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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-93

最終更新:

Elfriede

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ドクター93


あー、なんかあったかいなぁ
ていうか死ぬ時って体温下がるんじゃなかったんだっけ
そもそも黒服なんだし、死んだら塵になって消えるんだっけか
何人もくたばった同僚見てきてるんだし、まー私だけ例外って事は無いか
消えて無くなるってどんな感じなんだろう
まー考えたって仕方ないけどね
それにしても死ぬまでって結構長く感じるもんだね
それとももう死んでるのかな、私
わかんないなぁもう
「――アンナ」
あれ、ゆーくんの声だ
さっき見た時は元気そうだったし、どう考えても生きてたからお迎えってわけじゃないよね
だったらまだ死んでないんだね、私
それにしても声が近いなぁ
目を開けたらゆーくん見えるかな
なんか億劫だけど、たまには頑張ってみようかなぁ、うん

―――

「あれ、ゆーくん。どしたの?」
アンネローゼは自分が有羽の腕に抱かれている事に気が付いて、どこか照れくさそうに微笑んだ
だがその顔には生気は無く、時折掠れた声の代わりに血の泡が跳ねている
「たまたま近くを通りかかっただけだよ。今までずっと死んだ振りしてやがって」
「はは、もうすぐ振りじゃなくなりそうだけどね」
「そうなる前に会えりゃ良かったんだけどな」
「そしたら私、ゆーくん殺さなきゃなんなかったもん。これで良かったんだよ」
「良いわけあるか。手当てするぞ、俺が何の勉強してたか知ってるだろ」
「無理だよ。ゆーくんの腕を信用してないわけじゃないけどさ、他所の組織の人に助けられるなんて事になったら、それこそ機密保持の為に死ぬ前に消されちゃうから」
不思議と、痛みもだるさも感じない
かついて愛し合った人と一緒にいるというだけで随分と違うものだと、アンネローゼは自分の現金さに苦笑を浮かべる
「ていうかさ、ゆーくんってうちの上司にとっては危険人物なんだよ。だから早めに始末しとけって言われてたんだけどね」
流れ出た血で真っ赤になって震える手で、自分を抱きかかえている男の手にそっと触れる
「ゆーくんのホルマリンプールって、死体を沈めて保存しておけるでしょ? だから、殺してもまたいつの間にか現れるようなうちの上司の天敵なの。死体がいつまでも残っていたら、複数存在する事になっちゃうから復活できなくなるの」
「おい……そんな話して良いのか?」
「やな仕事ばっか押し付けてきた上司への仕返し。でも実際やろうなんて思っちゃダメだよ? 私の同僚達は、私よりずっと強いから」
アンネローゼの目尻に、じわりと涙が浮かぶ
「私が死ぬのは単にそういう風に生まれたから。でも、ゆーくんと過ごした時間は、楽しかったよ」
「ああ、俺もだ」
触れている血で濡れた冷たい手を、そっと握り返す
「お前さ、バレンタインにチョコ送ってきたろ。あれ、美味かった」
「あ、バレてた? やだなぁ、恥ずかしい」
照れたように笑った、のだろうか
口元が僅かに緩んだように見えた
「ねえ、ゆーくん」
「なんだ?」
「私、さ。消えて無くなるのは嫌だから。ゆーくんの能力、使ってくんないかな?」
「馬鹿。どんだけ苦しいと思ってんだ、あれ」
「平気平気、どうせすぐ意識なんて無くなるし。それに消えてなくなったら、ゆーくんずっと私の事気にしそうだもん。新しい彼女作って、結婚して、子ども作って、孫と曾孫が出来たぐらいまで報告してくれないと、心配でたまんないから」
「どんだけ長生きさせるつもりだよ」
「私が見てて、飽きるぐらいまで」
有羽はそれに了承するように、アンネローゼにそっと唇を重ね
静かに地面に横たえると、やや離れたところで静かにその様子を見守っていた呂布に声を掛ける
「悪ぃ、それ貸してくれないか?」
視線の先には、彼が握る方天画戟
「俺を、恨むか?」
己の得物をあっさりと手放しそう訊ねる呂布に、有羽は軽く首を振る
「止めてくれた事を感謝してる」
「そうか」
それ以上は何も言わず、その場を離れる呂布
受け取った方天画戟を両手で持ち、地面に横たわるアンネローゼの傍らに立つ
「結婚とか子供とか、そういうのは大分掛かると思う。俺はまだお前の事が好きだから」
「私の大好きなゆーくんだったら、きっとすぐに良い子が見つかるから大丈夫」
方天画戟の石突を下に向け
真っ直ぐに彼女の身体目掛けて突き下ろす
「ばいばい、ゆーくん」
「ああ、じゃあな」
また明日
そう続きそうなぐらいに簡単な別れの言葉と共に
アンネローゼの身体は、とぷりと水に沈むようにその場から消えた
「変な事に使って済まなかった」
返された方天画戟を受け取ると、呂布は無言で背を向けその場を歩み去って行く
その背中を見送ってから、有羽は溜息を吐いて辺りを見回した
「それにしても派手にやったもんだな。怪我人とか死人とか出てないだろうな」
「お前な、そんな事心配していられる状況でも無ぇだろ。こういうのの後始末は『組織』の連中が来るぞ」
「後始末、か。何か手伝えるような事があるかもしれないし、ここで何があったか説明もしなきゃいけないだろ」
「そういうのは俺がやっとくよ、音だけとはいえお前より状況には詳しいしな……つーかお前、顔色最悪だぞ」
「そうか……でも、何かやってた方が気が紛れるからな。とりあえず巻き込まれた人が居ないか確認してくる」
「一人で行くな馬鹿、危ねぇだろうが」
「危ないのは乙女もだ。人がいるかどうかの確認は、音を拾えばわかるのではないか?」
「意識失ってたらわからんだろ。心音まで拾えるほど耳は高性能じゃ……ってヘンリー手前ぇ何時の間に戻ってきた!? クールトーのいる方を任せただろ!?」
いつの間にか現れて、瓦礫を乗り越えようとしていたパスカルの身体をそっと支えていたヘンリーの姿
「状況を確認し、先行してきた。乙女の事が心配だったからな」
「俺はお前がクールトーや朝比奈と一緒に居た方が安心だよ畜生め」
それから程なくして、朝比奈夫妻やクールトー、そして『組織』の黒服達が現場に集まり出す
幸いにして死人は出ておらず、怪我人は有羽の手当てやユニコーンの治療を受けた後に、軽い事故として処理され各所の病院に搬送されていった
処理上で必要最低限な損壊を残し、町は呆気なく元の姿を取り戻して行く
そこであった戦いなど、無かったかのように
黒服の女の死など、無かったかのように
それがこの町のあるべき姿なのだから


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