アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-57

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
 己は、後悔しているのだろうか
 時折、イクトミは考える
 あの時、もっと強く警告していれば、あんな事にはならなかったのではないだろうか?

 己が予見した、血塗れのあの男の姿を思い出すたびに
 そう、考えずにはいられないのだ



「どうしましたか?イクトミ。黙りこんで?」
「ん?…あー、いや、何でもねぇよ」

 サンジェルマンに声を駆けられ、イクトミは軽く首を左右に降った
 …自分らしくもない
 己は陽気で卑猥な蜘蛛の神
 ネイティブ・アメリカン スー族が語るトリックスター
 深刻な顔等、自分には似合うまい

「あー、そうだ、サンジェルマン。エーちゃんにも伝えといたけど、お前にも伝えとくな。X-No.0の痕跡をアメリカで発見。まぁ、あいつの事だから、とっくに移動隅だろうがな」
「おや、そうですか…やれやれ、彼も相変わらず厄介だ」

 イクトミの言葉に、苦笑するサンジェルマン
 上田が、小さく首をかしげる

「誰よ?X-No.0って」
「あぁ、アキナリも知っておいた方が良いかもしれませんね。都市伝説と関わる以上、彼と遭遇する危険性は、無きにしも非ずですから」

 ことん、と
 酒の入ったグラスをおいて、サンジェルマンはゆっくりと語る

「…X-No.0…ザン・ザヴィアー(Xan・Xavier)、「組織」上層部が一人にして、「組織」で始めての裏切り者です」
「裏切り者?」
「「組織」結成に関わっておきながら、「組織」結成と同時に姿を消したのさ」

 なーに考えてたんだか、と肩をすくめるイクトミ
 あの気まぐれな男の考えは、少なくともイクトミには、ほとんど読むことができなかった

「「組織」としては、裏切り者であるあいつを討伐しようともしたっぽいんだがな。あいつ、反則的な能力持ってるから、ほぼ100%返り討ちにあってるんだな、これが」
「反則的な能力、ねぇ?」
「…正直、アキナリには、ザンとは遭遇してほしくありませんね。遭遇したとしても、戦うような状況に陥って欲しくありません。彼がどの能力を使ってくるかにもよりますが、あなたでは対抗することが難しいでしょう」

 やや、難しい表情を浮かべるサンジェルマン
 確かに、そうだろう
 イクトミも、同じ事を考える
 あの男の能力には、上田の契約都市伝説では…対抗できなくもないが、難しいだろう

「お前ら二人にそういわせるなんて、よほどすごい都市伝説と契約しているんだな、そいつは?」
「とっくの昔に飲み込まれ済ですけどね。飲み込まれない方が不思議なくらいの都市伝説ですから」
「まぁなー。村一つどころか街一つ一瞬で消せたり、建物とかそのままでも、街一つ分の人間一瞬で消したりできるからなー」
「あ、それと、爆発も起こせますよ。あれは。メタンガスの充満による爆発に似てますね」
「そう言えば、麦角菌を生み出して幻覚見せるとかもやってたな」
「何、そのチート」

 上田の突っ込みももっともである
 あの男、相当チートな能力の持ち主だ
 本体の身体能力が特別高い訳ではないのが救いか

「なぁに、それでも、単体で世界滅ぼすとまではいかないからマシだろ」
「まぁ、D-No.0と一緒に暴れれば、世界を滅ぼせるとは言われましたがね。D-No.0が「いなくなった」今となっては、それも不可能でしょうが」

 「いなくなった」
 その単語に、上田がかすかに反応を示した

「「いなくなった」、か。死んだではなく、か?」
「一応は、「暗殺された」と言うことになってはいますがね」

 …あぁ、そうか
 やはり、この男も疑問に思っていたのか、とイクトミは妙な所で感心した
 サンジェルマンならば、あの状況に、疑問を抱いてもおかしくない

「暗殺とは、物騒だな」
「それも、身内から、ですからね。全く、あの当時の「組織」は馬鹿げていましたよ。彼を殺しても、事態は良い方向に進むはずがなかったと言うのに」
「結果、あっちこっちから嫌われる組織になっただろ、「組織」。まぁ、今はその馬鹿やった連中が天罰喰らってて、穏健派が力つけてきたから、少しずつはよくなってきてるけどな」

 つ、と酒を口に含むイクトミ
 …D-No.0が望むような、平和的な形ではないかもしれないが
 少しずつ、少しずつ……「組織」は、軌道を修正していっている
 どこか傲慢に、都市伝説と契約者を管理してきた「組織」
 契約者や都市伝説、「組織」の黒服を、使い捨ててきた「組織」
 …それが、少しずつ軌道修正されていっている
 少なくとも、イクトミはそれを実感していた
 サンジェルマンは、どうなのかはわからないが

「…D-No.0、か。そいつがいなくなったって事で「組織」が悪くなったって言うんなら、そいつはよっぽどいい奴だったんだろうな」
「「そりゃもう」」

 上田の言葉に、イクトミとサンジェルマンの返答が、被った
 それはもう、清々しいほどに

「あそこまで慈悲深いお人好しは、私もただ一人しか、見た事がありませんね」

178 名前:先日に引き続き笛の人に焼き土下座orz  ◆nBXmJajMvU [] 投稿日:2010/06/14(月) 17:51:59.45 ID:VLSnXgww0
「慈悲深くてお人好し?…そう言う奴だったら、今の「組織」にも一人、いるんじゃないのか?過労死候補生とか呼ばれてるって聞いた事があるが」
「あれよりも、もっと凄かったって事さ」

 上田が言っているのは、恐らく、噂のD-No.962の事だろう
 確かに、あの男も慈悲深いお人好しだ
 それは、認めよう
 それもまた、紛れもない事実だ

 だが
 D-No.0のそれは、D-No.962を遥かに上回るほどだった
 慈悲部下過ぎる、お人好し過ぎる
 人を疑う事を、全く知らないのではないだろうか、と思うほどの、お人好し
 生まれついての性善説主義者
 あまりにも真っ直ぐすぎる理想主義者
 それが、D-No,0と言う男

「…あいつの優しさは、猛毒だよ」

 相手が誰であろうと
 どんな存在であろうと
 その優しさは、向けられる

 人間であろうと
 都市伝説であろうと
 命であれば、彼は救おうとした
 それが、善人であろうと、悪人であろうと、関係ない


『命は皆、等しく平等なものである』
『人は皆、誰かに祝福され、誰かに必要とされて生まれてくる』
『どんな命にも、代替は存在しない』


 本気で、そう考えている男だった
 疑いすらせず、そんな事を平気で言う男だった

「……何それ。いい奴すぎて逆に怖い」
「だろ?」
「そう言う男だったんですよ、困った事に。存在自体が奇跡のような男だったのかもしれません」

 その優しさは、ある意味で罪だった
 ある意味で、猛毒だった

 もし、生まれてこの方、一度も他人の優しさに触れた事のない者がいたとして
 そいつが、D-No.0の優しさに触れてしまったとしたら

 その、優しさと言う猛毒に、一瞬で蝕まれる事だろう
 場合によっては、命を落とす可能性すらある
 それほどまでに、あの男は優しすぎ、その優しさを誰にでも平気で向ける男だった

「なぁ、上田。お前は、死ね、とか、生まれてこなければ良かったんだ、とか言われた事は?」
「何、いきなり酷い言葉……まぁ、あるねぇ。一応、人殺しとかしたんだし」
「D-No.0は、そんなお前の事も許しただろうよ。お前に「生きていてもいい」「生まれてきてくれて、ありがとう」とか、平気で言っただろうよ」
「何それ怖い」
「言ったでしょうね、あの男なら……たとえ、相手が極悪非道の大悪党であろうとも、その存在を認め、罪を許し………罪を償う手伝いを、するのでしょうね」

 もし、相手がそんな言葉を聞かなくて
 馬鹿な事を言う奴だ、と罵ってきても、傷つけてきても、命を奪おうとしてきても
 …きっと、あの男は許してしまうのだ

「…洗脳……とは、違いますがね。彼の優しさは、他人に感染しやすいのですよ。事実、彼は悪事の道から脱出できそうもなかった都市伝説を、数体、その道から救い上げました」
「そいつら全員、あいつの親衛隊になったしな……ほんっと、猛毒だよ」

 強硬派や過激派、がD-No,0を恐れた理由が、よくわかる
 あれは、彼の力を恐れただけではない
 ……もし、D-No.0が「組織」にあり続けたならば
 自分達の部下も、そして、自分達も、また
 あの男の優しさに感染し、飲み込まれると
 ……それを、恐れたのだ

「因みに、もし、上田がD-No.0と遭遇したならば、あいつの優しさが感染して真人間になって善良な男になるに、百ドルかけてもいい」
「そこまで言うか」
「まぁ、私もうっかり、そちらに賭けたくなるのは否定できませんが」
「サンジェルマンまで」

 まぁ…と
 サンジェルマンは苦笑し、また、酒の注がれた杯を手に取った

「…会う事は、ないでしょうけどね。彼は「暗殺」されたのですから」
「…………まぁな」

 …自分達は、それを認めていない
 だが、一応、そう言う事になっているし………事実、あの事件以降、D-No.0の姿を見た者はいない
 D-No.0の血のサンプルを持っていたH-No.0が、大量に残されていた血痕はD-No.0のものである、と確認したし
 あの直後起きたとある自然現象が、D-No.0が死んだ証拠とされた以上、あの男は死んだことになっている

 だが、それでも
 D-No.0は生きているのでは、とイクトミは考えている
 あの自然現象が、D-No.0が死に、彼が契約し、そして飲み込まれた都市伝説が暴走した結果だと、強硬派達は言った
 だが、もし、D-No.0が本当に死んで、あの都市伝説が暴走したのなら……あんな「生温い」被害で終わっているはずがない

 それに、E-No.0にも告げた事だが…D-No.0の側近たち
 D-No.1~D-No.10までの10人が、あの事件の直後、全員失踪している
 D-No.0が個人的に集めていた人材であったゆえ、「組織」でもその全容は把握していないが、少なくとも、「組織」内部には一人も残っていない
 イクトミ自身はたまたま、見知っていた者が数人いて…その一人を、よりによって「教会」上層部の一人の中に、見つけた事をあるが

 ………恐らく
 D-No.0は、生きていて
 D-No.1達によって護られ、隠されているのだろう、とイクトミは考える
 それを、無理に探すつもりは、イクトミにはない
 「組織」に見付かったならば、あのお人好しは今度こそ、殺されるかもしれないから


(………だが)


 …同時に
 あの男が、生きていたとして
 今の「組織」に接触したならば
 …そして、都市伝説渦巻き、「組織」がもっとも注意を払っている、学校町にやってきたならば
 それは、周囲にどんな影響を与えるのだろうか、と


 イクトミは、それがどこか、楽しみで
 同時に、恐ろしく思えるのだった



to be … ?



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー