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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 葬儀屋と地獄の帝王-04

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第四話
【自画無惨】

 葬儀屋とは、その名の通り葬儀を生業にする者達である。
 大雑把に分けると、その町々で古くから葬儀屋を経営している地域密着型の葬儀屋と、自社の葬儀会館を持つ全国展開している葬儀屋の二種類があり、彼の務める葬儀屋は後者に当たる。
 会社そのものは冠婚葬祭全てを扱う大手互助会の会社であり、彼はその中で葬祭専門の部署に所属している。
 彼のように葬儀のみを執り行なう葬祭専門もいれば、営業に回り互助会の契約専門、女性スタッフのみで構成されている接待専門等の幾つかに分かれている。

 葬儀屋の仕事は依頼の電話から始まる。
 そこから病院に向かい、自宅への搬送、安置となる。
 遺体搬送のみなら搬送専門の業者へ外注もできるのだが、彼の上司の方針でそれをせずに彼らが直接搬送に向かっている。
 安置すると枕経となるため、一度彼らの事務所がある会館へと戻り、その後、遺族親族との打ち合わせとなる。
 場合によっては安置後すぐに打ち合わせを行なう場合もあるし、相見積書作成のために依頼前に打ち合わせをしていることもある。
 遺族との綿密な打ち合わせを終えた後にあるのが会場の設営だ。
 個人の葬儀屋とは違って葬儀会館を所有しているので、自社所有の会館で行なう場合はそれほど手間はとらないが、町内会館や自宅や寺等のように葬祭会館外での葬儀の場合は一から設営することになる。
 その意味で外での葬儀は面倒という理由で彼らの会社ではあまり好まれていない。
 彼らの会社から式場までの距離が遠ければ遠いほど、である。
 客相手には決して口に出すことはないが、遠距離の葬儀はババを引いたとまで言われる。
 今日の彼はババを引いたどころではなかった。
 明らかに葬儀の施行エリア外である淀元町まで祭壇を作りに向かいに行ったのはいい。
 祭壇一式を積んだトラックで淀元町にある小さな町内会館に到着し、祭壇を作り終えて後は抜かりがないかとチェックしていたところで会社からの一本の電話が入った。
 自称「他の葬儀屋に知り合いのいる」親族が口を出してきたため、結局別の葬儀屋に依頼されたので戻ってこいとのことである。

 葬儀が別の葬儀会社に流れてしまうこと自体は珍しいことではない。
 別の互助会の会員だったことが判明し安置後すぐに流れることもあるし、搬送時に不手際があったので流れることもある。
 ただ、打ち合わせまでして流れることは、少なくとも彼がこの職に就いてからは一度もない。
 深夜三時に搬送に走り、号泣する遺族を落ち着かせ、何故かその場ですぐに打ち合わせを始め、葬儀が重なっていたためにひとりで向かい、ひとりで設営し、キャンセルのために作ったばかりの祭壇を撤去。
 彼にしては珍しく苛立っていたのは仕方ないことであろう。
 加えて、都市伝説契約者ふたりに戦いを挑まれたとなれば尚更である。

「ヘイヘイヘイ、そこのあんた、契約者だな?」
「知らないとは言わせないよ~」

 肩より長い髪を後ろで束ねた男と眼鏡をかけたぼさぼさ頭の男。
 彼は知らぬことであるが、男ふたりは〈組織〉所属の契約者である。
 しかし彼は自分に向かって声をかけているのを承知の上で一瞥もくれずに歩き出した。
 さっさと学校町に帰り、今日の葬儀の手伝いをしなければならない。
 人手は多くて困ることはない。

「ちょ、シカトかよ」
「酷くない? ねえ、酷くない?」

 想定外の行動に流石に焦るふたり。
 〈組織〉に依頼されるままにフリーの契約者や野良都市伝説を始末しているが、自分達の存在など最初からなかったかのように扱われたのは初めてである。

「……何の用だ」
「あなたを殺してこいって依頼があってね~。悪いんだけど死んでくれないかな?」
「人違いだ」
「――ナオ、引きずり込んじまいな」
「オッケ~」

 ナオと呼ばれた眼鏡の男が何かを呟いた。
 瞬間、彼ら三人が立つ地面が揺れ――突如生じた穴に彼は飲み込まれた。

◆  □  ◆  □  ◆

358 名前:世界遺産 投稿日:2006/08/14(月) 15:48:55 ID:O2Q5Lui70
中学時代のパソコンの授業でインターネットを使った時
みんなが自分の好きな漫画や野球のページを見てる時に
自分だけこれみよがしに2chにつないでAAとかを周りに見せてたこと
しかも「このページって何?」って聞かれた時に「ヤバイ奴らの集会所みたいなもん」とか答えたこと
さらに友達に2chへの行きかたを教えるためにヤフーで2chって検索させて
でてきたリンクをクリックして2chのトップページが表示された瞬間に
そいつの耳元で「Welcome to Underground」ってささやいたこと

◆  □  ◆  □  ◆

 本人にしてみれば思い出したくもない黒歴史。
 しかし、今もなお本人の与り知らぬところで使われているかもしれないコピペ。
『Welcome to Underground』という名の都市伝説が存在したら当の本人はどう思うのかは定かではない。
 能力そのものは『Welcome to Underground』の名の通り、地下空間を形成して迎え入れる。
 本来はサイトの閲覧者をアングラサイトへ迎え入れるだけの能力だったのだが、拡大解釈によりアンダーグラウンドを現実に存在する異空間として形成させることに成功した。

「Welcome to Underground――ってね。ま、それだけじゃないんだけど」

 能力にどれだけの自信があるのかナオが嘲りの笑みを浮かべる。

「ここは『ヤバイ奴らの集会所みたいなもん』だからね~。気をつけてよ~?」

 野球場並みの広さの地下空間。
 彼ら三人しかいないはずの空間に、数多の人の気配が生じる。
 ある者は血に塗れたナイフを、ある者は両手に機関銃を、ある者は火炎放射器を。
 誰もが虚ろな目でゆっくりと彼ら三人を取り囲もうとしている。

「おいおいおい、相変わらず趣味悪いな」
「僕はタカみたいな攻撃力はないからね~。数で勝負なのさ~」
「量より質って言うだろ」

 タカと呼ばれた長髪の男がいつの間にか手にしていた銃を軽く放り投げる。
 彼の真横を通過したそれが、彼のはるか後方――地面に落ちた瞬間、眩い閃光と共に耳を劈くほどの破砕音が響いた。

「すげえだろ? 俺の他に数人の契約者しかいない、かなりレアな都市伝説なんだぜ?」

 タカの契約する都市伝説は彼が言う通り、契約者――というよりも都市伝説そのものの存在が数例しか確認されていない希少種。
ポロリ温泉伝統製品初の支援型モルスァ試合専用ガン』と呼ばれる、単純攻撃力では数ある都市伝説の中でも五指に入るとすら伝えられている幻の銃である。
 少ない情報をまとめた本、「ポロリに命を賭ける」によると元はポロリ温泉で古来から造られていたという。
 特筆すべきはその能力。
 射撃よりも投擲を目的として製作された、銃の本質を越えた銃。
 その恐るべき威力は彼の真後ろにたった今作られた小規模なクレーターが物語っている。
 クレーターを一瞥し、疲れたように溜息を吐いた。

「そんな気分じゃないんだが仕方ない――相手してやる」
「あれ、もしかして勝てるとでも思ってる~?」
「質と量が揃った俺らにたったひとりで? ありえなくね?」
「条件は満たした」

 それだけ告げると黒いスーツの懐に手を入れる。
 どんな都市伝説かと身構えるふたり。膨らみがないことから銃の類ではないが、必ずその可能性がないとは言い切れない。タカの持つ都市伝説のように必要に応じて出現できる都市伝説だったり、懐に手を入れる行為そのものが都市伝説召喚のスイッチの可能性も捨てきれない。
 警戒するふたりの想像とは裏腹に、彼が取り出したのはひとつのダイスであった。
 タカの『ポロリ温泉伝統製品初の支援型モルスァ試合専用ガン』はその名に支援型とあるように、様々な支援能力が付加されている。都市伝説の気配も察知できる。
 だから、おもむろに取り出したダイスをその場に転がされてもふたりは動かない。ダイスには何らかの能力ないと判断したからだ。

 転がる二十面体ダイスが止まる。
 出た目は――

「十二、だそうだ」

 彼らを取り巻く空気が変わる。――都市伝説の気配。
 都市伝説の気配がした瞬間にタカは投擲するつもりでいた。
 タカは動かなかったわけではない。動けなかった。
 標的たる彼が発している冷酷な殺意、地の底から感じられる圧倒的な存在感――そして恐怖。
 大地が揺れ、地割れが起こり、地の底から何かが出現してくるのがわかる。それでもふたりは動けなかった。逃げることはおろか、後ろに下がることも顔を背けることも目を逸らすことすらも許されない恐怖感。
 動くと死ぬ。
 ただそれだけしかなかった。
 そして現れた――都市伝説。
 彼らふたりは現れた都市伝説の名を知っていた。
 国民的な有名ゲーム。
 近年、リメイク版も発売されて当時プレイしていない者もプレイする機会が与えられた。
 そのゲームに出てくる中ボス、そしてその後発売された続編での隠しボス。

「まさか……エスターク!?」

〈地獄の帝王〉と冠される巨大なモンスターが、彼の傍らに現れた。

 彼の契約都市伝説『×ターン以内に斃せばエスタークが仲間になる』とは、リメイク前のゲーム機でどこからか広がった噂。
 仲間になればいいとの子供の希望であろうか。
 地域により、十五ターン以内であったり、十ターン以内であったり、五ターン、三ターンとターン数こそ様々ではあるが、全国各地で同時期に広まった。
 かくして子供達の話題になった希望や願望は都市伝説として確立するまでになった。

「十二ターン以内に斃せばエスタークはお前らの仲間だ」

 静かな宣言。
 契約者同士の戦いで己の能力を告げる必要はない。
 ナオとタカのふたりは絶対の自信があるからこそ己の能力を惜しげもなく彼に披露した。
 しかし、彼にとってエスターク召喚前のダイスとこの宣言は能力の披露ではない。彼が都市伝説との契約に当たってかけた制約である。

 一、召喚前に二十面体ダイスを投げ、出た目を「ターン数」として敵に宣言
 一、上記の行動を行なわない場合、契約は強制解除
 一、×ターン以内に斃された場合、契約は強制解除
 一、契約が強制解除された場合、契約者は死亡

 今現在、彼がエスタークにかけた制約。
 他の契約者のように「器」と表現するのなら、彼の器は十人並み、もしくはそれ以下である。
 彼の器に対してエスタークはあまりにも巨大すぎたため、彼は「飲まれる」ことのないように制約をかけた。

「久方振りの現世か……久しいな、タクよ」
「八ヶ月振りくらいだな」
「此度の敵はこやつらか?」
「ああ。思う様に暴れてくれて結構だ」
「ならば命じるが良い。従者に命じる王が如く」
「お前を仲間にはしたが従者にした覚えはない。――何度も言わせるな」

 彼の呆れたような言葉に、地獄の帝王と呼ばれ恐れられたエスタークはどこか愉快そうに笑みを浮かべた。
 そして彼は、たったひとつの、エスタークの自由意志に任せた作戦を口にする。

「『ガンガンいこうぜ』」

 彼の言葉にエスタークが双剣を振り下ろす。
 たったそれだけの動作だが、彼らを取り囲んでいた地下空間の住人の大半が剣の餌食となった。

「糞――!」

 エスタークに向け、銃を投擲しようと振りかぶった瞬間、右手を激痛が襲う。
 いつの間にか距離を埋めていた彼の手により、右手首が折られていた。

「残り十一ターン」

 反射的というよりも恐怖心から彼との距離を取る。
 一体何が起きているかがわからない。
 今までの彼の戦闘記録からは彼――江良井卓は体術に優れている契約者との情報しかなかった。
 彼らふたりを担当する黒服は強化系の都市伝説であろうと推測していたし、彼ら自身も同様の結論を出していた。
 どれだけ体術に優れていても閉鎖された地下空間に閉じ込め、数の暴力で疲弊させたところを一撃喰らわせれば終わる任務だと踏んでいた。
 今までの任務がそうであったように。
 しかし現実は違う。
 数の暴力はただの暴力で打ちのめされ、疲弊させる間もなく一撃を入れられている。

 ――勝てない。

 彼らの自信は、僅か一分足らずの間に崩れ去っていた。
 逃げ出そうとナオへ振り向いた瞬間、タカは帝王の一撃により圧死していた。
 ナオが最期に見たのは相棒の死ではなく、眼前へと真っ直ぐに向かってくる江良井卓の右脚であった。

「これで終わりか?」
「みたいだな」
「……タクよ、何やら剣呑な雰囲気を感じるぞ」
「今まで通りやるだけだ、関係ないさ」
「私の力が必要ならいつでも呼ぶがいい」
「感謝する。――リレミト」

 エスタークが地下深くへと消えるのを確認すると、彼は脱出呪文を口にして地上へと戻った。
 地上に戻った彼はトラックに乗り込み、学校町に向かってアクセルを踏む。
 どのような意図があって〈組織〉が彼を標的としたのかはわからない。
 だが、現時点では〈組織〉は江良井の敵にはならない。ナオとタカのふたりは依頼を受けたとは言ったが、一言も〈組織〉と口にはしていない。〈組織〉とは無関係にふたりが動いたと言い張ればそれ以上追求することもできない。
 しかし何があっても彼のスタンスは変わることはないだろう。
 葬儀屋の仕事は葬儀。
 つまり、今まで通りやるだけなのだから。
 今も――これからも。


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