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連載 - 狂科学者と復讐者-05

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 剣閃が乱れ飛ぶ
 ぱっ、と、あちらこちらに鮮血の華が咲く

「………っ」

 平静を装いながら、エーテルは思案する
 どうやって、この場を切り抜けるべきか
 ハンニバルが、そう簡単にこちらを逃がしてくれるとは思えない

 …ハンニバルが負った傷は、即座に再生していってしまう
 白衣やスーツの切れた痕だけが残り、それがハンニバルにダメージを与えた痕跡となっている
 ……いや
 たとえダメージを与えても、即座に再生されてしまっては、意味がない
 せめて、再生スピードが落ちてくれれば……

 再び、ハンニバルが切りかかってくる
 ギリギリのところでその攻撃を避け、反撃
 レーザーメスによる光の刃が、ハンニバルの顔を掠った
 眼帯の紐が焼ききられ、はらり、落ちる

「……!お前、その目……!」

 …ハンニバルの、眼帯の下に隠されていた、目
 それを見てのエーテルの反応に、ハンニバルが暗く笑う

「どうした?私は研究者だ。自分の体を弄るくらいやっている」
「……っ!」

 ハンニバルの答えに、戦慄するエーテル
 …眼帯の下から現れた目は…明らかに、ハンニバルの目ではない
 瞳の色も、何もかも……彼のものとは、違う


 それじゃあ
 その目は?


「………そこまでして……強くなる必要があるって言うのか……っ!」
「あぁ、そうだ。私は、強くあらねばならんのだよ」

 剣を構え、ハンニバルは笑う
 己が野望を隠そうともせず、そして、エーテルの状態を見て…己の勝利を、確信しながら

「…E-No.0、何故、「教会」がネフィリムを禁忌としたか、知っているかね?」
「………?」
「それは、ネフィリムが神の管轄から外れた状態で生まれた存在で………そうであるにも関わらず、神が作り出した生命体よりも、優れていたからだ」


 それが、「教会」でハンニバルが見つけた答え
 何故、「教会」がネフィリムを禁忌とし、その存在を隠蔽し抹消し続けたのか
 その、答え
 自分達が信じる神が作り出したそれよりも強く、強大な存在
 それを認めたくないという願い


「自分達が信じる神が作り出したそれよりも優れたそれを否定する………自分達の神を信じぬ者など地獄行きだと言う、傲慢な連中らしい考えとは思わんかね?」

 …まさか
 エーテルは、気付く
 ハンニバルの、目的は

「お前は……自分で、ネフィリムを作り出して………神を超えるとでも言うのか…っ」
「その通り!!」

 斬撃が襲い掛かる
 ギリギリのところで撃ち落し、避け続けるエーテル
 筋肉が、悲鳴をあげる

「その為には!私自身も、また、それに相応しく強くあらねばならぬ!!そして!神を超えるからには、強きネフィリムを作り出さねばならんのだよ!」
「--っそんな、目的の為に…!」

 そんな、自分勝手な願いの為に
 ここまでの犠牲を出したと言うのか!?

 ハンニバルの野望を知り、エーテルの中の怒りが再び燃え出す
 しかし
 だからといって、体の自由が戻る訳でもない
 もう、限界が近いのだから

 ……今まで語った事は、冥土の土産だったとでも言うのか
 ハンニバルのスピードが、さらにあがり
 その斬撃が、エーテルの首に迫り…


「ククージィ、やれ!!」


 耳に届いた、声
 直後、無数の蝙蝠が、ハンニバルに襲い掛かった
 蝙蝠の群れの攻撃に、ハンニバルの動きが僅かに鈍り、無数の牙を避けるように後方に跳ぶ

「エーテル…!」
「ッマクスウェル、逃げろと言っただろ…!」
「…嫌……!もう、エーテルを置いて逃げるなんて……絶対、嫌……!」

 涙を浮かべながら、傷ついたエーテルに駈け寄るマクスウェル
 …エーテルの、前に
 マクスウェルに連れられて逃げたはずの祐樹が立つ

「お前も…」
「……巻き込んでしまって、すまない………元々、狙われたのは、俺だから」

 祐樹が
 蝙蝠達に襲われているハンニバルを、睨みつける
 …その体がかすかに震えているのを、エーテルは見逃さなかった

「ククージィ、手加減する必要はない!」
「わかっておる!」

 一際大きな蝙蝠が、祐樹の言葉に答える
 鋭い牙を剥き出しにして、蝙蝠がハンニバルに襲い掛かった

 横なぎに振るわれる剣
 その切っ先が巨大な蝙蝠に届こうとした瞬間、蝙蝠の姿が掻き消えた
 その体が白い霧となり、ハンニバルを包み込む

「…老吸血鬼風情が、私の邪魔をするのか」
「契約者を護るのは、当然の事じゃからな」

 霧の姿になったまま、ククージィがハンニバルの言葉に答える
 …だが、霧の姿のままでは、ククージィはハンニバルに攻撃できない
 霧の姿は、あくまでも防御や移動の為の姿だからだ
 しかし、迂闊に元に戻れば、ハンニバルの剣に体を貫かれる
 ククージィとてそう簡単には死なないが、駆けつける直前に見たハンニバルの動きからして、致命傷を負う可能性は否定できない
 霧の姿をとったままならば、ハンニバルを牽制できる
 油断すれば、ハンニバルは即座に霧の姿をしたククージィから離れ、エーテルに止めを刺すか…もしくは、祐樹を回収しようとするだろう
 ククージィとしては、それだけは阻止したいところだ

 …どちらが、先に動きを見せるか
 緊迫した時間が静かに続き…

 その、静寂は


「-----ッハンニバルぅううううう!!!!」


 かん高い少女の声で、引き裂かれた
 直後、ハンニバルに、小さな何かが激突し…ハンニバルの体が吹き飛ばされ、壁に激突する
 真っ赤な血があたりに飛び散り、一際大きな鮮血の華を咲かせた

 先ほどの、声に
 その声に篭る怒気に、殺気に
 げ、と、エーテルがやや嫌そうな表情を浮かべる

 現れた、小さな少女
 黒いゴスロリ服に身を包み、黒いレース生地の日傘を差し
 そして……全身、返り血塗れの少女

 H-No.0……ヘンリエッタ・ホークウッド
 その小さな体に、しかし、歴戦の戦士すら震え上がらせる程の威圧感を滲ませて、ヘンリエッタは自分が吹き飛ばしたハンニバルを睨み付けた

「やっと見つけたぞ……!妾が言いたい事は、わかっておるだろうなぁ!!!???」
「…これはこれは、ヘンリエッタ様……相変わらず、衰えのない一撃で」

 心臓を抉り出されるような一撃を受けて
 しかし、ハンニバルは平然と立ち上がった
 その傷すらも、既に再生を終えている

「……ヘンリエッタ様相手では、さしもの私も、分が悪い」
「…逃がすとでも、思うておるのか?」

 ヘンリエッタが、そして、実体に戻ったククージィが、ハンニバルを睨みつける
 …エーテルも、傷口を庇いながら、そして、マクスウェルと祐樹を庇うように立ち、油断なくレーザーメスを構える
 ハンニバルの逃げ場など、ない

「あなた相手にだけは、噛み付かれる訳に行きませんからな……撤退させていただこう」

 逃げ場など
 ない、はず、だというのに

 ハンニバルが、剣を振るう
 手元が見えないほどのスピードで剣が振るわれ…次の、瞬間

 ハンニバルの足場が、崩れた

「な……っ」
「地下に逃げるつもりか!?」

 恐らく、目を付けた撤退の為のルートは、下水道
 破壊された道路の下から、水の流れる音がする

 …………逃がしてしまった
 ヘンリエッタが、小さく舌打ちする

「ククージィ」
「祐樹、怪我は?」
「…俺は、ない。それよりも…」

 駈け寄ってきたククージィに声をかけ…祐樹が、心配そうにエーテルに視線をやる
 自分のせいで、エーテルが傷を負ってしまった
 そう、感じ取ったのだろう
 マクスウェルがエーテルを心配する様子が、祐樹の罪悪感を加速させる

「俺は、大丈夫だ」

 だから
 エーテルはそれを安心させるように…マクスウェルも同時に安心させるように、答えようとしたのだが

「そのボロボロの状態で何を言うておるか。恰好つけるのもいい加減にせい」

 かつん、と
 ヘンリエッタが、ややあきれた表情でエーテルに近づいてきた
 エーテルは小さく苦笑する

「…やぁ、お嬢さん……流石に、その返り血塗れはちょっと怖いから、少しはぬぐった方がいいぞ?」
「黙れ、阿呆が……まったく、やっと見つける事ができた」

 はぁ、とため息をつくヘンリエッタ
 懐から、携帯を取り出す

「少し待っておれ。ジェラルドを呼ぶ…「組織」管轄の病院に、お前を連れて行く。そこで妾が治療してやろう」
「は?お嬢さんが?」
「何か不満でも?」

 じろ、睨まれる
 その視線には、「生きていたなら、どうして連絡の一つも寄越さなかった。さんざ心配させてんじゃねぇ」と言う感情が篭っており
 …少し怖くて、エーテルは引いた
 心配そうにマクスウェルに見つめられる

 …「組織」、と言う単語に
 祐樹がやや固い表情をしたのだが、さて、フォローすべきかどうか…

「…話は、治療が終わってから、じっくり聞かせてもらうぞ?」

 そして
 このお嬢さんの不機嫌全開を、自分はどうにかすることができるだろうか?

 問題山積みの、この状況に
 エーテルはそっと、小さくため息をついたのだった



to be … ?




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