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連載 - ケモノツキ-coa1

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ケモノツキ_CoA編_1話_異世界への訪問者



 CoAのとある町。そのメインストリート。
 武器屋、防具屋、道具屋などが軒を連ね、人の往来は活発。
 さながら祭のような様相をかもし出しているが、この世界ではいたって普通の光景だ。

 そして、その通りを歩く、とある一団がいた。
 黒いスーツの女性を先頭に、妙齢の女性、青年、少女がその後に続き、青年の背には、少年が負ぶさっている。

「…ね、ねえタイガ。僕はもう大丈夫だから降ろしてもらっても……」
「うるせぇ黙ってろ。」
「う、うん、ごめん……。」

 タイガと呼ばれた青年は、少年の言葉にぶっきらぼうに返し、黙々と歩き続けている。
 それを見て、隣を歩く少女がクスクスと笑い、女性は優しげな瞳で微笑んでいる。

 ここで、時間軸を数十分巻き戻す。

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   ・

 



「これが…CoAの世界。」
『わー、いかにもファンタジーって感じ。』

 鎧を纏い武器を持った人間、人外、有象無象が歩き、露天や商店が立ち並ぶ町。
 日本では…否、現代では見ることが出来ない光景が、悠司の目の前に広がっていた。
 その光景を呆然と眺める悠司の後ろから近づく、一つの黒い影。
 悠司が気配に気付いて振り返ると同時に、その人物は悠司に声をかけた。

「橘野悠司、お待ちしておりました。」
「あ、はい。ええっと、エイダ…さん?」
「『さん』は不用です。いつものように『エイダ』と呼んで下さい。」

 都市伝説『死を招くカーナビ』であるエイダ。
 それが、橘野悠司の担当黒服A-No.218と全く同じ外見で、悠司の目の前に立っていた。

「な、なんだか気が引けるなぁ…。黒服さんを呼び捨てにしてるみたいで…。」
『エイダの容姿は私のものをトレースしておりますが、気にしないでください。』

 どこからか響く、黒服の声。
 CoAに入る前に『CoAの外から常時監視を行う』と、黒服が言っていたことを思い出した。

『気にするなって言われても…ホントにそっくりだよねぇ。』
『黒服との外見上の違いが見当たりませんね。』

 外見は黒服と全く同じだが、どことなく黒服と違う。
 悠司たちは、そんな奇妙な感覚を覚えていた。

「これからCoAについて色々と説明しますが、その前にこれをつけてください。」

 エイダが差し出したのは、片耳だけのイヤリング。

「イヤリング…だよね。片方だけ?」
「「通話のイヤリング」というアイテムです。片割れをつけた相手と、遠距離での会話が可能となります。」

 その言葉に悠司はエイダの顔を見あげる。
 ポニーテールによって露出されたその耳には、悠司が渡されたものと同じイヤリングが揺れていた。
 不慣れな手つきでイヤリングを耳に付けながら、悠司はエイダに問いかけた。

「えっと…遠距離の会話が可能ってことは、一旦離れ離れになるってこと?」
「いえ。あなたの都市伝説との会話に応用できないか、という推測です。実際に何か喋ってみていただけますか?」
『あーあー、こほん。こんにちわ、エイダ!』
「こんにちは、ミズキ。どうやら問題なく作用しているようですね。」
『なるほど。言葉を直接伝えられるのは便利ですね。』
「わからないことがあれば適宜聞いてください。そちらの声は聞こえておりますので。」
『じゃあ早速聞くが、この変な模様は何だ?』
「え、タイガ?模様って何のこと?」
『主、“こちら側”を見ていただけますか。』

 タマモの言葉に悠司は目を閉じ、自分の中に意識を向ける。
 悠司の心の中――真っ白な空間の中で、三匹の獣が、青く光る魔法陣を囲んでいた。

「魔法陣…?僕は何も感じないけど…。」
「では、それに関係しそうな説明を先に行いましょう。」
「え、これが何かわかるんですか?」

 その言葉に、悠司は目を開いてエイダに向き直った。

「CoAというゲームにおいて、橘野悠司のジョブは「サマナー」。従者を使役し、『召喚』と『憑依』による戦闘を行います。」
「えっと、『憑依』はいつもやってるアレだよね?『召喚』って…僕がタイガたちを?」
「はい。おそらく橘野悠司の中にある魔法陣は、それに関係するものだと思われます。」
『この中に入れば、俺自身が外に出られるってことか?』
「実際にやってみないとわかりませんが、おそらくそういうことだと思われます。」
『それって主様と一緒に冒険できるってコト!?じゃあ一番手ミズキ、行きますっ!』

 言うが早いか、ミズキは魔法陣の中へ飛び込んだ。
 同時に魔法陣が光を放ち、ミズキの姿が悠司の中から消失した。
 その直後、悠司の目の前に魔法陣が展開し、そこから真っ白な猫が現れた。

 しばし硬直する、悠司と白い猫。

「み、ミズキ…だよね?」
「……主様だーーーー!!!」

 真っ白い猫は一瞬にして少女の姿に変わり、悠司に抱きついてきた。

「ホントに主様と一緒になれた!あぁもう幸せだよぉ!」
「そ、そんなにはしゃがなくても、寝るときいつも会ってるじゃないか。」
「それとはまた別なの!ああ、主様暖かいよぉ…主様柔らかいよぉ…主様の匂いがするよぉ…。」

 悠司は苦笑しつつも、自分の胸に顔を埋めているミズキの頭を撫でてやる。
 そして二人はふと、撫でる手、撫でられた頭に違和感を覚えた。

「ん?」
「あれ?」

 二人がその違和感を確認するより早く、悠司の目の前に魔法陣が二つ展開する。
 そしてそこから、人型をとったタイガとタマモが姿をあらわした。

「…てめぇらは何いちゃついてんだ。」
「仲が良くていいじゃないですか。…あら?」

 タマモはミズキをじっと見ると、次いで隣に立つタイガを見上げた。
 そして最後に、自分の頭に手を伸ばした。

「これは…。」

 ミズキとタイガも“ソレ”に気付き、自らの頭に手を伸ばした。
 頭部の“ソレ”に触れると、続いて自らの腰に手を伸ばした。
 そして、腰についた“ソレ”にも触れた彼らは、お互いを見回した。



  彼らの頭と腰には、いつもの彼らには存在しないもの――すなわち、獣耳と尻尾が生えていた。



「なんか生えたーーー!」
「なっ…おい黒服!これ消す方法さっさと教えろ!」
『容姿に関しては、それがこの世界の仕様です。諦めてください。』
「ふむ……。こういうものだと割り切るしかありませんね。…少々気恥ずかしいですが。」

 ぴこぴこふりふりと、自らの狐耳と9つの尻尾を揺らすタマモ。
 タイガと違い、既にこの状況を受け入れているようだ。

「えっと…みんな可愛いと思うよ…?」
「んー…主様がそう言うなら、あたしはこのままでいいやー。」
「ふざけんな!こんな格好で歩けるかッ!俺は主の中に戻るぞ!!」
「ちょ、ちょっとタイガ待っ……」

 言うが早いが、タイガの足元に魔法陣が展開し、その姿が消えた。
 それと同時に悠司の意識が引き込まれ、タイガが表に出てきた。

「…へっ、いつもみてーにこうやって主の体で動けば、あんな格好に…は……。」

 絶句するタイガの目に留まったのは、近くにあった防具屋の表に置いている姿見。
 そこには先ほどのタイガと同じく、犬耳と尻尾が生えた悠司の姿が映っていた。

「…これがこの世界の仕様という奴ですか。」
『ま、まさか自分のこんな姿を見ることになるとは思わなかったよ…。』
「大丈夫!主様もかわいいよ!」
『ええっと、ありがとう…でいいのかな?』
「…もういい。俺は中に戻る。あとはてめーらで勝手にやってろ。」

 直後、タイガが中へ戻り、悠司が外に出てくる。
 そして容赦なく襲い掛かる筋肉痛に、カクンと膝を付いた。

「い痛…ッ。こ、これはいつもと…変わらないみたい…ッ!」
「むー……。あ、そっか。こうやって外に出られるなら、あたしたちが主様の代わりに戦えばいいじゃん!」
「この世界においては、それが一番いいかもしれませんね。」
『俺は出ねーぞ。あんな格好で歩けるかっての。』
「ちょっとー。任務なんだから、あんたも手伝いなさいよね、馬鹿犬。」
「タイガの扱いは後で考えるとして…黒服、それにエイダ。主を休ませたいのと、説明の続きをお願いしたいのですが、適当な場所はありますか?」
「了解しました。では宿屋へ向かいましょう。ナビゲートしますので、付いてきてください。」
「は、はい。わかりまし…ッ!」

 立ち上がろうとした悠司は、激痛に声を詰まらせた。

「橘野悠司、歩けますか?」
「大丈夫、主様?あたしが支えて……。」

 そこまで言いかけてミズキは、イタズラを思いついた子供のようにニヤリと笑った。

「ハイ提案ー。馬鹿犬が主様をおんぶすればいいと思います!」
「ああ、それはいいですね。ではタイガ、こちらに出てきてください。」
『な…ふざけんなッ!何で俺がそんなことを……!』
「折角の機会ですし、たまには主の負担を肩代わりしてあげなさい。」
「あんたのせいなんだから、責任取りなさいよねー。」
「い、いいよタイガ。これくらいいつものことだからっ…!っ痛……。」
『……あぁぁぁぁぁあ畜生ッ!!』

 悠司の目の前に展開する魔法陣。
 かくして冒頭にある、犬耳尻尾を付けた青年におぶられる少年、という図が完成した。

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 時間軸を冒頭に戻す。

 とまれ、宿屋に到着した一行。
 その一室に通され、悠司はタイガの背からベッドへと居場所を移した。

「ありがとう、タイガ。もう戻っても大丈夫だから。」
「……いや、いい。」
「えっ、さっきまであんなに嫌がってたのに?」
「このイラツキ……俺自身の手で発散しねぇと気が済まねぇ…。」

 拳を握り締め、歯を食いしばり、今にも襲いかからんばかりの雰囲気をかもし出している。

「た、タイガ、落ち着いて、落ち着いて……。」
「カルシウム足りてないんじゃないの?骨食べなよ骨。」
「ミズキは煽らないでッ!?」
「ああ?てめぇで発散してやろうか雌猫?」
「タイガも乗らないでッ!?」
「その拳は向けるところが違うでしょう?エイダ、説明の続きをお願いします。」
「はい。しかし、CoA世界の説明は実際に体験した方が早いと思われますので、先に任務の説明をしましょう。黒服、お願いします。」
『では、任務の説明を行います。今回の任務は『Cup of Aeon』、通称CoAに発生中の異常調査、それに伴う犠牲者の救出、および異常の解決です。今後の具体的な行動内容は……』

 ―――悠司たちのCOAの旅は今、ようやく入り口の門をくぐった。
 ―――この先、悠司たちは誰と出会い、何を見つけ、どんな結末を迎えるのか。
 ―――それはまだ、誰にもわからない。



ケモノツキ_CoA編_1話_異世界への訪問者】    終

 




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