プレダトリー・カウアード 日常編 06
「ねぇ、姉ちゃん」
夜。一通りの検査を終えた後、僕は姉ちゃんに声をかけた。
僕はベットの上、姉ちゃんは床に布団を敷いて寝っころがっている。
本当は姉ちゃんのための病室もちゃんとあるらしいのだけれど、だだをこねた姉ちゃんが無理やり僕との相部屋にしたらしい。
僕はベットの上、姉ちゃんは床に布団を敷いて寝っころがっている。
本当は姉ちゃんのための病室もちゃんとあるらしいのだけれど、だだをこねた姉ちゃんが無理やり僕との相部屋にしたらしい。
「どうしたー? 姉ちゃんの愛なら有り余ってるぞー?」
「いや、姉ちゃんの愛なら充分に間に合ってるんだけど……」
「いや、姉ちゃんの愛なら充分に間に合ってるんだけど……」
ちょっとだけ、口を噤む。
これから話す話題は、姉ちゃんにとって楽しいものじゃないだろう。
僕が起きてから、今までの数時間。
意識的にか無意識的にか、姉ちゃんは一言だって、そのことに触れなかったのだから。
これから話す話題は、姉ちゃんにとって楽しいものじゃないだろう。
僕が起きてから、今までの数時間。
意識的にか無意識的にか、姉ちゃんは一言だって、そのことに触れなかったのだから。
「あの、さ」
けれど、僕は全てを話さなければならない。
僕たち姉弟が先へ進むためには、絶対に。
僕たち姉弟が先へ進むためには、絶対に。
「『昨日』のことなんだけど…………」
「あー、そうだよな。聞きたいよなぁ」
「あー、そうだよな。聞きたいよなぁ」
姉ちゃんの言葉に、続けようとした僕の言葉が詰まる。
「聞きたい」?
違う。僕は「言いたい」んだけれど…………。
「聞きたい」?
違う。僕は「言いたい」んだけれど…………。
「え? いや、聞く側なのは姉ちゃんじゃ――――」
「……ごめんなぁ、優」
「……ごめんなぁ、優」
――――固まった。
姉ちゃんの声が、震えている。
いつも強気で、いつも我を張っていた姉ちゃんの声が、震えている。
姉ちゃんの声が、震えている。
いつも強気で、いつも我を張っていた姉ちゃんの声が、震えている。
「姉ちゃん…………あのバカ夫婦のこと、守れなかったよ」
ああ――――そうか。
僕は馬鹿だ。
姉ちゃんが、あの破天荒なまでに強い姉ちゃんが、「あいつ」を前に何もしなかったはずなんて、ない。
戦ったのだろう。戦ってしかし、届かなかったのだろう。
僕は本当に、馬鹿だ。
悲しみだけだと思っていた。
ただ父さんと母さんを失った悲しみだけが、姉ちゃんの心にあるんだと思っていた。
そんなはず、ないのに。
戦っただけ、戦える力があっただけ、姉ちゃんの心には深い影が落ちた、はずなのに。
僕は馬鹿だ。
姉ちゃんが、あの破天荒なまでに強い姉ちゃんが、「あいつ」を前に何もしなかったはずなんて、ない。
戦ったのだろう。戦ってしかし、届かなかったのだろう。
僕は本当に、馬鹿だ。
悲しみだけだと思っていた。
ただ父さんと母さんを失った悲しみだけが、姉ちゃんの心にあるんだと思っていた。
そんなはず、ないのに。
戦っただけ、戦える力があっただけ、姉ちゃんの心には深い影が落ちた、はずなのに。
「姉ちゃん…………」
ベットから、降りる。
それにつられて身体を起こした姉ちゃんの顔に、涙はない。
けれど、僕にはどうしてか――――姉ちゃんが、泣いているような気が、した。
それにつられて身体を起こした姉ちゃんの顔に、涙はない。
けれど、僕にはどうしてか――――姉ちゃんが、泣いているような気が、した。
「…………ごめん」
だから、抱きしめた。
言わなければならない事がたくさんあった。謝らなければならない事がたくさんあった。
けれどまだ、その時じゃない、今は謝るのはこの一言だけでいい。
今は――姉ちゃんのための、時だ。
言わなければならない事がたくさんあった。謝らなければならない事がたくさんあった。
けれどまだ、その時じゃない、今は謝るのはこの一言だけでいい。
今は――姉ちゃんのための、時だ。
その日。僕は初めて、姉ちゃんの涙を、見た。
【Continued...】