某日、「首塚」本部にて
「将門様~、ちょっと、お話が…」
「うーーー!」
「うわっ!?」
「うーーー!」
「うわっ!?」
ぼすっ!!と
飛びついてきた小さな影を、翼は慌てて抱きとめた
翼に飛びついた幸太は、うー、と無邪気に翼を見上げている
飛びついてきた小さな影を、翼は慌てて抱きとめた
翼に飛びついた幸太は、うー、と無邪気に翼を見上げている
「あ…幸太、来てたのか?」
「うー!」
「うー!」
無邪気に擦り寄ってくる幸太の頭を、ぽんぽん、と撫でてやる翼
頭を撫でられ、幸太は嬉しそうに笑う
頭を撫でられ、幸太は嬉しそうに笑う
「くくっ、翼か。話とは?」
「あ…えぇと…」
「あ…えぇと…」
将門に問われ…翼は、少し困ったように幸太を見た
うー?と首をかしげる幸太
うー?と首をかしげる幸太
…幸太がいる前では、話しにくいことなのだろう、と察したのか
将門は、静かに翼を見つめる
将門は、静かに翼を見つめる
「急ぎの話か?」
「いえ…そう言う訳じゃあ、ないですけど」
「いえ…そう言う訳じゃあ、ないですけど」
幸太の頭を撫で続けながら、翼は小さく苦笑した
確認をとりたい事ではあるが…緊急の用、ではない
確認をとりたい事ではあるが…緊急の用、ではない
「すいません、話は、また後で……あ、酒のつまみになるもん、作ってきますか?」
「あぁ、我はいつでも話を聞いてやる。気にするでない………そうだな、何か、頼もうか」
「うー!僕も何か食べるー!うー!!」
「はは、じゃあ、幸太が食べれるもんも、何か作ってやるよ」
「あぁ、我はいつでも話を聞いてやる。気にするでない………そうだな、何か、頼もうか」
「うー!僕も何か食べるー!うー!!」
「はは、じゃあ、幸太が食べれるもんも、何か作ってやるよ」
うーうー、元気に主張してくる幸太にも、そう告げて
翼は、一度、将門の部屋を出た
翼は、一度、将門の部屋を出た
てちてちと、幸太は将門の元に戻る
にじにじと、その大きな膝の上に、当たり前のように座った
にじにじと、その大きな膝の上に、当たり前のように座った
「うー、ステーキのおにーちゃんの料理、楽しみー!」
「あぁ、そうだな」
「あぁ、そうだな」
将門に頭を撫でられ、嬉しそうな幸太
その姿は、歳相応の無邪気な子供だ
その姿は、歳相応の無邪気な子供だ
「お前は、翼の事が好きだなぁ?」
「うー!好きー!ステーキのおにーちゃん、大好きー!」
「うー!好きー!ステーキのおにーちゃん、大好きー!」
うーうーうー
無邪気に、元気に主張する幸太
将門の膝の上で、上機嫌だ
無邪気に、元気に主張する幸太
将門の膝の上で、上機嫌だ
「ステーキのおにーちゃんだけじゃない。僕は、「首塚」の皆が大好き。うー!」
「くくっ、そうか」
「うー!…………………だから」
「くくっ、そうか」
「うー!…………………だから」
…不意に
その表情が、酷く大人びたものへと、変わる
急激なその変化に、しかし、将門は驚いた様子もなく…それを、当たり前のように、受け止める
その表情が、酷く大人びたものへと、変わる
急激なその変化に、しかし、将門は驚いた様子もなく…それを、当たり前のように、受け止める
「…だから………僕は、「首塚」の皆に、幸せで居て欲しい……なるべく、大変な目にあってほしくない、苦しい目にも、あってほしくない」
「……そうか」
「「首塚」の皆は……こっちの僕の事も、受け入れてくれる。僕を否定しないでくれる………大切な人達だから」
「……そうか」
「「首塚」の皆は……こっちの僕の事も、受け入れてくれる。僕を否定しないでくれる………大切な人達だから」
…幸太は、二重人格、と言う訳ではない
普段の無邪気な歳相応の幸太も、今のような、どこか大人びた幸太も…どちらも、同じ幸太だ
しかし、幸太は、その二つを明確に別物と判断して使い分けていた
意識して、無意識のうち、に関わらず、確かに、明確に別物と判断しているのだ
普段の無邪気な歳相応の幸太も、今のような、どこか大人びた幸太も…どちらも、同じ幸太だ
しかし、幸太は、その二つを明確に別物と判断して使い分けていた
意識して、無意識のうち、に関わらず、確かに、明確に別物と判断しているのだ
「…………僕の、ママは。鮫守の血に耐えられなくて、僕とパパから逃げちゃった。でも、「首塚」の皆は違うから」
つ、と
幸太が、手を伸ばす
何かを掴んでいるような仕種をして、そして、それを落とすような仕種をする
幸太が、手を伸ばす
何かを掴んでいるような仕種をして、そして、それを落とすような仕種をする
----ぽちゃん、と
空間に、波紋が広がった
空間に、波紋が広がった
幸太の視界が、ガラリと入れ替わる
真っ暗な、上も下もない世界
その中心に、幸太が独りぼっちで座っているような、錯覚
真っ暗な、上も下もない世界
その中心に、幸太が独りぼっちで座っているような、錯覚
神の領域
神々がすれ違いあう、神々の交差点
人間が決して足を踏み入れる事叶わぬはずの、そこに
幸太の意識が、当たり前のように存在する
神々がすれ違いあう、神々の交差点
人間が決して足を踏み入れる事叶わぬはずの、そこに
幸太の意識が、当たり前のように存在する
「………この、罪深い、神喰らいの血を強く受け継いだ僕が………居る事を、許される場所なんだ」
「神喰らいの外道御三家」
……鮫神家は、そう呼ばれる血筋の一つ
……鮫神家は、そう呼ばれる血筋の一つ
鮫神家の先祖は、とある都市伝説の契約者だった
全てを見通す力を手に入れた先祖は、その力を完全に使いこなし
………故に
この神の領域へ踏み入れる事に成功した
全てを見通す力を手に入れた先祖は、その力を完全に使いこなし
………故に
この神の領域へ踏み入れる事に成功した
けれど
それでえたのは、満足感ではなく
ただ、失望と絶望だけ
それでえたのは、満足感ではなく
ただ、失望と絶望だけ
そして、ただの人間が、神の領域へと踏み入れた罪なのだろうか
その血筋には、時折、先祖返りのように…その罪人のように、神々の領域へと、踏み入れる事ができる存在が生まれてしまうようになった
そう、この、鮫神 幸太のように
その血筋には、時折、先祖返りのように…その罪人のように、神々の領域へと、踏み入れる事ができる存在が生まれてしまうようになった
そう、この、鮫神 幸太のように
赤子の頃から、当たり前のように、幸太はこの領域に入り込んでいた
当たり前のように、ただの人間には見えぬものが見え続けた
当たり前のように、ただの人間には見えぬものが見え続けた
……それ故の、傍観者
未来までもを、見通して
わかりきっている未来などつまらぬ、と言うように、物事に積極的に化かわら労としない
未来までもを、見通して
わかりきっている未来などつまらぬ、と言うように、物事に積極的に化かわら労としない
……それ故の、波紋の作り手
わかりきっている未来などつまらない
わかりきっている未来などつまらない
だから、それに波紋を作る
水面に石を落とすかのように波紋を作り、その未来が変わるかもしれない可能性にかける
水面に石を落とすかのように波紋を作り、その未来が変わるかもしれない可能性にかける
幼い頃から、そうやって振舞い続けた
無気味に思われようとも、構わなかった
それが、罪深い血を濃く受け継いでしまった己の運命なのだと、諦めきって
無気味に思われようとも、構わなかった
それが、罪深い血を濃く受け継いでしまった己の運命なのだと、諦めきって
しかし
その諦めは、あっさりと砕かれた
「首塚」の者達は、幸太を気味悪がらなかった
幸太の存在を、受け入れてくれた
その諦めは、あっさりと砕かれた
「首塚」の者達は、幸太を気味悪がらなかった
幸太の存在を、受け入れてくれた
幸太は、それが嬉しくて
だから、幸太は波紋を作り続ける
見えている先の未来が、自分の大切な人達にとって、苦しみを当たるものならば
見えている先の未来が、自分の大切な人達の命を奪うものならば
波紋を作り、良い方向へと転がる事を期待する
だから、幸太は波紋を作り続ける
見えている先の未来が、自分の大切な人達にとって、苦しみを当たるものならば
見えている先の未来が、自分の大切な人達の命を奪うものならば
波紋を作り、良い方向へと転がる事を期待する
「……僕には、波紋を作るので精一杯………大門の血筋の人間のように、サイコロの目の1を突きつけられても、6を上にして叩きつける、なんて芸当は、できない」
…ぽちゃん
神々の領域に、石を落とすように波紋を作り続ける幸太
真っ暗な世界に、それはどこまでも広がり、消える
真っ暗な世界に、それはどこまでも広がり、消える
「…………ねぇ?この世界を生み出して、世界を形作り続け、この世界の住人の運命を紡ぎ続ける、意地悪で残酷で残虐な神々共?」
つ、と
幸太は、真っ暗な世界の上を仰ぐ
まるで、そこを俯瞰する何者かを、睨みつけるように
幸太は、真っ暗な世界の上を仰ぐ
まるで、そこを俯瞰する何者かを、睨みつけるように
「…お前達は、いつだって意地悪で。僕らに、残酷で残虐で残忍な運命を強制して………僕らが苦しんでるのを、ゲラゲラ笑って見下してるんでしょ……?……僕らは…お前達なんかに、負けない。お前達の人形では、終わらないよ?」
ぽちゃん
波紋が生まれる
波紋が消える
何度も何度も、それを繰り返す
波紋が生まれる
波紋が消える
何度も何度も、それを繰り返す
世界を波紋で埋め尽くし
そこを作り上げる存在の邪魔でも、するように
そこを作り上げる存在の邪魔でも、するように
「お前達が、僕らに残酷な運命を突きつけようとも………僕らは、負けるもんか…………お前達が望んだ通りに、お前達の悪魔の脚本の通りに………今、学校街には、かつての強き者達の血筋が濃く現れている……でも、それは僕らにだって、好都合なんだよ?」
それは、挑戦状
この、神々の領域を行き交う神々よりも、さらに上
この、神々の領域を行き交う神々よりも、さらに上
……世界そのものを生み出す存在達
創造神達と、その創造神達が紡ぎだす物語の観客達への、挑戦状
創造神達と、その創造神達が紡ぎだす物語の観客達への、挑戦状
「……お前達と、残酷な物語を望む観客達……お前達が望む未来なんて、僕は認めない………僕は、お前達の物語に波紋を作る、お前達の好きなようにはさせない…………」
憎悪すら篭った眼差し
世界を俯瞰する存在達を、睨みつける
世界を俯瞰する存在達を、睨みつける
「………僕らの苦しみを、不幸を、絶望を。お前達の酒の肴には、させないからな」
ぽちゃん
ぽちゃん、と
波紋が生まれ、生まれ、広がり…………--------
ぽちゃん、と
波紋が生まれ、生まれ、広がり…………--------
…ぽん、と
優しく、頭を撫でられる
優しく、頭を撫でられる
「…?うー…?」
顔をあげる
将門が、じっと幸太を見詰めてきていた
将門が、じっと幸太を見詰めてきていた
…現実世界では、数十秒すら、時間は流れていない
神々の領域と、現実世界とでは、時の流れが違うのだ
神々の領域と、現実世界とでは、時の流れが違うのだ
幸太が意識をそこへと入り込ませていたのは、ほんの一瞬
しかし、将門はそれを見逃さない
しかし、将門はそれを見逃さない
「…………お前だけが、それを続ける必要はない」
「…うー…」
「お前は、我の部下だ………お前が苦しむと言うのならば、それも、我が請け負おう」
「……うー、でも……」
「…うー…」
「お前は、我の部下だ………お前が苦しむと言うのならば、それも、我が請け負おう」
「……うー、でも……」
俯く幸太
だが、将門は、その頭を撫で続ける
だが、将門は、その頭を撫で続ける
「…我ら「首塚」は、お前のような幼子に、辛い宿命を一人で背負わせたりせぬわ」
「……でも。これは、「鮫守」の血を引く僕の罪だから」
「そんな事は知らぬ………そんな罪など、誰かが勝手に、お前の家系に押し付けたものだろう?………そんなもの、我が叩き壊してくれるわ」
「……でも。これは、「鮫守」の血を引く僕の罪だから」
「そんな事は知らぬ………そんな罪など、誰かが勝手に、お前の家系に押し付けたものだろう?………そんなもの、我が叩き壊してくれるわ」
………あぁ
初めて、出会った時から
この人は、そう言ってくれたから
初めて、出会った時から
この人は、そう言ってくれたから
だから
きっと、自分はこの人についていこう、と思ったのだろう
きっと、自分はこの人についていこう、と思ったのだろう
………かつての、己の先祖のように
…足音が聞こえてくる
翼が戻ってきたのだと、感じ取る
翼が戻ってきたのだと、感じ取る
「将門様、幸太、お待たせ」
「…!うー!美味しそうな匂いー!!」
「っとと!?こら、料理持ってる時に飛び掛ってくるなっての!?」
「…!うー!美味しそうな匂いー!!」
「っとと!?こら、料理持ってる時に飛び掛ってくるなっての!?」
うーうー!
先ほどの、大人びた様子など消えうせて
元の、無邪気な子供の顔に戻った幸太
その様子に、将門は笑って
先ほどの、大人びた様子など消えうせて
元の、無邪気な子供の顔に戻った幸太
その様子に、将門は笑って
………っふ、と
盃の中に生まれた、波紋に
その酒を、ぐいと飲み干したのだった
盃の中に生まれた、波紋に
その酒を、ぐいと飲み干したのだった
fin