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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-89

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Elfriede

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ドクター89


プールでの大騒動も一段落し、まだしっとりとした髪のまま帰途につく第三帝国一行
たまたま巻き込まれたパスカルは、何やら帰る前に探さなければいけない人がいるらしく先に姿を消していた
「きょう、とても、たのしかった、です」
笑顔のメイは三つ編みを解いてウェーブの掛かった金髪を、服を濡らさないようにツーテールに結い上げてある
「それでは、そうとうのおうち、かえる、です」
「次は危なくない恐くないところに行こうね」
ぺこりと頭を下げるメイと、疲れ切った顔で苦笑いを浮かべる沙々耶
「それじゃ、帰り道も気をつけてな。本当に送っていかなくて大丈夫か?」
「普段から買い物とかで出歩くのに、心配し過ぎだよ」
気遣う有羽に、沙々耶は苦笑いのまま手をぱたぱたと振る
「それに総統の店の周り、クールトーが縄張りにしてるから変なのが出ないから……でも、何であれの縄張りで暮らしてるんだろう、私」
途中から段々と顔から血の気、目から光が引いていきガタガタと震え出す沙々耶を、懸命に背伸びしながら頭を撫でて宥めている
「まだ慣れてないのか、あいつに」
「あれに慣れるとか絶対無理だよ……」
余りの怯えっぷりに、有羽は溜息を吐きながらメイと一緒に震える頭を撫でてやる
「本当に大丈夫か?」
「くーるとー、ささやに、すこし、いじわる、です。でも、こわい、ちがう、ですよ?」
そう言ってメイは、げんなりした様子の沙々耶の手を引いて歩き出す
「たのしかった、です。ありがとう」
相変わらず片言ではあるが随分と上達した日本語と、それ以上に親しく話し明るくなった雰囲気
彼女がただ生きているだけではない、生きている事を楽しんでるという確かな成長を示すものであった

―――

ちり、と
姉妹間で使う特有の電波が脳裏に走る
《デリア、少しお話があるのであります》
《内緒話ですか? 電波で心配なら暗号も掛ければ大体の人には読めないとは思いますが》
《先生はそれでも読みかねないから恐いのであります。寄り道しておやつを買うついででありますよ》
《なるほどわかりました》
内緒話の雰囲気を察したデリアは、すぐに電波での会話を打ち切ってコンスタンツェの腕にきゅっと抱き付く
「ちょっと欲しいものがあるので、先に帰ってて下さい。コンビニに寄っていくだけですので、すぐ追いつくと思いますけど」
「デリア、コンビニに行くのに何で小官にくっつくのでありますか?」
「私達の財布の紐はお姉が握ってるじゃないですか。それとも財布を預けて貰えますか?」
「……デリアは無駄遣いが多いであります。小官が監視してないと駄目であります」
財布が入っているらしい手提げ鞄を、守るように抱き締めるコンスタンツェ
「買い物ぐらいならついていっても良いのだが?」
ドクターの問いに、デリアは肩を竦める
「ドクターや先生はコンビニに行くと成人向け雑誌のコーナーで堂々と立ち読みを始めるから駄目です。帰る時に声を掛けるの、恥ずかしいんですよアレ」
「むぅ」
「あらあらうふふ」
「あんたら師弟揃って何やってんですか」
呆れた様子でドクターとトライレスを睨む有羽
「この恥ずかしい二人は見張っておくから、早く買い物を済ませてきな」
「バイトさん、感謝しますよ。お姉、行きましょう」
「了解でありますよ……あ、バイトさん。ついでにメイちゃんと沙々耶ちゃんの事で少し気になる事があるので、診療所の方へ呼び戻してもらえるでありますか」
「気になる事? まあ追いかければすぐだと思うが」
「よろしくお願いしまするであります。ささ、デリアも早めに買い物を済ませるでありますよ」
「わかってますよ、お姉。押さないで下さいよもー」
きゃいきゃいとじゃれるように歩いていく双子を見送り、有羽は首を傾げる
「何なんだか……とりあえず俺はメイちゃん達を呼びに行きますけど、ドクター達はどうします?」
「ふむ、先に診療所へ戻っているかな。あまり遅くなるとメアリーとミツキが心配する」
「私はエルフリーデについていくわ。この子は一人だと何もできないし」
「先生、まだボクを子供扱いですか?」
「戦闘面の話よ」
トライレスはあごに人差し指を当て、何やら考え込む
「私達は双子を迎えに行くわ。あなたは頼まれた通り、あの二人を迎えに行きなさい」

―――

「うう、帰りたくないなぁ……というか妹扱いなら診療所に住ませてくれればいいのに」
「わたし、いっしょ、いや、ですか?」
「メイはいいの、優しいから。クールトーが恐いんだってば……」
べそべそと泣きながら歩く沙々耶の手を引いて歩くメイ
その行く手にふらりと現れる黒い影
「や、久し振り。直接会うのは初めてだけどね」
黒いサングラスに黒いスーツ姿の金髪の女、アメリカ所属の黒服、アンネローゼ
真夏には少々不似合いなその格好は、都市伝説関係者ならすぐに『黒服』という存在として把握する
沙々耶が胡散臭いものを見るような訝しげな顔をしたのと対照的に、メイは久しい友人に出会ったかのように笑顔を浮かべる
「アメリカ、いえ、きた、ひと、ですか?」
「そうそう、覚えててくれたのね。どう、日本での生活には慣れた? 楽しい?」
「メイ、この人知り合い?」
「はい、とても、いいひと、です」
メイにとっては殺し合いを回避して話し合いをしてくれた人達という認識であり、更に彼女は『第三帝国』を紹介してくれた恩人である
疑う余地などこれっぽっちも無いのだ
柔和そうな笑顔を浮かべて親しげに離すアンネローゼに、沙々耶はとてもよく知ったにおいを嗅ぎ取る
既に人間であり何の能力も無い存在だが、知識、記憶、経験といったものは失ったわけではない
あの笑顔は、騙すためのものだ
「はい、とても、たのしい、です」
アンネローゼの笑顔につられるように、はにかむような笑顔を浮かべるメイ
そんな彼女の笑顔を見て
「なるほど、そりゃ良かった……良い思い出になったね」
アンネローゼはポケットから鏡を取り出し
「メイっ、逃げなさい!」
囁くようにしか喋らなかった沙々耶が
初めて、叫び
鏡が、ちかりと輝いた

―――

「お姉、お話って何ですか? バイトさんにアタックするために協力してくれとかですかー?」
話の流れで、手ぶらで戻るわけにもいかず結局コンビニへの道を歩いているエニグマ姉妹
コンスタンツェは押し黙ったまま先に歩いているデリアの背中を見詰めていた
「どうしたんですか、ノリが悪いですよお姉。ちょっとプールでからかい過ぎちゃいました?」
苦笑交じりに振り返ったデリアが見たのは、拳銃をしっかりと両手で構えたコンスタンツェの姿
「……えーと、マジギレさせるような事しちゃいました?」
「つい先刻……誰に、どんな情報を送信していたか、自覚しているでありますか?」
「へ? 何を言っているのですか、お姉?」
デリアは、自らが『アメリカ政府の陰謀論』により『第三帝国』関係者の情報を定期的に送信するよう操作されている事に気付いていない
そもそも『アメリカ政府の陰謀論』の能力は、基本的に操作されている事は一切自覚できないし、第三者には感知も解除も出来ないようになっている
過去に同じように操作されていたパスカルは、操作内容がとてつもなく限定的だった事もあり『首塚』により呪詛で強引に上書きするような処置で無理矢理押さえ込まれているだけである
だが彼女の場合は条件も内容も幅が広く、同じような処置を施せばろくに思考もできない廃人が出来上がるだけである
一部の契約者達がデリアに掛けられた『アメリカ政府の陰謀論』の力を感知していたが、実際にどんな操作をされていたか気付いていたのは彼女の送信内容を感知できるコンスタンツェだけだった
「デリア……あなたは『陰謀論』の操作を受けて、我々の情報を敵に流しているであります。つい先程……メイちゃんが戦闘能力が無い沙々耶ちゃんと帰宅中である情報を送信していたであります」
「なるほど、あの時の少年が言ってたのはそれですか……道理で最近妙に疲れるなと思ってました」
告げられた内容にさほど驚いた様子も無く、デリアは額を押さえて天を仰ぐ
「それでバイトさんをメイちゃん達の方へ向かわせたわけですか」
「その事も送信していたようでありますけどね。それで敵が手を引いてくれていれば良いのでありますが」
「苦労を掛けました。今までどんだけ間抜けに情報を垂れ流してましたか、私は」
「ドクターの研究で小官らに話してくれた事は全て。他組織との関係は勿論、診療所を訪れた契約者や都市伝説についても全部であります」
「……よく今まで放っておきましたね、お姉。ダメじゃないですか、さっさと処分しないと」
「小官の方が姉であります」
さばさばとしたデリアの態度に対して、コンスタンツェは声が震えている
「妹を、助けたいと思って、何が悪いでありますか」
「それは嬉しいですけどね……総統やドクターにこれ以上迷惑を掛ける方が恥ずかしいんですから、すぱっと殺っちゃって下さいよもう」
コンスタンツェの握る拳銃の狙いは、ぴたりとデリアの眉間に定められる
「短い付き合いでしたが……楽しかったですよ、お姉。来世があるならまたお姉と双子で生まれたいです」
「……ぇぅ……ぁっ……」
長い訓練をこなしてきたコンスタンツェの手は、視界が涙で歪もうと声が聞き取れないほど喉が震えようと、決して定めた狙いを揺らがせる事は無く
夏も終わりへと向かう夕暮れの空に、消音器越しの微かな銃声が染み込むように消えていった


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