三面鏡の少女 56
ペットショップ『ゲルマニア』裏手にある家屋
現在は『ウィンチェスター・ミステリー・ハウス』の能力が発動しているため、皆が集まっているダイニングキッチン以外の部屋は風来坊でも探索困難な大迷宮と化している
思い思いに時間を過ごす者達の中で、兎耳を生やした佳奈美は所在なさげに座り込んでいた
今の彼女は守られる立場であり、特にこれといってやれる事が無いのである
「戦って宏也さんの助けになれる能力があればなー」
ぽつりと呟いたその言葉は、たまたま傍にいたマッドガッサーの耳に入る
「戦える彼女ってのも、どこで怪我したりするかわからんし、とにかく心配だけどな」
「なんや、ウチの話? そないな事言うたかてしゃーないやん」
マッドガッサーの背後から、じゃれつくように抱きつく葵
「何かあった時に足手纏いになりたくない、できれば横に並んで一緒に戦いたいって思うのは仕方ないやろ?」
「そう言って、こないだみたいに腕折って帰ってきちゃ世話ないだろうが」
「鍛えてたからそんなもんで済んだんやと思うけどなー」
そこまで言ってから、マッドガッサーはふと首を傾げる
「……お前、何で腕折ってきたんだっけ?」
「……へ? あー、何やったっけ?」
その葵の負傷は、原因である手塚星が己に関する記憶をこの世から抹消したせいで、原因存在について思い出せなくなっている
「なんか野良の都市伝説に絡まれたんやっけ? どっちにせよ、戦えるに越した事は無いと思うけどなぁ」
「男ってのは格好つけたがりだからな。自分の女を傷付けたくないし、手を汚させたくもない。ついでに自分のみっともないとこなんか、絶対見せたかないもんさ」
「ウチはマッドはんなら何を見られてもええけどなー」
「そうは言うが、こないだ原稿で一週間徹夜した後の姿を見たら、ハリセン持って追いかけてきただろ」
「ものには限度っちゅーもんがあるやろ!?」
意地悪そうに笑うマッドガッサーの頬を、真っ赤になりながらむにむにと引っ張る葵
「まあ結局のところは適材適所だ。安心して帰ってこれる場所があるってのも、もの凄く大事だとは思うぞ?」
神妙な顔で話を聞いていた佳奈美の頭を撫でるように、その手がそっと触れた瞬間
「ふぁ、んぅっ!」
やけに色っぽい声を出して身悶えする佳奈美
「マッドはん、何してん?」
咎めるでもなく興味津々といった様子で身を乗り出す葵
「いや、頭を撫でただけなんだが……もしかしてこの兎耳か?」
「さ、触っちゃダメ、ひゃふっ!?」
「ロレーナ、この耳って何でこんなに敏感なんだ? 性的な意味で」
「んん? 別にそんな効果は付けた覚えは無いんだがねぇ……慣れない感触に敏感になってるだけじゃないかねぇ?」
そちらを見てみると、犬の耳と尻尾を付けた金髪の少女が、鏡を見ながら自分の耳をもふもふと触っている
「じゃあ単にこの子がエロいって事で」
「にゃー!?」
戦闘から守るために隔離された空間とはいえ、余りにも暢気な空気であったとさ
現在は『ウィンチェスター・ミステリー・ハウス』の能力が発動しているため、皆が集まっているダイニングキッチン以外の部屋は風来坊でも探索困難な大迷宮と化している
思い思いに時間を過ごす者達の中で、兎耳を生やした佳奈美は所在なさげに座り込んでいた
今の彼女は守られる立場であり、特にこれといってやれる事が無いのである
「戦って宏也さんの助けになれる能力があればなー」
ぽつりと呟いたその言葉は、たまたま傍にいたマッドガッサーの耳に入る
「戦える彼女ってのも、どこで怪我したりするかわからんし、とにかく心配だけどな」
「なんや、ウチの話? そないな事言うたかてしゃーないやん」
マッドガッサーの背後から、じゃれつくように抱きつく葵
「何かあった時に足手纏いになりたくない、できれば横に並んで一緒に戦いたいって思うのは仕方ないやろ?」
「そう言って、こないだみたいに腕折って帰ってきちゃ世話ないだろうが」
「鍛えてたからそんなもんで済んだんやと思うけどなー」
そこまで言ってから、マッドガッサーはふと首を傾げる
「……お前、何で腕折ってきたんだっけ?」
「……へ? あー、何やったっけ?」
その葵の負傷は、原因である手塚星が己に関する記憶をこの世から抹消したせいで、原因存在について思い出せなくなっている
「なんか野良の都市伝説に絡まれたんやっけ? どっちにせよ、戦えるに越した事は無いと思うけどなぁ」
「男ってのは格好つけたがりだからな。自分の女を傷付けたくないし、手を汚させたくもない。ついでに自分のみっともないとこなんか、絶対見せたかないもんさ」
「ウチはマッドはんなら何を見られてもええけどなー」
「そうは言うが、こないだ原稿で一週間徹夜した後の姿を見たら、ハリセン持って追いかけてきただろ」
「ものには限度っちゅーもんがあるやろ!?」
意地悪そうに笑うマッドガッサーの頬を、真っ赤になりながらむにむにと引っ張る葵
「まあ結局のところは適材適所だ。安心して帰ってこれる場所があるってのも、もの凄く大事だとは思うぞ?」
神妙な顔で話を聞いていた佳奈美の頭を撫でるように、その手がそっと触れた瞬間
「ふぁ、んぅっ!」
やけに色っぽい声を出して身悶えする佳奈美
「マッドはん、何してん?」
咎めるでもなく興味津々といった様子で身を乗り出す葵
「いや、頭を撫でただけなんだが……もしかしてこの兎耳か?」
「さ、触っちゃダメ、ひゃふっ!?」
「ロレーナ、この耳って何でこんなに敏感なんだ? 性的な意味で」
「んん? 別にそんな効果は付けた覚えは無いんだがねぇ……慣れない感触に敏感になってるだけじゃないかねぇ?」
そちらを見てみると、犬の耳と尻尾を付けた金髪の少女が、鏡を見ながら自分の耳をもふもふと触っている
「じゃあ単にこの子がエロいって事で」
「にゃー!?」
戦闘から守るために隔離された空間とはいえ、余りにも暢気な空気であったとさ