自分たちは、葬儀には参列しなかった
…葬儀に参列など、自分たちはできる姿ではない
…葬儀に参列など、自分たちはできる姿ではない
赤
二人とも、まとう衣装は赤
葬儀に相応しくない
自分たちは、この赤を脱ぎ去る事はできないのだ
なぜならば、この赤は自分たちの証明
自分たちが、生きている証なのだから
二人とも、まとう衣装は赤
葬儀に相応しくない
自分たちは、この赤を脱ぎ去る事はできないのだ
なぜならば、この赤は自分たちの証明
自分たちが、生きている証なのだから
せめて、と花を供え、香典だけはあげてきた
…自分たちにできるのはそれくらいなのだ
…自分たちにできるのはそれくらいなのだ
「…赤マント」
「うん?」
「うん?」
…ぎゅう、と
赤いはんてんが、赤マントの手を、しっかりと握り緊めてきた
赤いはんてんが、赤マントの手を、しっかりと握り緊めてきた
「赤マントは……私の前から、いなくならない、です?」
「………」
「………」
じっと、じっと
不安げに見つめてくる赤いはんてん
不安げに見つめてくる赤いはんてん
…今まで、生きてきて
何人もの人間の死に遭遇してきた
はるか昔には、自分たちとて、人間に死を振り下ろしてきた
そんな自分たちは、人間の生命に対し、やや淡白になっていた
何人もの人間の死に遭遇してきた
はるか昔には、自分たちとて、人間に死を振り下ろしてきた
そんな自分たちは、人間の生命に対し、やや淡白になっていた
…そんな、自分たちにとっても
彼の死は衝撃的すぎた
都市伝説である自分たちにも、気軽に利用できる店
温かかったあの場所が、心無き者によって汚された
それが、ただただ悔しく
彼の死は衝撃的すぎた
都市伝説である自分たちにも、気軽に利用できる店
温かかったあの場所が、心無き者によって汚された
それが、ただただ悔しく
…そして
親しかった者の死は、都市伝説の心にも影を落とし、不安を生む
親しかった者の死は、都市伝説の心にも影を落とし、不安を生む
「…私は、君の前からいなくなったりなどしないよ」
いなくならない
死んだりしない
…彼女から離れるつもりは、到底ないのだ
死んだりしない
…彼女から離れるつもりは、到底ないのだ
「だから、君も。私の前から、いなくならないでくれ」
「…当然なのです」
「…当然なのです」
ぎゅう、と赤いはんてんが、しっかりと手を握り緊めてきた
…その手が微かに震えていることに気付きながらも、赤マントはそれを指摘はしない
…その手が微かに震えていることに気付きながらも、赤マントはそれを指摘はしない
……どろり
心に、黒い染みが落ちる
復讐せよと誰かが叫ぶ
心に、黒い染みが落ちる
復讐せよと誰かが叫ぶ
(…だが)
軽く、首を左右にふる
復讐せよと誰かが叫ぶ
殺すな、と他の誰かが叫ぶ
殺すな、と他の誰かが叫ぶ
わかっている、知っている
また、己の手を血で染め上げる事があれば
また、己の手を血で染め上げる事があれば
…きっと、もう、自分は自分でいられなくなるだろう、と
さようなら
あなたは、もうここにはいない
あなたは、もうここにはいない
皆、悲しんでいます
皆、嘆いています
皆、嘆いています
皆のこの悲しみは、嘆きは
……あなたに届いていますか?
……あなたに届いていますか?
Red Cape
…ふぅ、と
葬儀会場を抜け出し、彼はタバコを咥えた
…悲しみに満ちた、会場
その悲しみに、押しつぶされそうになる
葬儀会場を抜け出し、彼はタバコを咥えた
…悲しみに満ちた、会場
その悲しみに、押しつぶされそうになる
「…あの時以来か」
久々に引っ張り出してきた喪服
これを着たのは、両親の葬儀以来だ
これを着たのは、両親の葬儀以来だ
「……俺の方が、先だと思ってたんだがな…」
首筋に、触れる
恐らくは、自分の方が先だと思っていた
そうなりかねない『理由』が、自分にはあるから
…しかし、まさか
マスター先に死ぬとは思ってもいなかった
恐らくは、自分の方が先だと思っていた
そうなりかねない『理由』が、自分にはあるから
…しかし、まさか
マスター先に死ぬとは思ってもいなかった
あの少年は、どうなるのだろうか
親子のような関係だったはずの二人
父親代わりのあのマスターに死なれてしまって…一体、彼はどうなるのか
親子のような関係だったはずの二人
父親代わりのあのマスターに死なれてしまって…一体、彼はどうなるのか
「………」
首筋に触れ続ける
…もし、自分が死んだら
弟がどうなるか、考える
思い出す
…両親が死んだ日の事を
…もし、自分が死んだら
弟がどうなるか、考える
思い出す
…両親が死んだ日の事を
首のない、二人の死体を
テーブルの上に乗せられた、二人の首を…見てしまった時の、弟の事を
テーブルの上に乗せられた、二人の首を…見てしまった時の、弟の事を
「………っち」
くしゃり
タバコを握りつぶす
考えても仕方ない
その時がきたら、自分は精一杯抗うまでだ
だが、もしかしたら…
タバコを握りつぶす
考えても仕方ない
その時がきたら、自分は精一杯抗うまでだ
だが、もしかしたら…
「……なるべく、会いに行くのが遅くなるよう、努力しておくか」
ふらり、会場に戻る
あの少年の今後の事を心配しながらも
あの少年の今後の事を心配しながらも
…彼はまだ、自分の首に触れたままだった
…その事実を、俺はあの不良教師から聞かされた
まだ高校生に過ぎない俺は、喪服なんて持っていなくて
学校の制服で、その葬儀に参列していた
俺の隣には、妹のお下がりの黒いワンピースを着た花子さんがいる
まだ高校生に過ぎない俺は、喪服なんて持っていなくて
学校の制服で、その葬儀に参列していた
俺の隣には、妹のお下がりの黒いワンピースを着た花子さんがいる
「……もう、会えないんだね」
寂しそうに、花子さんが呟いた
ルーモアのマスターが、死んだ
詳しい事は、俺は聞かされていない
しかし…普通の死に方ではなかったのだ、と直感する
ルーモアのマスターが、死んだ
詳しい事は、俺は聞かされていない
しかし…普通の死に方ではなかったのだ、と直感する
都市伝説
それに絡んでいる存在
それが、普通に死ねるとしたら…きっと、それは奇跡なのかもしれない
それに絡んでいる存在
それが、普通に死ねるとしたら…きっと、それは奇跡なのかもしれない
俺だって
一歩間違えば、いつかは死んでしまうだろう
都市伝説との戦いで
一歩間違えば、いつかは死んでしまうだろう
都市伝説との戦いで
それでも
俺は、こちら側に踏み込んだ
花子さんの手をとった
だから……その覚悟は、できている
俺は、こちら側に踏み込んだ
花子さんの手をとった
だから……その覚悟は、できている
できていた、つもりだった
それでも、知り合いの死に衝撃を受ける
じわり
死への恐怖が、生まれる
それでも、知り合いの死に衝撃を受ける
じわり
死への恐怖が、生まれる
「…けーやくしゃ?」
「ん…何でもないよ」
「ん…何でもないよ」
す、と、飾られた遺影に目を向ける
控えめに微笑んでいる笑顔
…もう、あれを現実に見ることは叶わない
控えめに微笑んでいる笑顔
…もう、あれを現実に見ることは叶わない
自分にできる事は、冥福を祈ることだけ
残された、あの輪という少年が今後、無事に生活できるよう、辛うじてできることならばしてやりたい
残された、あの輪という少年が今後、無事に生活できるよう、辛うじてできることならばしてやりたい
所詮、真実を知らされてない自分にできることは
…たった、それだけなのだ
…たった、それだけなのだ
しめやかに行われる葬儀
その中で、嗚咽が絶える事は、いつまでも、なかった
その中で、嗚咽が絶える事は、いつまでも、なかった
ずしりと、重い空気を感じる
両親の仕事の付き合いの葬儀には、よく出席してきていた
けれど…ここまでに、参列者のほぼ全てが悲しんでいる葬儀など、初めてだった
両親の仕事の付き合いの葬儀には、よく出席してきていた
けれど…ここまでに、参列者のほぼ全てが悲しんでいる葬儀など、初めてだった
「………」
じっと、遺影を見つめる
優しい人だった
どうして、あんなに他人に優しくできるのか、彼女にはわからなかった
他人など、蹴落とすもの
そうと教えられ、そして考えてきた彼女には理解できなかった
優しい人だった
どうして、あんなに他人に優しくできるのか、彼女にはわからなかった
他人など、蹴落とすもの
そうと教えられ、そして考えてきた彼女には理解できなかった
…しかし
こんなにも傲慢で、ワガママな彼女にすら
彼は、優しかったのだ
こんなにも傲慢で、ワガママな彼女にすら
彼は、優しかったのだ
「………ぁ」
つぅ、と
頬を一筋、温かいものが流れる
…違う
涙なんかじゃない
私が、誰かが死んだことで涙なんて流すものか
頬を一筋、温かいものが流れる
…違う
涙なんかじゃない
私が、誰かが死んだことで涙なんて流すものか
違う、違う
悲しくなんかない
他人の死に、悲しみなんて…
悲しくなんかない
他人の死に、悲しみなんて…
「…無理するもんじゃない」
うるさい
煩い、煩い、煩いっ!!
そんな事を言うな
そんな事を言わないでっ!!
煩い、煩い、煩いっ!!
そんな事を言うな
そんな事を言わないでっ!!
あぁ、そうだ
きっと、私は悲しいのだろう
私みたいな子供にすら優しかった、ルーモアのマスターの死が
詳しい事は聞かされていない
ただ、それはあまりにも突然すぎて
きっと、私は悲しいのだろう
私みたいな子供にすら優しかった、ルーモアのマスターの死が
詳しい事は聞かされていない
ただ、それはあまりにも突然すぎて
「………」
赤い靴から渡されたハンカチで、乱暴に涙を拭く
……どうしても
どうしても、マスターの死の真相が、気になった
彼の死を教えてくれた黒服は、詳しい事は教えてくれなかった
しかし、聞き出そうとした私への…どこか、途惑っているような、悩んでいるような対応で、わかった
マスターは、何かトラブルに巻き込まれて死亡したのだと
……どうしても
どうしても、マスターの死の真相が、気になった
彼の死を教えてくれた黒服は、詳しい事は教えてくれなかった
しかし、聞き出そうとした私への…どこか、途惑っているような、悩んでいるような対応で、わかった
マスターは、何かトラブルに巻き込まれて死亡したのだと
もしかしたら、殺されたのだ、と
恨まれるような人ではなかったけれど
あの人は、都市伝説に関わっていたのだ
ありえないことではない
あの人は、都市伝説に関わっていたのだ
ありえないことではない
「………」
もう一度、遺影を見つめる
もし
もし、あの人を殺したのが、都市伝説ならば
もし
もし、あの人を殺したのが、都市伝説ならば
そんな奴、私が倒してやる
これは、ゲームではない
私の復讐
都市伝説と契約していようと、所詮子供に過ぎない私には、それを殺すことはできないかもしれない
しかし、もし、見つけたならば
徹底的に、痛めつけてやる
これは、ゲームではない
私の復讐
都市伝説と契約していようと、所詮子供に過ぎない私には、それを殺すことはできないかもしれない
しかし、もし、見つけたならば
徹底的に、痛めつけてやる
私のその復讐心が、伝わったのだろう
赤い靴は、生意気にも少し心配そうな顔をしつつも
…しかし、私の決意に、釘をさしてはこなかった
赤い靴は、生意気にも少し心配そうな顔をしつつも
…しかし、私の決意に、釘をさしてはこなかった