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連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛-07a

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 森の中を、巨大な蜘蛛…ウンゴリアントが進んでいく
 その背中に、イクトミと暦の姿があった
 自分達の足で歩いて進むよりも、ウンゴリアントの背に乗って移動した方が早いのだ

「……なぁ」
「んー、なぁに?」

 「支配の首輪」でもないと、こんなのの背中乗れないよなー
 ってか、持ってても、こんな高レベルモンスターに使うなんてそうとう無茶だよなー、とのんきな考え事をしていた暦
 そんな暦に、イクトミが声をかける

「…あいつから受け取ったもん、とっと捨てた方がいいぞ」
「……?この、パレットナイフとペインティングナイフ?」

 サイレスから手渡された、「レアード複葉機」の木片と金属から作られたパレットナイフとペインティングナイフ
 それを手に暦が首をかしげると、そうだ、とイクトミが頷いてくる

 ……刹那
 イクトミに見えていた、「色」が……かすかに、変わったような、錯覚
 陽気な嘘の色の下地、人を超越したものに流れる薄墨色が……濃くなったように、暦は感じた

「それは、確実にお前を危険に巻き込む。お前だけじゃない、お前に関わる者、全て。家族も友人も何もかも、全て巻き込む危険性がある」
「…そこまで、危ない感じはしないけどなー。むしろ、しっくり手になじむし」
「馴染んでるのが問題なんだよ」

 小さくため息をつくイクトミ
 それにシンクロしたように、ウンゴリアントもため息をついたのか、その背中が揺れた

「それと、できりゃあ、あいつから聞いた話…異常(アブノーマル)の話も、都市伝説の話も、何もかも、忘れた方が幸せだ」
「いやいや、そう簡単に忘れられるもんじゃないと思うけどー」
「望むなら、完全に忘れさせる事くらいはできるさ、俺達は」
「わーい、メン・イン・ブラックの記憶消去みたーい。体に金属片は埋められたくないなー」
「それはグレイだろ。グレイ製メン・イン・ブラックだろ。何も埋め込まないっつの」

 緊張感の一切ない暦の言葉
 …それに、わずかにイクトミは救われる
 この緊張感のなさのおかげで、イクトミの抱える「神」の側面が、完全には浮き上がらずにすんでいた
 己の「神」としての側面を見られる事は、イクトミにとって苦痛であるから

「…もっとも、お前が、舞台の背景じゃなくて………物語の舞台に。血塗られた、いつ、悲劇を強要されるかわからない。惨劇と悲劇に満ちた喜劇の舞台の登場人物になりたいって言うんなら……それを止める権利は、俺にはない。いつ、周囲の人間が巻き込まれて傷つくか、殺されるかわからない………そのリスクを背負う覚悟が、本当にあるなら、な」
「惨劇と悲劇は、喜劇じゃないんじゃないかなー?」
「………喜劇なんだよ、連中にとっちゃ」

 天を見上げ、小さく悪態をついたイクトミ
 何かへの憎悪が、一瞬だけ、溢れ出す

「お前らだって、喜劇とかコントの舞台で、不幸を笑う事はあるだろ?」
「あー、まぁね。バナナの皮で滑って転んだりとか、そう言う不幸を笑ったりするねー」
「今時そこまでベッタベタなギャグはアメリカのギャグと大阪のギャグくらいだと思うんだがそれはさておき。そう言う可愛いレベルの悲劇じゃねぇよ………血塗られた、欝欝しい、俺達やお前らにとっちゃ笑い事にならねぇ惨劇と悲劇をも……あいつらは喜劇と捕え、笑って見下ろしてくるんだよ。そして、その舞台監督は、嬉々としてその舞台を作りやがるのさ」
「…流石に、それは嫌かなぁー」

 小さく苦笑する暦
 パレットナイフとペインティングナイフを、じっと見つめる

「まぁ、捨てる気になったら言いな、いつでも処分してやる。忘れたくなったら、いつでも忘れさせてやる」
「んー………まぁ、考えておくよ」

 がさがさ、がさがさ、進み続けるウンゴリアント
 …やがて、視界が開けた
 森の中の、広場のような空間
 …その、中央に
 暦達が乗ってきたのと同じ、ウンゴリアントが数体、集まっていて
 ………その群れの、中央に
 一人の、女性の姿が見えた
 黒く長い髪に、黒い瞳、黒いスーツ姿の、女性
 無表情で座り込んでいるその様子は、人形のようにも見える

 …女性が、暦達に気づいたようだ
 静かに、顔を上げる

「エーちゃん、お待たせ」

 そう言って、イクトミがウンゴリアントから飛び降りた
 エーちゃん、と呼ばれたその女性はイクトミの言葉に静かに答える

「…問題ありません。あなたは、指定した時刻通りに、戻ってきましたから」

 男性のような、女性のような、年齢すら不詳の、はっきりとしない声
 感情が一切伴っていないその声は、まるで機械での合成音のようにも聞こえる

「……彼女は?」
『U-No.13が接触を計った相手だ。こっちの世界に取り込まれた被害者でもある。保護してきた』
「………そうですか」

 「組織」の暗号言語での言葉に、女性は頷く
 暗号言語故、暦にはその内容が理解できず、小さく首をかしげていた

「とりあえず、エーテルが作ったエリアまで、彼女を送りたい。あそこは安全地点だからな」
「…そうですね……しかし、イクトミ。S-No.444が、あなたに報告する事がある、と、あなたを探していました。あなたは、先にそちらに向かうべきでしょう」
「は?………アンサーの餓鬼が、俺に?報告書あげりゃいい話だろ」
「…直接話したいと、そう言っていました」

 でもなぁ、と、イクトミはウンゴリアントに乗ったままの暦を見上げる
 暦は、相変わらずの緊張感のない様子で、イクトミに告げる

「大丈夫だよー、そっちの女の人に送ってもらえばいいんでしょー?何て言うか、おさわりとかセクハラの危険性はなくなるだろうし」
「え、俺、そこまで信用0?」
「それにさー、話相手になってほしい人って、きっとその人でしょー?送ってもらいながら、その話相手になればちょうどいいんじゃないかなー?」

 暦の言葉に、イクトミは暦と女性を交互に見つめ…
 ……仕方ない、と言った様子で、小さくため息をついた

「…それじゃあ、悪い、エーちゃん。彼女を頼む。何かあったら、すぐに駆けつけるから」
「わかりました。責任を持って、彼女を送り届けます」

 悪い、と小さく呟いて
 イクトミの姿は、小さな蜘蛛に変わって、消えた

 女性が、暦が乗っているウンゴリアントに近づく
 ウンゴリアントはその身をかがめて、彼女が背中に乗りやすいようにした
 背に乗り、女性が暦の隣に並ぶ

「……はじめまして。「組織」A-No.0、オール・アクロイドです。あなたを、エーテル・エリオット管轄下の安全地点まで、送り届けます」
「うん、よろしくー」

 黒尽くめの格好だけど、まっさらだなぁ、と
 そんな事を考えながら、暦は女性…オール・アクロイドの言葉に、頷いたのだった





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