「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪意が嘲う・悪意が消えたその後に-06

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
 朝比奈 秀雄は、元々は大門 秀雄と言う名前だった
 幼くして親を亡くし、ほぼ赤子であった弟と共に施設に預けられた
 そして、すぐに朝比奈家に引き取られ、唯一の肉親である弟とは引き離され、苗字が大門から朝比奈へと変わった

 秀雄を引き取った朝比奈家は、秀雄を、実子の競争相手として…当て馬として、引き取ったようなものだった
 子供を競争相手と競わせることで、より、優秀に育てようとしたのだ
 ……しかし
 結果的には、秀雄の方が、朝比奈家の実子より、格段に優秀であった
 本人の努力も合わさり、もはや朝比奈家の人間が、彼をもてあますまでになった
 疎まれている事を感じ取り、秀雄は高校卒業と同時に独立した
 優秀だったが故に大学の学費は奨学金で何とかなり、会社設立の資金も、すぐに出資してもらえた

 元からの才能
 与えられた環境
 そして、弛まぬ努力
 故に、朝比奈 秀雄は優秀なのである
 それは、悪魔の囁きから解放された今でも、変わらない



「朝比奈さん、「薔薇十字団」から、彼らの「外皮」に関する見積もり、届きました」
「…ん…………思ったよりは、かからないか……それでも、化け物五体分となると………ひとまずは、一体分だけ、サンプルをかねて用意させろ。そこから、残り四体分を用意させるかどうか、判断する」
「はい」

 朝比奈 秀雄は、今、小さな子会社を経営している
 表向きは貿易会社だが、実質、「薔薇十字団」の日本支部の一つとも言える
 社員は、何も知らない通常の社員が半分、「薔薇十字団」派遣のゴーレムが半分、と言ったところか
 秘書である鳥井や、いざと言う時の切り札であるヘンリーは例外だ
 都市伝説事件において、秀雄が自由に動かせる契約者は、鳥井とヘンリーの二人しかいない
 鳥井は戦闘向きではないし、ヘンリーとて、本来は戦闘向きの都市伝説契約者ではない
 そもそも、ヘンリーは本来「教会」の子飼いであり、そうそう無茶はさせられない
 この間プールで捕獲した変態共は、まだ調きょ…………矯正中だ
 まだ、自由に動かすには早い

 どちらに、せよ
 都市伝説絡みの主な仕事は、秀雄一人に任せられる事になる
 書類仕事ならば、鳥井に任せても問題ないはずなのだが、自分が全てを把握していないと納得しない秀雄は、彼女に任せきりにはしない
 その齢に似合わぬ体力を有しているからこそ、できる芸当だ
 通常ならば、倒れる仕事量である
 無茶な多重契約・無茶な契約解除による反動により、長時間の戦闘行為には耐えられぬ体になってはいるが、机仕事には関係なかったらしい

 と
 鳥井を一旦下がらせ、仕事を続けていると…内線が入った
 視線はパソコンの画面に向けたまま、応対する

「どうした?」
『あの、社長、お客様が…』
「……今日は、来客の予定はなかったはずだが」
『あの、社長の奥様を名乗る女性が』

 ………
 …若干の、頭痛を覚える

「………待たせておけ」
『あの、既に我々を振り切って、そちらに向かっt』

 ばんっ!

 …開いた扉に、小さくため息をつき

「……………こちらで応対しておく。気にするな」

 と、何も知らぬ部下に告げ、内線を切った

「おや、どうしたんだい。疲れた様子で」

 誰のせいだと思っている
 飄々としたマドカの様子に、再び小さくため息をつく

「……どうしたんだ」
「ほら」

 ずい、と
 差し出される包み
 ………

「…これは何だ」
「見てわからないかい。弁当だよ」
「………」

 いや
 それは、わかる
 わかるのだが

「…何故、お前がそんな物を」
「あんた、このところ忙しい、って言ってたろ?昼食を取る暇もないって」

 ……そう言えば、マドカの前で口を滑らせたような気がする
 迂闊だった
 今後は、もっと細心の注意を払わなければならない

「今までは、昼食は外で済ませるか出前だったんだろ?だから、こうやって忙しい時、昼食とる暇がなくなるんだよ」
「………確かに、そうだが」
「だったら、あたしが弁当用意してやれば、昼食とれるだろ?」

 …いや
 用意されても、食べるかどうかと言う問題があるのだが…

 ………
 待て

「……お前が作ったのか」
「そうだよ」

 ちらり、マドカの指先を見る
 バンドエイドが巻かれた指先
 …未だに、調理中に怪我をするのか、この料理ベタは

「………」

 小さく、ため息をついて
 秀雄は、マドカが差し出してきた包みを受け取った

「……休憩時間に、食べておく」
「ん、そうかい」

 満足そうに笑うマドカ
 相変わらず、明るく笑う女だ
 自分とは、大違いだ

 ……だから、こそ
 自分は、彼女に惹かれたのだろう…と
 秀雄は、今更ながらに自覚する
 目的の為に、利用するだけのつもりだった相手に惚れこむなど……己は、どこまでも馬鹿げていて、罪深い

 しかし、こんな罪深い自分を許し、愛し続けているこの女を
 ……同じく、自分を許してきた、息子を、娘を
 秀雄は、護りたいと
 幸せになってほしいと、強く願うのだ

 そして
 その、願いの為ならば
 秀雄は、一切の妥協をするつもりはない
 己の大切な存在の幸せな未来を、一歩も譲るつもりはないのだ

「……ひとまず、お前は帰れ…………ここにいても、邪魔だ」
「そう言う言い方はないじゃないかい……まぁ、ちょっとこれから獄門寺の家の奥さんと予定があるから、帰るけどさ」

 …冷たい言い方しか出来ない事は、自分でも嫌と言う程自覚している
 もっと、優しい言葉を吐けるようになれれば、どれだけマシだろうか

 それでも
 こんな自分に、愛想を尽かさぬマドカの姿に
 秀雄は、改めて申し訳なさを感じるのだった



 …前述した通り、朝比奈 秀雄は優秀な男である
 どんなに仕事が忙しくても、仕事が遅れる事など、ない

「朝比奈さーん」

 ……だが

「「薔薇十字団」から、「外皮」の見本の外見について、以下のサンプルから選んでくれと資料が届い……て………」

 もし、仕事が遅れる事があったとしたら

「あ、朝比奈さんっ!?おおよそ食べ物とは思えない物がみっしり詰まったお弁当箱を前に気絶しているなんてどうしたんですか!?朝比奈さーーーーん!!??」

 …それは、ほぼ十中八九
 妻の、愛情という名の毒…………否、スパイスが詰まった
 料理と呼ぶには料理への冒涜としか思えぬ、愛情料理が原因で秀雄が倒れた事しか、原因はないのであった








終われ





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー