プレダトリー・カウアード 日常編 07
「なるほどなるほどなぁーるほどぉ。確かにこりゃ酷ぇ」
満月の満ちた次の夜。
閑静な……いや、閑静と形容するには少々不気味な静けさが漂う住宅街のある家の中に、その二人はいた。
二階の子供部屋。
周囲にはがらくたが散らばり、教科書が破け、雑誌が至るところに転がっている。
しかし二人の視線の先はそこではない。
壁、そして床を浸す血。
もし仮にこれだけの血を流すとしたら、一体どれだけの人間が死ぬのだろうか。
そしてもし仮に「一人」の人間がこの血を流すためには、一体どんな死に方をすればいいのか。
閑静な……いや、閑静と形容するには少々不気味な静けさが漂う住宅街のある家の中に、その二人はいた。
二階の子供部屋。
周囲にはがらくたが散らばり、教科書が破け、雑誌が至るところに転がっている。
しかし二人の視線の先はそこではない。
壁、そして床を浸す血。
もし仮にこれだけの血を流すとしたら、一体どれだけの人間が死ぬのだろうか。
そしてもし仮に「一人」の人間がこの血を流すためには、一体どんな死に方をすればいいのか。
「…………いーや、今回の『犠牲者』は生きてるんだっけ? 禿坊主」
言って、片方はポケットに手を入れた。
取り出したのは、安価で売られているプラスチック製のライター。
ライターの灯が点る。
明りに照らされ、煙草を咥えた男が照らし出された。
黒いスーツ。黒い手袋。黒いサングラス。
ひたすら黒で己を塗り固めた男。通称、黒服。
取り出したのは、安価で売られているプラスチック製のライター。
ライターの灯が点る。
明りに照らされ、煙草を咥えた男が照らし出された。
黒いスーツ。黒い手袋。黒いサングラス。
ひたすら黒で己を塗り固めた男。通称、黒服。
「生きていると、お前が言ったろうに。つい三分前だ」
「あーあーそだったそだった。うんうん、忘れてた。資料持ってるの俺か」
「あーあーそだったそだった。うんうん、忘れてた。資料持ってるの俺か」
懐から白い紙の束を取り出し、ぱらぱらと捲る。
火に白が揺れ動く。
「禿坊主」と呼ばれた人間は、明りの届かない範囲からそれを眺めていた。
火に白が揺れ動く。
「禿坊主」と呼ばれた人間は、明りの届かない範囲からそれを眺めていた。
「ここら一体の『大量殺人』、別称『ガス中毒』……って無理あんだろ。考えたの誰だくそったれ。俺じゃねぇかくそったれ」
「あぁーまぁいいや。なんとかなんだろ。で、その唯一……じゃねぇや、唯ニの生存者の内、男は狩谷 優、十七歳。女は狩谷 瑞樹、十九歳」
「19時27分の警察への通報から『組織』が出動。約5分後に到着」
「女はけーしょーとじゅーしょーの中間。一階の和室で倒れてるところを救助」
「男は二階のこの部屋で倒れてるのを救助…………ただーし、全くの『無傷』。なのにこの部屋のばら撒かれた血とDNAは完ッッッッ全に一致」
「男の方がどう考えてもくせぇじゃねぇか。何であの診療所になんか移したんだ馬鹿どもは。あれじゃ手出しができねぇ」
「あぁーまぁいいや。なんとかなんだろ。で、その唯一……じゃねぇや、唯ニの生存者の内、男は狩谷 優、十七歳。女は狩谷 瑞樹、十九歳」
「19時27分の警察への通報から『組織』が出動。約5分後に到着」
「女はけーしょーとじゅーしょーの中間。一階の和室で倒れてるところを救助」
「男は二階のこの部屋で倒れてるのを救助…………ただーし、全くの『無傷』。なのにこの部屋のばら撒かれた血とDNAは完ッッッッ全に一致」
「男の方がどう考えてもくせぇじゃねぇか。何であの診療所になんか移したんだ馬鹿どもは。あれじゃ手出しができねぇ」
頭を掻き毟る黒服に、今まで静観を守っていた人間が影から答える。
「それなら俺がその『馬鹿』から聞いた。女の方が途中で目を覚まして暴れだしたらしい。気の毒な事に鎮静剤を持った黒服がいなくてな」
「殺せばいいじゃねぇか。今更一人死体が増えてなんになる?」
「向かわせた黒服は計三人。診療所まで辿りついたのは弟を背負った姉一人」
「マジか。すげぇな」
「黒服三人は路上で伸びてたそうだ。さすがに殺されはしなかったらしいが」
「俺が殺す。クソが。よりにもよって『第三帝国』管轄の診療所だぁ? 出てくるのを指咥えて待ってろってか」
「待つしかないのであろうな」
「あーあー、クソッタレの能無しどもめ。OK、分かったよぉく分かった。」
「殺せばいいじゃねぇか。今更一人死体が増えてなんになる?」
「向かわせた黒服は計三人。診療所まで辿りついたのは弟を背負った姉一人」
「マジか。すげぇな」
「黒服三人は路上で伸びてたそうだ。さすがに殺されはしなかったらしいが」
「俺が殺す。クソが。よりにもよって『第三帝国』管轄の診療所だぁ? 出てくるのを指咥えて待ってろってか」
「待つしかないのであろうな」
「あーあー、クソッタレの能無しどもめ。OK、分かったよぉく分かった。」
カチリ、カチリ。手に持つライターは着火し、消え、着火する。
「禿坊主。テメェ男の方と『同級生』だろぉ? 退院したらすぐに探れ。どうせ契約者だ。『組織』に入れさせろ。あんだけの血ぃ吐いて無傷っつーのは相当なタマだろ」
「もし、断ったら?」
「殺せ。後始末は俺でやってやんよぉ。どうせ雑魚三匹処分しなくちゃならねぇからなぁ」
「………………」
「あぁ? 何黙ってんだてめぇすぐ答えろはきはき答えろじゃねぇと殺す」
「……ああ、了解した」
「おーけぃおーけぃ。それでいい。さっさとしろよぉ。俺ぁ今クソ腹立ってんだ」
「もし、断ったら?」
「殺せ。後始末は俺でやってやんよぉ。どうせ雑魚三匹処分しなくちゃならねぇからなぁ」
「………………」
「あぁ? 何黙ってんだてめぇすぐ答えろはきはき答えろじゃねぇと殺す」
「……ああ、了解した」
「おーけぃおーけぃ。それでいい。さっさとしろよぉ。俺ぁ今クソ腹立ってんだ」
黒服が散乱したガラクタを踏みつける。
かつて「霊装」と呼ばれていた雑誌の付録は、見るも無残に朽ち果てていく。
かつて「霊装」と呼ばれていた雑誌の付録は、見るも無残に朽ち果てていく。
「いーねぇいーねぇ。屑はこうなりゃいい。使えねぇ雑魚はこうなるべきじゃねぇか。なぁ? なぁなぁなあっ!」
踏んで、壊して、ばら撒いて。
笑う。狂気で、狂喜で、黒服が笑う。
笑う。狂気で、狂喜で、黒服が笑う。
「………………」
最後まで闇に隠れた人間は、その光景を黙って、眺めていた。
【Continued...】