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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会-21

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konta

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 山中にある小屋の中、その中にある小さな寝台の上に座って、モニカは由実の帰りを一人待っていた。
 待つ事は得意だ。
 ≪首塚≫の島でも由実が会いに来てくれるのを待っている事が多かった。その前も、遠い、薄れてしまっている記憶を辿れば両親の遅い帰りを待って一人で家で絵本を読んでいた記憶が頭をかすめる。
 それは楽しい記憶とは決して言えはしない。だからこそ、
 おじいちゃんやユーグおじさんが来てくれるようになって……わたし、すごくうれしかった……。
 そのユーグが両親を殺した。祖父も、その両親の手にかかって死んだのだと徹心は言っていた。
 みんな死んじゃった……。
 舞達はモニカのせいではないと言ってくれたが、モニカは首を横に振る。
 ……わたしがおかしな……普通の人と違ったりするから、おじいちゃんもお父さんもお母さんも死んじゃって、ユーグおじさんがフィラちゃんたちを殺してでもわたしをどこかに連れて行こうとするんだ。
 身体になにかしら手を加えられていると聞いた。記憶が曖昧で、具体的なことは分からないが、加えられたその何かが、皆に迷惑をかける原因なのだろうとモニカは考えていた。
 フィラちゃん……。
 三日前に千勢と会ってからこの小屋に来てからの二日間、由実は常に気を張り続けていた。そしてその緊張はどう隠そうともモニカに伝わっていた。
 自分を狙ってくる人たちを警戒してくれているんだろうとモニカは無理に笑う由実を見て思う。
 ……わたしはきっと、いやな子だ。
 今思い返せば最初、由実にどこかに連れて行ってと頼んでいた時、自分は意識をほとんど憑かれた死霊に乗っ取られながらも、どこかで二人で出掛ける事に楽しみを感じてはいなかっただろうか。
 最終的に意識を死霊に預けてしまったのはモニカ自身ではなかっただろうか。
 ばかだ……。
 膝に顔をうずめてモニカは自分の浅はかさを責める。
 彼女が座っている小さな寝台は、ケウの毛のように柔軟な感触と温もりを与えてくれるわけでも、リカちゃんのように励ましてくれるわけでもなく、舞のように気分転換を促してもくれない。
 その事を意識せずに寂しさとして感じて、モニカは呟いた。
「一人はさみしいな……」
 その独白に応えるように、小屋の外から声が聞こえた気がした。
「……え?」
 まず、気のせいだろうとモニカは考えた。なぜならその声は、
「モニカ……?」
「お母……さん?」
 この世に存在しない筈の人の声だったのだから。


            ●


 うそだ、うそだうそだ……っ!
 モニカは確かに自分の目の前で両親が力を失っていく様を確認した。由実もあの時には既に手遅れだったと言っていたし、千勢や徹心だって死んだのを確認したと言っていたではないか。
「モニカか? モニカ……いるのか?」
 今度は父の声が聞こえた。
 どういう事……?
 ここまではっきりと声が聞こえていては、空耳という事は無いだろう。モニカはそろそろと小屋の出入り口の前まで歩いて行って、扉を開けて外を確認しようと手を鍵へと伸ばしかけ、ある予測に身がすくんだ。
 もしかしたら、小屋の外にいるのは敵なのではないか? そう思ったのだ。
 モニカは寝台へと引き返してシーツを握りしめ、扉の向こうへと警戒の目を向けて震える声を出す。
「お母さん? お父さん?」
「モニカ! モニカか!」
「ああよかった、ここに居たのね……!」
 返って来た声は記憶に残る両親の声そのもののように感じられた。自然と警戒が薄れていくモニカに、扉を叩きながら父の声が語りかけてくる。
「開けてくれ! 早く一緒に逃げよう!」
「逃げる?」
「そうよ、ここは危ないわ。ユーグ達が追って来ているの」
 母の声は焦りを帯びた調子でそう言った。
「でも、フィラちゃんが……」
「彼女はもうお父さん達のところにいる。今休んでもらっているんだ。この小屋の事は彼女から聞いたんだが、扉にある結界のせいで私達は扉を開ける事ができない。モニカ、扉を開けてくれ」
 そういえば、由実がこの部屋には結界が施されていると言っていた。モニカの両親は結界の対象外設定に組み込まれていないため、小屋の扉を開けられないのだろう。
 モニカは頷いて扉に手をかけ、ふと思った。
 ――全部嘘なのではないだろうか? 
 扉の外には言葉巧みにモニカを誘い出そうとする童話の狼のような人たちがいるんじゃないだろうか? そして出て行った瞬間にモニカは――
 一瞬のためらいは、
「モニカ、早く顔を見せておくれ」
「何年も会う事が出来なかったんですもの……、どんな風に成長しているのかお母さん達に見せて?」
 彼等の言葉の前では一考の余地ももたらさなかった。
「――――っ!」
 扉が勢いよく開け放たれる。
 扉の向こうにはモニカと同じ蜂蜜色の髪をした女性と、それより少し濃い金の髪をした男性が――つい数日前に徹心に返してもらった写真に写っていたままの両親の姿があった。
「……ぁ」
 いつの間にかモニカの頬に涙が流れている。
 両親はそんなモニカの髪に触れ、その体を抱きしめた。
「モニカ、会いたかったよ」
「わ、わたしも……会いたかっ……お父さ……ッ、お母さん……!」
 喉が詰まってしまって言葉が上手く出てこない事をもどかしく思いながら、モニカは両親の腕にすがりついて涙を流す。
 そこに、知らない男の声が聞こえてきた。
「――本当に会いたかった。何年も姿を見ていないので検査が必要だろうけど、ああ、その程度、手間の内に入るまいよ」
 モニカはその声の方へと視線を向けた。
 濃色の肌にやや癖のある髪、そして山の中にあっては不釣り合いな白衣を着た男。
「だ……れ?」
 自分はとんでもない間違いを犯してしまったのではないだろうかという思いが急速にモニカを支配して行く。
 あの白衣の男は童話の狼よりも強かで、狡知に長けている生き物なのではないだろうか。そう無意識に考えるモニカに正解、とでも言うように白衣の男――ウィリアムは禍々しい笑みを顔に貼りつけた。
「もういい。レ二ーとトリシアの姿も声ももう必要ない」
「ハイ」
 返答したのはモニカを抱えている両親だった。彼等二人は表情を硬直させたモニカを正面に、見せつけるかのように変化を始めた。
 モニカの眼前で両親だったモノの形が突然崩れた。顔や全身の輪郭が一瞬で溶解され、歪む。
 不定形な粘土のようなものの塊になった両親の姿をしていた何かは、形を整えるように二、三度身を捻りながら全身に襤褸を纏った奇形の人型へと変化を遂げた。
「……ぅ、あ」
 モニカは目を見開いてその様を見届けた。
 身を捩る事も出来ず、両親に擬態していた何かに抱えられたままモニカは声にならない悲鳴を上げた。
「彼等は≪ブギーマン≫という、恐怖という不定形の概念が結晶化した存在だ。不定形の彼らは姿見を変えるのが得意でね」
 ウィリアムは愉しそうに笑いながら≪ブギーマン≫に命じる。
「モニカ嬢、ワタシの実験の為に身柄を確保させてもらうよ……連れて行くんだ」
 ウィリアムにしたがった二体の≪ブギーマン≫は、モニカを抱えたまま山を降りようと足を向けた。
 そこへ鋭い声が飛んできた。
「待ちなさいっ! モニカは渡しはしないわよ!」
 その場に居る者達全員が声の主に目を向ける。
 そこに居たのは、所々土に汚れてはいるが五体満足な由実だった。



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