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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 葬儀屋と地獄の帝王-03

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sougiya

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第三話
【複写と磔】

 飢えていた、憧れていた、望んでいた、欲しかった。
 弱者も強者も敵も味方も他者も己も全てを屈服させる力を。
 絶対に負けることのない力を。
 最後まで立っていられる力を。

 昨日笑いあった仲間は二度と笑えない。
 空腹に耐え切れなくなって伴侶の喉元へ歯を立てる。
 夜更けに生まれた子供の息はお天道様を見る前にはもう絶えている。
 安寧とした生を過ごす家の外では烏に目玉を喰われた骸が転がっている。
 どこかからやってきた連中に連れ去られた仲間達の最期の叫びが耳を打つ。
 箱の外には死しかなかった。
 だから、力を望んだ。
 空を泳ぐ敵も、海を走る敵も、地を飛ぶ敵も、自分を見下す敵も、自分を見下ろす敵も――どんな奴にも勝てる力を願った。
 外の世界で生きていける力を。
 同族を殺して生き延びるのではなく、他族を殺して生き延びる方法を。
 己を毒とせず、毒をも殺せる力を。

 力が欲しい。
 誰よりも強く欲した。
 誰よりも強く望んだ。
 誰よりも強く憧れた。
 誰よりも強く飢えていた。

 飢えて飢えて飢えて飢えて。
 憧れて憧れて憧れて憧れて。
 望んで望んで望んで望んで。
 欲して欲して欲して欲して。

 ただひたすらに力を求めた結果、奇跡が起きた。
 必然という名の奇跡が。
 初めて力を願った日は――もう覚えていない。

◆  □  ◆  □  ◆

「なあ」
「ん?」
「ジョニーデップは気付いてんのかな? 俺が激似なこと」
「黙れクソ親父」

 久々の休日、彼は南区にある父親の職場に来ていた。
 南区の繁華街より少し外れたところにあるラブホテル、ローペロペコンマ。
 彼の父親がそこの経営者である。
 彼自身の職場から徒歩で三十分弱の距離にあるのだが場所が場所だけに訪れることは少ない。

「帰っていいか?」
「んだよ、せっかく来たんだからゆっくりし――ああ、いや」
「今度は何だよ」
「ゆっくりしていってね!」
「言い直すな阿呆」
「厳しいなおい、実の父親だぞ、実父だぞ、zipなんだぞ。むしろzipでくれ!」
「……もういい、喋るな」

 こめかみを押さえながら呆れたように溜息を吐く。
 毎度毎度のやりとりとはいえ、こうもテンションが違うと調子が狂う。
 見た目はともかく、性格が父親似でなくて良かったと心からそう思う。

「んで、何回だ?」
「……ああ、今月だけで十八回だ」
「相変わらずエンカウント率高えなあ、おい」

 クックッと楽しそうに笑う父。
 彼が都市伝説と契約していることを知っている数少ない理解者のひとりである。

「きっちり止めは刺したな?」
「ああ」
「江良井家家訓――『負けはしません、勝つまでは』を守ってればいいんだ。守らないと爺さんが化けて出てくるからよ」

 彼の祖父は有名な武術家だった――らしい。
 らしい、というのは祖父がその武術を振るっているところをみたところがないからだ。
 武術といっても特殊な古武術などではなく、効率よく人を殺すことのみに特化した武術――否、殺人方法。
 徒手空拳、刀剣棍棒、鈍器銃器、薬物毒物――ありとあらゆる殺人方法のみを祖父は持っていた。
 失われるには惜しい技術だからとは父。気質が祖父似だからとは彼。
 祖父が彼の中に何を見出していたのかは祖父亡き今、わかることはない。ただひとつ、殺人方法を受け継いだからこそ彼は学校町で生きている。
 本来であれば不要とされていつの日か失われるであろう知識。
 しかし、学校町では違った。
 学校町で生きることは都市伝説との戦闘を――殺し合いを意味する。
 安寧とした日々を過ごすことはできる。都市伝説から目を逸らし、知らぬ存ぜぬを通し続けていればそのうちに何も知らぬ一般人となれるだろう。
 学校町で起きる行方不明や事件事故は他の町と比べると圧倒的に多い。被害者の多くは未知なる者の手にかかっている。
 祖父が残した殺人方法は、都市伝説が異常に集まってしまった都市――通称、学校町で都市伝説契約者として生きるためには必要不可欠な知識であった。
 彼が契約している都市伝説は、他の都市伝説の種類を調べたり他の都市伝説の気配を感じ取る能力はない。
 戦いの中で敵がどんな戦闘スタイルかを一瞬で見抜き、よりよい対処法を選び抜く。
 戦中前後に編み出され生み出された知識と技術を彼は都市伝説と契約するよりも前に習得を始め、二十歳を越えた頃に修めた。多種多様の相手に対応するために今もなお彼の中で技術は練磨されている。

「そもそも爺さんはよ――」

 父が何か言おうとした瞬間、それは起こった。

「――――!」

 世界の全ての音が吸い込まれたかのような静けさ。
 きいん、と聞こえてくる耳鳴りのような音。

「……今の、何かわかるか?」
「いや」
「能力……だな」
「だろうな」

 ラブホテルの無事を確かめるべく飛び出していった父親の後を頭を掻きながら追う。
 基本的に彼ら親子にとって、都市伝説は彼らの生活に支障がなければどうでもいい。
 しかし、外に出た父親は判断つきかねるといった表情で困っていた。

 それもそのはず、ラブホテルの壁には『━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━』と描かれていたのだから。

「……こいつをどう判断する?」
「判断も何も見たまんま、だな」
「懐かしすぎて胸が熱くなるな」
「ああ、違いない。――親父がねらーだとわかってがっかりだ」

 いつからいたのかわからない。
 どこで発生したのか、知る者はいない。
 突如各板に張られ続けたAAの嵐。

◆  □  ◆  □  ◆

     ∧_∧
 ピュー (  ^^ ) <これからも山崎を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉

    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン

             \        .∧_∧                  /
              \   ピュ.ー (  ^^ )<これからも僕を  /     ∧_∧
 山崎渉は      \   =〔~∪ ̄ ̄〕          /∧_∧  ( ^^  )
    かっこいい。     \ .= ◎――◎            / . (  ^^ ) /   ⌒i
           从// . \     ∧∧∧∧     /.  /   \     | |
   (  ^^ )     n      \  <.      >.. /.   /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
  ̄     \    ( E)      \< の 山. >/.   __(__ニつ/  山崎  / .| .|
 フ     /ヽ ヽ_//         < 予.    >.         \/       / (u
―――――──―――――――< 感 崎. >―――――──―――――――
                      <. !!!.    >
        山崎渉age(^^)   <     渉. >  1 名前:山崎渉 投稿日:02/
    ∧_∧.             /<..     >\    (^^)
  ∧(  ^^ ).           /   ∨∨∨∨.   \
 ( ⊂    ⊃.        /                  \  3 名前:山崎渉 投稿
 ( つ ノ ノ       /. ―━[JR山崎駅(^^)]━― \.    >>2
 |(__)_)     /                     \   (^^;
 (__)_)      /. ―━―━[JR新山崎駅(^^)]━―━― \
         ./                            \

◆  □  ◆  □  ◆

『山崎渉』という、シンプルな名の都市伝説。
 あまりにも長い間、しかも大規模なスクリプト荒しだったため、掲示板の運営側はリモートホストを表示させる機能をつけて事態は終息した。
 古いスレを開いた時にたまにその姿を確認することができるが、今となってはその存在すら忘れ去られようとしている。

「契約者ゲットだぜ! ってな気分だろうな」
「さっきの静寂は発動条件……いや、発動した証拠か」
「塗料じゃねえな。こいつは水ぶっかけても消えねえぞ」
「みたいだな。何らかの能―━[JR山崎駅(^^)]━―きされ――何!?」

 彼が口にした推察は正しかった。
 何らかの能力で描いたというより上書き、という彼の言葉の上に『―━[JR山崎駅(^^)]━―』と上書きされたのだ。

「異常はあるか?」
「……いや、何もない」
「言語にも直接害を及ぼすタイプか。こいつは厄介だな」
「ああ」

 静寂が訪れ、耳鳴りがしたその瞬間に周囲の気配を探っている。
 しかし悪意や殺意どころか、害意そのものは一切感じていない。
 たまに、試すつもりで仕掛けてくる者もいるが、その気配すらない。
 超がつくほどの遠距離攻撃型の可能性もあるが、的確に自分を攻撃できる力があるなら狙撃すればいいだけの話である。
 都市伝説の暴走であれば騒動になっているはずだ。

 彼はひとつの結論を出した。
 ――問題なし、と。

「……帰る」
「あ? こいつはどうすんだよ」
「放っておいても問題はない。敵ならすでに攻撃してる」
「いやだってお前……」
「帰って寝る。じゃあな」
「ちょ、これどうすんだよ。――ああ、こういう時はこうだったな」
「?」
「じゃあの」
「くたばれアホ親父」

 心底呆れたように彼は帰路へとついた。
 正体不明目的不明の都市伝説との遭遇。
 自分に対して一切の害意がないから戦う理由もない。
 無駄な労力は使わないに越したことはない。
 たまにはこんな日があってもいい。
 明日は葬儀が五件控えているのだから。


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