ドクター92
犬の遠吠え
爆発音や破砕音
何が起きているのか不安にさせる要素が満載の状況に、有羽は全力で駆け出していた
追うべき少女達は既に現場を離脱し、犬達に運ばれて総統のペットショップへ向かっているのだが、そんな事は知る由も無い
「っと、有羽か!」
同じ方向へ向かっていたのか、曲がり角で丁度合流し並んで走るパスカル
「パスカル! 何が起きてるか判るか!?」
「うちの戦闘バカと『陰謀論』の黒服がドンパチ始めやがった! 近くに居たお前らんとこの嬢ちゃん達は、クールトーが犬を集めて離脱させた!」
「そうか、それなら……って、『陰謀論』の黒服?」
有羽の歩調が緩くなり、パスカルもまた足を止める
「こないだ見掛けた時に、手ぇ出すなって念を押しといたんだけどな。嬢ちゃん達が狙われてたみたいで割り込んだようだ」
「見掛けたって……あの写真の、か?」
「ああ、近いうちに話しておこうと思ったんだが、何かと騒ぎが起きてて言いそびれてた」
「どちらにせよ、聞いてても事態は変わらなかっただろうさ」
「そうか……なあ、嬢ちゃん達の安全を確保するなら総統んとこ行っとけ。無理に現場行く必要は無いぞ」
パスカルは心配そうにそう言ったが、有羽は何も言わずに首を振り
煙と陽炎が立ち込める戦場へ向かって改めて走り出した
爆発音や破砕音
何が起きているのか不安にさせる要素が満載の状況に、有羽は全力で駆け出していた
追うべき少女達は既に現場を離脱し、犬達に運ばれて総統のペットショップへ向かっているのだが、そんな事は知る由も無い
「っと、有羽か!」
同じ方向へ向かっていたのか、曲がり角で丁度合流し並んで走るパスカル
「パスカル! 何が起きてるか判るか!?」
「うちの戦闘バカと『陰謀論』の黒服がドンパチ始めやがった! 近くに居たお前らんとこの嬢ちゃん達は、クールトーが犬を集めて離脱させた!」
「そうか、それなら……って、『陰謀論』の黒服?」
有羽の歩調が緩くなり、パスカルもまた足を止める
「こないだ見掛けた時に、手ぇ出すなって念を押しといたんだけどな。嬢ちゃん達が狙われてたみたいで割り込んだようだ」
「見掛けたって……あの写真の、か?」
「ああ、近いうちに話しておこうと思ったんだが、何かと騒ぎが起きてて言いそびれてた」
「どちらにせよ、聞いてても事態は変わらなかっただろうさ」
「そうか……なあ、嬢ちゃん達の安全を確保するなら総統んとこ行っとけ。無理に現場行く必要は無いぞ」
パスカルは心配そうにそう言ったが、有羽は何も言わずに首を振り
煙と陽炎が立ち込める戦場へ向かって改めて走り出した
―――
響き渡るクールトーの遠吠えは、様々な者達の耳に届いた事であろう
すぐに四面楚歌になる事は容易に想像ができた
「ねーねー、強いのと戦いたいんだったら、そいつの飼い主とかとんでもなく強いわよ?」
「そうか。それなら早急に貴様を倒して手合わせを願わねばな」
「わぁい、気を逸らそうとしたけど薮蛇ー」
抹殺対象である少女は既に犬達によってその場を離れており、この場に留まって戦う理由は何一つ無い
だが今ここで背を向ければ、真っ二つに叩き斬られるか、延髄を食い千切られるかの二択である
「降参はアリ? 本気を出せる環境じゃないし、マジで勝てる気がこれっぽっちもしないんだけど」
「生憎と、貴様の同類にこき使われた経験があってな。信用できん」
呂布がこの地を訪れる原因となった存在、既に全滅した『陰謀論』の部下である中華黒服達
独断行動が過ぎた為に、『陰謀論』からも切り捨てられ処分された存在なのだが、呂布にとってはそんな事情は知らないただの同類である
「やっぱ貧乏くじだったなー」
間合いを取るように退きながら、形振り構わず点や線ではなく面での攻撃で相手の前進を止める
銀粉や砕いた鏡を撒き散らし、広範囲に熱線を放ってひたすら相手の足を止める
アスファルトを溶かし、垣根を焼き尽くし、近くの民家の屋根を吹き飛ばす
呂布の振るう方天画戟もまた、斬撃そのものが飛んできそうな勢いで辺り一面のものを切り裂き抉り粉砕し、さながら嵐の様相である
「ホント勘弁してってば、あの子達にも手を出さないからさー」
「信用できんと、言っている!」
カバーの砕けた街灯の反射板から、道沿いの民家の窓ガラスから、あらゆる光を反射するものから放たれる熱線が、辺り一面のものを焼き尽くし粉砕し溶解させていく
「それじゃ仕方ないか」
夕暮れ時の空に、まだ明るいながらもいくつかの星と、薄ぼんやりと浮かぶ月の姿
クールトーは低く唸ると急遽反転し、塀や民家の屋根を伝い一瞬でその場を離れて行った
「もう二、三時間ぐらいは欲しかったんだけどね、仕方ないか」
アンネローゼの指先が、すうと夜空に向けられて
「スターフォールダウン」
振り下ろされた指先は、ぴたりと呂布に狙いを定め
「な、にっ!?」
ちかり、ちかりと夜空に浮かぶ星から、巨大な熱線が呂布目掛けて落ちてくる
一発
二発
三発
四発
五発
十数メートルの範囲を抉る巨大な熱線の連打に、さしもの武人も捌き切れずに直撃を受け吹き飛ばされる
辺り一面は熱風と衝撃に煽られ、ガラスは割れ壁は砕け倒壊する家屋が散見された
「田舎の満天の星空でやったら爽快よ、軽く地形が変わるしね」
自らもその熱波に飲み込まれてはいるものの、エネルギー攻撃を受け付けない耐性により本人は全くの無傷である
熱気と土埃、水道管にも影響があったのだろう、水蒸気が立ち込める中
「この町には悪いけど、私もまだ死にたくないし。ごめんね」
指先が再び空へ向けられ、くるりと輪を描く
「ムーンフォールダウン」
片膝を付く武人の影目掛けて、その指を振り下ろした
はずだった
「――あ」
その手首を打ち抜いた、意思力で具現化された矢
指先は跳ね上げられるように再び空へと向けられ
くるくると宙を舞い、ぼとりと地面に落ちた
「あー……あと十個ぐらい、星が出てればなぁ」
「先の一撃の三倍程か。確かにそれなら、俺も耐える事は出来なかったな」
片膝を付いたままの姿勢で番えられた矢が、ぴたりと狙いを定め
「貴様の身の上はともかく。良き戦いだったぞ」
寸分違う事無く、アンネローゼの胸を貫いた
クールトーの呼び声、そして戦いの痕跡と爆音を頼りに集まってきた者達の目の前で
「あれ、ゆーくん」
倒れかけた視線の先に見えたのは、かつての恋人の姿
「はは、再会できた上に、ゆーくんを殺さなくて済んだよ……運が良いんだか悪いんだか」
苦笑を浮かべたアンネローゼは、焼け崩れたアスファルトの上にどうと倒れ込み
静かにその目を閉じた
すぐに四面楚歌になる事は容易に想像ができた
「ねーねー、強いのと戦いたいんだったら、そいつの飼い主とかとんでもなく強いわよ?」
「そうか。それなら早急に貴様を倒して手合わせを願わねばな」
「わぁい、気を逸らそうとしたけど薮蛇ー」
抹殺対象である少女は既に犬達によってその場を離れており、この場に留まって戦う理由は何一つ無い
だが今ここで背を向ければ、真っ二つに叩き斬られるか、延髄を食い千切られるかの二択である
「降参はアリ? 本気を出せる環境じゃないし、マジで勝てる気がこれっぽっちもしないんだけど」
「生憎と、貴様の同類にこき使われた経験があってな。信用できん」
呂布がこの地を訪れる原因となった存在、既に全滅した『陰謀論』の部下である中華黒服達
独断行動が過ぎた為に、『陰謀論』からも切り捨てられ処分された存在なのだが、呂布にとってはそんな事情は知らないただの同類である
「やっぱ貧乏くじだったなー」
間合いを取るように退きながら、形振り構わず点や線ではなく面での攻撃で相手の前進を止める
銀粉や砕いた鏡を撒き散らし、広範囲に熱線を放ってひたすら相手の足を止める
アスファルトを溶かし、垣根を焼き尽くし、近くの民家の屋根を吹き飛ばす
呂布の振るう方天画戟もまた、斬撃そのものが飛んできそうな勢いで辺り一面のものを切り裂き抉り粉砕し、さながら嵐の様相である
「ホント勘弁してってば、あの子達にも手を出さないからさー」
「信用できんと、言っている!」
カバーの砕けた街灯の反射板から、道沿いの民家の窓ガラスから、あらゆる光を反射するものから放たれる熱線が、辺り一面のものを焼き尽くし粉砕し溶解させていく
「それじゃ仕方ないか」
夕暮れ時の空に、まだ明るいながらもいくつかの星と、薄ぼんやりと浮かぶ月の姿
クールトーは低く唸ると急遽反転し、塀や民家の屋根を伝い一瞬でその場を離れて行った
「もう二、三時間ぐらいは欲しかったんだけどね、仕方ないか」
アンネローゼの指先が、すうと夜空に向けられて
「スターフォールダウン」
振り下ろされた指先は、ぴたりと呂布に狙いを定め
「な、にっ!?」
ちかり、ちかりと夜空に浮かぶ星から、巨大な熱線が呂布目掛けて落ちてくる
一発
二発
三発
四発
五発
十数メートルの範囲を抉る巨大な熱線の連打に、さしもの武人も捌き切れずに直撃を受け吹き飛ばされる
辺り一面は熱風と衝撃に煽られ、ガラスは割れ壁は砕け倒壊する家屋が散見された
「田舎の満天の星空でやったら爽快よ、軽く地形が変わるしね」
自らもその熱波に飲み込まれてはいるものの、エネルギー攻撃を受け付けない耐性により本人は全くの無傷である
熱気と土埃、水道管にも影響があったのだろう、水蒸気が立ち込める中
「この町には悪いけど、私もまだ死にたくないし。ごめんね」
指先が再び空へ向けられ、くるりと輪を描く
「ムーンフォールダウン」
片膝を付く武人の影目掛けて、その指を振り下ろした
はずだった
「――あ」
その手首を打ち抜いた、意思力で具現化された矢
指先は跳ね上げられるように再び空へと向けられ
くるくると宙を舞い、ぼとりと地面に落ちた
「あー……あと十個ぐらい、星が出てればなぁ」
「先の一撃の三倍程か。確かにそれなら、俺も耐える事は出来なかったな」
片膝を付いたままの姿勢で番えられた矢が、ぴたりと狙いを定め
「貴様の身の上はともかく。良き戦いだったぞ」
寸分違う事無く、アンネローゼの胸を貫いた
クールトーの呼び声、そして戦いの痕跡と爆音を頼りに集まってきた者達の目の前で
「あれ、ゆーくん」
倒れかけた視線の先に見えたのは、かつての恋人の姿
「はは、再会できた上に、ゆーくんを殺さなくて済んだよ……運が良いんだか悪いんだか」
苦笑を浮かべたアンネローゼは、焼け崩れたアスファルトの上にどうと倒れ込み
静かにその目を閉じた