熱い
痛みよりも、先に感じたのは、熱さ
剣によって貫かれた箇所から……じわじわと、熱が生まれて
少し遅れて、痛みが襲い掛かってくる
痛みよりも、先に感じたのは、熱さ
剣によって貫かれた箇所から……じわじわと、熱が生まれて
少し遅れて、痛みが襲い掛かってくる
しかし、それらを認識する余裕は…辰也には、ない
先ほどのハンニバルの言葉を理解する事を拒絶した思考は、それ以降止まったままだ
先ほどのハンニバルの言葉を理解する事を拒絶した思考は、それ以降止まったままだ
「----か、は………」
ごぽ、と
辰也の口から、大量の血痕が零れ落ちる
げほげほと咳き込み、苦しむ辰也の様子を、ハンニバルは冷たく見下ろしていた
辰也の口から、大量の血痕が零れ落ちる
げほげほと咳き込み、苦しむ辰也の様子を、ハンニバルは冷たく見下ろしていた
「さて、心臓を貫いたが……まだ、死なぬはずだ。不死性に関して、完全ではないにしろ、お前は私の力を受け継いでいるのだから」
聞こえない
否
聞こえているはずだ
しかし、思考がそれを理解する事を拒む
否
聞こえているはずだ
しかし、思考がそれを理解する事を拒む
--自分が
この男の血を引いている?
自分は
人間の両親から生まれた……普通の人間では、なかったのか?
この男の血を引いている?
自分は
人間の両親から生まれた……普通の人間では、なかったのか?
普通の人間から、生まれたのであれば
普通に名前を与えられて、両親さえ死ななければ、こんな「組織」で実験体として扱われることもなく、ごくごく普通に生活できていたはず……
その、かすかな希望を、あったかもしれない未来を、現在を…………………たった今、粉々に打ち砕かれた
普通に名前を与えられて、両親さえ死ななければ、こんな「組織」で実験体として扱われることもなく、ごくごく普通に生活できていたはず……
その、かすかな希望を、あったかもしれない未来を、現在を…………………たった今、粉々に打ち砕かれた
「…信じられない、と言う表情をしているな?」
当たり前だ
…信じられるものか
自分が、お前の息子であるなどと
信じられるものか!!!
…信じられるものか
自分が、お前の息子であるなどと
信じられるものか!!!
「だが、事実だ。H-No.96。お前は、ネフィリムを……人間と都市伝説の混血を生み出し、神を超える………私のその実験で、はじめに生まれた子供」
----っ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!!!
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!!!
「邪魔者であったD-No.0を消し………母体である門条 晴海を捕らえ、私自らが種付けし、はじめに生まれた子供。それがお前だ」
ゆっくり
ゆっくりと、ハンニバルが辰也に語りかける
語りかけるは、事実、真実
辰也にとって残酷なそれらが、容赦なく突きつけられる
ゆっくりと、ハンニバルが辰也に語りかける
語りかけるは、事実、真実
辰也にとって残酷なそれらが、容赦なく突きつけられる
「門条 晴海は、研究所内にて二人の男子を産んだ………そして、三人目をその身に宿している状態で、研究所を脱走した………まだ赤子であった、二人目の子供を連れて、な」
…門条 晴海が、研究所から連れ出したのは
辰也、ではない
つまり
辰也、ではない
つまり
「門条 晴海は、お前を研究所に置き去りにした。一番私の血を濃く受け継いだであろうお前が残された事は、私にとって実に都合がよかった」
…あぁ、そうか
母親は、自分を研究所に置き去りにした
………つまり
母親は、自分を研究所に置き去りにした
………つまり
自分は、母親に捨てられたのだ
……辰也の体から……ゆっくりと、力が抜けていく
口からはごぽごぽと血が吐き出され続け……その瞳に宿る意志の光は、静かに、静かに……消えかけていっている
口からはごぽごぽと血が吐き出され続け……その瞳に宿る意志の光は、静かに、静かに……消えかけていっている
「…あぁ、死なれては困るぞ。H-No.96。お前は、私の実験の最高傑作。私の不死性をある程度受け継いでいるが故に、他の実験体よりも投薬実験を行いやすく……その成果が、確実に現れている。お前自身が、自身を研究材料に出来るよう、薬物の知識も与えた」
ハンニバルの口元が、かすかに笑みの形につりあがる
辰也を見る眼差しは、相変わらず実験体を見るもので…………実の息子に向けるものとは、程遠い
辰也を見る眼差しは、相変わらず実験体を見るもので…………実の息子に向けるものとは、程遠い
辰也の、眼差しは
……もう、ハンニバルを捕らえて、いない
ただ、虚空だけを見ている
……もう、ハンニバルを捕らえて、いない
ただ、虚空だけを見ている
「さて、どうするか………まずは、二度と反抗せぬよう、その意思を削ぐか」
ゆっくりと
辰也の体に突き刺さった剣を、その体から抜こうとするハンニバル
傷口から、血が溢れ出し始めて……
辰也の体に突き刺さった剣を、その体から抜こうとするハンニバル
傷口から、血が溢れ出し始めて……
------っばきん!!と
鈍い音と共に
ハンニバルの剣が、折られた
鈍い音と共に
ハンニバルの剣が、折られた
「ぬ!?」
根元近くから剣が折られ、辰也の体が床に落ちた
しゅるり
ハンニバルの、体に……黒い、無数の糸が、否、髪が絡みつく
しゅるり
ハンニバルの、体に……黒い、無数の糸が、否、髪が絡みつく
「ぐぅっ!?」
そして
その髪が…ハンニバルの体を、引き裂きはじめる
ハンニバルの体を辰也から引き離すように押し出しながら、めった切りにするように切り裂き続ける
その髪が…ハンニバルの体を、引き裂きはじめる
ハンニバルの体を辰也から引き離すように押し出しながら、めった切りにするように切り裂き続ける
「……ッ恵、辰也の治療を頼んだ!!」
この決闘場に入り込むための階段から、踊りだした影
H-No.360……広瀬 宏也
それが、殺意と敵意と、憎悪のこもった眼差しで、ハンニバルを睨み
その髪でもって、ハンニバルを切り刻み続け…その攻撃の余波が、床まで届き
H-No.360……広瀬 宏也
それが、殺意と敵意と、憎悪のこもった眼差しで、ハンニバルを睨み
その髪でもって、ハンニバルを切り刻み続け…その攻撃の余波が、床まで届き
…床の一部が、轟音を立てて崩れ落ちた
落下していくハンニバルを追いかけるように、宏也がその穴へと飛び込んでいく
落下していくハンニバルを追いかけるように、宏也がその穴へと飛び込んでいく
その様子を、辰也は失いかける意識の中、眺めていた
…来なくとも、よかったというのに
こちらで、全部終わらせるつもりだったというのに
……あぁ、しかし、自分はこんな状態だ
終わらせるなんて、できなかったか
…せめて、宏也には無事でいてほしいのだが
あの男は、自分に名前を譲ってくれた存在だ
自分が死ねば…広瀬 宏也は、広瀬 辰也に戻れる
…来なくとも、よかったというのに
こちらで、全部終わらせるつもりだったというのに
……あぁ、しかし、自分はこんな状態だ
終わらせるなんて、できなかったか
…せめて、宏也には無事でいてほしいのだが
あの男は、自分に名前を譲ってくれた存在だ
自分が死ねば…広瀬 宏也は、広瀬 辰也に戻れる
「-----ッ辰也!!!!」
ぴくり
床に倒れこんでいる辰也の手が…一瞬、動く
何とか、頭を、視界を動かし…その声の主を、捕らえる
床に倒れこんでいる辰也の手が…一瞬、動く
何とか、頭を、視界を動かし…その声の主を、捕らえる
抱きかかえた鞄から、ジャッカロープを呼び出しながら
泣き出しそうな表情で、駆け寄ってくる、恵の姿に
辰也は、何故こんな危険な場所に来てしまったんだ、とでも言うように
困ったような笑いを……かすかに、口元に浮かべたのだった
泣き出しそうな表情で、駆け寄ってくる、恵の姿に
辰也は、何故こんな危険な場所に来てしまったんだ、とでも言うように
困ったような笑いを……かすかに、口元に浮かべたのだった
to be … ?