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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 誘拐と人食い-05

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Elfriede

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誘拐と人食い 05


檻の中に閉じ込められた少年少女は、風船を手にしたまま一人ずつ連れ出されていく
テントの奥にある『人攫いサーカス』団長に素養を吟味され、最も適した部署に配属される
そしてじっくりと訓練期間を経て、この都市伝説に呑み込まれてその一員と化していくのだ
「問題はこいつだな」
猛獣使いの男が檻の中に座り込んでいるまぐろを眺めながら首を傾げる
「まあ都市伝説だって私達は簡単に呑み込める。だけどねぇ目ん玉無いのは客の前に出すのには困るわね」
軽業師の女が扱いに困ったように首を振る
「見世物にするにも目ん玉が無いだけじゃあねぇ」
「お前、何でこいつにまで風船渡したんだ?」
猛獣使いの男に睨まれて、道化師の男は身振りだけで返事をする
「あん? 風船が欲しそうだったから? だったら普通の風船を渡せよ……ああ? 間違えた?」
何処をどう意味が通じているのか判らないが、意思疎通はできているらしい
「まあどうするか決めるのは団長だけどよ。扱いに困らなきゃいいんだが」
「ま、この風船があるうちは何の抵抗もできないわよ。あなたの猛獣達の餌でも、下っ端の性欲処理でも、使い道はいくらでもあるわ」
「おいおい、うちの子達がいつも人間や都市伝説を喰ってるみたいな言い方はよせよ」
猛獣使いの男は苦笑して、背後に控えるライオンや熊に視線を向け
「果物や野菜が好物な象とかもいるんだぜ?」
誤魔化すように笑顔を浮かべていた

―――

『スーパーハカー』と『闇プログラマー』の二人は、殺風景な電脳空間に不釣合いな巨大な装飾ベッドの上に転がり
その傍らには様々な拘束具を試すかのように無理矢理着けさせられた『橘あゆみ』が気を失って倒れていた
「そろそろ飽きたなー」
「エロい事は一通りやったし、これからどうする?」
「とりあえず撮り貯めた映像はP2Pで流そうか」
「個人情報ぶっこ抜くウイルス仕込んで?」
「そりゃ勿論。まあちゃんとエロ動画自体は見れるようにはしとくけどさ」
顔を見合わせてげらげらと笑う二人
そんな二人の元へ、あゆみのメッセンジャーソフトがメッセージの着信を告げる音を鳴らす
《よう、糞餓鬼ども》
メッセージの発信者は、音門金融の元締めことサロリアス・サジャス
表情こそ落ち着いているものの、その雰囲気から怒気が溢れ出ているのが通信越しにも判るほどだ
「おやおや、まだ何か用?」
「俺らは伝える事は伝えたし、別にもう用事は無いんだけどさー」
面倒臭そうに応える二人に、サロリアスは怒気を押さえ込んだ静かな口調で語る
《こっちの面子の問題だ。金貸しってのはな、舐められたら終わりなもんでな》
「ははは、それでどーすんの? この女の頭弄くって調べがついてるけどさ、あんたの能力じゃ『電脳空間』に干渉できないだろ?」
《まあな。俺が出来るのは『仕事の仲介』だけだ》
そう言うとサロリアスは、ポケットから手のひらほどのサイズのプラスチックの物体を取り出す
だらりとケーブルが伸びたそれは、何かボタンのようなものがいくつか付いている
「ははっ、何それ? ミサイルかなんかでも発射できるの?」
《ミサイルじゃあねぇが……砲撃はできるな》
ちらりと腕時計に視線を落とし
《時間だ》
「へ?」
「何が、っ!?」
サロリアスが呟いた瞬間、凄まじい重圧が『電脳空間』に襲い掛かる
指一本すら動かせない凄まじい負荷に、声すら出せずに動けなくなる二人
《『中国人民波動砲』ってのを知ってるか? 中国人が一斉にジャンプすれば、地震と津波で日本どころかアメリカをも壊滅させるってな》
「そ、んな、も、の、がっ……なん、で、でん、の、う、くう、かん、にっ……」
《アホか、それを直接そこにぶち込むなんて真似が出来るか。俺はその都市伝説契約者に『これ』を使わせただけだ》
先程の、ケーブルとボタンのようなものを見せる
《お前らがいるような場所への攻撃に特化した、『韓国のキーボード』だ》
本来なら、そんな機能ではキーボードとしては認識されるはずもない、Ctrl、Alt、Del、そしてF5キーだけが付いたキーボード
「うごっ、け、なく、しただけ、でっ……何、が、できるっ……!」
《お前らを一瞬でも動けなくさせれりゃ、充分なんだよ》
おおよそ一分程だっただろうか
それまで発生していた重圧が解けたその瞬間、電脳空間から『橘あゆみ』の作り上げたスペースを隔離していた障壁が一瞬で崩れ去る
「おやおやいけませんねぇ……セキュリティがなってませんよ? ウイルス対策ソフトはちゃんとお使いですか?」
崩れ落ちた障壁の向こう側に、営業スマイルを浮かべたスーツ姿の男が立っていた
「誰だ手前ぇっ!? 今何を――」
その男に即座に攻撃をしようと振り上げられた『スーパーハカー』の右腕が、塩粒のようになってぼろぼろと流れ落ちるように崩れていく
「セキュリティがきちんとしてないから、ほら。『カスケード』なんていう古い古い、化石みたいなウイルスにもやられるんですよ」
スーツ姿の男、『コンピュータウイルスはセキュリティ会社が作っている』は、ポケットから古めかしいフロッピーディスクを取り出しながら薄ら笑う
「あ、ああああああああ、があああああああああああああああああああああああああAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaa」
腕が崩れ落ち、そのまま肩が、首が、顎が、頬が、じわじわと、じわじわと崩れ落ちていく
崩れ落ち零れたものを必死で掻き集め、再構築しようと足掻く『スーパーハカー』
「くそっ、今助け」
それを助けようとした『闇プログラマー』の身体が、再び動きを止める
「くくく、甘いなぁ」
「お前らがエロい事をしてる間に仕込みはばっちりだぜ?」
「うはwwwwwっをkwwwwwwwwwwwwwww」
「こんな隙を見せてるとは。『スーパーハカー』と『闇プログラマー』の面汚しめ」
「だが奴らは我らの中では一番の小物……みたいなっ」
男女様々、総勢数十人にも及ぶ集団が、二人を取り囲んでいた
「なっ……まさか……」
《『スーパーハカー』や『闇プログラマー』が、自分達だけなんて思い上がった事でも考えてたのか? やはり若造だな手前ぇらは》
二人を取り囲んでその動きを拘束しているのは、世界中から集められた『スーパーハカー』と『闇プログラマー』達
それをここに導いた『コンピュータウイルスはセキュリティ会社が作っている』が、大袈裟な動きで嘆きを表現する
「こんな簡単にトロイの木馬が仕込めるようではいけませんねぇ、実にいけません」
《金は掛かったがな、全員俺が雇った傭兵だ》
「こんな、何処にでもいるような、実体も無い都市伝説の女一人を助けるために!?」
《二度も言わせるな……金貸しの面子を潰そうとして、タダで済むと思うなよ》
「いやむしろ面子だけで、俺らたった二人を潰すためだけに、こんな出鱈目な戦力を集めるか!?」
《敵は徹底的に潰す、それだけだ》
そこでぷつりと通信が途絶え
動けない『闇プログラマー』の眼前に『コンピュータウイルスはセキュリティ会社が作っている』が、フロッピーディスクを突きつける
「何事も程々に。そんな教訓を込めてこれを差し上げましょう……『モリスワーム』です」
ぱきん、と
フロッピーディスクが弾けたかと思うと、『闇プログラマー』の全身から小さな蟲が身体を食い破って溢れ出す
「ひぎぃあああああああああああああああああああああああああああ!?」
既に塩の山のようになった『スーパーハカー』の横で、己の内から湧き続ける蟲に喰らい尽くされる『闇プログラマー』
「あれ、もう終わり?」
「まー俺らが押さえ込んでたんだし当然だろ」
「これで一人頭の報酬はあんだけ出るの?」
「ボロ儲けwwwwwwwwwwwwwww乙wwwwwwwwwwww」
「そういやそこのレ○プ目の女の子はどうすんの?」
「ついでに直しとく?」
「じゃあ俺がやっとくか」
「いやいや僕が」
「それなら私が」
「どうぞどうぞ」
「というか女の子がやれよ」
「いいよー、それじゃあ誰かお風呂作ってー」
「覗いて良いなら!」
「ふざけんな」
「そうだそうだ、お前らハッカーなら自力で覗き穴作れ」
「抉るぞ」
「何を!?」
わいわいと『橘あゆみ』と彼女が居た空間を再構築していく数多の『闇プログラマー』と『スーパーハカー』達
『コンピュータウイルスはセキュリティ会社が作っている』はそんな彼らに一礼して、携帯電話を片手にその場を去っていく
「もしもし……ええ、ご依頼の件は片付きました。今後彼女に悪意を持って近付いた者に作動するロジックボムを大量に仕込んでおきましたので。今後とも当社のセキュリティソフトを宜しくお願いします」

―――

髑髏を加工して作ったランタンを手に、下水道を徘徊する集団
食料を求めて活動中の『ソニー・ビーン一家』の子供達である
つい先日、下水道に入り込んできた謎の軟体生物を煮込んで食べた彼らだが、別段何事も無かったかのように元気である
生まれた時から下水道暮らし、不衛生など当たり前の生活をしている彼らの免疫力は半端ではなく、悪食ここに極まれりといった様子だった
「チズ、ツクル。ニクトレルデグチ、タクサンシラベル」
「タマニカッテニオチテクル」
「デモ、アブラクサイドロドロ、アレハイラナイ」
「オイシクナカッタ」
「クサカッタ」
「アレハモウヒロワナイ」
「サンセイ」
「ヤワラカクテオイシイニクサガス」
「イッパイアツメル、トリブンフエル」
「アタラシイデグチミツケタ」
「シズカ」
「ニオイスル」
「ニンゲンジャナイ」
「トシデンセツ」
「デモ、オンナ、ヒトリ」
「オイシソウ」
群れの中の一人が、全く音を立てずに縦穴をするすると登っていく
気配を確認しながらマンホールの蓋をそっと押し上げ、隙間から獲物の様子を静かに窺う
そこにマンホールから少々離れた辺りで電話をしていた黒い服の女を見付け、指を折り曲げて下に控える子供達に作戦を伝えた
下に控えていた子供達は、即座に現在位置と獲物の位置を把握して散開し、周辺の別のマンホールの位置を確認していく
全員で一つの生命体であるかのような、昆虫じみた統制力
それがこの都市伝説の最も恐ろしい部分であった

―――

「ういす、社長の方は片付いたっスか」
《落とし前はしっかり付けさせてもらった。次に何かやらかしやがったら……『誘拐結社』ごと潰してやる》
「物騒な話っスねぇ。まあ社長がやるんなら止めやしないっスけどね」
サロリアスと電話をしていた佐藤梨々
その表情が、ふと強張る
「社長、『誘拐結社』の連中はもう何も仕掛けてないんスかね?」
《さあな、面倒だから理由でっちあげて潰しちまうか》
「もしかしたら、でっちあげる間もなく理由ができるかもしんねっス」
《……どういう事だ》
「すんません、電話してる余裕無くなりそうなんで切ります。なんかもう囲まれて」
ひゅん、と
空気を切って飛んで来た、人骨を削り出して作ったブーメランが梨々の立っていた場所を正確に切り裂く
その攻撃を既に読んでいた梨々は、ブーメランを無視して即座に前へ跳ぶが
「うぉっと!?」
ブーメランを避けた位置に叩き込まれたコンクリート製の石斧が、アスファルトを抉る
辛うじて避けた先に、即座に飛来する投げナイフ
「ちょっ!? どう避けてもその先に攻撃の仕込みがあるとか、んな無茶な!?」
この場にいるであろう敵の数はおよそ12人
梨々が思考を呼んだところ、その全員が獲物を確実に仕留めるための無数の手順を把握しているのである
「相手のっ! ミスをっ! 期待するしかっ! ねっスかね!?」
思考が読めるためになんとか攻撃を避け続ける梨々
読んだ思考を全て把握して、『詰み』になる手だけを避けるべく必死に避け続ける
「って、こっちヤバっ!?」
思考を読んでいても、それに正確に対応し続けられるかは別問題である
握りに布を巻きつけた大腿骨の棍棒が、梨々の後頭部を直撃した
「だっ、あがっ!?」
一瞬視界が真っ白になり、全身が痺れたように動かなくなる
その一瞬を取り戻した時には
様々な得物を手にした『ソニー・ビーン一家』の子供達が、飛び掛ってくるのが見えており
その攻撃範囲から逃れられない事を、彼女は悟ってしまっていた


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