男も慈悲深いお人好しだ
それは、認めよう
それもまた、紛れもない事実だ
確かに、あの男も慈悲深いお人好しだ
それは、認めよう
それもまた、紛れもない事実だ
だが
D-No.0のそれは、D-No.962を遥かに上回るほどだった
慈悲部下過ぎる、お人好し過ぎる
人を疑う事を、全く知らないのではないだろうか、と思うほどの、お人好し
生まれついての性善説主義者
あまりにも真っ直ぐすぎる理想主義者
それが、D-No,0と言う男
D-No.0のそれは、D-No.962を遥かに上回るほどだった
慈悲部下過ぎる、お人好し過ぎる
人を疑う事を、全く知らないのではないだろうか、と思うほどの、お人好し
生まれついての性善説主義者
あまりにも真っ直ぐすぎる理想主義者
それが、D-No,0と言う男
「…あいつの優しさは、猛毒だよ」
相手が誰であろうと
どんな存在であろうと
その優しさは、向けられる
どんな存在であろうと
その優しさは、向けられる
人間であろうと
都市伝説であろうと
命であれば、彼は救おうとした
それが、善人であろうと、悪人であろうと、関係ない
都市伝説であろうと
命であれば、彼は救おうとした
それが、善人であろうと、悪人であろうと、関係ない
『命は皆、等しく平等なものである』
『人は皆、誰かに祝福され、誰かに必要とされて生まれてくる』
『どんな命にも、代替は存在しない』
『人は皆、誰かに祝福され、誰かに必要とされて生まれてくる』
『どんな命にも、代替は存在しない』
本気で、そう考えている男だった
疑いすらせず、そんな事を平気で言う男だった
疑いすらせず、そんな事を平気で言う男だった
「……何それ。いい奴すぎて逆に怖い」
「だろ?」
「そう言う男だったんですよ、困った事に。存在自体が奇跡のような男だったのかもしれません」
「だろ?」
「そう言う男だったんですよ、困った事に。存在自体が奇跡のような男だったのかもしれません」
その優しさは、ある意味で罪だった
ある意味で、猛毒だった
ある意味で、猛毒だった
もし、生まれてこの方、一度も他人の優しさに触れた事のない者がいたとして
そいつが、D-No.0の優しさに触れてしまったとしたら
そいつが、D-No.0の優しさに触れてしまったとしたら
その、優しさと言う猛毒に、一瞬で蝕まれる事だろう
場合によっては、命を落とす可能性すらある
それほどまでに、あの男は優しすぎ、その優しさを誰にでも平気で向ける男だった
場合によっては、命を落とす可能性すらある
それほどまでに、あの男は優しすぎ、その優しさを誰にでも平気で向ける男だった
「なぁ、上田。お前は、死ね、とか、生まれてこなければ良かったんだ、とか言われた事は?」
「何、いきなり酷い言葉……まぁ、あるねぇ。一応、人殺しとかしたんだし」
「D-No.0は、そんなお前の事も許しただろうよ。お前に「生きていてもいい」「生まれてきてくれて、ありがとう」とか、平気で言っただろうよ」
「何それ怖い」
「言ったでしょうね、あの男なら……たとえ、相手が極悪非道の大悪党であろうとも、その存在を認め、罪を許し………罪を償う手伝いを、するのでしょうね」
「何、いきなり酷い言葉……まぁ、あるねぇ。一応、人殺しとかしたんだし」
「D-No.0は、そんなお前の事も許しただろうよ。お前に「生きていてもいい」「生まれてきてくれて、ありがとう」とか、平気で言っただろうよ」
「何それ怖い」
「言ったでしょうね、あの男なら……たとえ、相手が極悪非道の大悪党であろうとも、その存在を認め、罪を許し………罪を償う手伝いを、するのでしょうね」
もし、相手がそんな言葉を聞かなくて
馬鹿な事を言う奴だ、と罵ってきても、傷つけてきても、命を奪おうとしてきても
…きっと、あの男は許してしまうのだ
馬鹿な事を言う奴だ、と罵ってきても、傷つけてきても、命を奪おうとしてきても
…きっと、あの男は許してしまうのだ
「…洗脳……とは、違いますがね。彼の優しさは、他人に感染しやすいのですよ。事実、彼は悪事の道から脱出できそうもなかった都市伝説を、数体、その道から救い上げました」
「そいつら全員、あいつの親衛隊になったしな……ほんっと、猛毒だよ」
「そいつら全員、あいつの親衛隊になったしな……ほんっと、猛毒だよ」
強硬派や過激派、がD-No,0を恐れた理由が、よくわかる
あれは、彼の力を恐れただけではない
……もし、D-No.0が「組織」にあり続けたならば
自分達の部下も、そして、自分達も、また
あの男の優しさに感染し、飲み込まれると
……それを、恐れたのだ
あれは、彼の力を恐れただけではない
……もし、D-No.0が「組織」にあり続けたならば
自分達の部下も、そして、自分達も、また
あの男の優しさに感染し、飲み込まれると
……それを、恐れたのだ
「因みに、もし、上田がD-No.0と遭遇したならば、あいつの優しさが感染して真人間になって善良な男になるに、百ドルかけてもいい」
「そこまで言うか」
「まぁ、私もうっかり、そちらに賭けたくなるのは否定できませんが」
「サンジェルマンまで」
「そこまで言うか」
「まぁ、私もうっかり、そちらに賭けたくなるのは否定できませんが」
「サンジェルマンまで」
まぁ…と
サンジェルマンは苦笑し、また、酒の注がれた杯を手に取った
サンジェルマンは苦笑し、また、酒の注がれた杯を手に取った
「…会う事は、ないでしょうけどね。彼は「暗殺」されたのですから」
「…………まぁな」
「…………まぁな」
…自分達は、それを認めていない
だが、一応、そう言う事になっているし………事実、あの事件以降、D-No.0の姿を見た者はいない
D-No.0の血のサンプルを持っていたH-No.0が、大量に残されていた血痕はD-No.0のものである、と確認したし
あの直後起きたとある自然現象が、D-No.0が死んだ証拠とされた以上、あの男は死んだことになっている
だが、一応、そう言う事になっているし………事実、あの事件以降、D-No.0の姿を見た者はいない
D-No.0の血のサンプルを持っていたH-No.0が、大量に残されていた血痕はD-No.0のものである、と確認したし
あの直後起きたとある自然現象が、D-No.0が死んだ証拠とされた以上、あの男は死んだことになっている
だが、それでも
D-No.0は生きているのでは、とイクトミは考えている
あの自然現象が、D-No.0が死に、彼が契約し、そして飲み込まれた都市伝説が暴走した結果だと、強硬派達は言った
だが、もし、D-No.0が本当に死んで、あの都市伝説が暴走したのなら……あんな「生温い」被害で終わっているはずがない
D-No.0は生きているのでは、とイクトミは考えている
あの自然現象が、D-No.0が死に、彼が契約し、そして飲み込まれた都市伝説が暴走した結果だと、強硬派達は言った
だが、もし、D-No.0が本当に死んで、あの都市伝説が暴走したのなら……あんな「生温い」被害で終わっているはずがない
それに、E-No.0にも告げた事だが…D-No.0の側近たち
D-No.1~D-No.10までの10人が、あの事件の直後、全員失踪している
D-No.0が個人的に集めていた人材であったゆえ、「組織」でもその全容は把握していないが、少なくとも、「組織」内部には一人も残っていない
イクトミ自身はたまたま、見知っていた者が数人いて…その一人を、よりによって「教会」上層部の一人の中に、見つけた事をあるが
D-No.1~D-No.10までの10人が、あの事件の直後、全員失踪している
D-No.0が個人的に集めていた人材であったゆえ、「組織」でもその全容は把握していないが、少なくとも、「組織」内部には一人も残っていない
イクトミ自身はたまたま、見知っていた者が数人いて…その一人を、よりによって「教会」上層部の一人の中に、見つけた事をあるが
………恐らく
D-No.0は、生きていて
D-No.1達によって護られ、隠されているのだろう、とイクトミは考える
それを、無理に探すつもりは、イクトミにはない
「組織」に見付かったならば、あのお人好しは今度こそ、殺されるかもしれないから
D-No.0は、生きていて
D-No.1達によって護られ、隠されているのだろう、とイクトミは考える
それを、無理に探すつもりは、イクトミにはない
「組織」に見付かったならば、あのお人好しは今度こそ、殺されるかもしれないから
(………だが)
…同時に
あの男が、生きていたとして
今の「組織」に接触したならば
…そして、都市伝説渦巻き、「組織」がもっとも注意を払っている、学校町にやってきたならば
それは、周囲にどんな影響を与えるのだろうか、と
あの男が、生きていたとして
今の「組織」に接触したならば
…そして、都市伝説渦巻き、「組織」がもっとも注意を払っている、学校町にやってきたならば
それは、周囲にどんな影響を与えるのだろうか、と
イクトミは、それがどこか、楽しみで
同時に、恐ろしく思えるのだった
同時に、恐ろしく思えるのだった
to be … ?