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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 恐怖のサンタ-a20

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uranaishi

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恐怖のサンタ 日常編 20


 町中で13使徒のメンバーらしき人物を見てから数時間。
 依頼されていた退治屋としての仕事を一件終え、俺は別の依頼主の所へと向かっていた。
 頭では先ほどの「教会」の二人の会話がループされている。
 学校町を爆破、なんて物騒な話ではなかった。
 いや、殺人が物騒でないかと問われれば物騒だとしか答えようが無いのだが、それでも想像よりは「軽い」話だった。

 しかし、俺の表情は暗い。
 話の内容構わない。そこに不快感を覚えはするが、毎日毎日、仕事で都市伝説を殺せだ潰せだ言われているのだ。ある程度の耐性はある。

(――――たれ)

 ただ、それを話す側の問題だった。
 中学生くらいの女の子。
 普通なら学校にでも通って友達ときゃいきゃいだべりに興じているような年頃である。
 その無邪気さは、遊びにでも向いているべきもののはずだ。
 ……決して、殺人になど向けられるべきものでは、ないはずだ。
 「教会」の側が少女を「そう」なるよう仕向けたのか、はたまた元々「そう」だった少女を「教会」側が保護したのかは知らない。
 元よりどちらでも構わなかった。

(――――ィ、へたれ)

 俺の表情をかきくらすのは、そんな少女が「いる」事そのもの。
 そんな少女を生んでしまう世界そのものだ。
 いや、これは偽善なのだろう。分かっている。
 世界が、社会が悪いと吠えたところで、一体何が変わるというのか。
 変わらない。この世界は変わらない。
 俺一人が何かを為した所で、世界中の人間が何かを為してすら、恐らくこの世界は変わらない。

(――――オィッ! 聞イテンノカコノへたれっ!!)
「………………ん?」

 思考の波に飲まれていたせいだろう。
 デビ田が声をかけていることに、気づくのが遅れる。
 …………その遅れが、致命傷だった。

「全くあのちみっこときたら……すぐにどっかふらふら行っちゃうんだから。探すヴァタシの事もちょっとは考えて欲しいわよねぇ」

 目の前。反対方向から、一人の男が歩いてくる。
 ……いや、男じゃない。女ものの修道服のようなものに身を包んだそれは、オカマと分類すべき人間なのだろう。
 胸に揺れるロザリオは、昨日資料で見たものと全くの同一。
 先ほどは後姿のみだったが、間違いない。「教会」の人間だ。それも13使徒の。

 ……ピンチだ。
 少女の方とははぐれてしまったのか一緒ではないが、相手は13使徒。
 何故かこのオカマに関する資料の内容が頭からすっぽ抜けているが、きっと滅茶苦茶強いのだろう。
 戦うべきではない。ここはさっさと回れ右して――――

「――――あら? あんた何ヴァタシの事見てんのよ」
「うあ、マジかよ…………」

 絡まれた。やばい。これはまずい。
 筋肉隆々のオカマがこちらをにらんでいる。

(オイ馬鹿テメェサッサト逃ゲロッ! てれぽーとダ、キット追ッテコレネェ!)

 デビ田の声に、身体が思わず煙突を呼びかける。
 望めばいい。虚空へと運んでくれる煙突を。
 それだけで、眼前に迫る悪夢からは逃れられる。
 右手が、煙突を召還すべく上がりかけ――――

(サァ…………ッ!)

 ――――しかし、俺は気合でそれを押さえつけた。

(何ヤッテンダテメェ! 会ッタラ即逃ゲロッテ昨日テメェガ決メタンダロォガ!)

 デビ田が脳裏で騒ぐ。
 違う。そうすべきじゃない。
 もし今逃げたらどうなる?
 今煙突を出して、オカマの前から逃亡したら、どうなる?

 オカマは俺を疑うはずだ。
 都市伝説契約者がどうして自分を見ていたのかと、疑うはずだ。
 それではまずい。
 「俺」という存在をオカマの頭に刻み付けるような真似だけはするべきじゃない。

 今ならまだ大丈夫なはずだ。
 ここでただの通行人として振舞えば、きっと明日には忘れてくれる。

 ――――だから、俺は、とにかく相手の機嫌を取ろうと、声を張り上げた。

「いっ、いや! ついお前が美人過ぎて見とれてただけなんだっ!!!」

 ……いや待て何言ってんだ俺。ここは卑屈になってそそくさと逃げ出す場面だろ……!
 頭を抱えそうになる腕を再び押さえ込む。
 まだだ。まだ俺は大丈夫だ。そう、相手の反応だ。それに気をつけて言葉を間違えなければ言い。

「……あらん? やだわヴァタシったら、罪な女ね」
「あ、ああ! だって超美人だもんな!」
「そんな本当のこと言っちゃって! ヴァタシを褒めたって何にも出ないわよ?」

 そういいながら、ボディビルダーのポーズを取るオカマ。
 その姿勢にあわせて、修道服から筋肉が盛り上がる。

「凄い! 筋肉超凄くて美しい!」
「そうでしょう? そうでしょう!!」
「そこら辺の町の女が豚に見える!」
「ヴァタシ綺麗? ねぇ、ヴァタシ綺麗?」
「世界一! いや宇宙一!」
「やだ! ヴァタシ興奮してきたわ!」
「そんなお前も超素敵!」
「もっと褒めて! もっとヴァタシを褒めて!」

 ……こうなりゃやけだ。とことん褒め倒してさっさと逃げよう。

「その格好も素敵! 化粧
「いや、もうほんと凄すぎて俺も見習いたいくらい!」
「あら? …………あんたなに、『コレ』に興味あるの?」

 …………あれ? 何か流れ変わった?
 いや、いいや、さっさと話をあわせて帰ろう。

「ああ! そうなんだ! それ滅茶苦茶クールでしかも綺麗だよな!」
「…………あんた、分かってるじゃない」

 がしり、と肩を捕まれる。
 え、なにこれ、なんで俺肩捕まれてるんだ?

「そう、そうなのよ……! 誰も、だぁれも、ヴァタシの魅力を分かってくれないのよ!」
「あ、ああ、お前は超魅力あると思う……よ?」
「でしょう? なのにあいつらときたらヴァタシの事可愛そうな目で見るのよ! ありえない! この美しいヴァタシに嫉妬してるのよ!」
「う、うん? きっと世界中の女がお前に嫉妬するさ」
「あんた………………」

 オカマがじっと俺の事を見つめてくる。
 なんか目がマジだ。
 やばい、俺なんかミスったのだろうか。

「………………あんた、見込みあるわ」
「…………………え?」

(逃ゲロツッテンダロ馬鹿ッ! 振リ切ッテスグニ逃ゲヤガレ!!)

 デビ田が何やら喚いているが、今の俺はそれどころではない。
 オカマの目が俺の身体を嘗め回すように見ている。今何か行動を起こしたら即殺されそうだった。

「体つきは……並ね、並。ちょっと鍛えてるみたいだけど。顔はまあ、ヴァタシに比べたら劣るけど、あんたいい線言ってるわ」
「あ、はぁ、それはどうも」
「あんた、興味あるのよね?」

 興味? 俺なんか言ったっけ?
 オカマは鬼気迫るような表情だ。俺、一体何に興味があるって言ったんだ?
 ……ま、まぁ、いいや、今は取り合えず話をあわせておこう。怖いし。

「あ、ああ。俺かなり興味あるぞ。マジで」
「そう…………そうなのね…………」

 ギリギリと、肩を握る力が強くなる。
 ……ヤバイのか? これもしかしてやばいのか?
 俺はもしもの時のために、煙突を出す準備を――――

「いいわっ! 来なさいっ!」

 ――――え?
 いつの間にか、オカマの片方の手が俺の膝に回されていた。
 そしていつの間にか、俺の身体は宙に浮いていた。
 膝と背の二つを視点に、オカマが俺を支えている。
 …………お姫様抱っこ?

「ヴァタシがあんたをコーディネェトしてあげるわっ!」
「え、いや、ちょっと」
「さあこうしたらいられないわっ! あそこにもあそこにもあそこにも電話して、いい服と化粧品揃えて貰わなきゃっ!」
「え? いやちょっとマジで話を」
「いいわぁぁぁあああああっ!! 乗ってきたわぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああっ!!!!!」
「ちょっとー。あれー、あれー?」

 …………どうしてこうなった。
 俺の心の叫びは、冬の風に握りつぶされて、消える。
 昼下がり。俺はオカマにお姫様だっこをされたまま、どこかへと連れ去られていった…………。


【Continued...】




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