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連載 - 拝戸直しの人殺し-15

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【拝戸直の人殺し 第十五話「殺人鬼の暴走」】

「今日はサンジェルマンからの指令で貴方の監視をすることになったF-No.315です。宜しくお願いします。」
「ええ、こちらこそ宜しくお願いします。」

今日はサンジェルマンに頼まれて『死神』の使い方の練習かたがた鵺の討伐を行うことになっていた。
なんでも鵺は正体不明の都市伝説だそうで、その正体が解る能力を持っていないと倒せないらしい。
俺の『生き物ならなんでも眼で見てその構造を理解した上で自在に改造・破壊』が出来る体質はどうも鵺の討伐に役に立つらしかった。
俺が今立っているのは2000年の番屋町。俺はまだ動物の解体で我慢してた頃かな?
F-No製の簡易タイムワープ装置で俺は10年前に来ていたのだ。

「今回の討伐対象である“鵺”は都市伝説の中でも『原典』と呼ばれる本家本元の存在です。
 ここ十数年、完全に行方を眩ませていていまだ発見することも出来ませんでした。」
「ふむ、だから過去に戻って奴を殺そうと?」
「そういうことです。」
「空間移動とか、時間移動とかってさ。
 あれは使いすぎるとタイムパラドクスが起きるから不味いんじゃないのか?」
「はい、普段はそうなのですが……。
 今回は事情が少し異なりましてね。
 もう既にタイムパラドクスが起きているようなのですよ。」
「既に起きている?そんな物観測できるのか?」
「ええ、我々F-No.の技術にかかれば……不可能ではありません。」
「不可能ではない、ね。」
「とにかく、時間を移動した後に、鵺と何人かの人間を殺して頂かなくてはならないのです。」
「ああ、その任務も含めて俺の存在が必要だったと。」
「ええ、あまり志願者のいない仕事な物で。」





人殺し。
タイムパラドクスが起きているならばそれはきっと生きてはいけない人間が居ると言うことだろう。
そのせいで現在に不都合が生じている。
人殺しとは。
人殺しとは、芸術とはもっと非生産的な物であるべきだ。
現在を良くするための人殺しなど人殺しではない。
サンジェルマンはこんなもので俺の芸術に対する欲求を沈められると思っているのだろうか?
だとしたら彼のパトロンとしての存在意義を考え直す必要があるな。

「……さん、……戸さん?」
「ん?」
「ああ、何か考え事でもしてたのですか?」
「いや、ちょっと妹のことを思い出していて。」
「おや、貴方も妹さんが?私にも妹が居ましてね。
 F-No.333、美実って言うんですが生意気な妹で困りますよ。」
「あはは、俺の所の妹もなかなか聞かなくて、最近は落ち着きましたけどね。
 ただまあ既婚の男性に入れ込んでいるのが心配ですけど。」
「あー、うちの妹は三角関係ですね。女だらけの三角関係。」
「うわー、それは心配だ。」

ぶっちゃけあんな妹どうでもいい。
上田明也という異常と関わった時点で奴の命運はもう定まっているのだ。
言語で心を規定するあの異常者は、言い表せぬ心を言語化することで心の価値を叩き落とす。
なんとなくそれが周囲に伝わるから警戒されるのだ。
そんな奴の近くに居て気持ちが良いというなら居れば良い。
そして死ね。言語還元することが可能な小説の登場人物と同じ記号になって死ねば良い。
あいつはきっと俺より危険だ。
そんな奴が好きなら好きなまま好きに死ねば良い。






「それじゃあそろそろ行きましょうか。」
「ええ、この時代の鵺は何処に居るんですか?」
「えっと……、この先の公園で弁当喰ってますね。ちなみに人間の姿をしているそうです。」
「成る程成る程」

そう言って俺とNo.315は夜も更けた10年前の学校町を歩く。
看板もどこか懐かしい物ばかり。
この頃は空港の警備も甘かったんだよな……。

「……あれです。」

小声で囁くNo.315
公園の真ん中でコンビニ弁当をぱくついてる妙齢の女性。あれが鵺らしい。
なんだか高級ブランドの服に身を包んでいる割には貧乏くさいというか……。
俺が鵺のことをマジマジと見つめている間にNo.315は連絡装置で現代のF-No.達と通信を始めていた。

「ああ、こちら315。対象を発見した。
 これから戦闘に移る、報告以上。」

そう言うとNo.315が俺の方に再び小声で話かける。

「私の『フライングヒューマノイド』で先行して攻撃を仕掛けます。
 相手は何百人もの黒服を罠に嵌めて葬っている危険な都市伝説なので注意してくださいよ。」
「解ってますよ。」
「それじゃあ…………。」
「ええ、まずはお前が死ね。」

まず死神の能力と俺の異常の合わせ技でF-No.315の『魂』を見つけ出す。
そしてそれを、掴み、握りつぶす。







声すら立てずにF-No.315は青白い炎と共に灰に変わってしまった。
都市伝説が魂を直接破壊されると皆こうなるのだ。
人間だと死体が残る。
俺は、……私は315の簡易タイムワープ装置を奪い取ると、鵺に声をかけた。

「お嬢さん、そこのお嬢さん。」
「あたしはもうお嬢さんなんて呼ばれる歳じゃないぞ。」
「そうですか、そんなのどうでも良いです。」
「それよりも良いのか?そこの黒服は仲間じゃないのか?」
「勘違いしないでくださいよ。化け物の仲間は化け物じゃない、人間です。
 化け物同士には利害による連帯と裏切りしかない。」
「あんたは自分を化け物だと言うのか。」
「ああ、私は化け物だ。」
「ふむ、面白い奴だな……。」
「お嬢さん、この後少しご一緒しませんか?
 貴方も人間を狩らないと駄目な生き物なんでしょう?」
「あたしは食えれば何でも良いよ。人間は食材の一つだ。」
「オッケー、じゃあ……そこの民家で一つどうでしょう?」
「……まあ良かろう。」

俺と鵺は連れだって適当な民家に押し入る。
一家五人、おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、そして子供が一人。

「あたしは年寄りの肉の方が好きだからそっちから行かせてもらうよ。」
「私は子供の目の前で親を切り刻むのが最高の芸術の一つと信じてますので、そちらから。」

私と鵺は二手に分かれた。






作業自体は思ったより速く終わった。
私は大人二人を喋れないように処理してから適当にバラして繋ぎ直して不格好な人形を作り、子供の部屋に飾る。
この手の作業が速くなったのはフランケンシュタインの製作技術を身につけたからだろうか。
学んで良かったフランケンシュタインの作り方。

「おい、そこの少年。」

部屋を血で真っ赤に塗りたくってからベッドで寝てた少年を起こす。
手足はシーツで縛ってもうぐるぐる巻にしてある。
少年は起きるなり醜く泣き叫んだ。
まだギリギリ生きている両親の姿を見ると恐怖のあまり股間をぬらしていた。
ああ、素晴らしい。
これでこそ殺人だ。
サンジェルマンに与えられる養殖の獲物では絶対に味わえない恍惚。
たまらないね。

「なんだ、まだやっているのか?」
「おやおや鵺ちゃん、お食事は終わりかい?」
「子供の泣き声がうるさいからこっちに来たが……。」
「ああ、丁度良いやこれからが面白いんですけど見ていきますか?」
「んー……。」

泣いている子供と私のオブジェを交互に見比べる鵺。
彼女は次の瞬間、思いも寄らぬことを言った。

「なあ、そこの子供は見逃してやっちゃくれないか?」
「え、やだ。」

当然断った。





「頼むよ、偶然出会った仲だろ?何も子供にここまで酷いことする必要無いじゃないか。」
「人食いのくせに良く言いますね。」
「私は子供だけは見逃す主義なんだ。可哀想だから。」
「こいつは私の獲物です。」
「ああ、そうか。」

ならば奪う、と言って鵺は突然俺に襲いかかった。
どういうことだ?
こいつの行動原理がまるで解らない。
俺は咄嗟に身を躱して逆に鵺の左腕を切り落とす。

「――――正体不明の私を切った!?」
「やめてくださいよ。鵺さん。私は元々貴方みたいな正体不明を殺せる異常な体質なんですよ?」
「……ああ、サンジェルマンの手の者か。
 またあたしの前に……。異常者共め、今度はあたしから何を奪う気だ……。」
「何を言っているんだお前?」
「もう二度とあの子は……!もう二度とあの子を殺させは……!
 ああ憎き頼政め、お前と同じ異常者共は“妾”が全員……!」

こいつ、狂っている。
訳がわからないが今のこの女の目は、明らかに狂人のそれだ。
話し合いが通じない相手には逃げるのが一番正しい選択である。
俺が咄嗟に部屋から逃げ出すと、さっきまで私がいた場所に雷が落ちた。

「この子だけは!この子だけは誰にも殺させないぞ!」

遠くから声が聞こえる。
どうやら俺を追ってきては居ないようだ。
あちこちの家にもの凄い音と共に雷が落ちている。






しばらくすると雷が落ちた家から火が出始めた。
丁度季節は冬。
空気は乾燥し、風は強く吹いている。
小さな火はあっという間に大きな炎に変わって家々を渡り歩き始めた。

「おいおいおい……、なんだよこりゃあ。」

芸術もへったくれもない大量虐殺。
まったくもって美しくない。ハッキリ言って萎えた。
俺はタイムワープ装置に付いた通信装置を破壊するとそそくさとその場を離れることにした。
これで俺は自由だ。
好きなように殺せる。
好きなように芸術が出来る。
“私”として自由に生きていける世界。
さあ、思う存分に殺してやるとしよう。

まずは適当にサンジェルマンのくれたリストの人間でも殺していくか。

いやいや、その前に腹ごしらえだ。

俺はフラフラとコンビニに向かった。
【拝戸直の人殺し 第十五話「殺人鬼の暴走」fin】

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