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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-53b

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 何が悪かったと言うのか
 誰が悪かったと言うのか



「龍一っ!!」
「………ぁ」

 彼が、そこにたどり着いた時
 そこは、すでに血で濡れていた

 小さな、少年が
 刀を、手に持って
 頭から、真っ赤な血をかぶって、立ち尽くしていた

 少年の傍らには、気を失っているおかっぱ頭の少女の姿があって
 彼はとっさに、そちらを警戒した

「…っ、花子さんは、敵じゃ、ない」

 彼の警戒に気付いた少年が、慌ててそう言ってきた
 …ひとまずは、警戒を解く

 そして

 …血の海の中心に倒れているそれに、視線をやった

 少年と同じくらいの年頃の少女の姿をしていた、それは
 ゆっくりと、元の、化け物の姿へと戻っていって
 …ゆっくりと、光の粒子となって、消えていこうとしていた

「……の、れ………おのれぇ……!」

 ごふごふと、血を吐きながら
 光の粒子と化していきながらも、それは、未だ激しい憎悪に囚われた眼差しで少年を睨みつけていた

「おのれ………おのれおのれおのれぇえええええ!!!!何故、大人しく殺されぬ!?何故、大人しく折られぬ!!??」

 憎悪の言葉が、眼差しが
 少年に、まっすぐに向けられる

 先年を越える、積み上げられた憎悪
 どこまでも深い、深い、底知れぬ憎悪
 幼い少年に向けるには、あまりにも重過ぎる、憎悪

「これで……っ終わりと、思うでないぞ…………父上を斬った、その刀………必ずしや、へし折って………っ」
「………黙れ」

 ぎろりと
 彼は、それを睨みつける
 何時の間にか、一瞬で、それの傍まで移動していた彼は
 持っていた刀で……その喉を、突き刺した

 それはますます血を吐き、すでに、言葉を吐き出すこともできなくなる

「こいつの前で……これ以上、喋るんじゃねぇ……………餓鬼相手に、八つ当たりしてるんじゃねぇよ、馬鹿野郎が……!」

 それは、憎憎しげに、彼を睨み上げて
 …しかし、それ以上、何もできない

 完全に、全てが光の粒子と化して
 ………この世から、消えうせた

「………」

 それが、消え行く様子を
 少年はただ、じっと眺めていた
 全身にかぶった血を、拭う事もせずに
 ただただ、じっと、静かに、静かに

「…龍一、怪我ぁ、してねぇか?」
「………俺は、ない……花子さん、が」
「ん……あぁ、こっちの嬢ちゃんも、大丈夫だ。気絶してるだけで、たいした怪我はしてねぇ」
「……そう、か」

 ほっとしたような表情をする少年

 …からん、と
 その手から……ようやく、刀が放されて
 血でそまった刃が、床に落ちる

「……お前………それを、振るったのか……?」
「…………」

 少年は、答えない
 血で染まった己の手を
 血で染まった刀を、静かに見つめて

「……呼ばれた、から」

 と
 ただ、小さく、答える

「………手にとれと。斬れと…………そう、聞こえた」
「……っ!」

 彼は、刀に視線をやった
 …彼は、この刀の正体を知っている
 これが、どんなモノなのか、理解している


 …コレは、こんな子供に、自身を振るわせたというのか
 まだ、こんなにも幼い子供に!
 まだ、この子供には……生き物を斬る感触を知るには、速すぎる!!


「……ぬら……?……怒っているのか?」
「…当たりめぇだ……お前に怒ってるんじゃないぞ?……こいつに、怒ってるんだよ」

 血にまみれた刀を拾う彼
 刀は、ただ、血に塗れているだけ

「………怒らないでやってほしい…………あの状況では………それを、手にとらなければ。俺達は、死んでいたから」
「だが……!」
「…誰かが。やらなければいけなかったのだから」

 そう、呟く少年の表情には
 深い、諦めが浮かんでいて

「……八代目様も、そうだったんだろう…?………誰かが、日景家のお嬢さんをお護りしなければならなかった。人ではない存在を知っていて、なおかつ、護る事ができたのは……あの時は、八代目様だけだった、から」

 彼から聞いた、その話を
 少年は、どこまでもしっかりと、覚えていて

「…俺は……八代目様のようには、うまくできなかったけれど………でも、あの場では。俺しか、刀を振るえなかった、から」

 ……カタカタと
 小さな体が、震えている
 生まれて初めて、他者の命を奪った、その重さに
 押しつぶされそうになるのを、必死に耐えている

「………っだか、ら………たとえ、彼女に………人殺しと呼ばれようが……………化け物と、呼ばれようが………俺が、やらなければ……ならなかった、から……」
「…龍」

 そっと
 彼は、刀を床に置いて、その小さな体を抱きしめた
 何時の間にか、ぼろぼろと、涙を流し始めていた、その少年を
 あやすように、優しく抱きしめ、背中を撫でる

「…いい……もう、いい………今夜の事は、忘れろ…………後は、俺が何とかしてやる」
「……忘れる……?……できるはずがない………彼女は、忘れた方がいいだろうけれど…俺は………忘れて、は、いけない」

 しゃっくりあげながら
 少年は、しかし、強く言い切る

「………命を切り捨てた、この感触を……………俺は、永遠に…忘れては、いけ、ない」
「龍…」
「…………だから、こそ……俺は、これに……………………に、真に、ふさわしいと思ってもらえる、その日まで………刀は、手にとるべきでは、ない」

 床に置かれた刀に視線をやり、そう口にする少年


 まだ
 少年は、この刀を手にするには、早い
 ……早すぎたのだ

 肉体も、精神も
 まだ、この少年は、幼すぎる

 この、鬼斬りの刀を手にするには
 あまりにも……早すぎた


「……そうか……お前が、それを選ぶんなら……俺は、止めねぇ。龍の奴も…………同じ状況に置かれたならば、お前と同じ事をしただろうしな」
「…八代目、様も…?」
「あぁ………お前は、あいつと似てるよ………おっかねぇくらいにな。あいつの生まれ変わりみてぇだ」

 だから、こそ
 彼は、少年に干渉してしまうのだろう
 己のかつての契約者に、あまりにもよく似ている、この少年に

「…せめて、この場の後始末は、俺に任せろ………お前が、命かけて護った女の子の事も、俺が確認してくる。とにかく…お前は、その血を拭って。服も着替えて……眠っちまえ。今は、ただ……眠っていれば、いい」
「………でも」
「本当なら、俺がやるべきだったんだ……俺が間に合わなかったから、お前をこんな目にあわせちまった…せめて、それくらいはさせてくれ」

 彼の言葉に、少年は俯いて
 ……小さく、頷くと

「っとと!?」

 糸が切れたように、意識を失ってしまった
 小さな寝息が、聞こえてくる

「…やっぱり、限界だったか」

 ……とにかく、広間に広がる血を、どうにかしなければ
 花子さん、と少年が呼んでいた、人間ではない気配のするこの少女についても、介抱してやる必要がある
 それに、少年が護って……しかし、少年の行為に恐怖して、この場から逃げ出した少女
 あちらも、どうにかしなければ…

「………あぁ、まったく」

 月を、見上げる
 夜空に浮かぶそれは………真っ赤に、染まっているように見えた

「どうして、こうなっちまうんだか…………なぁ?龍よ」

 床に置かれた、血染めの刀に視線をやる彼
 刀は沈黙し、ただ、血に染まり続けている…



 何故、こうなってしまったのか
 誰が悪かったのか
 何が悪かったのか

 ただ、この出来事は
 少年の心に深い傷をつけ、その心を縛り続けるのだ






………fin?







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