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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-ある夏の日-01

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 夏休みのある日、舞はTさんを正面に見て、頼みこむ口調で言葉を発した。
「Tさん、プールとか行っちゃだめ?」
「何故懇願口調なんだ?」
 困惑顔のTさんに舞は「いや、まあ、ほら……」と言葉を探すように指先で宙をかき回しつつ、
「受験生だし?」
「ああ……」
 なるほど。それなりに気にしてはいるのか。
 舞の応答にTさんはそう思い、
 いや、俺が少し夏休みの課題の監督を厳しくし過ぎたせいやもしれんな。
 苦笑を浮かべた。
「その、な。友達が誘ってきてだな。これから忙しくなるし、遊べるうちに思いっきり遊んじまおうって話になってだな」
 学校町に大学は無い。なんだかんだで舞も進路を大学に決めているようだ。ならば今高校で学校生活を共にしている者達とも今年で一旦区切りをつけ、別れる事になるのだろう。
「そうか」
 相槌をうちながら、思い出づくりも大切だろうと思う。これでいて舞は別れを惜しむ人間だ。普段は蓮っ葉だがこういうところは、
 ……可愛い娘だ。
 思う先、舞は窺うような上目遣いで、「……どうだ?」と訊いて来る。
 どうもこうもない。舞が行きたいと思うならば行けばいい。
 成績云々はまあ問題というほどでもないし、元々成績でなく勉強という過程を俺は見ていたのだしな。
 嫌な事に対してそれでも努力を継続する力と経験いうものは最終的に何かのためになるものだ。だからその部分については厳しく接し、そうすることで、
 俺が居なくなってからも佳い人生を送ってもらいたいと思ったものだ……。
 自分は舞と共に長くは居られまい。そうTさんは思っていた。
 なにしろ血を見る事の多い人生だったからな。
 舞は自分が殺人を為すという事実を知って、その現実を突きつけられてしまったら自分を疎むのではないかと思っていた。
 しかし、
 舞は既に血まみれな自分の過去を理解し、実際に人を殺めた場を見て、それでも尚共に在ってくれると言ってくれた。こんな自分を好いていてくれる者を。
 愛しい女性(ひと)だ。
 そう思いながら感慨深く舞を眺めていると。
「Tさん?」
「ああ、――どんな水着を着るのだろうと思ってな」
 疑問符を浮かべた舞に言葉ではそう言っておく。舞は言葉を頭の中で数秒転がし、
「へ?」
 気の抜けた返事をして更に数秒考え、
「えーと、つまり……行っていいって事か?」
「すべき事はしたんだろう? あとは舞自身が決めればいい」
 言って既に片付いている課題の山を指さす。すると舞は瞬間笑顔になり、
「じゃあ行こうぜ! よっしゃ遊ぶぞー!」
 はしゃぎながらTさんの手を引いた。
 今度はTさんが疑問符を浮かべる番だ。
「待て、俺も行くのか?」
「当然じゃん。リカちゃんもな」
「いいの?」
 経過を課題の山の上で眺めていたリカちゃんが頭を傾ける。リカちゃんの疑問に便乗する形でTさんは舞に問いかけた。
「学校の友人に誘われたのではないのか?」
 ならば自分は居ない方がいいだろう。
 言外にそう言うが、
「あー、いや」
 舞は言い辛そうに目をそらすと、困ったように呟いた。
「あいつらがTさんを見たいって言って、さ……」

            ●


 南区のウォーター・アミューズメントパーク。夏以外には使えない、外にあるプール関連の施設、その広大で多種多様な施設の内の一つに私は友人と来ていた。
 今日は勉強の息抜きってのもあるけどそれ以上に……。
「やあやあ、お兄さんが舞の彼氏?」
「そうなるな」
 友人の彼氏を見て品定めするのが今回の主な目的だった。
「ほうほう、これは……」
 隣であからさまに値踏みしている紗紀においおいと思いながら私もお兄さんを見る。
 ちょっと……なんだろう、悟りでも開いてるのかしら。お兄さんからはそんな雰囲気が漂ってきているとでも言おうか、妙に圧倒される。顔は悪くないわね……体は、スポーツマンなのかしら。引き締まってる印象を受ける。
 そしてこの花の女子高生に囲まれても鼻の下が伸びないあたりは好評価ね。そう思いながら彼女さんへと声をかける。
「舞ー、紹介してよ」
「あーもう分かってるよ香織」
 そう乱暴な口調で、その実恥ずかしそうに顔を赤らめている友人こと舞。これでも結構苦労したのだ。遊びに行くだけならともかく彼氏のお兄さんを呼ばせる為にあの手この手を使った。
 今日の彼女は髪を団子にまとめてそこに何故か人形を掴まらせている。はて、この子こんなファンシーな趣味なんてあったかしら?
 ちなみに舞が今日着ている水着は私や今日他に来ている友人、紗紀や委員長が選んだものだ。本人は水着を見た瞬間に気後れしていたものだけど、
「そんなに恥ずかしい?」
 委員長の言葉に舞は「んー」と腕を組み、
「なんつーか、イメージ的に俺に合わねえ」
「そうかしら」
「まあ胸は寂しいわね」
「んだとこら紗紀」
 水をぶっかけ始める舞に委員長と顔を見合わせて微苦笑する。
 この子ったら色気もクソも無いもの着て行こうとするからなー。かと言ってフリルビキニは舞の雰囲気にはかわい過ぎるかも。あと胸……。
 私のかわいそうなものを見る視線に気付いたか、半目で舞が見て来ていた。コホンと咳払い、「どうぞご紹介を」と促すと舞が渋々といった感じでお兄さんを紹介し始めた。
「あー、これが、Tさん。……まあ、そういう関係だ」
 簡潔と言えばあまりに簡潔過ぎるその紹介に私達は首を傾げた。
「Tさん?」
「おう、寺生まれのTさんだ」
「いや、本名は?」
 委員長が問いかけると今度は向こうが「へ?」と首を傾げ。
「いや、これが本名だぜ?」
 そんなばかな。
「まーいー。そんな言い訳は通らないわよー」
「んなこと言ってもなぁ……」
 舞は困った顔でお兄さんを見上げた。お兄さんは私達の方を向いて苦笑気味に頷く。
「本当だ」
「へ?」
「知り合いは皆Tさんと呼ぶ、ひっかかるところもあるかもしれんがそういう風習、とでも受け取ってもらえると助かる」
 風習って……。
「そんなこと信じろって?」
「ああ」
 怪しい。まさか舞を弄んでいる危ない奴なんじゃ……。
 委員長と紗紀に目配せすると無言で二人は頷いた。
 私も頷き返す。
 根掘り葉掘り聞き出してやる……!


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