…学園祭が続く中
中央高校2年B組担任 化学教師の荒神 秀は、不機嫌全開の表情で、そこに立っていた
何が悲しくて、28歳にもなって執事コスプレなんぞさせられなければいけないのだ
担任しているクラスが開いている模擬店の前で、不機嫌を隠そうともしていない秀なのだが…不思議と、客足は途絶えない
彼の隣で、双子の弟の荒神 涼が、営業スマイルを振りまいているせいもあるだろう
まったく同じ顔の秀が不機嫌な顔である事で、涼の営業スマイルが際立っているのだ
まぁ、そうじゃなくとも、不機嫌そうな表情の執事と言うのも、それはそれで需要があるので問題はなかった
中央高校2年B組担任 化学教師の荒神 秀は、不機嫌全開の表情で、そこに立っていた
何が悲しくて、28歳にもなって執事コスプレなんぞさせられなければいけないのだ
担任しているクラスが開いている模擬店の前で、不機嫌を隠そうともしていない秀なのだが…不思議と、客足は途絶えない
彼の隣で、双子の弟の荒神 涼が、営業スマイルを振りまいているせいもあるだろう
まったく同じ顔の秀が不機嫌な顔である事で、涼の営業スマイルが際立っているのだ
まぁ、そうじゃなくとも、不機嫌そうな表情の執事と言うのも、それはそれで需要があるので問題はなかった
……と、そうやって
涼と同じく客寄せを手伝っていたディランが休憩時間の間、秀は涼の隣に立っていたのだが…
涼と同じく客寄せを手伝っていたディランが休憩時間の間、秀は涼の隣に立っていたのだが…
「………」
…近づいてくる、とある客に、気づいて
ますます、不機嫌を隠さない表情になった
ますます、不機嫌を隠さない表情になった
「やっほー、しゅーちゃん、りょーちゃん、久しぶり」
「帰れ。そして、その呼び方はやめろ」
「えー、ひどーい」
「帰れ。そして、その呼び方はやめろ」
「えー、ひどーい」
そこに、いたのは
二の腕脇ヘソ太もも露出を惜しまぬ…しかし、胸元だけは鉄壁ガードの衣服の女性
玄宗 エリカ…秀にとって、高校時代の同級生である女性だった
一応、友人と呼んで良い相手ではあるが、あまり顔をあわせたい相手ではない
特に、このような状況では、だ
二の腕脇ヘソ太もも露出を惜しまぬ…しかし、胸元だけは鉄壁ガードの衣服の女性
玄宗 エリカ…秀にとって、高校時代の同級生である女性だった
一応、友人と呼んで良い相手ではあるが、あまり顔をあわせたい相手ではない
特に、このような状況では、だ
「あ、エリカちゃん……お嬢様、お帰りになられますか?」
と、涼が、エリカに気付いた
秀と違い、きちんとメイド・執事喫茶の呼び込みとしての仕事をする涼
エリカは楽しげに、そんな涼に笑いかける
秀と違い、きちんとメイド・執事喫茶の呼び込みとしての仕事をする涼
エリカは楽しげに、そんな涼に笑いかける
「りょーちゃん、似合ってるわね」
「うん、ありがとう」
「うん、ありがとう」
にこにこと笑っている涼
エリカの言葉も、さらりと受け流す
エリカの言葉も、さらりと受け流す
ちらり、エリカが秀に視線を向けた
…次の言葉が、容易に想像できる
だから、こそ
…次の言葉が、容易に想像できる
だから、こそ
「………店に入るなら、案内する」
「あ、ありがと、しゅーちゃん。じゃあお願い」
「あ、ありがと、しゅーちゃん。じゃあお願い」
言葉を封じる意味で、エリカを店内に案内した
……どうせ、「相変わらず、双子だけど中身は違うよね」とか言ってくるつもりだったんだろう
……どうせ、「相変わらず、双子だけど中身は違うよね」とか言ってくるつもりだったんだろう
生徒達が忙しく働いている店内に、エリカを案内していくと
「………りょーちゃん、ちょっとは、元気になれた?」
と
そう、エリカが秀に尋ねてきた
…小さく、秀は答える
そう、エリカが秀に尋ねてきた
…小さく、秀は答える
「…前よりは、少しはマシになってきているはずだ」
「……そっか」
「……そっか」
……エリカは、高校の頃の秀と涼を知っている
両親を、デュラハンに殺された直後の彼らの様子を知っている
だから、こそ
今の涼が、両親を失ったトラウマを克服できているかどうか、心配しているようだ
両親を、デュラハンに殺された直後の彼らの様子を知っている
だから、こそ
今の涼が、両親を失ったトラウマを克服できているかどうか、心配しているようだ
…秀としては、少しはマシになってきている、と、そう答えるしかなかった
自分達の両親の仇であるデュラハンを倒して以降、涼の壊れきっていた心は、少しずつではあるが、良い方向に向かっているように思えた
あの日以降、あの瞬間の前から時が止まったかのように、精神的な成長が止まった涼の心
いつまでも子供っぽいまま、成長していなかった涼の精神は、ようやく、少しずつ、歳相応に近づいて…きている、はずである
それでも、以前より、兄である自分以外の事も気にかけるようになってはいるし、マシになってきているはずだ
そう、信じたい
自分達の両親の仇であるデュラハンを倒して以降、涼の壊れきっていた心は、少しずつではあるが、良い方向に向かっているように思えた
あの日以降、あの瞬間の前から時が止まったかのように、精神的な成長が止まった涼の心
いつまでも子供っぽいまま、成長していなかった涼の精神は、ようやく、少しずつ、歳相応に近づいて…きている、はずである
それでも、以前より、兄である自分以外の事も気にかけるようになってはいるし、マシになってきているはずだ
そう、信じたい
「しゅーちゃん」
「………何だ。それと、その呼び方はいい加減、やめろ」
「いいじゃない、好敵手と呼んで友と読む関係だったんだから」
「………何だ。それと、その呼び方はいい加減、やめろ」
「いいじゃない、好敵手と呼んで友と読む関係だったんだから」
どんな関係だ
あの頃に関しては黒歴史だからやめろ
あの頃に関しては黒歴史だからやめろ
「それはともかく……相談とかは、いつでも乗るからね?相談するのって、大事よ?」
「………考えておく」
「………考えておく」
感謝していない訳ではない
エリカには、両親を失った当初、ずいぶんと支えてもらった
だが……だからこそ、これ以上は迷惑をかけたくないというのも事実
彼女は一度首を突っ込めば、どこまでもどこまでも、それこそ、問題が解決するまで、付き合ってくるだろうから
そこまでさせるつもりはない
エリカには、両親を失った当初、ずいぶんと支えてもらった
だが……だからこそ、これ以上は迷惑をかけたくないというのも事実
彼女は一度首を突っ込めば、どこまでもどこまでも、それこそ、問題が解決するまで、付き合ってくるだろうから
そこまでさせるつもりはない
「…お前こそ、自分の事を考えておけ。涼から聞いたが、一応、恋人らしい存在が出来たんだろう?お前を選ぶ奇特な奴なんざめったにいないんだから、逃げられないようにしておけ」
「えー、ひどーい。しゅーちゃんこそ、ちゃんとお嫁さん見つけて、りょーちゃんを安心させないと駄目よ?」
「えー、ひどーい。しゅーちゃんこそ、ちゃんとお嫁さん見つけて、りょーちゃんを安心させないと駄目よ?」
うるさい、と短く返し、生徒に後の接客を任せた
……本当に、どこまでも昔と変わらない女だ
昔と、何も変わらない
せいぜい変わった所は、以前は胸元も平気で露出していたのが、今はしなくなったという点くらいか
ほんの少しは、羞恥心でも芽生えたのだろうか
……本当に、どこまでも昔と変わらない女だ
昔と、何も変わらない
せいぜい変わった所は、以前は胸元も平気で露出していたのが、今はしなくなったという点くらいか
ほんの少しは、羞恥心でも芽生えたのだろうか
「あ、兄さん。エリカちゃん、生徒に任せてきたの?」
「あぁ……一応、俺は呼び込みだけを任されているからな」
「あぁ……一応、俺は呼び込みだけを任されているからな」
…実際は、不機嫌顔でつっ立っているだけで、通常考えれば営業妨害にしかなっていないはずなのだが
それなのに、客が来るのも不思議なものだ
それなのに、客が来るのも不思議なものだ
「エリカちゃん、元気そうだよね」
「………そうだな」
「恋人できたって言うけど。ちゃんと、幸せになってくれればいいよね」
「………そうだな」
「恋人できたって言うけど。ちゃんと、幸せになってくれればいいよね」
そうだな、と短く返す
高校での、三年間
当時、荒れていた自分達に、臆す事なく接してきて、対等に渡り合ってきた彼女
あの頃と何も変わらず、彼女はこちらに接してくる
当時、荒れていた自分達に、臆す事なく接してきて、対等に渡り合ってきた彼女
あの頃と何も変わらず、彼女はこちらに接してくる
……幸せになってくれればいい、と
そう、願うくらいは、してもいいだろう
そう、願うくらいは、してもいいだろう
「あ、そう言えば、兄さん」
「…何だ」
「兄さんがエリカちゃんに気付く前に、エリカちゃん、僕らの写真撮ってたけど、いいの?」
「…何だ」
「兄さんがエリカちゃんに気付く前に、エリカちゃん、僕らの写真撮ってたけど、いいの?」
………
……………
……………
「…何故、早く言わない」
「えー、特に被害はなさそうだったし」
「えー、特に被害はなさそうだったし」
…この野郎
後で、エリカにその写真を消去するように言っておかなければ…無駄に終わりそうだが
予測されるやり取りを想像し、秀は小さくため息をつき
後で、エリカにその写真を消去するように言っておかなければ…無駄に終わりそうだが
予測されるやり取りを想像し、秀は小さくため息をつき
…しかし
その表情は、どこか、楽しげでもあって
その表情は、どこか、楽しげでもあって
普段、めったに笑わない秀が、かすかに笑っている事に生徒数人が気付き
若干の騒ぎになったのだが、それはどうでもいいことである
若干の騒ぎになったのだが、それはどうでもいいことである
終われ