三面鏡の少女 57
「お帰り下さいませご主人様」
こめかみに青筋を浮かべながら、引き攣った笑顔で辛うじて絞り出した声に本音が混じる
クラスメイトの男子達の来店に、丁度手近に居た為に挨拶を強いられた宮定繰は、ただ湧き上がる破壊衝動を押さえるのに必死だった
「いやいや、友達の晴れ舞台を見に来ただけだから」
「仕事っぷりを一度見ておきたいじゃん」
「あと折角ツーショット撮影券も貰ったし」
「まー宮定が居なくても多分来てたけど」
口々に勝手な事を言うクラスメイト達に、怒りゲージがふつふつと上昇していくものの
「宮定さーん、ちゃんと席にご案内してー」
通り掛った別のメイドに注意され、怒りも毒もぐっと飲み込んでギリギリの作り笑いを浮かべる
「あ、うちのクラスの連中は交代で来るからよろしくな」
一度持ち堪えた堪忍袋の緒を足に括り付け、豪快にバンジージャンプ
全身全霊の落下の全衝撃が堪忍袋の緒を引き千切らんとしたその瞬間
「あ、繰のクラスの人? いらっしゃ……じゃないや、お帰りなさいませ」
満面の笑顔で繰の隣へ顔を出す、逢瀬佳奈美
「繰ってば可愛いでしょ……って、準備の時に見たんだっけ。ごめんね、うちのクラスの我侭で人手借りちゃって」
堪忍袋の緒でのバンジージャンプは、佳奈美パラシュートが開いて軟着陸
「こっちもサービス券貰っちゃったしね」
「うちのクラスもメイドとか執事が来たらサービスするように言ってあるから」
「まあ素人占いだけどねー」
和気藹々とした雰囲気に、溜めた怒りのぶつけ場所が見つからずにいるうちに
「それではお席にご案内しますね、どうぞゆっくり楽しんでいって下さい」
ぺこりと頭を下げる佳奈美につられて繰もついつい頭を下げてしまい、堪忍袋の口は緩んで中身はぐでぐでと漏れて無くなってしまった
ように思えたが
「ここのメイド喫茶のレベルがすげぇって話でさ」
「ツーショットでの写真撮影サービスとかあるらしいぜ?」
「そういえばこのクラス、女子も男子も妙にレベル高いよな」
そんな声を聞きつけた繰の表情から、すぅっと色が消えていく
「……佳奈美、そいつらの案内任せていい?」
「ん、次のお客さん来たの? それじゃお席にご案内しまーす」
繰のクラスメイト達を開いている席へと連れて行く佳奈美
それを確認し、店内からは微妙に見えない廊下側へと飛び出す繰
そして、突然飛び出してきたゴスロリメイドに一瞬呆気に取られ、その足を止めた三人組の男子生徒
「………………」
腕を組んで仁王立ちしたその姿は、メイドというよりは死の宣告にやってきた死神のようで
「………………」
「………………」
「………………」
学園祭準備中に、ディランをパシリに使っていた金田、銀河、銅島の三人は、その身体が凍て付いたかのように動かなくなっていた
「どのツラ下げていらっしゃりやがった、ご主人様どもめ」
「え、あれ? 宮定ってこのクラスだっけ? あれ、でも逢瀬とクラス違うよな?」
「いや、俺は金田が一人で行くのが嫌だっていうからしょうがなく」
「待てコラ銀河!? またお前は裏切るのか!」
「踏んで下さい!」
「土下座に加えて何か変な方向に進化してないか銅島っ!?」
にわかに騒がしくなりかけたところを、その首根っこを掴んで引き寄せ
「お前らがタチの悪い悪戯をしようとした佳奈美も、こないだパシリに使いやがった英語講師も今日は楽しんでやってんだ……邪魔ぁしやがったら明日は来ねぇぞ?」
「いや邪魔とかそういうのじゃなくて純粋に客として来たわけだから!」
「その付き合いだから!」
「もっと罵って下さい!」
必死に無害を主張する金田と、それに同調する銀河と、もうわからない領域に行ってしまった銅島
これ以上面倒な客が来ませんように
繰はそう願わざるを得ないのであった
こめかみに青筋を浮かべながら、引き攣った笑顔で辛うじて絞り出した声に本音が混じる
クラスメイトの男子達の来店に、丁度手近に居た為に挨拶を強いられた宮定繰は、ただ湧き上がる破壊衝動を押さえるのに必死だった
「いやいや、友達の晴れ舞台を見に来ただけだから」
「仕事っぷりを一度見ておきたいじゃん」
「あと折角ツーショット撮影券も貰ったし」
「まー宮定が居なくても多分来てたけど」
口々に勝手な事を言うクラスメイト達に、怒りゲージがふつふつと上昇していくものの
「宮定さーん、ちゃんと席にご案内してー」
通り掛った別のメイドに注意され、怒りも毒もぐっと飲み込んでギリギリの作り笑いを浮かべる
「あ、うちのクラスの連中は交代で来るからよろしくな」
一度持ち堪えた堪忍袋の緒を足に括り付け、豪快にバンジージャンプ
全身全霊の落下の全衝撃が堪忍袋の緒を引き千切らんとしたその瞬間
「あ、繰のクラスの人? いらっしゃ……じゃないや、お帰りなさいませ」
満面の笑顔で繰の隣へ顔を出す、逢瀬佳奈美
「繰ってば可愛いでしょ……って、準備の時に見たんだっけ。ごめんね、うちのクラスの我侭で人手借りちゃって」
堪忍袋の緒でのバンジージャンプは、佳奈美パラシュートが開いて軟着陸
「こっちもサービス券貰っちゃったしね」
「うちのクラスもメイドとか執事が来たらサービスするように言ってあるから」
「まあ素人占いだけどねー」
和気藹々とした雰囲気に、溜めた怒りのぶつけ場所が見つからずにいるうちに
「それではお席にご案内しますね、どうぞゆっくり楽しんでいって下さい」
ぺこりと頭を下げる佳奈美につられて繰もついつい頭を下げてしまい、堪忍袋の口は緩んで中身はぐでぐでと漏れて無くなってしまった
ように思えたが
「ここのメイド喫茶のレベルがすげぇって話でさ」
「ツーショットでの写真撮影サービスとかあるらしいぜ?」
「そういえばこのクラス、女子も男子も妙にレベル高いよな」
そんな声を聞きつけた繰の表情から、すぅっと色が消えていく
「……佳奈美、そいつらの案内任せていい?」
「ん、次のお客さん来たの? それじゃお席にご案内しまーす」
繰のクラスメイト達を開いている席へと連れて行く佳奈美
それを確認し、店内からは微妙に見えない廊下側へと飛び出す繰
そして、突然飛び出してきたゴスロリメイドに一瞬呆気に取られ、その足を止めた三人組の男子生徒
「………………」
腕を組んで仁王立ちしたその姿は、メイドというよりは死の宣告にやってきた死神のようで
「………………」
「………………」
「………………」
学園祭準備中に、ディランをパシリに使っていた金田、銀河、銅島の三人は、その身体が凍て付いたかのように動かなくなっていた
「どのツラ下げていらっしゃりやがった、ご主人様どもめ」
「え、あれ? 宮定ってこのクラスだっけ? あれ、でも逢瀬とクラス違うよな?」
「いや、俺は金田が一人で行くのが嫌だっていうからしょうがなく」
「待てコラ銀河!? またお前は裏切るのか!」
「踏んで下さい!」
「土下座に加えて何か変な方向に進化してないか銅島っ!?」
にわかに騒がしくなりかけたところを、その首根っこを掴んで引き寄せ
「お前らがタチの悪い悪戯をしようとした佳奈美も、こないだパシリに使いやがった英語講師も今日は楽しんでやってんだ……邪魔ぁしやがったら明日は来ねぇぞ?」
「いや邪魔とかそういうのじゃなくて純粋に客として来たわけだから!」
「その付き合いだから!」
「もっと罵って下さい!」
必死に無害を主張する金田と、それに同調する銀河と、もうわからない領域に行ってしまった銅島
これ以上面倒な客が来ませんように
繰はそう願わざるを得ないのであった