C-No.572と、あの尋問を担当した、C-No.572よりも幼い外見の黒服から、報告を受ける
本来ならば、C-No.572を通して聞けばいい話だが、一刻も早く、尋問結果を知りたかった
本来ならば、C-No.572を通して聞けばいい話だが、一刻も早く、尋問結果を知りたかった
「……麻痺と毒物か」
「そろそろ効果が出るはず、と本人は言ってました」
「治療した際に、ついでにそっちも癒されてる可能性はあるが…とりあえず、伝えておく。暗示に関しちゃ、今回のショックで解けてるか……解けてなくとも、簡単に解除できるだろ」
「そろそろ効果が出るはず、と本人は言ってました」
「治療した際に、ついでにそっちも癒されてる可能性はあるが…とりあえず、伝えておく。暗示に関しちゃ、今回のショックで解けてるか……解けてなくとも、簡単に解除できるだろ」
小さく、ため息をつく天地
昨年まで、そこに所属していた人間の言える事ではないが…相変わらず、過激派強行派はろくでもない
…このように考える事ができるようになったのも、自分が穏健派に所属するようになったからだろうか、とぼんやりと考える
いや、正確には……ハンニバルの一件の後から、か
一歩引いて、強行派や過激派の行いを見られるように、なったから
昨年まで、そこに所属していた人間の言える事ではないが…相変わらず、過激派強行派はろくでもない
…このように考える事ができるようになったのも、自分が穏健派に所属するようになったからだろうか、とぼんやりと考える
いや、正確には……ハンニバルの一件の後から、か
一歩引いて、強行派や過激派の行いを見られるように、なったから
「現場の処置は?」
「あ、えっと…D-No.444さんが担当してます、「立つ鳥後を濁さず」の契約者さんが」
「あ、えっと…D-No.444さんが担当してます、「立つ鳥後を濁さず」の契約者さんが」
天地の言葉に、少しつっかえつつ答えるC-No.572
なるほど、あれが処置したならば、問題あるまい
なるほど、あれが処置したならば、問題あるまい
「ただ、その……まだ、事件の「犯人という事にする」者は、用意できてないそうです。その……死体の損傷具合からして、猟奇殺人犯を用意する必要があるので…」
「……猟奇殺人という事にすると、マスコミが余計に騒ぐ。死体の損傷…特に、獣に食い散らかされた痕を修正して、通常の殺人事件にしておけ」
「……猟奇殺人という事にすると、マスコミが余計に騒ぐ。死体の損傷…特に、獣に食い散らかされた痕を修正して、通常の殺人事件にしておけ」
戸惑いがちなC-No.572の言葉に、天地は事務的に返す
…こう言う点では、まだ、C-No.572は、都市伝説事件の処理に、うまく対処ができていない
昨年の秋…「夢の国」事件の際に黒服化した、まだ、若い黒服
そろそろ一年が経とうとしているのだから、そろそろ慣れるべきなのだろうが……まぁ、本人の性格的なものもあるのだろう
…こう言う点では、まだ、C-No.572は、都市伝説事件の処理に、うまく対処ができていない
昨年の秋…「夢の国」事件の際に黒服化した、まだ、若い黒服
そろそろ一年が経とうとしているのだから、そろそろ慣れるべきなのだろうが……まぁ、本人の性格的なものもあるのだろう
「あの、私はどうすればいいんですか?」
報告に来ていた、尋問を担当した少女黒服…確か、「サイコメトリー」に飲まれた存在のはずだ…が、声をあげた
天地は、そちらにもやや事務的に告げる
天地は、そちらにもやや事務的に告げる
「引き続き、あの黒服から情報を引き出せ。「組織」禁則事項 268に引っかかってる連中の情報を洗い出してまとめろ。A-No.666の息がかかった連中を、一気に縛り上げられるかもしれない」
「わかりました」
「C-No.572は、まずはこれをG-No.1に報告。それと、死体の修正と、「犯人」の用意の手続き、もっと急いでおけ」
「は、はい!」
「わかりました」
「C-No.572は、まずはこれをG-No.1に報告。それと、死体の修正と、「犯人」の用意の手続き、もっと急いでおけ」
「は、はい!」
ぱたぱたと、サイコメトリーの黒服から受け取った報告書を持ち、駆けていくC-No.572
…途中で転んで、報告書をぶちまけないといいのだが
変なところでどんくさいし
…途中で転んで、報告書をぶちまけないといいのだが
変なところでどんくさいし
「……?どうした?」
と
携帯電話を取り出そうとしていた天地は、サイコメトリーの黒服からの視線に気付いた
少々、むっとしたような表情を向けられる
携帯電話を取り出そうとしていた天地は、サイコメトリーの黒服からの視線に気付いた
少々、むっとしたような表情を向けられる
「…C-No.572のおねーちゃんを、あんまり苛めないでくださいね?」
「苛めてない。「組織」の黒服である以上、これくらいの事にはさっさと慣れるべきだろ」
「そうですけど…」
「苛めてない。「組織」の黒服である以上、これくらいの事にはさっさと慣れるべきだろ」
「そうですけど…」
…わかっている
A-No.666の行いの、あまりの卑劣さに、恐ろしさに
C-No.572が恐怖を、畏怖を感じて、仕事が鈍っている事実が
……そのような行いに対し、何も感じるな、というつもりはない
だが、この程度で仕事が遅れるようでは、「組織」ではやっていけまい
A-No.666の行いの、あまりの卑劣さに、恐ろしさに
C-No.572が恐怖を、畏怖を感じて、仕事が鈍っている事実が
……そのような行いに対し、何も感じるな、というつもりはない
だが、この程度で仕事が遅れるようでは、「組織」ではやっていけまい
「とにかく、引き続き尋問してこい……それと」
「何です?」
「尋問相手への暴力行為は、気付かれない程度にやれよ。穏健派は、それも禁止してるんだろ?」
「大丈夫です、証拠は一切残しません」
「何です?」
「尋問相手への暴力行為は、気付かれない程度にやれよ。穏健派は、それも禁止してるんだろ?」
「大丈夫です、証拠は一切残しません」
なら、いい
立ち去っていくサイコメトリーの黒服を見送って…天地は、誰もいない手身近な空き部屋に入り込んだ
携帯を取り出し………やや迷った後、辰也に電話する
立ち去っていくサイコメトリーの黒服を見送って…天地は、誰もいない手身近な空き部屋に入り込んだ
携帯を取り出し………やや迷った後、辰也に電話する
『天地か。何かわかったのか?』
「…あの姉妹、麻痺を起こさせる薬物と、毒物を混ぜた物を投与されている。それも、二度。そろそろ、効果が出る頃らしいんだが…」
『あぁ、怪我の具合を見ていた時、P-57とP-958の症状が見えたのはそのせいか。そっちも、ジャッカロープの力で治癒している』
「………そうか」
「…あの姉妹、麻痺を起こさせる薬物と、毒物を混ぜた物を投与されている。それも、二度。そろそろ、効果が出る頃らしいんだが…」
『あぁ、怪我の具合を見ていた時、P-57とP-958の症状が見えたのはそのせいか。そっちも、ジャッカロープの力で治癒している』
「………そうか」
辰也の言葉に、安堵の息を吐く天地
…同時に…症状を見ただけで、投与された薬物の、それも、調合された物の薬品番号すら当てた辰也に、自分はまだ敵わぬと思い知らされる
ハンニバルの事件以降、天地も、「組織」内において、禁じられた人体実験を行っている者達が扱う薬物については、勉強し始めている
だが、まだ、辰也のように症状を見ただけで、その種類を判別するまでには………まだ、遠い
自分が越えようとしていた相手は、まだまだどこまでも先にいるのだ
改めて……それを、実感した
…同時に…症状を見ただけで、投与された薬物の、それも、調合された物の薬品番号すら当てた辰也に、自分はまだ敵わぬと思い知らされる
ハンニバルの事件以降、天地も、「組織」内において、禁じられた人体実験を行っている者達が扱う薬物については、勉強し始めている
だが、まだ、辰也のように症状を見ただけで、その種類を判別するまでには………まだ、遠い
自分が越えようとしていた相手は、まだまだどこまでも先にいるのだ
改めて……それを、実感した
『他には?』
辰也の言葉に、正気に戻る
軽く首を振って、答えた
軽く首を振って、答えた
「…「組織から逃げるな」。そう言う暗示をかけられていたようだ」
『暗示か。今回の精神的ショックで解けてるとは思うが……解けてないようだったら、宏也か、大門 大樹にでも頼んで…』
『暗示か。今回の精神的ショックで解けてるとは思うが……解けてないようだったら、宏也か、大門 大樹にでも頼んで…』
辰也の言葉に
「…いや。暗示がまだ続いてるようなら、俺に解かせてくれ」
と
天地が、間に割り込んだ
天地が、間に割り込んだ
『お前がか?』
「…一応、「組織」の一部の黒服連中が使う、暗示に対する対処法だって、わかっているつもりだ……今回の件、俺はほとんど何も出来てないんだ、それくらいやらせろ」
『……お前は、「組織」でのこの件に関する処置に動いている。何もしていない訳じゃないだろ』
「…一応、「組織」の一部の黒服連中が使う、暗示に対する対処法だって、わかっているつもりだ……今回の件、俺はほとんど何も出来てないんだ、それくらいやらせろ」
『……お前は、「組織」でのこの件に関する処置に動いている。何もしていない訳じゃないだろ』
辰也はこういってくるが、それでも
自分は、「何もできなかった」のだ
…天地には、その後悔が、強いのだ
自分は、「何もできなかった」のだ
…天地には、その後悔が、強いのだ
「…俺にやらせる気がないんなら、せめて、直希にやらせてやってくれ。あいつの天使に、精神関係をどうにかできる奴も、いたはずだから」
直希も、また
今回の件で「何も出来なかった」と
…あの双子の姉妹を、救う事ができなかったのだ、と
深く、後悔している
それをわかっているからこそ、天地はそう告げた
今回の件で「何も出来なかった」と
…あの双子の姉妹を、救う事ができなかったのだ、と
深く、後悔している
それをわかっているからこそ、天地はそう告げた
…携帯の向こう側、辰也が小さくため息をついたのが、気配で伝わった
『……わかった。まずは、あの姉妹が目覚めてからだ。後でまた連絡する』
「…あぁ」
「…あぁ」
通話を切って、乱暴に携帯をしまいこむ
…何も、できなかった
だが、いつまでも、それを後悔し続けるだけで花いけない
だが、いつまでも、それを後悔し続けるだけで花いけない
何も出来なかったのならば
これからできる事を、していかなければならない
せめて、少しでも…あの姉妹の傷を、癒す為にも
これからできる事を、していかなければならない
せめて、少しでも…あの姉妹の傷を、癒す為にも
部屋を出て、天地は先へと進んでいく
…自分がこれから、「組織」内でどうあっていくか
それに、思考をめぐらせながら
それに、思考をめぐらせながら
to be … ?