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連載 - 恐怖のサンタ-a21

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uranaishi

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恐怖のサンタ 日常編 21


「…………どうしてこうなった」

 今度こそちゃんと口に出して呟いて、俺は頭を抱える。
 俺は今、狭い部屋の中にいた。
 外からの光は届かず、薄暗い電灯のみが、この部屋唯一の明りとして機能している。
 部屋には両手を広げるほどの幅すらなく、暗さも相まって妙な圧迫感を俺に与えていた。
 出口は一つ。しかし二人の見張りが外に待ち受けている。
 やってしまった。失態だ。まさかこんなことになるなんて……。

(なぁ、デビ田…………俺、どうすればいいと思う……?)
(アァッ!? 俺様ノ警告ヲ無視シヤガッタンダ。自業自得ダロ)
(そんな……俺、頑張ったじゃん。「超」を超連発して超頑張ってたじゃん)
(知ルカ知ルカ。サッサト出チマエヨォ。次ノ依頼ガアンダロォガ)
(出られないんだって! 見張られてるんだって!)

 外から話し声が聞こえる。
 俺をどう処分するか決めている声だ・
 くそ、奴らに気づかれないうちに、なんとかここから脱出しないと……!

(――――話し声が、止んだ?)

 外からの声が、いつの間にか消えている。
 変わりに聞こえてくるのは足音。「奴」のものだ。
 くそっ…………! 逃げ道はっ? 脱出口はっ!?

(諦メロ。コレモ運命ダッタンダヨ)

 保っていた気力が抜け、地に膝をつく。終わりだ。俺は、もう――――

 ――――出口に「奴」が、現れた。

「――サイズは大丈夫? そろそろ準備、できたかしら」

 「奴」――――俺を拉致したオカマが、カーテンの隙間から顔を覗かせる。

「ああ。できたよ。できちゃった、よ…………」

 俺は、薄暗い部屋――――「試着室」の中で、うな垂れた。
 最悪の、日だ…………。

*****************************************

「やだ。やっぱりあんた『持ってる』わよ。すっごく綺麗。まぁ、ヴァタシには負けるけど」
「は、はは……そ、そうか」

 綺麗じゃないって。店員さん見ろって。引いてるって。
 というか俺だって引くわ…………。

 ……オカマに拉致された後、俺は色んな店を回った。
 肌のエステに始まり、ヘアカットにネイルアート。わけの分からない化粧品売り場をお姫様抱っこでうねり歩き
 そして極めつけに――――ここだ。こ洒落たブティック。
 そこであれやこれやと今まで買ってきた化粧品でメイクアップされ、服を宛がわれ、あんたこれにしなさいと一着の服と共に試着室に放り込まれて

(――――今ニ至ル、ト)
(くそぅ…………)

 俺が着ているのは、オカマと同じ黒い修道女の服だ。
 だったらなんでこんなブティックに入ったのかと、小一時間ほど問い詰めたい。
 オカマはじろじろと、それこそ全身隈なく一点の漏らしも無く俺を眺め回している。
 時折頷いている所を見る限り、オカマ的に俺は「OK」らしい。
 …………嬉しくない。

「いいわ! 似合ってるわよ、あんた」
「お、おう。さすがお前の見立てだな」
「でしょう? ヴァタシたち二人、今きっと世界の美女トップツーの座に座ってるわよぉ!」
「あ、ああ。だって俺たち、今最高に輝いてるもんな……!」

 ……主にギャグ的な意味で。
 手を繋いで、俺とオカマがはしゃぐ。
 周囲の目が痛い。
 きっと今、世界トップツーの変態に俺たちを認定しているのだろう。

「いいわぁ、あんた最高だわぁ。エイブラハム司祭の次にヴァタシの高感度高いわよ、あんた」
「へ、へぇ、それは光栄だな」
「本当よぉ? 今のあんたが着てる服、それだってプレゼントしちゃうんだから」
「え? いや、それは悪いんじゃ…………」

 というか、貰ってどうしろと。
 ……いや、良子とか沙希とかが着るのはありなのかもしれない。

「いいのよぉ。だってヴァタシたち、友達じゃない」
「友達なのっっ!!!???」

 ――――――あ。
 まずいか? 今の発言はまずいのか?
 今度こそ本当にやっちまったかもしれない。これは幾ら相手でも怒るんじゃ……。

「やだ。いくらヴァタシが美人だからって、そんなに恐縮しなくていいのよ? 仲良くしましょぉ?」

 ……oh、なんというポジティブ。いや、ハイになってるのか。
 俺と会話しつつ、マッスルポーズをオカマが繰り返す。
 見る人が見れば見蕩れてしまいそうな筋肉とポーズも、ボディビル会場以外では変態以外の何ものでもない。
 ……あ、ほら、今だって店員さんが、こっち見ながらどこかに電話して――――

「…………やべぇ」
「あら、なに? 私ってばやばいくらい綺麗?」
「あ、えーと? うん、やばすぎて目が飛び出るくらい綺麗だから、そろそろ外出ないか?」
「――――あら、もうこんな時間なのね」

 オカマが時計を見て、驚いたような声を上げる。
 そりゃ、あれだけの店を巡ったのだ。時間だって大分経っただろう。

「いけない。ヴァタシ、あのちみっこを探してるんだったわ」
「だ、だろ? ほら、残念だけど俺にも予定があってさ……」
「あらん……本当に残念。まだまだ案内してないお店、いっぱいあるのよぉ?」
「ええっと……それはまた今度? で」
「……そうね、分かったわぁ。それじゃ、ここを出たらお別れしましょ?」

 出口をちらりと見て、オカマが肩を落とす。
 やった。やったよみんな! 悪魔の手から、見事無事に脱出でき――――

「そうよ!」

 ――――くそう、お茶目な神様め。
 まだ俺に何をさせたいって言うんだ。

「忘れてたわぁ! 名前よ! 名前! まだあんたの名前を聞いてなかったわ!」
「え、名前? あ、ああ、俺は山田って言うんだけ、ど――――」

 ――――顔が青ざめるのが分かる。
 なに、ちょ、おおお俺なに言っちゃってんのっ!? 何本名言っちゃってんのっ!!??
 これは無理だ。今からリカバリー効かねぇ。どうする? どうするよ俺っ!?

「じゃあ山田ちゃんねぇ。ヴァタシはヴァレンタイン。『絶世の美女』の異名を持つお・ん・な」
「あ、ああ…………うあ、ええと、よろしく、ヴァレンタイン…………」

 やばいまずいどうしよう。
 どこで選択肢間違えたんだ俺。どうしてこうなったんだ俺っ!

「どうしたのよぉ。そんなに青くなっちゃって。ヴァタシと友達になれたのがそんなに嬉しかったのかしらぁ」
「は、はは…………ま、まぁ、そんなとこ?」
「うふ。初々しいのねぇ、山田ちゃんは。それじゃ、連絡先も交換しましょ?」
「あ、うん」

 携帯の赤外線を通して、俺の携帯へヴァレンタインのアドレスが、
 ヴァレンタインの携帯に、俺のアドレスが……移って――――

 ――――ってNooooooooOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOッッッッ!!!!????

 馬鹿っ!! 俺の馬鹿っ!! 山田治重の大馬鹿野郎っ!!!
 これじゃ友達じゃんっ! マジで普通に友達じゃんっ!!!

 …………あれ?

(いや、待て、友達なら全然OKじゃないのか、これ)
(オォ。一周回ッテ落チ着イタジャネェカ)

 考える。敵としての「教会」は、確かに恐れるべき相手だ。
 しかし友達は? 相手は好意を持って接してきてくれているのだ。これのどこに問題がある?
 むしろ「教会」となんとか友好な関係を気づけるチャンスじゃないのか?

「ヴァタシたち、これでもう親友ねぇ!」
「お…………おう! 俺たち友達だよな! 親友だよな!!」

 きゃっきゃうふふあはは
 女装した男二人がいちゃいちゃし始めて、周囲から一気に人が消えた。
 ……ふ、いいんだ、女装はアレだけど、友達のためなら、甘んじて受け入れてやろう!
 手と手を繋いで、スキップしながら入り口へと向かう。
 何だ。いい奴じゃないか。
 ちょっと話してた内容がアレだけど、ちょっと話し方がアレだけど、ついでに格好とかちょっと所じゃないくらいヤバメだけど、いい友達じゃないか。

 ――――俺は、ちょっとだけ感動していた。
 あれから、殺人を犯して逃亡を始めてから、初の「友達」だ。
 友達なんて、もう一生できないと思っていた。
 良子に、沙希やマゾや佑香はどちらかといえば「家族」で、占い師たちは「仕事仲間」だ。
 だからきっと、友達なんてできないと思っていた。

「今度、オカマバーに連れて行ってあげるわね」
「あ、ああ、よくわからないけど楽しみにしてる」

 性癖は少しだけおかしいけれど、俺は、このたった一人の友達を大切に――――

「……あれ? そういえば俺の服は? 今修道服着ちゃってるけど」
「捨てたわ」
「…………へ?」
「あんなセンスのない服、駄目よ。山田ちゃん、これからはヴァタシが一緒に選んであげるわぁ」
「え、じゃあ今日の帰りって――――」
「もちろんその服よ」
「――――――おおぅ…………」

 ――――大切に、できる、かなぁ…………?


【Continued...】




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