アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 葬儀屋と地獄の帝王-02

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
第二話
【鬼哭臭臭】

 かつて、彼にはひとつ年下の弟がいた。
 不器用で無愛想な彼とは違い、弟は誰にでも良く笑い誰をも良く笑わせ誰からも良く好かれた。
 そんな弟を少し眩しく思いながらも彼は弟を優しく見守っていたし、弟もまた兄である彼を疎んじることなく慕っていた。
 彼らの兄弟仲は良好で、何の問題もない日々を過ごしていた。

『……兄さん、例えば俺が正義のために戦いたいって言ったらどうする?』

 そんなことを言い出したのは今から何年前のことだろうか。
 戦えばいいんじゃねと適当な答えを返したら、弟は真面目な顔だった。
 俺にはその力があると言ったらどうすると、今までに見たこともない真剣な眼差しでこちらを見てきた。

『世界中の人間を救うなんてことは言わない。俺の目の届く範囲の人だけでも守りたい』

 強靭な意志をその眼に宿し、にこやかに笑う弟の姿は誰よりも頼もしく誰よりも男らしく誰よりも強く見えた。
 ――その言葉からちょうど半月後、弟は死んだ。
 預金を下ろすべく銀行に入ったところ、奪った金を持って逃げ出そうとした銀行強盗と鉢合わせ、取っ組み合いになり殺された。
 彼らの両親が警察から伝えられたのはそれだけだった。
 ショックが大きいからということで遺体を見ることはできなかったが、警察の話では首と胴が離れていたらしい。

 あっという間に犯人は逮捕され、葬儀も滞りなく終了。
 葬儀では両親は立つのもやっとなくらい憔悴しきっており、弟の彼女も半狂乱となりながら泣き叫び、弟の友人もただただ涙するだけだった。

 そんな中、彼だけはある違和感を抱いていた。
 たまたま弟が午後から授業がない時に、たまたま財布に金がなかったため、たまたま銀行に入ったところ、たまたま銀行強盗が逃げ出したところであり、たまたま弟と出くわし――殺された。
 事件や事故なんてものは「たまたま」が続くようなことかもしれない。
 本当に不幸な偶然が続いただけかもしれない。

 だが――だが、強盗は首を切り落とす必要性があっただろうか。
 切りつける、刺す、ではダメだったのだろうか。
 どうして一刻も早く逃亡しなければならない銀行強盗がわざわざ時間のかかるであろう殺害方法を選んだのか。

 彼は納得がいかなかった。
 だからこそ納得がいくまで調べ始めた。
 弟と都市伝説の関係に辿り着いたのは事件から八年の歳月が過ぎていた。
 都市伝説の存在を知ってから、情報は驚くほど簡単に集めることができた。
 弟の契約していた都市伝説、弟が所属していた〈組織〉と呼ばれる集団、事件当日の弟の本当の行動。
 単純に端的に結論を述べるのであれば、弟は契約者同士の戦いで負けて殺された――ただそれだけで済む話である。

 弟は都市伝説と契約して比較的すぐに〈組織〉に所属した。
 主な仕事は野良都市伝説の討伐。
 弟の契約した都市伝説の性質上、サポート役や捕獲役等には回ることは難しく、ほぼ前線に立っていたようだった。
 幾度か死線を彷徨ったこともあったらしいが、〈組織〉に所属する契約者の中では優秀だったらしい。

 今から九年前――弟が殺された日。
 弟が〈組織〉から与えられた任務は野良都市伝説『首なしライダー』の討伐。
 任務は順調に進み、黒服との打ち合わせ通り、人目のつかない場所へ誘導しての交戦。
 標的の『首なしライダー』を後一歩のところまで追い詰めたその瞬間、弟の頭は後方へ飛び、胴は二、三歩歩いてからその場に崩れ落ちた。
 ただそれだけで、弟の人生は終わった。
 殺したのは『首なしライダー』の契約者であり、〈組織〉に所属する契約者。
 殺すように指示したのは弟を担当していた黒服。
 弟に課せられた本当の任務は「『首なしライダー』の契約者に殺されること」であった。
 人気のない場所で本当は契約者を得ていた『首なしライダー』と交戦し、完全に油断したところで首なしライダーの契約者が繰るピアノ線で寸断された。
 全ては過激派に所属していた担当黒服の仕業。

 派閥争いに巻き込まれたことすら知らず、弟はただ殺された。

 殺された理由はどうでもよかった。
 穏健派、強硬派、過激派、中立派、日和見派――そのどれもが〈組織〉には変わりない。
 弟が殺されたのが派閥争いただそれだけのことなら、彼にとって黒服とは弟の仇――ただそれだけのことだ。
 だからこそ彼は黒服を忌み、黒服を嫌い、黒服を憎み、黒服を狩る。
 今宵、彼の前に立つ男も黒のスーツに身を包んでいた。

◆  □  ◆  □  ◆

「仕事帰りか、黒服さんよ」

 声をかけられたのは、夜の九時半を回ったところ。
 突如襲いかかってきた人の顔をした犬を蹴散らしてからすぐのことだ。

「……俺は〈組織〉の人間じゃない」
「嘘吐け、葬式じゃあるまいし真っ黒な服着る奴なんかいるわけないだろ」
「こいつは仕事の――」
「あー……言い訳させるような真似して悪かった。その侘びに、一撃で決めてやる」

 男の姿がぶれたと同時に聞こえた、踏み込みの音。
 流れるように左に逃げると、彼のいた空間を男の右フックが打ち抜いた。

「……逃げんなよ、避けてんじゃねえよ。黙って殺されろよ。弟を殺したテメエらにゃ命乞いする時間すら勿体ねえ!」
「誰の敵討ちをしようがかまわないが、何度人違いと言えばわかる? 俺は一般人だ」
「都市伝説の気配がする黒服の一般人ねえ。――テメエのナンバーは何だ? 二桁か三桁か、それとも一桁か?」

 誤解を解くための言葉は男の耳には届いていても聞く耳を持たない。
 もはや何を言っても無駄と思ったのか、男と距離を取る。
 敵討ちのために契約している都市伝説に合わせて鍛えぬいたのであろう。
 初撃から男の戦闘スタイルは近接攻撃型と判断した。
 男の契約している都市伝説がそれに準じるものだとしたら、戦える。自分の都市伝説を使わずに。

「逃げても無駄だぜ。たとえテメエがどんな能力持ってても、逃がしゃしねえ!」
「そうか」
「余裕ぶっこいてられるのも今のうちだ。――この星をぶっ壊す都市伝説の力、とくと見やがれ!」

 男が叫んだ瞬間、男の背後が爆発した。
 背後に停車していた車が文字通り、消し飛んでいた。
 爆破した車に気を取られたのは一瞬――しかし、その一瞬で男が眼前に迫った。
 驚異的な速度から繰り出される直突き。

「死ね!」
「……チッ!」

 反射的に左肩へと繰り出した蹴りの反動で横に飛ぶ。
 爆発の推進力を利用したのは理解できたが、男の能力自体がわからない。
 何らかの都市伝説と契約しているのは確かだが、その都市伝説が何なのか彼には見当がつかない。
 そもそも彼は己の契約している都市伝説以外の都市伝説の種類をほぼ知らない。
 誰もが知っている有名な都市伝説ですら数えるほどにしか知らないのだ。
 都市伝説との――特に契約者同士での戦いで相手の契約している都市伝説を知らないのは致命的と言える。
 しかし知らないのは都市伝説だけであり、男の戦闘スタイルはかつて戦ったこともある拳法であった。

「日拳か」
「へえ、今のでわかったのかよ」
「まあな」

 日拳――正式名称、日本拳法。
 昭和七年に考案された――防具を使用してではあるが――直接打撃制の武道である。
 武術の歴史としては浅い部類ではあるものの、突き、蹴り、投げ、極めの全てがありで、空手でいうところの自由組み手に近い。
 男の放った拳撃はその代表的な技とさえも言われる直突き。

 ある日、ある時、ある板で。
 いたってシンプルな疑問。恐らくは、ジョークのつもりで訊ねた疑問。
 それに対して書き込まれた解答。

◆  □  ◆  □  ◆

光の速さでケツからうんこ出したらどうなるの?

1 練習生(大阪府) 2007/04/07(土) 12:51:52.31 ID:KE08BO+y0
ツェペリみたいに飛べるの?



12 ドラム(三重県) 2007/04/07(土) 13:11:08.21 ID:XnFO39Ue0
リアルな話すると
多分お前の住んでる大阪が消し飛ぶ
光速でウンコほどの質量(約200~300グラム)の
物体が動いたら想像を絶する衝撃波が発生する
ましてそれが地表と激突したら地球がヤバイ

お前のウンコで地球がヤバイ

◆  □  ◆  □  ◆

 コピペに次ぐコピペ。
 まとめブログへの転載。
 どこかの誰かがつけたアスキーアート。
 スレを立てた本人も解答した本人も、誰もが想像しなかったであろう鬼籍のような悪夢。
『光の速さでケツからうんこ出したらどうなるの?』という名の都市伝説への昇華。

 男がどこで手に入れたのかはわからない。
 だが、男は誰よりも巧くその能力を使っていた。
 拡大解釈の逆――縮小解釈により脱糞を放屁という形で留めて地球を滅ぼす可能性を回避。
 地球を滅ぼす力を失った代わりに、縮小解釈で能力を低下させたことによって手に入れた爆発力と推進力が攻撃力を飛躍的に高めていた。
 加えて、男が復讐のために身につけた日本拳法による直突きとの相性もぴたりと合致。
 正確に測ったことはないが、初速は一五〇キロを越えていると自負している。

「日拳がわかったからどうなるもんじゃねえんだよ。どてっ腹に穴開けてやるよ!」
「無理だな」
「黙れ!」

 激高と同時の爆発。そして常人にはけっして出すことのできない速度で男が殺到する。
 これが常人なら、体のどこかに一撃入っただけでなすがままもなく殺されていたであろう。
 常人なら。
 彼は躱すことこそできなかったが、対応はしていた。
 男のたった一度の攻撃で男の使う拳法を見抜き、都市伝説の最大の弱点を見つけていた。

「カウンターに弱い」

 再度突進してきた男の直突きを躱し、懐に一撃。
 直進してくるのがわかっているならば、それに合わせて拳を叩き込めば済む――それだけのこと。
 肋骨を折った感触。
 都市伝説の力を一切使わずに己の力量のみで一五〇キロを越える拳を躱し、正確に己の拳が痛まないように調節した上で男に一撃入れたのだ。

「帰れと言っても聞かないんだよな」
「あ……たり、まえだ……」
「今までに何人黒服殺してようが知ったこっちゃないが、本当に〈組織〉の黒服だけか? 葬式帰りや結婚式帰りの人間に手を出してないだろうな」
「ああ? 知る、かよ……」
「困るんだよ。人死にが多ければ多いほど俺ら葬儀屋が忙しくなるからな」

 崩れ落ちた体勢を放屁で持ちこたえ、再度構えを取る。
 直突きが通用しないとわかった今、使うのは己の技術のみ。

 拳。
 拳拳。
 拳打掌。
 拳拳拳蹴。
 蹴蹴突拳拳。
 蹴突蹴拳拳拳。
 突掌掌拳拳拳打。
 掌掌拳蹴打掌拳蹴。
 打蹴突拳蹴拳蹴突蹴。
 全てが悉く往なされた。

「畜生……!」
「言っておくが俺は正義の味方でも何でもない、ただの葬儀屋だ。静かに暮らしたいだけなんだよ、俺は。だから俺に向かってくる奴はどんな手を使ってでも火の粉は払わせてもらう」

 今月だけで黒服と間違われること十四件。
 そのうち七件が〈組織〉と敵対している別勢力との戦闘、五件が〈組織〉に恨みを持つ契約者との戦闘、単純な人違いなどはわずか二件しかなかった。
 これに野良都市伝説との戦闘も加えると、多い月で二十件、少ない月で十件弱。
 ほぼ三日に一度都市伝説と戦闘している計算になる。
 中途半端に止めを刺さずにおくとその後何度も命を狙ってくることを経験上知っていた。
 だからこそ、彼は敵対したものには必ず止めを刺すし、決して逃がすような真似はしない。
 すなわち――今も。

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 吼えると同時に距離を取る。
 折れた両足を支えているものは意地、奮い立たせているものは憤怒、駆り立てているものは狂気。
 下腹部を中心に力が集う。
 勝てぬなら己を弾丸に、眼前の敵を道連れに。
 それでもなお届かぬなら、都市伝説の制約を解除して全てを巻き添えに。都市伝説『光の速さでケツからうんこ出したらどうなるの?』の力を十全に――否、全開に。

 だが――その力を解放する前に。己の命を捨てる前に。男の心臓は貫かれていた。
 距離を取ったと同時に動いた彼の五指によって。

「〈組織〉に復讐するのは勝手だが矛先間違えてどうすんだ、莫迦が」

 男の弟がどんな殺され方をしたのか、男の復讐心を駆り立てたのは何なのか、本当に復讐心からの行動だったのか。
 全ての疑問をその場に残し、彼は立ち去った。

 ――遠く離れた場所から、黒い服に身にまとった男がふたりの戦いを見ていたことを知らぬまま。

「計画は失敗。引き続き監視を続けます」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー