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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 誘拐と人食い-06

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Elfriede

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誘拐と人食い 06


「ねーねー、頼むからさー『合わせ鏡に自分の死に顔が見える』の契約者、ちょっと貸してよー」
「へるぷみー」
「五月蝿ぇ、俺の担当してる契約者を危険に晒せるか」
ちょこまかと後ろをついてくる規格外の幹部二人に、宏也は何の遠慮も無くずばりと言い放つ
「ヤバいんだってば、下手な数で攻めても返り討ちだしさー。無限に増えられる彼女の能力が一番確実なんだってばー」
「いんふぃにてぃー」
「理屈は知ってるが、増えるのが鏡の中だけで効果あるのかよ、その『ソニー・ビーン一家』に」
「……あれ? 彼女の能力ってそんなチンケだっけ? 普通に町中に分身ばら撒いたりしてたじゃない、万華ちゃん」
「彼女はとっくに大往生しとるわい。今の契約者は彼女の孫で、能力はほとんど使えない」
その言葉に、あからさまにがっくりと肩を落とすπ-No.0
「しょうがないなぁ……それじゃあさ、彼女の能力レベルちょっと『弄って』使うから貸して? 終わったら元に戻すから」
「れべるあっぱー」
「ふざけんな、失せろ」
どこまで本気か判らない言葉に、大人気なくキレかける宏也
「ふざけんなって言われても、もう既に何十人喰われてるか判らない状況だからね。僕も割と形振り構っていられないんだ」
「でっどらいんー」
その時、π-No.0の携帯が着信を告げる
《俺だ》
「あ、ひっさしぶりー。今は何て呼べば良いんだっけ? Z-No.0辞めて結構経つよね?」
《好きに呼べ》
「じゃあ、サロリアスだからさっちゃん」
《音門と呼べ》
「あれ!? 好きに呼べって言ったじゃない!」
《物には限度ってもんがある。というか急ぎだ、手短に話すぞ……俺が『組織』に居た頃から手前ぇが探してた『ソニー・ビーン一家』にうちの社員が襲われた》
「喰われたとか、攫われたじゃなくて、襲われた……ね?」
《通りすがりのキチガイが、まとめてブチ殺したそうだ。12人程の奴らの『子供』が路上に散乱してる》
「……うわ、ちゃー」
携帯を片手に天井を仰ぐπ-No.0
《馴染みの情報屋が、この町の下水道大迷宮の地図を作った。これをくれてやるから手前ぇらでなんとかしろ》
「手伝ってくんないの?」
《俺ぁとっくに『組織』を辞めて、別の仕事がある。この町の都市伝説をどうにかすんのは現役の連中の仕事だ》
言うだけ言って、ぷつりと通話は途切れてしまう
通話の切れた携帯電話に向けていた視線を、ついと上げて宏也に笑顔を見せるπ-No.0
「というわけで、下水道大迷宮をローラー作戦で包囲殲滅できるだけの人員が必要になっちゃった」
「知るか、自分で何とかしろ」
「視界が通らないのに広大なところ、しかも地下だと僕の能力でもカバーし切れないんだってば。ちゃんと元通りにして返すから、お願い」
「黙れ……佳奈美に何かしやがったら、ただで済むと思うな」
殺気混じりの声に、π-No.0は怯んだ様子は無くただ肩を竦める
「しょうがない、別の手を考えよう」
「せかんだりー」
切羽詰った事を言っている割に暢気な足取りの二人を警戒してか、この後に宏也は佳奈美の元を訪れてしばし警護じみた態勢を取っていた
結局は佳奈美の周辺にはこれといって変わった事は起こらず、気を張ってセクハラじみた事を何もしなかった事に、佳奈美は少々不安を覚えていたという

―――

下水道大迷宮の奥深く
コンクリートと汚水で彩られた灰色の世界に、異質なまでの生活空間が作り上げられていた
廃棄物や人間だったものを部品として作り上げられた様々な家具
塩漬けにされて貯蔵された大量の肉
乱雑に積み上げられた衣料品や装飾品は、肉になってしまったものから剥ぎ取られたものである
剥ぎ取られ綺麗になめされた皮
布状に編み上げられた髪の毛
爪や骨すら加工され武器や家具の一部と変貌していた
下水道のあちこちにはバリケードや罠が張り巡らされ、様々な警報装置を作り上げて侵入者を警戒していた
もっとも、侵入したものは例え神であろうと数で劣れば彼らの餌にしかなり得ないのだが
「狩りに出ておった12人の息子達が殺された」
家長である『ソニー・ビーン』その人が、下水道に群れる50人近い家族
伝承にある彼らは40人とも50人とも言われるが、12人減ったはずの彼らはこの場に集まっているだけでその規模である
家事や巡回といった仕事をこなしている面々を加えれば、三桁に届きそうな勢いだ
「また家族を増やさねばいかん。強く、早く、多く産み育てるには栄養のある食料が沢山必要だ。今まで以上に慎重に、だが今まで以上に大胆に狩りを進めよ」
数が目減りした男児達は顔を見合わせ、年齢が高いものを中心に狩りの算段を立てていく
狩りにはあまり加わらない女児達は顔を見合わせ、家財や食料の状況確認や子作りの順番といった家族を増やすための相談をする
「我らはただ生きるのみ。我らはただ殖えるのみ。我らはただ喰らうのみ」
『ソニー・ビーン』は高らかに謳い上げる
「我らの営みを妨げるものは、全て喰らい尽くせ。我らの営みの為に、全てを喰らい尽くせ。我らはただ生きるもの、我らはただ喰らうもの」
下水道に響き渡る『ソニー・ビーン』とその家族の声
「弱肉強食こそが自然の摂理。家族を守れ。一族を殖やせ。そして何より、己の腹を満たせ」
それらは地上に届く事は無く、誰にも知られる事なく空虚な闇の中に溶け込んでいった
下水道の空間全てを自らの存在で満たすかのように
暗闇の全てが己であるかのように

―――

大規模なサーカスのテントを見上げながら、壱岐大はごくりと喉を鳴らす
まぐろはここにいる、ような気がする
根拠などこれっぽっちも無い、ただの勘である
だがそれは、契約という繋がりが呼び寄せたものである気がしてならない
それなりに人目を気にしながら、だが怪しまれないようにテントの裏へと回り込む
とは言っても所詮は素人である
「ハァイ、そこのあなた。こっちは関係者以外立ち入り禁止よ?」
身体のラインを強調したきらびやかな衣装を纏った女性に、あっさりと呼び止められてしまった
「すいません、身内の子がちょっと迷子になっちゃってて、探してるんですよ」
嘘は吐いていないのだが、状況が悪かった
誘拐直後の『人攫いサーカス』の団員達の警戒心は充分であり、今の言葉を挑発の類と受け止めたのだ
「ふふっ、あなたどこかの組織の契約者? それとも攫われた子供の身内かしら?」
「あっさり攫ったとか言うんだな」
大は頭を掻きながら、柔らかい物腰を崩さない女を見据える
「私達はこのサーカス団丸ごとで一つの存在なの。敷地の中にはあなた一人だけしか居ない事ぐらい判ってるわ……このままあなたも攫っちゃえばお終いよ?」
女が、ぐんと身を沈めたかと思うと、大の視界から消えた
「っと」
数メートルの高さまで跳躍した女の飛び蹴りを、大は避けついでに足首まで引っ掴む
「ちょっ!?」
空中で足を掴まれて、流石にバランスを崩す女
顔から地面に落ちそうになり、とっさに腕で庇おうとしたのだが、地面に落下する前に大にがっしりと抱きかかえられていた
「軽業の本職相手に、どういう運動神経してんのよ!?」
「冬の海で仕事してたら、割と鍛えられるみたいでね」
それ以上に、契約したまぐろの身体能力に引っ張られるように、大もまた人並み以上程度には引き上げられているのだが
「さっき言った通り、俺は身内の子を探してるだけだ。その子さえ取り戻せれば大人しく引き下がる」
「私一人あしらったぐらいで、うちのサーカス団丸ごとを相手にできると思ってるの?」
「必要なら、やる。それだけだ」
「へぇ……ますます攫って仲間にしちゃいたい気概だわ」
「悪いが、もう契約してる子がいるんでな」
「……契約してる『子』って、もしかして攫われたのはあなたが契約してる都市伝説?」
「それが何か?」
真顔で答える大に、女は思わず吹き出してしまった
「その子を攫ったのは、ある意味で手違いだったから。団長に相談すれば返してもらえるかもね」
「ではその相談に俺も混ぜてもらおうか」
「っ!?」
「あれ、元締め。どうしたんですかこんなとこで」
ごく自然に、最初からそこに居たように
コート姿のサロリアスと、血の滲んだ包帯を巻いた梨々が並んで立っていた
「手前ぇらのリーダーの、更に上……『誘拐結社』のリーダーに、随分と念押ししたんだがなぁ? この町で仕事すんなってな」
状況がよく判らず緩んだ大の手から逃れ、思い切り飛び退く女
梨々がぼそぼそと耳打ちすると、サロリアスの咥えた火の付いた煙草のフィルターを、ぎちりと噛み潰す
「逃げんなよ、嬢ちゃん。金貸しは逃げた相手は地獄の底まででも追いかけるぜ? 大人しく上に取り次いでくれりゃあ……少なくとも穏便に片付く可能性は残ってんだ」
金貸しというよりマフィアのようなその雰囲気に、女は黙って頷く事しか出来なかった

―――

事はあっさり片付いた
サロリアスと顔を合わせた途端、『人攫いサーカス』の団長は椅子から跳ね上がり、そのまま着地と同時に華麗な土下座を決めていた
「この町で二度と仕事すんなって、あれだけ念を押したよな?」
「最近はサーカスの興行もいまいち振るいませんで、こう、スター性のある人材が欲しくてついつい」
「もう取り込んじまった奴ぁどうしようもないだろうがな、まだの奴はさっさと解放しろ。この坊主の契約してる都市伝説もだ」
「え、ええ、それはもう迅速に」
団長は跳ね起きると同時に、机にあった携帯電話を手に取り事務員の詰め所に呼び出しを掛けた
そんな様子を、どこか所在なさげに見ていた大
「元締めにはお世話になりっぱなしです」
「お前の事はついでみたいなもんだ、気にするな」
それだけの簡単な会話の後に、サロリアスは僅かに苛立った視線を団長に向ける
「何時まで掛かってんだ、何か企んでるようなら……纏めて潰すぞ」
「い、いえいえいえいえいえいえいえいえいえそのような事は決して!? ただ事務員がサボってるのかなかなか電話に出ないもので」
大慌てで、今度は団員の控え室に電話を掛ける
「あ、ああ、私だ。すぐに事務員の詰め所に行って、鍵を取ってきてくれ。動物の檻や金庫のじゃない、誘拐用のやつだ。大至急、檻のある場所まで持って来い」
汗だくになりながら電話を切ると、愛想笑いを浮かべてへこへこと頭を下げる団長
「では解放した者はすぐ引き渡せるよう、現場にご案内しますので」
「……行くぞ」
団長に先導されて歩き出すサロリアス
促されてその後ろに付いていく大と梨々、そして団長の元へと案内してくれた軽業師の女も、所在なさげに付いていく
「おい」
「は、はひっ!? 何でございましょう!」
「お前んとこのサーカス団、人員はどれぐらい居る?」
「へ? そ、そうですね……今のところこの町に入ってるのは、事務員が10人程と実働団員は40人程でしょうか」
『ソニー・ビーン一家』の事は、奴らを追っていた『組織』の知り合いに任せはしたが
奴らを確実に片付けるためにはどうしても人数というものが必要になる
伝承に存在するただの洞窟と違い、出入り口が無数にある下水道大迷宮なら尚更だ
「場合に因っちゃ、少し仕事を頼む事になるかもしれん。良好な関係を築きたいなら……判ってるな?」
「そりゃ勿論でございますとも! 我々のサーカス団員は、運動神経は折り紙つき! 何をやらせても卒なくこなせますとも!」
「そうなのか?」
「契約者や、契約者持ちの都市伝説が出鱈目過ぎんの」
先程あっさりやり込められた軽業師の女は、頬を膨らませてそっぽを向く
「それに、私達は人目のある日中は『もの凄く鍛錬した人間』ぐらいの範囲までしか力を発揮できないの。明らかに人間にできない事なんてサーカスで見せれないでしょ」
夜間の人目の無いところなら負けないといった言い草に、大は苦笑を浮かべる
「別にもう戦う必要とか無いだろ?」
「まあ、この町でもう仕事はしないみたいだしね……まあでも表の興行はちゃんと最後までやってくからね。私達がどれだけ凄いか、ちゃんと見ていきなさいよ?」
「暇は有り余ってるしな。まぐろにも見せてやりたいし、一度見に来るよ」
「まぐろって、あの変な都市伝説の子?」
「変とか失礼だな。ちょっと子供っぽいところがあるけど良い子だぞ?」
そんな雑談をしている間に、明らかにテントの広さを越えて歩いた場所に、一行は辿り着いていた
舞台裏といった雰囲気のその場所には、いくつもの檻が並べられており
そこには、都市伝説の力が通用しない素材で出来た謎の檻の中に、浮かんだ風船をぼんやり見詰めているまぐろの姿があった
「檻から出して風船を手放させれば元通りですとも。ですから事は穏便に」
へこへこと頭を下げる団長に、サロリアスが厳しい視線を向ける
「鍵はどうした」
「お、おかしいですね、大至急と言ったのですが」
「嘘は言ってないっスね。罠とかの仕込みも全く無いようで……本気で慌ててるっスよ」
「団長、私が見てきますよ」
軽業師の女が軽く手を挙げて、外へと向かおうとしたその時
どこからともなく聞こえてきたのは、誰のものかも判らない断末魔の悲鳴だった


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