三面鏡の少女 78
振り下ろされた十字架
それを避けようとしないディラン
彼女の気が済むのであれば
彼女が救われるのであれば
それで良いと思っていたのかもしれない
だけど
「そんなの知った事かっ!」
横合いから飛び込んできた黒い塊が、十字架を思い切り殴り飛ばして建物の壁面に叩きつけた
「どこの誰だか知らないけど、うちの教師を虐めてんじゃないわよ!」
「く、繰ちゃん……何でここに」
「私も夕飯の買出し。帰り道で見かけたら、鼻歌交じりでふらふら路地裏入ってくから心配になって来てみたら……何やってんのよもう」
髪の毛をしゅるりと戻し、ニーナとディランの間に割り込むように立つ
「悪いけど、この町は『組織』の管轄下よ。余所者が何かしたいなら上に話を通して頂戴」
別に『組織』にそんな権限があるわけではないし、この町には『首塚』など他の勢力も多々存在している
単に脅し文句とその場凌ぎのつもりで、思いつきで言ってみただけだ
「『組織』は、その邪悪な淫魔を手駒にしているというのデスか。それとも……あなたが個人的に、その淫魔に篭絡されたのデスか」
「ばっ、バカ言ってんじゃないわよ!?」
真っ赤になって怒鳴り返すその表情から、既に語るに落ちるどころの様子ではないのだが
冷静に見れば、淫魔により性奴とされたような反応とは全く違うのは明らかである
「これ以上こいつに手を出そうってんなら、痛い目見てもらうわよ! 私は手加減が下手だからね!」
「繰ちゃん、駄目っ……!」
ディランが止めるよりも早く、繰が髪の毛の拳をニーナ目掛けて放つ
だがその一撃は
「『ニーナへの攻撃は当たらない。当たらないったら当たらない、絶対にだ』」
完全に目測を誤った位置へと叩き込まれ、無駄に路地裏のゴミを撒き散らしただけだった
「何、今の……」
声がした方、ニーナの背後には黒服が一人
「悪いね、なんかそっちも『組織』の人間っぽいけど。彼女に何かあると俺が困るからさ」
繰とニーナの間に割り込むように星が立ち、サングラス越しに繰を見据える
「ま、とりあえずお互い落ち着こうよ。俺も状況はよく判らないけど」
「はん、下っ端黒服が吠えるわね。こっちは怪我人出してるのよ? 理由と詫びぐらいは置いていってもらわないと落ち着けないわね」
再び伸びた髪の毛が、ぎちりといくつもの拳を形作る繰
女郎蜘蛛の一件以来、躊躇すればろくな事にならないのは判っている
見知らぬ相手に手加減をするような性分ではないが、ディランが攻撃を躊躇っている以上は迂闊に手を出すわけにはいかない
「色々込み入った事情があるみたいだし、正直俺もよく判ってないんだけどね。判るまで保留って事にしといてくんない?」
黄金色の粒子を漂わせ、咳払いをして喉の通りを良くする星
星にとってはこの現状よりも、むしろニーナの様子の方が気掛かりで仕方ないが、とにかく現状は彼女を守る他にやれる事は無い
結果として互いに傷付け合う事こそ無かったものの、完全に膠着状態に陥ってしまっていたのだった
それを避けようとしないディラン
彼女の気が済むのであれば
彼女が救われるのであれば
それで良いと思っていたのかもしれない
だけど
「そんなの知った事かっ!」
横合いから飛び込んできた黒い塊が、十字架を思い切り殴り飛ばして建物の壁面に叩きつけた
「どこの誰だか知らないけど、うちの教師を虐めてんじゃないわよ!」
「く、繰ちゃん……何でここに」
「私も夕飯の買出し。帰り道で見かけたら、鼻歌交じりでふらふら路地裏入ってくから心配になって来てみたら……何やってんのよもう」
髪の毛をしゅるりと戻し、ニーナとディランの間に割り込むように立つ
「悪いけど、この町は『組織』の管轄下よ。余所者が何かしたいなら上に話を通して頂戴」
別に『組織』にそんな権限があるわけではないし、この町には『首塚』など他の勢力も多々存在している
単に脅し文句とその場凌ぎのつもりで、思いつきで言ってみただけだ
「『組織』は、その邪悪な淫魔を手駒にしているというのデスか。それとも……あなたが個人的に、その淫魔に篭絡されたのデスか」
「ばっ、バカ言ってんじゃないわよ!?」
真っ赤になって怒鳴り返すその表情から、既に語るに落ちるどころの様子ではないのだが
冷静に見れば、淫魔により性奴とされたような反応とは全く違うのは明らかである
「これ以上こいつに手を出そうってんなら、痛い目見てもらうわよ! 私は手加減が下手だからね!」
「繰ちゃん、駄目っ……!」
ディランが止めるよりも早く、繰が髪の毛の拳をニーナ目掛けて放つ
だがその一撃は
「『ニーナへの攻撃は当たらない。当たらないったら当たらない、絶対にだ』」
完全に目測を誤った位置へと叩き込まれ、無駄に路地裏のゴミを撒き散らしただけだった
「何、今の……」
声がした方、ニーナの背後には黒服が一人
「悪いね、なんかそっちも『組織』の人間っぽいけど。彼女に何かあると俺が困るからさ」
繰とニーナの間に割り込むように星が立ち、サングラス越しに繰を見据える
「ま、とりあえずお互い落ち着こうよ。俺も状況はよく判らないけど」
「はん、下っ端黒服が吠えるわね。こっちは怪我人出してるのよ? 理由と詫びぐらいは置いていってもらわないと落ち着けないわね」
再び伸びた髪の毛が、ぎちりといくつもの拳を形作る繰
女郎蜘蛛の一件以来、躊躇すればろくな事にならないのは判っている
見知らぬ相手に手加減をするような性分ではないが、ディランが攻撃を躊躇っている以上は迂闊に手を出すわけにはいかない
「色々込み入った事情があるみたいだし、正直俺もよく判ってないんだけどね。判るまで保留って事にしといてくんない?」
黄金色の粒子を漂わせ、咳払いをして喉の通りを良くする星
星にとってはこの現状よりも、むしろニーナの様子の方が気掛かりで仕方ないが、とにかく現状は彼女を守る他にやれる事は無い
結果として互いに傷付け合う事こそ無かったものの、完全に膠着状態に陥ってしまっていたのだった