【電磁人の韻律詩52~Let’s Go Akebi Makoto!~】
「大切な人も守れずに、俺は今まで何のために戦ってきたんだ!」
目が覚めて、最初に叫んだ。
時計を見る、自分の無力が恨めしい。
一二時半。
恋路はまだ気絶している。
傷一つ無い。
髪の色がまた黒に戻っている。
訳がわからない。
でも今は関係ない。
急いで雪絵を助けに行かないと。
俺は恋路を病院に連れて行くべくバイクに跨る。
よくも俺の大切な人々にこんなひどいことを……。
誰だか知らないが奴は絶対に許さない。
時計を見る、自分の無力が恨めしい。
一二時半。
恋路はまだ気絶している。
傷一つ無い。
髪の色がまた黒に戻っている。
訳がわからない。
でも今は関係ない。
急いで雪絵を助けに行かないと。
俺は恋路を病院に連れて行くべくバイクに跨る。
よくも俺の大切な人々にこんなひどいことを……。
誰だか知らないが奴は絶対に許さない。
ガレージは丈夫だったためか、まだ壊れずに残っていた。
ガレージから恋路を運べる大きめのバイクを出す。
ガレージから恋路を運べる大きめのバイクを出す。
「これだな……。」
キーを箱から出した瞬間、首筋に冷たい物が触れた。
雨漏りしていると恋路が言っていたことを思い出した。
雨漏りしていると恋路が言っていたことを思い出した。
「帰ったら、直さないと……。」
恋路をバイクに乗せ、俺もバイクに跨ろうとした時、異変は起きた。
銃声。
窓ガラスが割れてガレージの机が壊れる。
窓ガラスが割れてガレージの机が壊れる。
「ほらほら!さっさと出てきなさいよ!其処にいるのは解ってるのよ!」
さっきの顔を踏まれた子供か。
恐らくこっそりと俺たちにトドメを刺しに来たのだろう。
恋路をガレージの奥に隠す。
今の俺は只の人間だ。
普通に戦えばあいつには勝てない。
それくらいは解っている、それが解らないほど馬鹿じゃない。
恐らくこっそりと俺たちにトドメを刺しに来たのだろう。
恋路をガレージの奥に隠す。
今の俺は只の人間だ。
普通に戦えばあいつには勝てない。
それくらいは解っている、それが解らないほど馬鹿じゃない。
「出てこないなら……。」
少女はグレネードランチャーを取り出す。
このガレージごと吹き飛ばすつもりか!?
恋路を庇うようにして彼女を抱きかかえる。
このガレージごと吹き飛ばすつもりか!?
恋路を庇うようにして彼女を抱きかかえる。
不味い、本当に打つ手が無い。
せめて、せめて都市伝説の力があれば……!
俺は何も出来ないのか?
恋路無しじゃ只の人間、正義の味方を夢見るだけの痛い子供なのか?
悔しい、苦しい、憎らしい、己の無力が、人々の悪意が、とにかく憎い。
この憎しみを晴らす力が、正義を貫く力が、俺は欲しい!
せめて、せめて都市伝説の力があれば……!
俺は何も出来ないのか?
恋路無しじゃ只の人間、正義の味方を夢見るだけの痛い子供なのか?
悔しい、苦しい、憎らしい、己の無力が、人々の悪意が、とにかく憎い。
この憎しみを晴らす力が、正義を貫く力が、俺は欲しい!
「テキゴウリツ90%オーバー、ケイヤクヲカイシシマス」
真後ろから何かが俺の頭を貫く。それと同時にガレージは大爆発を起こした。
炎の中、恋路をお姫様だっこしたまま俺は立ち尽くす。
バイクには何時の間にか骸骨を象った鎧が装着されている。
バイクには何時の間にか骸骨を象った鎧が装着されている。
「何よ……。」
懐から龍之介さんのマスクが落ちる。
さっきの戦いで目を保護する部分が両方とも割れてしまった。
さっきの戦いで目を保護する部分が両方とも割れてしまった。
「何なのよ……。」
俺は改めて恋路をバイクに乗せる。
俺はもう顔を隠す機能をほとんど失ったマスクを付ける。
いくら壊れても正義を表すのにはなんら支障ない。
俺はもう顔を隠す機能をほとんど失ったマスクを付ける。
いくら壊れても正義を表すのにはなんら支障ない。
「あんた一体」
マスクの壊れた部分を補うように骨の仮面が生成される。
骨の仮面からは大量の細い骨が伸びてきて絡まり合い、俺の身体を包んでいく。
まるで……鎧だ。
骨の仮面からは大量の細い骨が伸びてきて絡まり合い、俺の身体を包んでいく。
まるで……鎧だ。
「あんた一体何なのよ!」
名前も知らない都市伝説。
何故この能力が使えるようになったのかは解らない。
契約書が意志を持って人を選ぶなんて聞いたこともない。
まあこれがなんでも良い、俺の願いにこいつは応えた。そして俺が誰かと言えばこう答えるしかない。
何故この能力が使えるようになったのかは解らない。
契約書が意志を持って人を選ぶなんて聞いたこともない。
まあこれがなんでも良い、俺の願いにこいつは応えた。そして俺が誰かと言えばこう答えるしかない。
「只の、人間だ。」
「くっそ!」
少女の二丁拳銃が火を噴く。
俺の身体に銃弾が直撃する、しかし痛くもかゆくもない。
まっすぐ歩き続ける。
まっすぐ歩き続ける。
骨の鎧はまるで元々身体の一部だったように軽い。
俺の身体に銃弾が直撃する、しかし痛くもかゆくもない。
まっすぐ歩き続ける。
まっすぐ歩き続ける。
骨の鎧はまるで元々身体の一部だったように軽い。
「だったらこうすれば……キャッ!」
指先から骨の鎧を銃弾のように弾き飛ばして銃弾を撃ち落とす。
恋路にはもう指一本触れさせない。
恋路にはもう指一本触れさせない。
まだまっすぐ歩き続ける。
まっすぐ歩き続ける。
まっすぐ歩き続ける。
銃弾が弾かれる音が響き続ける。
まっすぐ歩き続ける。
まっすぐ歩き続ける。
銃弾が弾かれる音が響き続ける。
「来るな!来るな!来るな!来ないで!
嫌だ来るな来るな来るな来るな来るな!」
嫌だ来るな来るな来るな来るな来るな!」
俺は少女の両肩をしっかりと捕まえる。
そのまま持ち上げ肩の骨を握りつぶし、地面に叩き付ける。
少女の顔が恐怖に染まった。泣かないなんて、痛くないのだろうか?
でも関係ない。こいつは悪い奴だ。化け物だ。
人を傷つける化け物は殺す。
完膚無きまでに叩きつぶして捻りつぶして殺す。
そのまま持ち上げ肩の骨を握りつぶし、地面に叩き付ける。
少女の顔が恐怖に染まった。泣かないなんて、痛くないのだろうか?
でも関係ない。こいつは悪い奴だ。化け物だ。
人を傷つける化け物は殺す。
完膚無きまでに叩きつぶして捻りつぶして殺す。
馬乗りになって思い切り彼女の腹や胸を殴る。
抵抗しているようだが知らない。
抵抗しているようだが知らない。
「止めて!助けて!」
「そう言った人間をさ、お前は殺したんだろう?」
「そう言った人間をさ、お前は殺したんだろう?」
髪を引っ張り、首を締め付ける。
殴った時の返り血が目の下について雫のように落ちる。
殴った時の返り血が目の下について雫のように落ちる。
「私は何も悪いことして無いじゃない!」
「お前は!悪いことしたんだよ!」
「お前は!悪いことしたんだよ!」
ポタリ、ポタリ、赤い雫が彼女の顔に降り注ぐ。
ずっと降り注ぐ。
それは何時の間にか赤じゃなくて、透明な色になっていた。
ずっと降り注ぐ。
それは何時の間にか赤じゃなくて、透明な色になっていた。
「なんで殴りながら泣いてるのよ!?
訳解らない……ケホッケホッ!」
「良いからさっさと言えよ。」
「なに?私たちのアジトを言えとでも言うの?」
「悪いことしたらまず言うことがあるだろうが!」
「……へ?」
「悪いことしたら、まず最初にごめんなさいだろうが!
なんで言えないんだよ!」
訳解らない……ケホッケホッ!」
「良いからさっさと言えよ。」
「なに?私たちのアジトを言えとでも言うの?」
「悪いことしたらまず言うことがあるだろうが!」
「……へ?」
「悪いことしたら、まず最初にごめんなさいだろうが!
なんで言えないんだよ!」
俺は、明日真は少女の脚を殴り、折った。
「ごめんなさいは?」
「ご、ごめんなさいなんて……」
「ご、ごめんなさいなんて……」
骨で鋭くなっている指で額を切り裂く。
「か、顔はやめて!」
「悪人なら男も女も関係ないぜ。
ごめんなさいって言えよ、それで許す。
誰だって反省して、他人の為に生きていけるんだ。
だからそれで許す。」
「だって、それ以外何も私は……。」
「知らない。言え。」
「う……。」
「悪人なら男も女も関係ないぜ。
ごめんなさいって言えよ、それで許す。
誰だって反省して、他人の為に生きていけるんだ。
だからそれで許す。」
「だって、それ以外何も私は……。」
「知らない。言え。」
「う……。」
もう一撃、顔に拳を入れる。
耐えきれずに少女は泣き始めた。
耐えきれずに少女は泣き始めた。
「嘘は駄目だぞ?
今は俺をだませるかも知れない。
でもその嘘が発覚してみろ…………。
死ぬより恐ろしい目に遭わせてやる。
地獄の果てまで追いかけて、見せしめにしてやる。
ほら、泣いていたら解らないだろう?」
今は俺をだませるかも知れない。
でもその嘘が発覚してみろ…………。
死ぬより恐ろしい目に遭わせてやる。
地獄の果てまで追いかけて、見せしめにしてやる。
ほら、泣いていたら解らないだろう?」
ごめんなさい、と彼女は言った。
俺の視界は何故か滲んでいた。
理由は解っている。でも今はそれしかできない。
そんな自分の無力さに泣いているんだ。
俺の視界は何故か滲んでいた。
理由は解っている。でも今はそれしかできない。
そんな自分の無力さに泣いているんだ。
「行くぞ、チビっ子。」
「ヒィ!」
「とりあえず恋路を病院に届けてからお前をとりあえずこの状況で信頼できる人に預ける。
どうせその怪我なら動けないだろ。」
「こ、来ないで!」
「びびるなよ、もうお前は悪人じゃないんだ。ゆっくり罪を悔い改めればいいさ。
お前……名前は?」
「花音……。」
「ああ、雪絵の妹とか言っていたな。」
「な、なんであんた御姉様の本名解ったのよ……?」
「え?適当に呼び名にしてただけだけど?」
「ヒィ!」
「とりあえず恋路を病院に届けてからお前をとりあえずこの状況で信頼できる人に預ける。
どうせその怪我なら動けないだろ。」
「こ、来ないで!」
「びびるなよ、もうお前は悪人じゃないんだ。ゆっくり罪を悔い改めればいいさ。
お前……名前は?」
「花音……。」
「ああ、雪絵の妹とか言っていたな。」
「な、なんであんた御姉様の本名解ったのよ……?」
「え?適当に呼び名にしてただけだけど?」
花音は驚いたような顔をしている。
奇妙な偶然だ。
俺は携帯電話で太宰先生を呼んで恋路を彼女に預けた。
彼女はもはや慣れた様子で彼女の様子をみると言ってくれた。
俺は無力だ。
誰かに助けて貰わないと結局戦えない。
でも今は助けて貰えている、だから出来る限り自分だけで戦う。
全部終わったら宏也さんに全部話して謝ろう。
奇妙な偶然だ。
俺は携帯電話で太宰先生を呼んで恋路を彼女に預けた。
彼女はもはや慣れた様子で彼女の様子をみると言ってくれた。
俺は無力だ。
誰かに助けて貰わないと結局戦えない。
でも今は助けて貰えている、だから出来る限り自分だけで戦う。
全部終わったら宏也さんに全部話して謝ろう。
バイクを飛ばすと目的地にはすぐ着いた。
目の前の扉を何度かノックする。
目の前の扉を何度かノックする。
「おい所長!居るか!」
「あ?今所長は居ないぞ……、ん?
おい明日真!その姿はなんだ!」
「あ?今所長は居ないぞ……、ん?
おい明日真!その姿はなんだ!」
次に向かった先は笛吹探偵事務所だ。
レイモンが骸骨の鎧に包まれたままの俺の姿を見て驚いている。
レイモンが骸骨の鎧に包まれたままの俺の姿を見て驚いている。
「なんでお前が狂骨の契約書を手に入れている!
それは私が…………ああ、そういうことか。お前が適合者か。」
「これか?なんかすっごい馴染むんだけど……。
それよりこいつ頼む。組織にも言えない用事なんだ。」
それは私が…………ああ、そういうことか。お前が適合者か。」
「これか?なんかすっごい馴染むんだけど……。
それよりこいつ頼む。組織にも言えない用事なんだ。」
ラプラスの魔の能力で全ての事情を把握したらしい。
便利なものだ。
そう思ったらレイモンが皮肉気に笑った。
心を読まれたらしい。
便利なものだ。
そう思ったらレイモンが皮肉気に笑った。
心を読まれたらしい。
「解った、この娘は私たちが身柄を預かっておくよ。」
「ありがとう。」
「それと餞別だ。」
「ありがとう。」
「それと餞別だ。」
USBメモリのような物を投げ渡される。
水晶で出来た不思議なUSBメモリだ。
水晶で出来た不思議なUSBメモリだ。
「どうしても倒せない奴が出てきたら、そいつを使え。
使い方は解るか?」
「身体に差し込めば良いんだろう?」
使い方は解るか?」
「身体に差し込めば良いんだろう?」
俺は身体から先ほどまで俺の中に入っていた狂骨とやらの契約書を取り出してレイモンに見せる。
これもUSBメモリのような形をしている。
彼女は安心したように頷いた。
これもUSBメモリのような形をしている。
彼女は安心したように頷いた。
「飲まれそうになったらすぐに抜き取れよ。」
「了解、礼を言う。」
「了解、礼を言う。」
俺は二つのUSBメモリをライダースーツのポケットに入れる。
「ところでさ、俺を襲った奴の居場所って解る?」
「うん……、検索終了。
今は郊外の潰れた遊園地に居るようだ。
一人じゃ危ないし、彼方くらいなら貸し出せるぞ?」
「いいや、俺一人で行く。」
「まあそう言うのも知ってたんだけどさ。
……お前一人じゃ勝てないぞ?」
「恋路が追いつくよ。恋路に電話して場所教えておいて。」
「……ったく、女の子に無茶させるなよ。だからお前はもてないのだ。」
「良いよ、あいつだって立派な正義の味方だもん。
俺信じてる。」
「彼女は彼女で今辛いみたいだぜ?」
「じゃあ雪絵助けて一緒に慰める。」
「解った、もう何も言うまい、行け。」
「うん……、検索終了。
今は郊外の潰れた遊園地に居るようだ。
一人じゃ危ないし、彼方くらいなら貸し出せるぞ?」
「いいや、俺一人で行く。」
「まあそう言うのも知ってたんだけどさ。
……お前一人じゃ勝てないぞ?」
「恋路が追いつくよ。恋路に電話して場所教えておいて。」
「……ったく、女の子に無茶させるなよ。だからお前はもてないのだ。」
「良いよ、あいつだって立派な正義の味方だもん。
俺信じてる。」
「彼女は彼女で今辛いみたいだぜ?」
「じゃあ雪絵助けて一緒に慰める。」
「解った、もう何も言うまい、行け。」
悪い、と言って俺は事務所を出る。
時刻は既に午前二時。
迷惑をかけてしまった物だ。
俺は再びバイクを走らせる。
三十分後、俺はレイモンの言う遊園地に到着した。
バイクを降りて門を開く。
時刻は既に午前二時。
迷惑をかけてしまった物だ。
俺は再びバイクを走らせる。
三十分後、俺はレイモンの言う遊園地に到着した。
バイクを降りて門を開く。
「おい其処のガキ!なにしてやがる!」
「ん?もしかして新入りか?壊れた髑髏のマスクなんていかにも創造主が好きそうだ!」
「ん?もしかして新入りか?壊れた髑髏のマスクなんていかにも創造主が好きそうだ!」
二人の男が俺の目の前に立つ。
「おい新入り!機能と題名を答えろ!」
「…………。」
「おいこら聞いてんのかお前!」
「…………。」
「おいこら聞いてんのかお前!」
男達は俺の左右に立つ。
こいつらもあの男の仲間か。
だったら容赦はしない。
こいつらもあの男の仲間か。
だったら容赦はしない。
「機能は正義断行、題名は……スカルマン。」
俺を挟み込むように両側に立つ男を殴り飛ばす。
「そして俺の名前は明日真!
正義の味方、太宰龍之介の後継者だ!」
「侵入者か?」
「侵入者だ。」
「ばらばらにしてやろうずぇー」
正義の味方、太宰龍之介の後継者だ!」
「侵入者か?」
「侵入者だ。」
「ばらばらにしてやろうずぇー」
高らかに名乗ると同時にあちらこちらから大量の都市伝説が現れる。
腸の露出した物、心臓だけが肥大化した物、全身に目の憑いている物。
百体を超える化け物達。この数だ、普段なら臆していただろう。
腸の露出した物、心臓だけが肥大化した物、全身に目の憑いている物。
百体を超える化け物達。この数だ、普段なら臆していただろう。
「行くぞ!」
でも不思議だ、今なら負ける気がしない。
【電磁人の韻律詩52~Let’s Go Akebi Makoto!~fin】